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<福利厚生2014>恒例!白紙、だめ、絶対。2014がけっぷちの陣!


 今年は幾らなんでも。と、思われていた。

 今年は大目に見てくれるだろう。世界の危機目白押しだったんだから。

 納期厳守は、日本の心意気。
 アークは、積極的に皆さんの宿題完遂のお手伝いをします!
 三高平の青少年は、戦闘しか能がない。なんて、いわせない!


「宿題とかないとか思ってた。そんな時期もありました」
『擬音電波ローデント』小館・シモン・四門(nBNE000248)は、俺は宿題終わったと言い切りやがった。
 ああ、夏休みも残り一週間をきってしまった。
 ああ、楽しかった夏休み。
 最後は、南の島で締めるのさ、アハハウフフ。
「みんながんばったもんね。ゆっくり羽を伸ばして休むの大事だよね」
 固唾を呑むリベリスタ(宿題持ち)
「でも、やることすませないと、全力で楽しめないよね!」
 やだなぁ、シモン・四門。
 そんな台詞、都市伝説、二次元だけの話だよ?
「でも、俺は終わってるし。宿題残って気もそぞろな人、あそぼーって誘うの気が引けるし」
 細かいこと気にすんな!
「みんな、宿題、終わってないんでしょ?」
 聞こえません。
 というか、あんなものは九月上旬あたりまでにうやむやのうちにしてしまえばいい代物ですよ?
 リベリスタのかたくなな態度に、四門はわずかの時間目を伏せる。
「いろいろみんなに働いてもらって時間を使わせてしまったアークとしても、みんなにきちんと学校の課題を済ませてもらいたい。ぜひフォローをさせてほしい――って、イヴちゃんが」
 ええい、イヴちゃんの威を借る四門め。
「でも、みんなの勉強がはかどらなかったのも分かるんだ。やっぱり後回しになっちゃってるのとか、あるよね」
 畜生、ごり押しじゃないから反発しにくい。
「移動の船の二等船室を開放してくれるんだって。みんなの宿題消化、手伝わせてくれないかな。ダメ?」
 モニターには、やっすいカーペットに置かれた折り畳みの座卓と座布団。
 学年および主要科目ごとまとめられた参考書。
 壁に貼られた星の運行やら、歴史年表やらが、宿題やらせるぞ~という意欲を感じさせる。
 うわぁお。
「工作、図画の材料、素材も準備してあるんだって。絵日記用のお天気記録も確実更新。ゲリラ豪雨もばっちりフォロー。これも例年通りだね。職員がみんなの日常を守るために、ちゃんと記録してたよ」
 うわぁ。やらせる気満々だよ。
 ここに入れられたら最後、持ち込んだ宿題終るまで出してもらえないんだ。そうなんだ。
 空気が、簡単な仕事とおんなじだもん。
「みんなでやれば、楽しくできる。目指せ、リベリスタと社会性の両立。うん、俺もそう思う」
 社会性、大事だよ~? と、引きこもりからの更正者に言われるとなんか色々怖い。
「ちなみに、素材とかの提供は、三高平市商工会議所。だって」
 いつも、お世話になってます。
「それから、それぞれの所属校に連絡を取って、出された宿題の全貌は把握済み。うん、大学も」
 それも、例年通りだよ。四門。
「大丈夫。俺は、みんなを見捨てたりしない。みんなあってのアークだよ。一蓮托生。行きの船で済ませてしまえば、楽しい南の島が待ってる。俺も中高生の勉強なら見てあげられるし」
 でも、終わらなかったら、帰りの船でもやらせる気なんだよね。わかります。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:田奈アガサ  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年09月17日(水)22:24
田奈です。
 はっはっは。
 やると思っただろ?
 どんどん厳しさを増す、大宿題消化大会だよ。
 小中高大、PTAも、ねじりはちまきでがんばるといいよ!
 今回は、行きの会はありません。
 完全にケツに火がついたとこからスタートです。
 覚悟が決まってなくても、そうなのです。

●宿題会のお約束
 *移動の船の二等船室。机に正座です。
  宿題するのに使いそうなものは大体そろってるよ。
 *誰かと一緒にやるときは、共通チーム名【****】とつけてね。
 *お一人様参加の方で、絡みいれていい人は「絡みOK」とつけてね。
 *描写してほしい宿題の種類を一つだけ書いてね。(英語ドリルとか読書感想文とか)
 *学生さんではない人は、ティーチボランティアでうろうろしてもらいます。
  どの教科が得意か、一つだけ書いてね。
 *小学生もいるからね。
  手を握る以上のスキンシップは二人っきりでお楽しみください。
 *船の中なので、飲食サービスはなしね。
  南の島のご馳走を脳裏に描きつつ、邁進するといいと思います。

 注意!
<覚悟完了>と書いてなくても、今回は帰りの船で宿題確定です! 
 *しけの海で、右に左に揺さぶられながら宿題することになります。
 *キャラ崩壊が前提になります。その後のリベリスタ人生に影響が出ても田奈は責任持ちません。
 *忘れられない痛い思い出をお約束したします。
 *福利厚生の楽しい思い出を胸に宿題するといいんじゃないかな。


●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。(このタグでくくっている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCを構いたい場合も同じですが、IDとフルネームは必要ありません。名前でOKです。
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。

 では、この下の相談は、「楽しかった福利厚生の思い出を語る」といいと思います。(フレーバー要素として、積極的に拾います)
参加NPC
 


■メイン参加者 26人■
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
アウトサイドデュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
フライダークホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ハイジーニアスソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
ハイジーニアススターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
ギガントフレームデュランダル
鯨塚 モヨタ(BNE000872)
サイバーアダムインヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
ビーストハーフホーリーメイガス
臼間井 美月(BNE001362)
ジーニアスクロスイージス
内薙・智夫(BNE001581)
ナイトバロン覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
フライダークマグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
ハイジーニアスデュランダル
イーリス・イシュター(BNE002051)
サイバーアダムプロアデプト
酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)
ジーニアスデュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ハイジーニアスホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
アークエンジェダークナイト
フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)
ヴァンパイアデュランダル
御厨・妹(BNE003592)
ノワールオルールクリミナルスタア
遠野 結唯(BNE003604)
アウトサイドインヤンマスター
伊呂波 壱和(BNE003773)
ナイトバロンナイトクリーク
ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)
ナイトバロンアークリベリオン
喜多川・旭(BNE004015)
メタルイヴスターサジタリー
小島 ヒロ子(BNE004871)
アウトサイドアークリベリオン
水守 せおり(BNE004984)
フライダーククリミナルスタア
織戸 離為(BNE005075)


 福利厚生、楽しかった。思い出がそれぞれの胸を去来する。
 そう、福利厚生自体は満喫できたのだ。
 今年は、行きの船ですべて済ませるという選択肢がなかっただけで。
 というか、行きの船は野戦病院の体だった。
 今だって、第二船室には、シップのメントールの匂いがあちこちからほのかに香っている。
 まだ傷が治りきっていない者がいっぱいだ。

 ゆらぁ。
 ずずずっとテーブルの上に置かれていたものがかしぐ。
 転がる消しゴム、姿を消す六角鉛筆。
 夏休みぎりぎりまでフル活用の福利厚生の日程とこのあたりの海のご機嫌の悪さがシンクロするのだ。仕方がない。
 今回も、逼迫する状況と激しい船酔いに顔を青くした現役学生と心優しきチューターの物語が始まる。

「福利厚生っていう頑張った私達へのプレゼント行事で、現実に戻すような措置は必要ないと思うの!」
 アリステアの熱い主張に生暖かい視線が注がれる。
 でもね。
 ちゃんと宿題もがんばりましたって既成事実がないと、来年以降、この子は参加不可って先生に言われたら、アーク的にはそうだよねって言わざるを得ない。
「やりたくない? ……そうか。なら今すぐ死ぬか?」
 結唯のフィンガーバレット・Faust Rohrが取り出される。
「学ぶべきは学ばねばならぬ学徒は勿論 講師に至るまで。怠ける者あれば射殺する」
 だから、心を鬼にするしかないよね。
 サーチアンドプロジェクトシグマ。
 体をくねらせ踊ったりはもちろんしないが、雷慈慟印の気力を注入。

 もう後がない八月終わり最後の番人――あるいは獄卒――は、ハードボイルドである。 

 それでもめげないアリステアは、強くなったのです。この程度では折れないもん!
「ついでに数学も必要ないと思うの!」
 温度のない視線。
 いや、それはどうかと思う。
「わたしは面倒な事はぱっぱと片付ける方だったからまあ、宿題残すなんてこたぁ無かったけど。ある意味地獄だったわよ、ほんと。リベリスタやりながら勉強もしろだなんて」
 フランシスカは、ニュートラルに告げる。目が違う。地獄を通ってきた目だ。
「いや、地獄なのは現在進行形よね」
 ここで逃げるなんて、言えない。屍の山を越え、血の河を渡ろう。友であり続けるために!
「……ぅぅ。やる。やりますー!」
 視線に耐えかね、そう崩れ落ちるアリステアの肩を悠里は優しく叩いた。
「僕も割りと宿題は残す方だったから皆の気持ちはわかるよ」
 教育は、共感から始まる。
 悠里は、うんうん。と頷くアリステアを座らせ、ノートを開かせドリルを開かせ、シャーペンを握らせる。
「そして今の僕には現実もわかる。――宿題からは逃げられない。アリステアちゃんには、まず数学をみっちり仕込んであげるね」
 ちいちいぱっぱ。ちいぱっぱ。 

 夏栖斗の前で、妹がドリルをしている。
 時々手が止まるのは、船が上下はもとより前後左右に揺れているからだ。
(僕はもう論文終わらせてるし)
 こうしてみると、虎鐵の子育てはすごく成功しているのではないだろうか。
(しっかりしてると思ったんだけど、意外とまいちゃん抜けてるとこもあるな)
 とか口には出さないが、顔には出ていたようだ。
「お、終わってないのはいつもより忙しい夏休みだったからですよ! ほんとですよ!」
 お兄ちゃんにはええかっこしたい妹心、イエスだね!
「忙しかったもんなぁ、正直」
(過去にいったりなんだりと)
 兄の包容力たっぷりの笑顔に、妹はブラコンへの階段を登るのである。
「ま、船降りたら、ジュースでもおごってやっからさ」
 がんばれ。と言われてがんばらない妹がいるだろうか。(反語)
「家計簿をつける時はすらすら出来るのですが、こういうドリルとなると少し苦手です」
「要はパズルみたいなものだよ、この式をこの数字と入れ替えるだろ?」
 わかりやすいように、じっくり教えるのは慣れている。
「……! ここはこう解くのですね、さすがにーなのです! まいのにーは天才です!」
「可愛いまいちゃんに天才とか言われるのは悪い気はしないね」

「そっか。学生って宿題があるんだよな」
 養女の雷音は、粛々と宿題を片付け、虎鐵の手を煩わせたりしない、できた娘だったのだ。
(――普段から家事はやってるから料理、裁縫とかぐらいだったらできる)
 意外とエプロンが似合う系パパ。
(ちょっと口調とか表情で怖がられそうだが、まぁ、そん時はそん時だ)
 需要がない時は、隅っこでせんべいかじりながらお茶でも飲もう。そう考えていた時期もありました。
 虎鐵がこの後、「他のことは何でも出来るけど、唯一女子力のみ低系女子」に大量に泣きつかれるのだが、それはまた別の話である。
 ちなみに、彼女達の今後に栄えあれ的観点から、特徴には全てモザイクを入れさせていただきます。

「俺? ちゃんと宿題というか課題は終わったよ!」
 抜け目ない男といったら、竜一である。
(ワーカーホリックとか言われてた俺だが、最近、お仕事の量減ってるしね。まあ、その分、厳しい仕事ばっかだったが……)
 思い出すとけろっぴになるので、思考強制停止。
「――そろそろ俺も卒業とか就職とか考えないといけない頃やん?」
 ごわごわの安カーペットに、のの字を書く男は殴っていい。
「明るい家族計画とか悩むやん?いつごろ式を挙げようかとか、結婚指輪とか悩むやん? そもそも子供は何人欲しいとか、マイホームとかどうしようとか、あるやん?」
 プロポーズはおすみですか。
「えっ。ゼミ課題? なにそれ聞いてない。言ってた?……忘れたままでいいんじゃないかなあ……? だめ?そう……」
 ここで諦めないのが、生き残る男だ!
「うおおおお!ほとばしれ俺の頭脳!」


「で、だ。わたしは何教えればいいの?」
 フランシスカの前に、シュスタイナと壱和。
「フランさん。歴史系というか、暗記系をちょっとみて欲しいのだけれど…」
「英語を教えてもらって苦手を克服しなければですね。フランさん教え方が上手ですから」
 フランシスカ、こほんと咳払い一つ。 
「英語? まあそれなら出来なくはないけど。あとは世界史かしら。え? ああ、うん、それはね……」
(フランちゃんは普段から仲いいからか思ったよりちゃんと教えられてて安心。苦手って言ってたけど、前に子供に好かれるところも見たし案外教師に向いてるんじゃないかな?)
 おかげで、悠里は、ひたすらドリルのアリステアに専念できるというものだ。反復は力なり。
「じゃ、このくらいで。他の教科も済ませなくちゃね。復習もちゃんとして」
(悠里お兄さんの教え方は分かりやすい。先生を目指すというだけあるなって思うの。数学、点数伸びますように)
 良いお返事をしながら、アリステアはフランシスカににじり寄った。問題を解きつつ、時々様子を伺う。
「ふらんちゃんは終わったら頑張ったねって頭撫でてくれるよね?」
 フランシスカは、アリステアの間違いを目敏く見つけて消しゴムを掛けた。
「……あー、そうじゃないでしょもう。そこはそうじゃなくてこう、分かる?」
 フランシスカによる、ほっぺたもにもに。
「終わったら、がんばったねってーッ!」
 アリステアによるなでなでの要求。
 そんな二人をほほえましく見ている悠里。フランシスカの代わりに壱和につく。
「壱和ちゃんは受験だから、もう時間もないし、点を取るための勉強をするね」


「社会人になって時村物産に就職したのに、またこの部屋に来ることになるとはなあ……」
 快さん、カメラそっちです。
「説明しよう! 割とまとまった休みを取るのが難しかった新田は、休みの代わりに仕事を持ち帰るというか現地対応するという取引に手を染めたのだ!」
 つまり、現地でのお接待役という名の幹事を買って出たのだ。
 自分と仲間の休日をプロデュース。
 で、本土につくまでに、文字通り帳尻を合わせなくてはならない。
 部屋の一角で船内の内線電話を抱え込んで仕事場確保。
「時村物産、営業九課の新田です。会計課の方、どなたかお願いします」
 福利厚生の納品と検収について、アークの会計方と調整して伝票と領収書を作成する簡単なお仕事です。
「納品リスト50番の品目どうなってるんですか? こんな高級酒、納品した覚えない……」
 納品したのは新田酒店です。お世話になっております。
「ああ、わかった、それ専務の私物だ。契約上別の伝票で処理するんで後回しでお願いします」

(今年もこの時期か……。引き受けた以上、ティーチボランティアとしての責務を全うしますとも)
 義衛郎は公務員だもん。
「うわぁぁぁん! 義衛郎お兄さんもうちょい教えて欲しいのー! 特に物理!! 何にも分かんないし、頭に入らないの!!」
 せおりが机に突っ伏した。義衛郎の得意科目は国語です。
「はあ……この法則って一体何なんでしょうか? こんなことなら授業で起きてればよかった……」
 義衛郎は、テキストをのぞきこんだ。穴埋め問題は、真っ白白だ。
「ん、何? 法則?」
(授業中に寝てたら、そりゃ解らないよなあ)
「うぐっ、ぐすん、科学なんて!物理なんて、何の役に立つんだぁぁぁ!!! 私の夢はダイビングのインストラクターだもん、理科なんて要らないし使わないなの……ひっく」
(ダイビングインストラクター資格を取るときにも座学はあると思うんだけど、大丈夫なんだろうか……)
 いつか、現実と向き合わなくちゃならないときもあるさ。
 森羅万象は意外なところで結びついているのだのだ。昨年の同じ日せおりが座ってるまさにその場所に、せおりのお姉ちゃんが座っていたように。 

 ぺきんと、シャーペンの芯が折れて飛んでいった。
 リリは、小六の漢字ドリルと向き合っている。
プルプルしたり、パーツが多くて枠からはみ出したりしているが、期間を考えれば十分だ。
「日本語は字の種類が多くて難しいです! 会話は何とかなりますが、書きになると全然、です……」
 傍らの『絵で見る簡単漢字字典・カラー版』 は、めくりすぎてふにゃふにゃだ。
「日本で生まれて育つと、自然に沢山書けるのでしょうか? 日本の方は頭が良いのです」
 人間、必要にせままれれば覚えるんだよ。スキル表とかも。
「漢字は、そーだなぁ。絵を描くみたいに考えてみたら? 魚なら、頭書いて鱗のあるおなか書いて、ちょんちょんが尻尾だよ」
 旭のアドバイスにリリは頷いた。
「頭とお腹と尻尾……絵にも描いてみましょうか」
 ロアンが青ざめているのに、旭は小首を傾げ、リリの手元に目を落とした。
「そうそ……」
 旭の頬が恐怖でこわばった。眼球がショックで落ちそうだ。
 恐怖で人が縛れたら、呪縛陣ではないだろうか。
「成程、確かにお魚の形をしたツクリなのですね!」
 にこにこしているリリは魚と認識しているが、描かれたそれは、星の彼方から召喚された何かのような感じがする。下の四つの点々が触手のようだ。
「い、一応魚なんだよあれ。リリは昔から、絵だけは何をしても駄目で……」
と、ロアンが沈痛な面持ちで旭にだけ耳打ちするが、旭の頭で意味にならない。
 別の意味で破壊的な才能があるといってもいいかもしれない。いや、封印すべきだ、この才能は。
「リリの書いた魚偏の漢字」を見た人は、WPロールをして下さい。
「うん……じ、じみちにれんしゅう、しよっか……」
 ロールに成功し、「それ」 から目を放すことに成功した旭は、リリの頭をなでた。
「……あれ?」
 怪訝そうな顔をしつつもおとなしくなでられている妹とその友の様子に、ロアンは宿題が終わったらチョコタルトを食べさせてあげることを硬く決意した。
「旭ちゃんは、心理学向いてるよ。保証する」


うぅ…少し横になっててもいいか?

「なんと! 私! 今年は宿題がないのです!」
 イーリスは、常に腹から声を出す。
「なぜならば、もう授業がないのです! 高校三年生! 自由登校なのです!」
 何だと!? 出席日数は!? 成績残念者の補習は!?
「足りてます!学校に行くのは好きだからです!! 補修もおわりました! はいぱーあそぶのです! そう思っていた時期が、私にもありました……」
 
「イーリスが高3とかマジかよ! 時間の流れってはえーな! E能力者は見た目が変わりにくいから!」
 フツさんがからから笑う。
「受験対策があるだけです……こわいです……らとにゃやR-typeとかそんなもんじゃないです。ついていけなくなることが怖いのです」
 入るのがゴールじゃないとわかっているイーリスは偉い。
 フツは、穏やかに微笑んだ。
「さて、国語が苦手な人がよく使う言い訳に、「作者の気持ちなんてわかるわけないじゃん」
ってのがある」
 イーリスは、真面目な顔をして聞いている。
「そんなのオレもわからん! 国語の問題で聞かれているのは、作者の気持ちじゃなくて、『出題者の気持ち』 だッ!!」
 イーリスは、こくんと頷いた。
「国語の文章という大海原の中から、出題者が設定したヒントを探しだせ! これはそういうゲームだから! 依頼と同じ! フォーチュナの教えてくれた情報から、これが重要だと思って行動するの! アッ、この例え良くね?」
「わかりました! わたし、やります!!」
 イーリスは、猛然と問題集に立ち向かい始めた。

 三高平のリベリスタが通う各校は、リベリスタへ柔軟な対応をしてくれるが、それは当然出動率なんかが加味されてる訳で、えーと。
「あらすじ」
 美月は、虚ろな目で、口調だけは突き抜けて明るくしゃべりだした。
「奇跡の卒業失敗をし2度目の高校3年生。通学すると周りは皆年下ばかりと言うこうなんと言うかとても気まずく居心地最悪な環境に凄い勢いでめげ、不登校には至らないまでも遅刻だらけだわ現実逃避で授業全然聞けてない寧ろ寝てるわ……と、去年より成績が下がる有様でありこのままだと次は高校5年生だね!」
 誰か、美月ちゃんを朝お迎えに行ってあげてくれないかな!?
「言う状況なので、大量に出された追加の課題をやってキッチリ提出しなくちゃいけないのであった」
 独白を終えても、ツッコミがない。
 思わず助けを求めて周囲を見渡すが、どっこい今回付きっ切りの手伝いはいない。
「……いい加減自分一人の力で出来なきゃ……だよね」
 おそらく上の船室で、友は、美月の心配はしているだろうが、心を鬼にして動向を見守っているに違いない。多分、きっと。
「ええと、ここは……つまり……」
 ここで解けるようだったら、留年などしない。
「……わ、分かんない……ぐすん」
 こみ上げてくる涙。
「国語は得意だったなあ。特に作文! 夏休みの思い出でも感想文でも私に任して、他のやっときな!」
 ぱぱーん! と、ヒロ子が現れた。
 理数系はまっかっかなのは、棚に上げておくのを忘れない。
(……うふふ、かかったな。超マトモな文章を描いたように見せかけて、各行の頭文字を繋げて読むとバカ丸出しな文章が炙り出されるように、縦読みトラップを仕込んでやるわ! 大事な宿題を他人に任せた、己のミスを呪うのね)
 ニヤニヤしつつ原稿用紙にカリカリとシャーペンを走らせるヒロ子。
 先生、ここに悪い大人がいます!
「あ、ありがと、ござま……」
 書きあがった原稿用紙を胸に抱えて、へこへこと頭を下げる美月。
 知らない人は苦手なのに、ちゃんとお礼言えたよ! 
「よ、よく見てね……」
「すごくいいと思う。思いますぅ」
(え、気づかなきゃ普通の文章だって? ……マジだ!!)

「基本的に戦術は昔も今も大した違いはないわけで……高い機動力や飛行能力の運用もしくは対処方法の違いが――」
 ミラクルナイチンゲール――という名の智夫本人が、すみませんすみませんとあたりに意味もなく謝罪しながら、~リベリスタ軍学と江戸軍学の違い~というタイトルでバリバリレポート用紙を埋めている。
「本来は智夫さんが作るべきなのですが、コンパで女性陣の人数が足りないから誘われた等、諸々の理由で出来てなくて……本当に申し訳ありません」
 女子の代役かい。持ち帰られてたら、どうするつもりだったんだ。
「智夫さんは、船酔いで意識が……」
 なんで、自己をへっぽこに設定してるんだ。
「そういえば智夫さん、元カノからまたイベントに誘われたようですが。ホイホイ乗るのはどうかと思います。今のままだと進級出来なくなる可能性もあるんですけど……」
 智夫君は、自分に差し迫る危機について正面から見つめ直すべきだと思うな。
 壱也は、机にぺったしほっぺたをくっつけていた。
(はぁーよくよく考えたらわたしって大学生なのでレポートたんまりあるんだよねー。夏は大きなお祭りがあったので前半はそれに費やしてたし)
 ちなみにアレから二週間以上たっている。
(レポートの山……どうするのこれ)
 書くしかないだろ。書かないと死ぬぞ。
(あんなところで男子二人がいちゃこらしてるじゃない)
 アンニュイ中尾と別の生き物のように、いちゃい茶がレポート要旨に書き写されていく。ねつ造された台詞がなんともかんとも。
(これがレポートなら捗るのに!)
 明日の朝には、薄い本が出てるのに!
「……羽柴嬢ではないか……課題はレポートなのに写生?」
「あっ酒呑さん! み、見ないで、ちゃんとやってるから」
 いくら雷慈慟が浮世離れしていようと、レポート用紙に写生が本筋でないことくらいわかる。
「うわあああああんごめんなさいいいい。や、やりますからあああ」
 腐女子的に男子に手元を凝視されるほどつらいことはない。(腐女子エンジン全開時をのぞく)

「私、織戸離為27歳」
 たぶん。と付け加える彼女の外見は12歳だ。
「最終学歴は小学生――だったような気がする。宿題「は」無いけど休み明けに受けるテストの成績が悪かったら小学校に編入なんだって、大変!」
 うん、自分の年の半分以下の子に混じって勉強するの、割りと大変。
「勉強しないと! がんばって! せめて中学生で!」
 その訴えに、一人の教師志望者が立ち上がった。
「宿題じゃなくて、編入試験か」
 フィクサードに育成されていた革醒者の社会化プログラムの一環として、三高平では珍しい話ではない。
「今回もいろいろ大変な事件だらけだったから。試験勉強やれてないのは仕方ないとは思うけど。試験の日が伸びる訳じゃないからな。覚悟を決めてがんばろうぜ」
 エルヴィンも覚悟を決めました。思ったとおり、基礎がまったく出来ていなかったのです。
「それで、分数の割り算ってどうするんだっけ? 私も福利厚生を楽しみたかった!
「とうろん」ってどう書くんだっけ? 漢字の読みの問題はわかるけど。 このお菓子おいしい! 世界四大文明、エジプト、メソポタミア、黄河、チグリス・ユーフラテス!」
 並行処理が骨身に染み付いて、興味があっちこっちに吹っ飛んでいくのです。
「はぁ、疲れた……」
 肩で息をする離為の前で、やったところを塗りつぶして見せるエルヴィン。
「大丈夫だ、ちゃんと減ってるから。それを終わらせたら少し休憩にしよう、起こしてやるから15分ほど横になっときな」
 第二船室の篭った空気も、エルヴィンのマイナスイオンがさわやかにしてくれる。
 噴き抜けろ、オゾン臭。
「調子悪くなったら回復してやるから、遠慮なく言ってくれよ」
(ふらふらでダラダラやってても効率悪いからな。飴と鞭、メリハリつけてきっちりやってこう)
 受かるといいな、中等部。

「今年もこれが残っちまった……苦手すぎてどうしても後回しにしてた結果がこれだよ……」
 数学のプリントが、わっしゃわしゃ。
「えーっと、この場合はどの方程式使うんだっけ? 相変わらず数字と記号は頭に入ってこねぇぜ……!」
 シャーペン放り出して、頭を抱え込む。
「やるなら手を止めるんじゃない。死にたいのか。私もさっさと終わらせたいんだ。わからなかったら教えてはやる」
 結唯が、放り出したシャーペンを目の前に置いて、フィンガーバレットをがしゃがしゃ言わせ始める。ハードボイルド。
 今回、英語の需要はあんまりなかった。
 タワー・オブ・バベルの普及は、若年リベリスタに英語教材くらいの効果はもたらしたかもしれない。
 ネイティヴすぎて、受験英語に対応してないとかの弊害も考えられるから、受験生は気をつけてね!
 もちろん、試験会場にAFの持ち込みは禁止だよ!?
「だから死ぬ気でやれ」
 中学校の数学、教える方も割りと死ぬ気でやらないといけない。
 高校スキルは証明問題に使ってはいけないのだ。縛りプレイ。
 それでも、着々とプリントは消化されていく。
「おぉ、それか! ありがとな……」
 喜色はつかの間。モヨタは、青い顔をして結唯に尋ねた。
「それと、もう一つ聞きたいことがあるんだけど……エ、エチケット袋どこにあるか知らねぇ……?」
 脳の奥から揺らす大きな横揺れに、細かいたて揺れ、更に斜めのベクトルが加わり、三半規管をシェイキング。
「このままだとプリントが物理的に提出できない状態になりかねないから早く……!」
 式神である名も無きメイドが、無言でエチケット袋を差し出した。

 船酔いの恐ろしいところは、逃げ場が無いというところだ。 
「去年もこんな展開だったような気がするの! なんで海荒れるの! きゃぁぁぁぁ! こんな状況で勉強なんてむーりー!」
 叫べる元気があるアリステアはまだいい。
「宿題、ついでに海に落ちないかなぁ……」
 たしなめようとして口を開きかけた悠里が、カーペットに沈没した。
(……船、また揺れてる? 嗚呼ダメだ。気持ち悪……けれど。去年の二の舞には!)
 シュスタイナが真っ青な顔をしてうずくまった。
(けど)
「……ごめ、なさ……。やっぱむり。設楽さん、大丈夫……?」
 返事が無い。
「船は今年も意地悪なくらい揺れますね……。どこかにエリューションでもいるんでしょうか」
 壱和は、正座しなおすと、ぽんぽんと自分の膝をたたいた。
「シュスカさん。今年も膝お貸ししますから」
「今年もごめんなさいねと、ありがとう……」
 落ち着いたら続きをしましょうね。と、壱和はシュスカをなで続けた。


 闇を越えて、暁の水平線。
 出来はどうあれ、宿題を提出できないということはない。
 今年もリベリスタはやり遂げた。
 おめでとう、リベリスタ。次の宿題もがんばれ、リベリスタ。
 今なんの役に立つか全然わからない夏休みの宿題消化スキルは、君達の後輩の手伝いをするときにきっと役に立つ。
 戦わなくちゃいけない現実を踏み越え、自分の未来を掴むのだ!

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 夏の思い出。
 嵐のお船と微妙な匂いとうめき声満載のお部屋から皆さんが生還できたことを、がっさーは嬉しく思います。
 エチケット袋は、ちゃんと自分の分は自分で捨てましょうね!
 楽しい思い出を胸に抱き、次のお仕事がんばって下さいね!