●背景の血は 何かがおかしい。と、気付いた時には手遅れだった。 南の島。アーク所有・御用達の島であり、絶景彩る福利厚生の地である。ここを訪れたリベリスタはいるだろうし、訪れた事が無い者でも話ぐらいは聞いた事がある場所ではないだろうか。 しかしおかしい。何かがおかしい。嫌な予感がする。 やけに静まり返っているのだ。鳥の鳴き声は聞こえず、風は吹かず。どことなく天気も悪い。 暑くなってきた今日この頃。福利厚生とは関係なしに、避暑地として訪れようと来た皆だったが―― 「帰ろう……なんか、変だぞ今日の島は……」 当然の思考として帰還を選択する。 つい先ほど乗ってきたばかりの船に再度乗り込み。目指すは一点本土へ。出港しようとして、 「……ん? なんだ?」 島の奥からこちらへと歩いてくる影を誰かが見つけた。 妙だ。たしかこの島は無人島の筈だ。乗り遅れた者がいたのだろうか? ……いや、違う。 よく見ればその姿は“人”ではなかった。 異形。首より下は人に近いが、その頭部は人ではなく“牛”だ。アザーバイドの類であると一目で分かる。 しかし、何と呼んだか。人は。その様な姿を持つ者を。 「あぁ……」 そうだ。ミノタウロスだ。 ミーノース王から生まれたタウロス(牛)。伝説上の、迷宮の主。 かの存在に相違無し――敵と見定めたリベリスタが武器を抜いた。 ……んだけれどもなんかやっぱ様子おかしい。 なんか牛は興奮しているようだ。鼻息が荒い。まだ距離はあるというのに聞こえてくる程に。その上で熱い視線が一部に注がれている。なんだアイツは。何故“男”を見て鼻息を荒くしているのだ!? 「この日を……待っていたぞ男性諸君……!!」 おい馬鹿止めろ。止まれ。なんで全裸なんだ。いや全裸が普通かもしれないが。 並々ならぬ闘争心がリベリスタ――いや男だけを見つめている。やめてマジやめてその視線。 「この日の為に鍛えてきたのだ……! 真装開店・改良型ラヴリンス!! この地そのものを迷宮としてくれるわぁああああああ――!! 故に!」 故に? 「 や ら な い か ? 」 こいつホモだ――!! ●何の血だろう(遠い目) 「ぐああああああ! そ、そんな馬鹿な!! 船のエンジンが唐突に故障するなど、そんな馬鹿な事があってたまるかああああああ!!」 即効で船に乗り込み本土を目指そうとした『ただの詐欺師』睦蔵・八雲(nBNE000203)だったが――ところがどっこい逃がすもんかい三十路になっちまった野郎。 乗ってきた船は動かない。超神秘的な事情によりエンジンが故障してしまったのだ。仕方ないね。 「おのれッ――! 奴にとっての都合の良い空間の作成……それが奴の能力……! ええい何度現れれば気が済むんだあのバカは!!」 奴は過去にも幾度かアークの前に現れたことがある。 その都度(男性陣に)犠牲を多数出しながらも撃退に成功している。その時は特殊な空間に引きずり込まれていたが…… 「今回は……むしろこの島を特殊な空間に“改造”しているようだな。 島の造形はそのままだ。クッ! 能力の突破法が分からん! アークには連絡したが……どうなる事か!」 暫くすれば突破法は分かるだろう。ミノタウロス……もといホモタウロスはそこまで強力なアザーバイドではない。以前の能力も欠陥はあった。島一つ覆うなどある程度能力は向上しているようだが、その分犠牲にしている点もあろう。うん。多分。きっと。うん。 なんとかなるなんとかなる。信じればきっとなんとかなる。その為アークからの連絡が来るまでは、 「ひとまず逃げに徹するが上策だな……! 船は動かん! 島へ逃げるぞ!!」 「そうだ。翼で飛行すれば逃げきれ――」 誰かが言った。その瞬間ホモに翼が生えた。 「なんだアイツはマジで――!!」 「あれも恐らくこの空間の特殊補正の一環だ!! 奴にとって都合の良い事が起こる! 皆、生き延びてまた会おう――!! 解散ッ!!」 諸君らの目的はたった一つ。生き延びる事である。 特に男性は気を付けよう――尻にな!! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年08月25日(月)22:25 |
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■メイン参加者 14人■ | |||||
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●おいちょっと 真夏。むせ返る様な日差し。直射日光と言う名の悪魔が降り注ぐ南の島。 本来は南国の様な素晴らしき土地だが、現在進行形で大変なことになっております。特に―― 「えー、こちら。こちらはアーク広報係記録部。アーク広報係記録部です。 これちゃんと撮れてますよね? 最初から最後まで全部撮るつもりですが大丈夫ですよね。うん」 身内に潜む敵の所為で。(重要) 額にハチマキ。の様な便利なベルトでカメラを顔横に固定。その上でセレアが臨むは現場撮影(意味深)である。 さぁいざ往かん。夢と希望の詰まりしホモタウロスの現場へと――いややっぱなんでも良いからカメラとめろぉ! ●カメラ止めろ(迫真) 何もかもが後悔の海に溺れていた。 知り合いに“南の島へイかないかと”連れて来られた一樹。ああその時は別に良かった。別に、南の島に行くことぐらい気分転換のつもりだった。が、 「おのれ、なにやら嵌められた気分だ……!! いや突発的事態であれば仕方ないとは思うが……どこか納得いかんぞ何故だ!?」 タイミングが良すぎたからだろうか。しかし迷っている暇はない。 奴は危険――ならば。逃げるには複数での行動が上策。見渡し、仲間を探せば、 「うぉおおおおおおおお――!! こい、ホモタウロス!! ホモの世界は やるか やられるか のデッド! オ、アッ――! ライブ!! の世界だぜ! これ以上言葉はいらないだろう!?」 「然り!! いいぞ人間ッ――! その二択以外の世界等、この世には存在しない!! イクぞ――ッ!」 敵しかいなかった。くそ、なんて世界だ! 仏も神もいやしないがホモはいやがる!! しかし高和とホモタウロスの【ちょっと放送できません】により若干の時間は稼げた。逃げよう。今の内に地の果てに。逃げよう。 「なんたる光景だ……この世のモノとは到底思えんおぞましさだぞ……! これが、これが即ち、悪夢の具現という事か……!」 瞬間。逃げる足を引っ掛ける存在がいた。それはホモではなかった。それは、 「ついに、ついに来たのねホモタウロス!! 待ち望んでたよ!! 今日も今日とて沢山の餌……じゃない撒き得……でもなくて、男子を連れてきたから!!」 腐女子だった。もうだめだおしまいだぁ! しかし嬉々としてますね壱也さん。 「はしばぁあああああ!! お前の所為でこんな所に来てしまっただろうがァ――! どうしてくれるんだマジで――!!」 と、彼女の背後より高速で迫る影があった。彼の名は司馬 鷲祐と言う。 説明しよう! 何故彼がここにいるかと言うと某目の前にいる方に“ププーそんなに足が速いのにたかがホモ一匹からも逃げられないんですかにこー!”と煽られついうっかりムキになってしまい、過分な後悔とストレスとほんの僅かなトレーニング気分(きやすめ)を携え、地獄廻りに顔出ししたのだ! つまり羽柴壱也が全部悪い(確信)。 「しかも俺の特徴欄全部ノンケじゃないか! なんだこの特徴欄!! どうなってんだむつぞ――!! 何時ついたんだ聞いてこい!!」 「私が知るモノかぁああああ!!」 ホモに見つからないように存在ステルスしてた八雲に声を。やめて! 見つかる! 高速チョップ。いちやガード。ホモが迫りて急速離脱、しようとした所で、 目の前になぜか包帯が投げ入れられる。視界を遮るかのような邪魔な包帯。これは、なん―― 「うん……大丈夫。分かってるよ。皆興味はあるけれど、男と男同士だから恥ずかしがってるだけなんだって」 声の主はルア・ホワイト。彼女は分かっている。カメラとビデオ。夢の二刀流を実現させて、 望み往くは薔薇の世界。己の速度の全てを注ぎ込み。恥ずかしがっている男を包帯で優しく(抵抗できないように)包み込まんとすれば―― 「私は――信じてるから」 仲間を。 親友を。 あの時みたいに。 「ちーちゃん! 今だよ! いっけえええええ――!!」 迸る声が友の耳に。ああ聞こえるとも。聞こえぬ筈がなかろうか――って、ちょっと待て待て待て待てそのセリフこの場面で使っていいの!? マジでいいの!? しかして包帯が何故か都合よく鷲祐の足に引っかかる。なんだこれも結界の力か! 「お姉ちゃんやめて――!!」 その時だ。今度は壱也の足を止めるべく妨害したのは、彼女の妹、双葉である。 「敵はアザーバイド、向こうだよ!! なのになんでお姉ちゃんが積極的に敵に回っちゃってるの!! 駄目だよ! 腐ってるのはいけないよ!!」 「双葉こそお姉ちゃんをとめないで! これは使命なの! 天から授けられし悲願なのおおおお!」 「そんなの聞いたことも無いしいいから大人しくしててッ!! むしろイカダ作るの手伝ってよぉ――!!」 軽く姉妹喧嘩勃発。双葉さんスキルで伐採し続けイカダを作ろうとする貴方だけが希望だ! リベリスタ同士の必然的な内紛。その間を擦り抜けて、ホモが向かうはやはり男へ。 喰らう。喰らおうとする。地獄の様な、そんな光景を潜み見ながら、 「なぁ、見てるんだろうアンタ…… ……俺が勝っても負けても、その映像をあひるに届けてほしい。必ず。必ずだ。頼んだぜ」 フツが誰かに声を掛ける。恐らく己を見ている者がいるはずだ。カメラ越しに。だから声を紡いで。 フツ、お前って奴はァ……! 「まぁそれはそれとして俺は逃げるぞぉおおおおお――ッ!! 自主的に来たとは言えむざむざ捕まってたまるかぁあああ――!!」 見据える千里眼。どこが安全か、瞬時に頭に叩き込む。 島のどこか。無いだろうか、安全点が。目まぐるしく視点を移動させれば、 ホモの顔が何故かドアップで映り込んだ。 「うわあああホモが、ホモの顔が目の前にうわああああああ軽くホラーアアア!!」 「フフフフフ。この空間内ならば私に妨害出来んことは無い気もするのだよ!! 今そっちにいくぞ――!!」 フツが狙いに絞られた。まずい。奴が来る。 簡易飛行使用! 足場対策後、即地を蹴って逆方向に駆け抜ける。捕まるもんかぁ! 「牛と鬼ごっこのつもりか新しいな貴様! だが逃がさん!」 走る。走る。走り続ける。まだ距離はあるが、これは空間影響だろうか。ホモが瞬く間に距離を詰めてきている。まずい。追いつかれる。と、思った時、 ホモの前に立ち塞がる者がいた。 「ムッハッハッハハ! 避暑地でバトルとはお約束!! さぁ張り切って行く――」 神那である。されど“行くぜ”と続けようとした言葉は途切れた。なぜならばホモが無視したからだ。 フツを追う。男以外視界に入っていない。マジで女には興味ないのか。 「えっ……ちょっと分かんない。私はこんなに魅力的なのに!? 何に負けてんの!?」 強いて言えば性別の壁である。しかしそんな事は、無視されてしまった(自称)魅力的な神那にとってはどうでもよい。とにかくホモが駆け抜けている事が気に食わない。 「むき――ッ!! もう怒ったぞう! 構え、構えよ――! 構わないなんて許さないぞおおお――!」 「ええいやかましい! 男に生まれ変わってから出直してこ――いッ!」 追うホモ。追う神那。足に飛びつき、引き摺られながらも尚に諦めない。非戦の力。威風と、ワールドイズマインをとにかくフル活用してもがき続ける。何がそこまでさせるのか。もはや意地である。ホモに負けるわけにはいかないのだ! いろんな意味で!! さすれば一瞬。神那にへばりつかれていたホモの首先寸前を、何かが通った。 剣だ。何奴か。 「テメェにとってここが都合の良い空間ってのは分かったぜ。 ……だがよ、殺そうと思えば殺せねぇこたぁないんだろ?」 刀を構える虎鐵だ。その目には純粋な殺意で満たされている。 成程ここは敵に地の利あり。それは確かだろう。己でも分かる事だ―― で、それがどうした? と言わんばかりに、迸る戦意は極地の域で。 「――死ね。今すぐに。塵も残さず消え失せろ」 「待て待て!! 如何に有利に戦えるとは言え本気で切り掛かられたら」 問答無用。横薙ぐ一閃、殺意灯りし。修羅の如きか羅刹の如くか。あるいは双方超越せんとして。 交差。衝撃。金属音。ホモの手に握られし、いつの間にやら出現した鉄の棒が虎鐵の一撃を防げば、 関係ない。有利事象諸共何もかも吹き飛ばす。防御の上から致命たる一撃を成して――待ってこれ何のシナリオだっけ。 「皆……こっちだよ!! はやく! 大きな岩があったから、隠れられる!!」 逃げている側。あひるの声が飛んだ。指差す先に見えるのは確かに巨大な岩。 ところで唐突だが、翡翠 あひるは悩んでいた。 “ネタ帳”に潤いが足りないのだ。世に言う美青年達が顔を赤らめ、涙目でいる様な情景。思い浮かべども、既に幾度と思い浮かばせ続けたその脳には少しばかり刺激が足りなくなっていたのだ。くそう碌でもないな!! ともかく悩んでいた。だから渡りに船だったのだ。この、ホモタウロスの襲撃は。 「ごめんね、皆……でもこれはしょうがない事なの……」 呟くように漏らした言葉。真意に気付いた時にはもう遅かった。濃密なホモの気配が高速で近付いてきている。何故だ、ここは安全地帯ではなかったのか。いやまさかこれは。 「あ、あひる!? まさか俺たちを――嵌めたのか!? やっぱり!!」 「大丈夫安心して! メモの準備はバッチリだから!!」 何が大丈夫なのか原稿用紙で説明してほしい所だが、遅かった。 何をどうしても遅かったのだ。一言で言うと―― 至近距離にホモがいた。 「 や ら な い か ?」 「 や ら な い よ ッ! くそおおおおお一足早い福利厚生だと思ったらどうしてこうなったんだ――!!」 「落ち着けロアン! 今更どうしようもないんだ尻を括ろうぜ!」 絶対いやだ――!! と叫ぶロアンに、どことなく楽しげな吹雪。 先ほど、犠牲者になった者の声に一樹の声が聞こえた気がした。気のせいだったかもしれないがホモタウロス出現時のゴタゴタではぐれてしまった以上ありえない可能性ではない。で、あればここは仇を取るのが筋だろう。故に、 「さぁ来いよホモタウロス……! 今日の俺はそう簡単にバックは取らせねぇぜ!! まぁ俺別に負けても問題ねぇっちゃねぇんだが」 「あああもう! こうなった以上全年齢の枠だけは守り抜いてみせる! 僕が護るのは……秩序だ!」 「逃げて、戦い、守ってください。ちなみにお尻の穴は?」 イーリスの声は無視した。それにしても不思議な光だ。まるで何か規制対象を見せぬ技法であるかのように、肝心な所が眩しい光で一寸も見えない。光だからね。全年齢万歳! そして同時。気を付けるべきはホモだけでなくフレンドリーファイアもだ。今回、味方は信用できない。後ろから刺す気満々の女性も多い中、背中の気を緩める事はできないのだ。だから、 「八雲さんを盾に、生き延びるんだ!!」 「さよならむつぞ――! お前の事は二秒だけ忘れん!!」 「うわあああああ君ら絶対この恨みは忘れないからな、ァッ――!!」 響く肉壁の断末魔。しかし犠牲の星となった八雲なんぞに構っている暇はない。 攻撃を叩き込むのだ。これだけの戦士達が集まば有利補正があっても押し切れるかもしれない。 「あくまでも ノンケに気高く 神速の 竜は羽ばたき 菊に散る」 イーリスの声がする。どこだ。姿が見えない。どこにいる!? 「悟るのです。これが一体何日に行われたか…… ……全ては繋がるのです……事実に……賢者の果てに……ホモタロウの言葉は……!」 声に反応し、振り向いた瞬間にはもういない。声だけが聞こえる。どこか遠くで。どこか近くで。イーリスめマジで一体どこにいるんだ!? ナレーションかあいつは!? 「おおおおおこの程度では終われん! まだ男と触れ合わねば――」 「いいから早くぶっ倒れろお前は――!!」 戦闘音。その近くでホモなる光景を収めようとする一部面々。迸るエナジー。 かくて悪夢の祭の中。あらゆるベクトルに必至だった皆の結果は―― ●決着 要約。ホモは滅んだ。 ……具体的に言うと能力が解除されたのだ。如何に好き勝手やろうとしたホモタウロスとはいえ、割とガチで殺しにかかってくる者もいる中、自由であり続けられた訳では無かった。能力さえなければボッコボコにするは余裕で。 「待てやめろぉ! 私はただ人との交流を物理的に深めようと……!」 「そうだぜ! 人外とは言え話せば心も体も繋がるもんだぜ……!」 「おうそうかい。辞世の句はそれで終わりでいいんだな? 両方切り捨てるか」 ホモと高和の言い分。虎鐵がガチで一蹴するが仕方ない。ホモタウロスは滅びるべきである。 しかし今回の一連を収めた記録映像。実に阿鼻叫喚だったが、これが果たしてどこかの誰かの元、しかと残され語り継がれたのかどうか――ここでは語るまい。語るまい。 夏の日に。悪夢の祭は幕を降ろしたのだから。全年齢でした! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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