●斜陽 1999年。それは、ある一つの大きな流れの終焉の年であった。 1999年。7月。ある街。 男は、子供達を見ていた。 玩具店の前である。 子供達は、思い思いの玩具を手に取り、遊んでいた。 たとえば、スタイリッシュになったヨーヨーであり。 たとえば、プラスチック製になったベーゴマであったり。 男は、そんな子供達を見ていた。 思わずため息をつきそうになっていた自分に気づき、慌ててそれを飲み込んだ。 子供達が幸せそうに遊んでいる。それこそ、彼がずっと守り続けていた光景に相違ない。 ただ、そこに自分の居場所が無い事が、少しだけ寂しかった。 とぼとぼと、玩具店を後にする。 老兵は死なず。只去りゆくのみ。 そう残したのは、確か、第二次世界大戦時の、とある米兵だったか。 ――そうであれば、自分もまた、去らねばならぬのか。 男が独り言ちた。 男はリベリスタであり、そして、老兵であった。 十数年前。この世界に初めてその存在が誕生した瞬間から、彼はそれを相棒とし、共に長い長い時を戦い続けてきた。 しばらく歩いていると、公園にたどり着いた。 フラフラと頼りなげに歩きながら、公園に入る。 子供達が遊んでいる。 彼の居場所はここにもない。 疲れ切ったかのように、彼はベンチに座り込んだ。 一つ目の終わりに、皆が去っていった。 彼は去らなかった。相棒を手放す気にはなれなかったし、いつかまた、戦いは始まると信じていた。 そして彼の予感の通り、二度目の時はやってきた。 彼は英雄になった。子供達の憧れ。規範。一度目の時と同じように。 彼は再び戦った。理想の為。子供達の笑顔の為。一度目の時と同じように。 そして、皆が去っていく。一度目の時と同じように。 「寂しいな。そして……無様だ」 不意の言葉に、彼は顔を上げた。 「お前達は……」 現れたのは、三人の男女。 かつて、彼と闘いを繰り広げた敵――フィクサードである。 リーダー格だろう先ほどの声の主が、再び口を開く。 「これが、結果だ。お前の甘っちょろい理想が招いた。お前の理想とした未来に、お前の居場所はない」 嘲笑の色を隠さずに、その男が言う。 「無論、我々の居場所も、もはやない。何もかも無くなってしまった」 しかし、その言葉のどこかに、自嘲と、悲哀の色が含まれているのは気のせいだろうか? 彼らもまた、失ったのだ。 それを知っているからこそ、かつての敵の言葉に、反論する事をしない――いや、出来なかった。 「もうじき全てが終わる。来年には、誰もが俺達の事を忘れるだろう。だから」 男が右手をかざした。 手に何かを持っている。 それは、玩具であり、武器であり、魂であり、誇りであり、友である。 「これは、無意味な戦いだ。どちらが勝っても、何も得られない。失うばかりだ。だが、戦わなければ」 「俺達はきっと、前には進めない」 応えた。 「良い目をする。それでこそだ、ファイター」 ファイター。 そう、彼はファイターと呼ばれていた。 「決めよう、ファイター。そして終わらせよう、二つ目の時の流れを。俺達にはその権利がある」 応じるように、ファイターは右手を掲げた。 手にするものは、玩具であり、武器であり、魂であり、誇りであり、友であり、全てである。 「良いだろう」 その眼に宿るのは炎。 英雄であり、戦士である、彼の闘志だ! 「行くぞ……俺のカイザー!」 きゅわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ(モーター音) ●最近はPROとか電子の歌姫が乗ってるのとか色々でてるらしいですよ。 「プチ四輪、って玩具知ってる? 最近、またブームになりだしたの」 そう言いながら、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、右手で弄んでいた車を模した掌サイズのプラモデルをテーブルに置いた。 これがプチ四輪である。 サイズは実車の概ね三十分の一。 モーターでリアルに走行。 単三電池二本使用。 「私のプチ四輪は《カレイドラビット》。徹底的な軽量化が特徴」 真顔で何を言い出すのか。しかしなるほど、言われてみれば、白いカラーリングに、赤く塗装されたヘッドランプは目を、流線型の二つのリアウイングは耳と、ウサギのそれを思わせる意匠である。《カレイド》はアークの万華鏡から名をとったのだろう。いや、ちょっと待って、これカスタムメイド品なの? 「見てて」 言うや、イヴはカレイドラビットを手に取り、車体底面に取り付けられた起動スイッチをオン。 きゅわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ(モーター音) モーターが力強くギアを、シャフトを、タイヤを回転させる。 そして、車体を接触ギリギリまでテーブルに近づけ、手を離した。 接地した瞬間。カレイドラビットはテーブルを走り抜けた。 なるほど、確かに速い。本物の車並、とは言わないまでも、普通の人間が走って追いつく速度ではないだろう。 カレイドラビットが走り出して数秒、テーブルの終端に差し掛かる。プチ四輪は、ラジコンカーではない、ただ走るだけの玩具である。当然、ブレーキやハンドルのようなものは存在しないので、このままいけば間違いなく転落する。 しかし、イヴは突如右手を掲げるや、 「行きなさい、カレイドラビット!」 などと突然叫んだ。するとどうだ、まるでそれに呼応するかのように、突如としてカレイドラビットは加速した。 そしてテーブルの端に到達するその瞬間。 カレイドラビットは飛んだ! まるで、そこにジャンプ台があったかのように、あるいは跳躍するウサギのように、高く飛び上がったのだ! しかし行く手にはブリーフィングルームの壁がある。このままでは激突し、落下するのは必至。 だが、カレイドラビットは落ちなかった! カレイドラビットのフロントバンパー、左部のリングが壁に接触! その瞬間、リングの回転を利用して車体を強引に180度方向転換! そして今度は後輪を壁に接触、後輪で壁を蹴る形で再度跳躍! 再びテーブルへと着地すると、そのままの勢いでイヴの手元へと疾走! イヴは華麗にカレイドラビットをキャッチ! 「どう?」 いや、どうと言われても。どことなく誇らしげな空気をまとわせつつ言い放つイヴに、状況を全く呑み込めないリベリスタ達は絶句していた。呑み込めるリベリスタ達は、其のテクニックに驚き、やっぱり絶句していた。 「これはカレイドラビットの機体特性を利用したの。極限まで軽量化を施し、あえてダウンフォースの影響を低下させ、意図的に機体を浮かせ、跳躍するテクニック。名付けてラビット・キック」 言われてみればウサギの後ろ足蹴りを彷彿とさせる技だったが――いや、それ以前に、途中でなんか加速してたよね。 「でも、きっとこの技を使っても――ファイターには勝てない。それほどに、彼は偉大だった」 遠い目をしながら、イヴが言った。 さて、ここから真面目な話である。 過去の日本へとつながるリンクチャンネルが発見された。 いや、厳密には過去ではないかもしれない。所謂、平行世界のようなものである可能性もあるのだ。 だが、我々は知っている。 1999年8月18日。R-typeによる大規模災害――ナイトメアダウンが起る事を。 もし。彼の日本が、正しく現在へとつながる過去であるならば。 ナイトメアダウンの悲劇を回避する、千載一遇の好機であり。 もし。彼の日本が、我々と似て異なる世界であるとしても。 その世界の黄昏を見過ごす事など、我々に、アークに出来るはずがないのだ。 そのため、アークはリベリスタ達に命令を発した。 ――《1999年の日本》の調査せよ。また、該当世界のリベリスタ達に接触し、《ナイトメアダウン》発生についての予言を行い、該当世界のリベリスタ達へ邀撃の体制を整えさせよ。 ただし、《直接的な情報を提供してはならない》。 つまり、「自分たちは未来から来た事」や「ナイトメアダウン発生の明確な日時」などの核心的な情報を提供してはならない、という事である。 これは、過剰な過去への干渉による、致命的な歴史改変――たとえば、ナイトメアダウンの発生時期自体が変わってしまうかもしれない――を避ける為である。 そして、過去の、そして現在の運命を左右する、新たな戦いの幕が上がった――。 ここまで真面目な話である。 「ファイターは……プチ四輪誕生の時から、相棒のプチ四輪《カイザー》と共に闘い続けた、伝説のプチ四輪リベリスタだった。彼は、ファイトレースと言うプチ四輪の破壊すら厭わない、いえ、寧ろ破壊を推奨するレースを行うプチ四輪フィクサード達と、プチ四輪と子供達の笑顔を守るために闘ったの」 ちょっと何言っているのかよくわかりませんね。 「1999年。それは、プチ四輪二度目のブームが完全に終わった年なの」 事実、アニメや漫画、公式大会などもその前後の年に終了、同時期に発売された強力な競合玩具に顧客をかっさらわれ、プチ四輪は静かに終わりを迎えている。 「ファイターは1999年以降消息を絶った。おそらく、ナイトメアダウンにプチ四輪と共に立ち向かい、命を落としたと思われる」 熱のこもった口調で語るイヴだが、普通に引退しただけなんじゃないだろうか。と言うか、ミラーミスにプチ四輪で襲い掛かるリベリスタと言うのも中々シュールな絵である。一周回って勇者として讃えてもいいかもしれない。 「本題。《1999年の日本》でファイターの存在を確認したの。プチ四輪フィクサード達にファイトレースを仕掛けられ、闘っている最中。おそらくファイターが勝つとは思うけど、万が一ここでファイターが敗れ、ナイトメアダウンにファイターが参戦出来なければ、リベリスタ側の大きな戦力ダウンは免れないと判断した」 それは凄い判断ミスなんじゃないだろうか。 リアクションに困っているリベリスタ達をよそに、イヴはいくつかの箱を取り出し、テーブルの上に置いた。 「これは、ファイター達も使っている、市販のプチ四輪とは異なる特殊なキット。言うなれば、人造アーティファクトと定義しても差支えのない、強大な力を持ったプチ四輪。私のカレイドラビットもこれをもとに製作したの」 とりあえずアーティファクトって言っておけば何でも許される風潮に疑問を呈したい。 「これを使って、貴方達だけのプチ四輪を作り上げて。もちろん、既に持っているなら、そのプチ四輪で戦ってもらってもいい。お願い、ファイターを、救って」 そう言ってイヴは、深々と頭を下げた。 正直突拍子のない話だらけであったし、ナイトメアダウンにおいてプチ四輪がどれだけ役に立つかは未知数、と言うかほぼ確実に役に立たないと思う。 しかし、イヴの態度からは、真摯にファイターを、そして《1999年の日本》を救いたいという、穢れのない正義の心が確かに見え 「後、重要な話なのだけれど、サインも貰ってきて」 私欲丸出しだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:洗井 落雲 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年08月14日(木)22:25 |
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■メイン参加者 4人■ | |||||
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●プチ四レース1999 開幕 「そのレース……俺たちも参加させてもらっていいかい?」 不意に。声をかけられた。 「君達は……?」 ファイターが声を上げる。 彼に声をかけたのは、四人の男達だった。 「そうだな。通りすがりのプチ四輪リベリスタ、とでも言っておこうか」 「プチ四輪リベリスタか……まだ物好きが残っていたか」 嘲笑うように――しかし、どこか喜びの色を含ませながら――坂本ジロウが言う。 「俺達は構わない。何人こようと、腑抜けたレースをする連中には負けないさ」 その言葉に、ファイターはしばし、考え込むように目を閉じた。そして、 「……わかった。君達の力を、貸してくれ」 そう言った。 ●1stレース! さて、最初に激突したのはこの二人、『疾風怒濤フルメタルセイヴァー』鋼・剛毅(BNE003594)と西郷ゴーキだぁ! ともに重量級のマシン同士の激突、果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか! 「唸れ! 俺のマグナムセイヴァー!!!」 剛毅の力強い叫びと共に、唸り声を上げて進むのは彼のマシン、マグナムセイヴァーだ! さて、ここで彼のマシン解説だ! マグナムセイヴァーは、フルメタルボディのまさに甲冑の如きマシンだ! 重量級のボディは安定性が高く、力強い走りが魅力的! しかも、そのボディには何やら秘密が隠されている模様! さぁ、二台の重量級マシンが突入したのは……廃線となった線路だーっ! 当然地面は荒れ放題! しかし重量級の二人のマシンなら、安定した走行ができるとの判断かぁ!? 「俺のツーンより硬いマシンなんか存在しねぇ!」 おーっと、ゴーキのサッツマツーンがさっそく仕掛けたーっ! 「噛み砕けっ! ツーンバイトォ!!」 サッツマツーンが浮き上がり……マグナムセイヴァーに迫るっ! ああっ! なんという事だっ! マグナムセイヴァー、なすすべもなくサッツマツーンの牙に襲われ……爆発四散してしまったーっ! 大変です、開始早々さっそくのリタイアになるのか!? 「はーっはっはっは! ツーンの牙に噛み砕けねぇもんはねぇ!」 「勝ち誇るのはまだ早いな!」 ああっ! マグナムセイヴァー、まだ健在だ! 一体どうなっているんだぁ!? 「な、なんだ!? くそっ、もう一度だ! ツーン!」 サッツマツーンが再びマグナムセイヴァーを襲う! ツーンの牙は同じようにマグナムセイヴァーを噛み砕いたぁ! 「ふんっ、今度こそ終わり……な、なんだこりゃぁ!?」 あーっとぉ! これはどういう事だぁ!? コース上を無数のマグナムセイヴァーが走っている! 「フハハハハハ! これが俺のマグナムセイヴァーの真の姿だ! マグナムセイヴァーのボディには特殊加工が施してある! マグナムセイヴァーが最高速度に到達する時! 金属粒子が剥離し残像を生み出す!」 なんと! これがマグナムセイヴァーに隠された秘密だったぁーっ! まさに質量を持った残像! 「そ、そんな馬鹿な! くそっ!」 サッツマツーンがマグナムセイヴァーの分身を片っ端から潰していく! しかし、それもすべて無駄な行為だぁっ! 完全に翻弄されているぞぉっ! 「そして、金属粒子がボディから剥離し、軽くなったマグナムセイヴァーは、以前より安定性が欠ける。このオフロードを走るには適さないかもしれない……だが! レールの上は安定している!」 叫ぶと同時に、マグナムセイヴァーがレールの上に飛び乗ったぁ! ぐんぐん速度を増しているぅ! なんと剛毅、車体が軽くなったデメリットの対策をすでにとっていた! そのためのコース選択だーっ! これはぶっちぎり! マグナムセイヴァー、圧勝だぁーっ! ●2ndレース! 「オレは見るからに謎の男・マスクドセンドーシャ!」 え、君『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)だよね? まぁいいや! さて、マスクドセンドーシャの相手はプチ四輪リベリスタの紅一点、ローリィだぁ! さあ、ここでマスクドセンドーシャのマシンを解説しよう! マシン名はプラヌタープレート! 純白と蒼のシャープなボディ、シャーシはタイプⅡシャーシを採用! 軽量化と回転数重視のギア比で徹底的な直線仕様へセッティングされているぞ! さて、マスクドセンドーシャとローリィのマシンは川べりのサイクリングロードへ突入! どこまでも直線の続くこのコースは、マスク……もうSHOGOでもいい? SHOGOにやや有利か!? 「ちょっと! 何で後ろにくっついてくるのよ!」 「ローリィちゃんのマシンの弱点をついてるだけであって下心はないよ!? 後スリップストリームを利用しているだけであって下心はないよ!?」 おーっと、SHOGO、カーリーンシップの必殺技を警戒した作戦だぁ! 決して下心はないぞぉ! どうでもいいが今日はとてもいい風が吹いている! ローリィの服装は特に設定していなかったがミニスカートという事に今決めたぞ! 「そんな事より……思いのこもったプチ四輪を破壊するなんて、そんな事キミのお父さんも望んでいない!」 「い、いきなり何言ってるのよ! そんなわけないじゃない! うちのパパは「プチ四輪で世界とったるんじゃぁ」っていつも言ってるんだから!」 SHOGO、ここでローリィにスリップストリーム対話空間を展開だぁ! 「いやそう言ってるかもしんないけどほんとは違う! 大人は大体勢いでモノ言って引き下がれないんだ!」 痛い所をつく攻撃だーっ! これにはいろんな大人も苦笑いを浮かべているに違いない! 大人は素直になれない生き物なんだ! そしてここでコースはサイクリングロードを抜け……吊り橋に到達だぁ! 吊り橋と言っても、車も通れる、コンクリートとワイヤーで作られた大きな橋だ! そして、ここのワイヤーを通って対岸まで渡らなければならない! 誰だよこんなコース考えた奴! 二台のマシンが……今、突入ぅ! カーリーンシップ、プラヌタープレートの順で走る! 位置的にローリィのスカートの中身が大変ですが、下心はありません! 「ここが決め時……プラヌタープレート! チラリックギャラティーン!」 おーっと! SHOGOのマシンがダウンフォースの力で……なんだこれはーっ! オッサンだ! 寡黙なオッサンのイメージが突如我々の脳裏に浮かび上がったーっ! これがSHOGOの技なのかーっ!? 「パパ!? どうして!?」 ローリィの父親だったーっ! いや、或いは、我々はそれぞれ自分の理想とするオッサンの姿を見ているのかもしれません! 「そんな! ママは死んだって……ええっ、愛想つかして出て行った!? あっ!」 おーっと、ローリィ、何やらオッサンに衝撃的な告白をされバランスを崩してしまったか!? マシンもろとも転落してしまったーっ! ノーマルのコメディシナリオなのにスプラッタ描写かーっ!? 「……!」 「……間に合ったね、大丈夫かい?」 SHOGOだーっ! 間一髪、ローリィの腕をつかんでいたーっ! 「な、何でアンタ……そ、それに私のマシンまで……?」 そう、SHOGOはカーリーンシップも救っている! 「言ったろ? 思いのこもったプチ四輪を破壊するなんて間違ってる、ってさ」 「……分かった。もう、ファイトレースは止める」 ここでローリィ、ファイトレースの引退を表明したぞぉ! 「べ、別にアンタに言われたからじゃないんだからね! 飽きただけなんだから!」 おーっと、ツンデレ! 分かりやすいツンデレだぁ!! ●3rdレース! 「僕はプチ四の競合相手の三二」 ちょっと文字列の形が危ないので、念の為ここで切らせてもらいます! 要するに、当時の競合他社の別製品のプレイヤーだったという事だが、何せ似たような商品なので、そのノウハウはプチ四輪には如何なく応用できるのだ! そして彼の服装を見てくれ! 短パンジーンズ! ポケットの沢山ついたベスト! メーカーのロゴが入ったTシャツ! 更にサンバイザー! コースを変えるためのスティックも装備! まさに完璧! 完全装備だ! 「そう……今の僕はプチ四BOYザキオカ!!」 良い感じのポーズを決める『』岡崎 時生(BNE004545)が迎え撃つは、プチ四輪フィクサードのリーダー格、坂本ジロウだ! 「プチ四BOYか……貴様のマシン、相当手を加えているようだが、所詮俺の敵ではない!」 ニヤリと笑うジロウ! こうやって相手を舐めてかかるのが彼の悪い癖だ! さて、ここでザキオカのマシンを解説するぞ! 名前はザキオカリバー! 剣の様な鋭いボディを持つフルカウルマシンだ! 銃弾の如き直線スピードと音速の如きコーナリング性能、二つを両立させるセッティングの妙は流石プチ四BOY! 肉抜きしたボディの耐久性が不安か!? モーターはきちんと純正品を使っている所もポイント高いぞ! さて、ザキオカとジロウ、二人のマシンは建設途中の高速道路に突入! 無駄に複雑なジャンクションと直線、急カーブで構成されているぞ! マシンセッティングが試される! なんだこの走りにくい道路は! 道路族議員出てこい! 「一気にカタをつけてやろう! ドラゴンズウィップ!」 おおっ、ここでジロウのドラゴンズウィップだ! どうするザキオカ!? あーっとぉ! しかしザキオカ、冷静に手にしたスティックでザキオカリバーの軌道修正だ! ドラゴンズウィップの射程外から無事遠ざかる! 「プチ四輪の精神に反したプレーには負けないよ?」 ザキオカ、不敵に笑う! 君のフェアプレーの精神は確かに受け取った! さて、コースも終盤に近づき、本コース最大の難所の登場だぁ! 距離10mのクレバス(割れ目)が彼らに迫る! 転落すればリタイアは必至! さぁどうする二人とも! 「いっけー! ザキオカリバー! エクスザキオカリバーだ!!!!」 ここでザキオカが叫ぶ! 凄いぞーっ! ザキオカリバー、ダウンフォースで形成された風のフィールドを身にまとい、一気にスピードを上げたぁ! これは凄い! ドラゴンフォースを突き放したぁ! 「馬鹿な! そんな隠し玉を!?」 「切り札は最後まで取っておくものだよ?」 ザキオカリバー、一足先にクレバスに突入! 凄いぞ! 飛んでいる! ザキオカリバーが飛んでいる! 遅れてドラゴンフォースも飛び込んだ! さぁ、この勝負、どちらが勝つか! それとも二人とも奈落の底へまっさかさまかぁ!? おーっと、ザキオカリバー、対岸へ近づいてきたぁ! もう少し、もう少しだぁ! ザキオカ、来るか!? ザキオカがぁ! 対岸にぃ! 来たぁぁぁぁ!! ザキオカリバー、見事飛び越えたぁぁぁぁ!! 「馬鹿な! ドラゴンフォース! 届かない……のか……ッ!」 あーっと、ここでジロウのマシンが転落! これはリタイアだーッ! プチ四BOYザキオカ、見事難所を通り抜けたーっ!! そのテクニックを如何なく発揮した、流石プチ四BOY! 「楽しかったよ、ジロウ君。次はフェアに戦いたいな……ん?」 どうした、アクシデントか!? ザキオカリバーの動きが止まったぞ!? 流石に機体に無理をさせ過ぎたのか!? 「そういう事か……いや、まだだ、もう一度立ち上がれ、ザキオカリバー!」 おーっと、ザキオカが何やら懐から取り出している……電池だぁーっ! どうやら電池切れのようです! ザキオカ、華麗に電池を取り替え戦線復帰だ! と言うか、これでフェイト使って本当に良いんだなッ!? ●4thレース! さぁ、レースもいよいよ佳境に入ったぁ! ゴールも目前だぁ! 先頭を走るのは……『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)だぁ! 続いてプチ四輪ファイター! やや遅れてなんかたくさんいるプチ四輪フィクサード候補生達が続きます! さぁ、ここで快のマシンを解説するぞ! 彼のマシンはガーディアン・アバンティ! そう、世界初のプチ四輪レース専用のマシンとして設計・開発された伝説のマシン、アバンティ! そのカスタム機だ! 軽量クリアパーツのボディに空力を考慮しカウルを拡張! 状況に応じて空力特性を調整可能な可変フロント・リアウイングを装備! 外見上のカスタムだけではなく、レースに合わせてタイヤを変更、ギヤやモーターの慣らしなど、地味ながら重要な調整もしっかりとこなしているぞ! 快のテクニックにより、伝説の名機がここに新たな姿で甦ったぁ! ファイターのマシン、カイザーはアバンティの一世代前の車種! 世代を象徴する二つのマシンが共に肩を並べて走っている! これには全国のプチ四輪ファンたちも心にグッとくるものがあるのではないでしょうか! さぁ、コースは長い直線が続く国道だぁ! ここでは小手先は一切不要! 純粋にレーサーの腕が試される! 車にきをつけてね! よいこは真似しちゃいけないぞ! 「行くぞ、プロトタンカー! 一斉発射だ!」 ここで候補生達が仕掛けたぁ! ダウンフォースで圧縮された空気を撃ち出すアハト・アハトだぁ! 無数に飛びかう空気の弾丸をどう捌く!? 「目には目を。歯には歯を。ダウンフォースにはダウンフォースだ! 行けえっ、ガーディアン・アバンティ! インビンシブル・エア!」 おおっと! ここで快のガーディアン・アバンティが動きます! マシンが空気の層を作り……なんとぉ! プロトタンカーの弾丸を弾き返したぁ! 見えない空気のシールド! まさにガーディアン! ガーディアン・アバンティ、その名に恥じぬ必殺技だぁ! 「ファイター、分かるか? 俺達のプチ四スピリットが……燃える魂が!」 快がファイターに語り掛ける! 『ファイター……俺もかつて子供と共にプチ四輪を作って遊んでいた』 ここには居ない剛毅の声だぁ! 直接我々の心に語り掛けているのか!? これがプチ四輪の力! プチ四輪が生み出した絆の力だぁ! 『そうして、その子供達がプチ四魂を刻んだ大人になる。それがオレ達の本当の仕事なんだ』 そしてSHOGOの声だぁっ! 『プチ四輪は無くならない……僕達は、何も失ったりはしないのさ』 ザキオカも語り掛ける! 「だから! ファイター!」 ここで快のガーディアン・アバンティが……なんだーっ!? マシンから空気が渦を巻いて……こ、これはカタパルトだーっ! 空気によってカタパルトが生み出されたぁっ! いや、もはやこれは空気の道と言うべきかぁ!? 快がファイターを見て頷く! ファイターも快を見て、力強く頷いたぁ! 「飛べ! カイザー!」 ファイターが叫び……カイザーがガーディアン・アバンティのカタパルトを利用して飛翔! さらに速度を上げ……まさに音速の銃弾! プチ四リベリスタ達の魂が! 思いが! カイザーを! ファイターを! 再び羽ばたかせたーっ! そして……ゴーーーーーールッ! カイザー! ゴールに到達! この勝負、ファイター……いや! プチ四輪リベリスタ軍団の勝利だーっ!! ●プチ四レース1999 閉幕 「そういえばすっかり忘れていたのだが」 唐突に剛毅が声を上げた。 レース終了後の公園である。 ファイターからサインをもらってほくほく顔の一同だったが、その声を聴き、ふと重要な事を思い出した。 一同すっかり忘れていたのだが、そもそも、これはナイトメアダウンの予知がメインの任務だった。 そういうわけで、かいつまんで身近に迫る危機を説明した。 「そうか。俺の闘いは、まだ終わっていないんだな」 リベリスタ達の言葉にファイターは疑いもせず、そう言った。 普通ならば、突拍子もない予言など信じるわけがないのだが、ここまで熱くプチ四輪バトルを繰り広げた、いわば戦友ともいえる仲。嘘か真か等、目を見ればわかる。 「ありがとう。俺は――取り残されてしまうのが怖かったんだ。だが、君達の様に、まだ熱いプチ四輪スピリットを持つ仲間たちが居る」 ファイターの顔は、さわやかな笑顔に彩られていた。 「そして、またいつかの未来でプチ四輪で遊ぶ子供たちのために……俺は戦い続けるよ」 迷いも、愁いも、もう彼にはなかった。 英雄と呼ばれた男。ファイターと呼ばれた男の、それが真の姿だ。 「次の戦いとやら……当然、俺達も参加させてもらうぞ」 不意に声が上がった。坂本ジロウ以下プチ四輪フィクサード達が、そこにいた。 「来るな、とは言わせんぞ。ファイター。俺達もまた、プチ四輪を愛する者。それがプチ四輪の危機ならば、主義主張など二の次だ。それに」 坂本ジロウはリベリスタ達を見渡してから、 「お前達に負けっぱなしと言うのも気に入らん。再戦の場を潰されてたまるか」 もはやこの場には、年齢も性別も、時代の垣根すら存在しなかった。 プチ四輪と言う絆で結ばれた、友情だけがあった。仲間達だけがあった。 「また会おう……友よ」 ファイターはそう言って、踵を返す。 ジロウ達が後に続いた。 彼らに向けて、快が笑いながら言った。 「次は俺達のホームでやろうぜ」 ファイターは振り返らなかった。しかし、力強く掲げたサムズアップで、再戦を誓ったのだ。 夕日を背にして、ファイター達は去っていく。次のレースが、彼らを待っているのだ! 負けるなファイター! 戦えファイター! 子供達が、笑顔でプチ四輪を遊べる世界を守るため! ……なんかイイ話風に終わらせたけど、君たち、玩具持った集団を死地に送り込んだだけだからな? |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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