●承前 「面白い事、無いかなぁ」 ――あったらとっくにしてるYOネ! 「俺様ちゃん、色々考えてみたんだけどNE。 最近ちょっとマンネリ系。スッゴイ大きなドカンと花火! 一二三ちゃんみたいなの色々考えてる所なの。 俺様ちゃん史上最強最大、乗るしかないビッグウェーブに!」 ――付き合いも長いけど、それはかなり楽しみだNE! 「ところで、狂ちゃん」 ――何だい、My Friend? 「狂ちゃんって有名人の作ったアーティファクトなんでしょ? 俺様ちゃんと会う前は『失敗作』扱いだったって言ってたけど」 ――そーだねぇ。ウィルモフ・ペリーシュっていう世界一性格の悪いおっさんに作られたねぇ。 ボクが失敗作なら、お前も人間の失敗作だってのな! 「波長が合うアーティファクトは本来以上の性能を発揮する……そういう意味じゃ二人はヨミ★ツジ! ……って感じだけど。お友達にはどんなの居たのさ!」 ――ヒドイ!? 浮気!? 俺、もう飽きられた!? 「イヤイヤイヤ。ただちょっとアイデアになるかなーって」 ――みーんないい性格してるのばっかだNE。たまには『マシ』なのも居たけど……基本的には最悪! 俺ちゃんかなり善良な方だと思うよ、実際! 「ふぅん」 ――でもアレかな。知ってる限り一番性格の悪いヤツ。 「興味あるなぁ」 ――目隠しヒーローショウ―― |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ リクエストシナリオ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年08月01日(金)22:33 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●死ニ到ル呪イI 影法師の遊ぶ夕暮れの工事現場に九人の若者達が居る。 向かい合うのは一人の男と、八人の男女だ。 彼我は、たっぷり数メートル以上の距離を置いている。その距離に冷静に、慎重な配慮を見せるかのような空気が滲む様は、互いの関係性を測るには十分と言えるだろうか。双方には強い敵意や悪感情は見受けられない。しかし、剣呑でないと言えば間違いなのが――難しい。 「リベリスタ、新城拓真。野崎健司だな? 時間を頂きたい」 突き刺すような緊張感を孕んだ 『誠の双剣』新城・拓真(BNE000644)の言葉に、彼等リベリスタ達と向かい合う『一人のほう』――此方もリベリスタである野崎健司が頷いた。 野崎の頭には夕日よりも赤い――燃えるようなバンダナが巻かれていた。 「……俺はアークの楠神風斗といいます」 「野崎健司……知ってるみたいだけど」 苦笑混じりに応えた野崎に『不滅の剣』楠神 風斗(BNE001434)が同じ表情を返した。 「それなら……用件も想像がつくかも知れませんけど」。直情径行で極めて正義感の強い彼は喜怒哀楽を隠さない気持ちのいい男である。そんな彼の表情が酷く冴えないのは目の前の人物が自分に似た――共感と尊敬を持てる人物だからだ。 「貴方の持つバンダナを回収に来ました。それを渡していただけないでしょうか」 拓真、風斗をはじめとした八人のリベリスタ達の任務は、野崎の持つアーティファクト『目隠しヒーローショウ』の回収であった。 「貴方が手にしている『それ』が必要なの。譲って頂けないかしら?」 小首を傾げた『揺蕩う想い』シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)に『何か』の視線が向いた。 かの『黒い太陽』の手によって生み出されたというそのバンダナは、強い正義を持つ人間に無限の力を与えるアーティファクトだ。しかし、彼が作り出したものに素直な祝福等というものはない。 バンダナは力の行使の代償に持ち主の運命を喰らい続ける。その上、その力で救われた者は必ず非業の破滅を遂げるのだ。百パーセントの善意、意志を持った人間にしか扱えないのに、決してそれを省みる事は無い。性質の悪いのは毎回の話だが、今回は特にリベリスタ達にとっては『痛い』。 「貴方がそれを渡してくれれば、多くの命を救うことができるんです。どうか協力していただけないでしょうか?」 「……俺はコレの力で多くを救ってきた心算だ。 君達が『アーク』ならば――これに頼らなくても結果を出せている筈だろう。 ……俺は、悔しいが君達ほどには強くないんだ」 想定された断りの文句に風斗は僅かに呼吸を漏らした。 もし、野崎にもっと大きな力があったならば。 否、その大いなる力が無かったとしても――『唯一人の恋人を救う程度、ささやかなる奇跡』に愛されていたならば。 余りに詮無い。『それ』はあんなにも甘そうなのに――手を伸ばせば届きそうにさえ思えるのに。 (決して、応えられる事は無いんだ) 確信の上に確信を塗り固めたような声で『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は瞑目した。 (俺達と野崎は。その在り方が、見ている理想が近すぎるんだ。 だからこそ。止めてやらなきゃいけない。己が身に巣食う怪物が、呪いが。彼を喰らい破るその前に!) 『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)は言う。 「君がそのアーティファクトを手放したくない気持ちはわかる……つもりだよ。 僕だって君と同じ立場だったらそうしただろうしね」 「……ああ、そうだ。仮にノーフェイスになったとしても、俺はこの世界を壊して生き永らえる心算は無い。 だから、頼む。放っておいてくれないか」 アークの要求とそれに対しての断りは、場の緊張感を俄かに強めていた。 平素の野崎ならば、アークの要請ならば――喜んで協力してくれるのだろうが。彼個人の持つ筆舌尽し難い無力感に、アーティファクトの呪いが加わったならば、状況は言うまでも無く重過ぎる。 「……もし、『それだけ』なら僕は君にそれを手放せとは言わなかった。 でも、どうしても手放さなければならない理由がある。それを今は――言えないけど」 視界の中で構えを取った野崎に悠里は告げる。 通り一遍に言葉を紡いでも、『目隠しヒーローショウ』の呪いを受けた野崎は受け入れまい。いや、それ以上に。残酷な事実を彼に真っ直ぐぶつける事が正義だとはこの場の誰も思えなかったのだ。 (恋人を亡くして。『誰かを救う』事だけが残されたたった一つの心の拠り所なんて…… なぁ、お前――なんで、なんで僕みたいなんだよ……) 敢えて武装を用意しなかった『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)である。自身の視界を滲ませる『思い出』の正体は敢えて語るまでもない。 「……大丈夫だ」 「分かってる……でも、サンキュ」 多くを語らず、自身の肩に手を置いた 『縞パンマイスター竜』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)に唇を引き結んだ夏栖斗が小さく頷いた。 「俺は結城竜一だ。君のバンダナの事を聞いてきた。勝負しよう、野崎健司。 そっちが勝てば、この”幾星霜ノ星辰ヲ越エシ輝キヲ以ッシテ原初ノ混沌ヲ内に封ジ留メシ骸布”をやろう。俺の戦いを支えてきた――相棒を。俺が勝ったらそいつを貰う。お前になら分かるはずだ。俺にも大事な恋人がいる。それを守る力が必要なんだと」 「俺は素手でいい。殺し合う心算は無い」。言う竜一に野崎の表情が歪んだ。 やり直しが効かないのは野崎だけでは無い。夏栖斗だけではない。 だが――『やり直さなくても目の前の現実はまだ止められる位置にいる』。 濃度を増した剣呑の空気に小さく嘆息したのは、やり取りを聞いていたシュスタイナだ。 「身に余る力は、巡り巡って最後には自身を滅ぼすわ。 けれど……一度手にした『力』を簡単に手放すひとはそういないわよね」 少女の言葉は年不相応の諦念を帯びていた。 薄い唇の端に疲れた笑みを乗せた彼女は、しかして態度程に達観した人間ではない。 「『倒して奪い取れ』なら簡単なのに、面倒ねぇ……」 額面通りに受け取れば酷薄な彼女の言葉は、『難しい』少女の表情と併せれば別の色を覗かせる。 シュスタイナ・ショーゼットが誰の妹なのかを考えれば、簡単な話と言えるのだが―― ●死ニ到ル呪イII 「分かって欲しい、野崎さん! 俺達は――」 「放っておいてくれと言っただろう!?」 間合いを詰めた風斗から逃れるように野崎は強い声を張った。 「貴方の願いは『誰かを護ること』じゃないのか。 それとも、『自分が誰かを助けて気分よくなりたい』だけなのか――!」 決して本意ではない風斗の言葉は、野崎だけではなく自身をも傷付ける鉄の茨のようなものだ。 「今、貴方は何のために戦っている。何を護ろうとしている。誰かの命? アーティファクト? 己のプライド? 力が足りないために犠牲を出してしまうのは、辛い。 けど、力を得るために犠牲を出すのは、本末転倒じゃないのか。どう思う、野崎さんッ……!」 野崎の目に何とも言えない強い感情の揺らぎが浮いていた。 ――要するに、だ。健司クン。この人達、キミの気持ちが分からない訳よ。 タイミング良く周囲に響く軽薄な声にリベリスタの表情が歪んだ。 ――だって、そーでしょ? この人達、『あの』アークだよ? 今をときめくリベリスタ界のスーパースター。主流七派をやっつけて、世界最強のバロックナイツも、『ヴァチカン』も一目置く。そんな人達なんだもの。ねぇ、分かる? 分かる訳ないじゃん。 フツーのリベリスタがどんな気持ちで――どんな風に戦ってるかなんてさ! 設楽悠里には分からないヨ? 新城拓真には分からないサ。 霧島俊介に、楠木風斗に――御厨夏栖斗に分かると思う? ホントーにあの新田快とか、結城竜一がキミの気持ちを理解してくれるのかなァ。 お嬢サン――シュスタイナちゃんさえキミよりずっと強いのに! 一先ず不可避になった『戦闘』は小競り合いの様相を呈していた。 やはり、野崎を攻めたくは無いリベリスタの動きは殺傷を目的にしていない。それは野崎も同じ事。 (痛い所を突くよなぁ……!) 歯噛みした『真夜中の太陽』霧島 俊介(BNE000082)は饒舌なアーティファクトの『妨害』を最初から半ば想定していた。 「性格が悪いのは持ち主に対しても、俺らに対しても公平だろうってな……!」 万が一にもこの任務を失敗したくなかった面々は志願で集まった強力な面子だが、これは所有者の心を巧妙に誘導する『目隠しヒーローショウ』にとっては格好の的になったらしい。 ――持ってる人に持ってない人の気持ちは分からないよねェ。 キミの自己満足さえ、許そうとはしない。口じゃなんと言っても傲慢サ。ねぇ、健司クン! 「……ちょーっと静かにしてくれないかな!」 俊介も元よりこの物語に完全なハッピーエンドが無い事は分かっている。或いはそれが声高に語る事実とやらは、或る一面においては正鵠を射抜いているのかも知れない。力ある自分達が奢っていないとは言い切れない。だが。 (今は、如何に彼を生かすかだけを考える……! 生きてさえくれれば――奇跡は起こるかも知れないから……!) 健司の逃走だけは許さじと回り込んだ俊介がその双眸に意志を乗せた。 「悪いけど、手加減なんてできないわよ! 誰か適当にストップかけて頂戴!」 「申し訳ないけど――叩かせて貰う……!」 可憐なシュスタイナの一声が、その外見を裏切るような大魔術の呼び声となる。 降り注ぐ星の弾丸の間を悠里が縮地の歩法で駆け抜ける。 素晴らしい踏み込みから繰り出された零距離での打ち込みが野崎の鳩尾に吸い込まれる。 唸る冷気を振り払い、飛び退いた野崎は――しかし痛打にも倒れる気配は無い。 「やり直しなんて出来ない。過去は変えられない。それでも、これから何かをする事は出来るんだ!」 「そんなものに頼らなくても」。街一つを潰した――そう思っている彼が、こうして戦い続けているのはそう信じているからだ。投げかけた言葉は彼のみを対象にしてはいない。 「君の立場ならそれを迷わず使っただろうけど…… 真実を知っている僕の立場なら、君は絶対にそれを使わない。それはそういう類のものなんだ!」 ――上手いやり方だなア。そうやって惑わして全部取り上げるんだネ。 「あくまで邪魔するなら――ッ!」 「……っく!」 圧力を増した野崎の気配が破壊的な一撃を形作る。 その一閃は迷いを秘めており、それ程の鋭さを持っていなかったが――夏栖斗が防御姿勢でこれを受け止められたのは大いにその所為だったと言えるだろう。 「僕は――君の話を聞きに来たんだ」 その膂力で辛うじて野崎を跳ね返した夏栖斗が言う。 「僕には全然分からない。 ねぇ、どこまで、何をどうしたら人を救ったってことになるんだろうね。 僕にもわかんないからさ、聞いてみたかった――」 余りにも詮無いその問い掛けに空気が緩む。 誰も答えを持ち合わせない難題は、人の領域ならぬ神の領域の設問だ。 「だが、出来る事をするしかない――俺達は、どれだけ無力だったとしても……!」 姿勢を低くした拓真が伸び上がるようにその剣を閃かせた。 硬い金属音を噛み合わせた彼は、『益々スピードを増した』野崎にその表情を引き締めた。 「やめろ! 誰の為に止めようとしてると思ってるんだ! 君の為じゃない!僕の守りたい人達の為だ!君の守りたい人達の為だ!」 「貴方の運命を吸って力に変えているのよ、そいつ。死にたいの……!?」 口々に言う悠里とシュスタイナに野崎が応えた。 「死にたくなんてない、だが――」 「死にたくないなら、生きればいいのよ!」 目を見開いたシュスタイナが声を張る。 「ここで戦って死ねばもうだれも救えないわ。戦う相手を間違えないで! 私達は――敵じゃないッ!」 ――でも、キミから力は取り上げるよネ。 「煩い」と唸るシュスタイナの顔が機嫌の悪い猫を思わせた。 「自分こそが、誰かを助けなければならない。 そうでなければ意味が無い、例え、その命を削ってでも…俺もそう考えていた時期はあったさ。 だが、それは他人を理由に終わりに向かっていく緩やかな自殺に過ぎない。 俺は――俺は、死にたくはない。そして、お前にも他の誰にも死んで欲しくはないんだ……!」 もう一連繰り出された切っ先が野崎の服を掠り、斬り飛ばす。 理想に溺れ、孤高に挑み――戦い続けた彼の吐露した一言は、強くなった今の彼を証明するものだ。 捨て鉢に命を扱う事は決して強さではない、迷わぬ彼の技は『目隠しをしたヒーロー』を上回っていた。 「……でも、それでも……!」 「『俺達はリベリスタだった』――だろ?」 「――ッ!?」 竜一の拳が野崎の顔面を捉えた。 「……この……ッ!」 反撃が今度は竜一の顔面を撃ち抜いた。 「そーだよ。そんなもんだ」 血をペッと吐き出した竜一が不器用に笑う。 「その拳はお前のモンだろ。バンダナが、殴ってる訳じゃねぇ」 この戦いは野崎を止め、救う為のもの。 そして――他ならぬリベリスタ自身を泥の沼から引き上げる贖罪に違いない。 言葉を紡ぐ程に傷付くのは、痛みを背負うのは彼も我も同じである。 「……少し、話をしようか」 快の言葉が重く響いた。 「沈もうとしている二隻の船がある。君は時間や道具の制約から片方しか助けられない。 一隻には二百人が乗っている。もう一隻には百人と君の大切な人が乗っている。 野崎さんは――どちらを助ける?」 彼の言葉はかつて自分自身に自問した呪いに他ならない。 故に彼は野崎健司なるリベリスタから返される答えを『知っていた』。 「決まってる。『どちらも助ける』んだ」 「分かってたよ。その答えは。 そこに正解なんてない。あるのは、誰をも救いたいという願いだけ。 でも、人は神にはなれない。何時か必ず行き詰まる、何時か必ず失われる……もう一度言うけどそんな理想は破綻している」 荒涼とした現場に黄昏時の空気が積もる。気付けば誰もがその刃を下げていた。 「その理想の限界、『理想という名の死神』を突き付けられて、君はどうする? 君はそのバンダナで全てを救ってきたつもりでも。守るってことは、必然的に誰かを選び続けている。 選ばれてなかった誰かは必ず居る。君が一人である以上、その手の長さは限られている。 本当に君が多くを救いたいと願うなら――なぜ、そのバンダナの力を一人で背負い込もうとするんだ? 例えば何故、その力を最大限に活用できる人に、バンダナを貸そうとしなかった?」 「俺は……」 先の無い言葉に野崎は小さく頭を振った。 復讐心は、無力感は、劣等感は燃え盛る炎のようだった。 誰かを救いたかったその気持ちに偽りは無かったが――『救いたかったのは他人だけではない』。 野崎健司は自分自身をも救いたかったのだ。理想の鎖に雁字搦めにされた、リベリスタ自身さえも。 「……俺たちは理想を共有できる。一人が背負い込むのではなく、皆で理想を目指せばいい。 その死神はもう、勝てない相手じゃない」 快の言葉に面々は頷いた。野崎はその一人一人に視線を送る。 何れも見知らぬ顔だ。友人ではない。知人ですらない。だが、本気で自分を止めている。 「……俺は、罪を犯したんだろうか?」 冷静を取り戻した野崎に風斗は首を振った。 「貴方は間違っていない」 一分の迷いも無く悠里は言い切った。 「誰が君の事を責められるんだ。君はただ、助けたかっただけなんだ。 その想いは、行いは、決して間違いなんかじゃない。間違いなんて、言わせない」 静かに夏栖斗は伝えた。 「取り戻せない失敗は僕らにだって沢山、数え切れないほどにあるよ 僕だってそうだ。だけど、その失敗に対して真摯に向き合うなら――まだ君は死んじゃいけない。死んで逃げるなんて、そっちの方ができねぇはずだ。 一人じゃ折れるかもだけど、仲間がいたらどう? 僕達は君を支えることなら出来るんだ」 野崎の問い掛けは、彼の抱いた呪いの終焉を意味していると言える。 「あげるわ。アーティファクトの代わりにはならないけれど。これから『自分の力』多くの人をで救っていくであろう『ヒーロー』の事。覚えとくから」 シュスタイナが「世話が焼けるわ」なんて言いながらハンカチを差し出した。 ――ソーダネー。カンドーダネー^^; 冷め切った調子の合いの手に俊介が笑顔で言った。 「目隠しとやら。十分、はしゃいだだろ? 俺らが来た時点で詰みやねん。これが最後のお前の悪戯やな」 ――僕を手放したら、野崎クンは大変だと思うケド? 「……もし、お前が野崎を解放してくれるなら――回収で済ませてやる」 俊介の提案は命脈がほぼ尽きた『目隠しヒーローショウ』との交渉だった。 もし、それが野崎に破滅を突き付けずに済むのなら…… ――やなこった、そんなのつまらな―― 「ありがとう」 『目隠しヒーローショウ』を遮ったのは他ならない野崎の声だった。 俊介を真っ直ぐに見た彼は、真摯な顔で彼に言う。 「……でも、そこにどんな真実があったとしても。俺は負けないから」 「そっか」 「俺は、俺が犯した『罪』と一緒に生きていく。これまでも、これからも」 「賭けにもならなかったや」 破顔した俊介の視界の中で野崎は赤いバンダナを外して宙に放り投げた。 彼の頭の中、濁流のように滑り込むのは『ただの事実』だ。 その目に涙を溜めながら、絶叫めいた嗚咽と共に『弱き力』を一閃した野崎健司は―― 「……ありがとう」 ――目隠しを取って、彼等と同じ英雄(リベリスタ)になる。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|