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胸中の「人」の直下を穿て!


 ある程度以上大きな彫像には、「夜中に動く」という噂が付き物だ。
 もしも、ここまで世界が崩れていなければ、この像もまっとうな像のまま最後の日が迎えられたかもしれない。
 しかし、それは革醒してしまった。
 そう。深夜の公園から、こんな音が聞こえてくるようになったのだ。
 ずしん、ずしん、ずしん。
 たゆん、たゆん、たゆ~ん。

「公園のおっきな女性像は、深夜に公園の芝生地帯をスキップしながら散歩するらしい。その証拠につま先が草と泥で汚れている」


「小僧なら、鼻血拭いて倒れたぁ」
 ブリーフィングルームに行ってみると、『死ぬなら戦死以外』曽田七緒(nBNE000201)は、三角ビキニだった。
「レクチャーしてたらさぁ。こう、ぱぷーっと」
 放物線を描く指がやたらとなまめかしい。
「という訳でぇ、この依頼の説明はぁ、あたしがやることになっちゃったぁ」
 よぉろしくねぇ? と、先日めでたくアラサーになった七緒さんは、にやぁっと笑った。
 乳は、相変わらずロケットだった。


「ゴーレム。なんだってぇ。でっかい大理石像」
 あ、これか。と、モニター操作している。けっこう楽しそうだ。
 現れたのは、身長にして4メートル。もっとでかいなら死角もでかいのに、このサイズだとスピードもパワーも向こうが上で、隙が少ない。
 実は、この微妙なサイズが一番倒しにくい。
「でぇ、これをぶっ壊してきてほしいらしいんだけどぉ。弱点がこんなでっかいんだけど、一箇所しかないのねぇ」
 で、場所がぁ。と言いつつ、七緒はブレストの横に手に当てた。
 むにっ。おっと、今ならカードも落ちない。
「こう谷間の下でこう別れるでしょお?」
 そうですね。
 どこぞのフォーチュナが鼻血出したのも判る気がします。
「でぇ、ブラとそこの隙間に三角っぽい隙間が出来るじゃない」
 分かりましたから、指突っ込んで指し示すのやめて下さい。
「ちゃんと見なさいよぉ。野郎の雄ッパイじゃ再現は無理なんだからぁ」
 女子でも出来る人は少ないと思います!
「ここね。弱点。あたしここまでがんばったわけだからぁ、間違えたらぁ、後ろからぁ、ナイアガラだぞ?」
 ワカリマシタ。
「それから、エリューション現象で、石じゃなくってなんか柔らかくなってんだって。だから、たゆんたゆんだって」
 たゆんたゆんですか。
「たゆんたゆんのゆっさゆっさだから、うまく狙わないと別のとこに当たるよ。わかのところにあたると、ぱいーんと跳ね返されるから」
 ぱいーんですか。弾力に富んでそうですね。
「ちなみに、サンプル採取班として、あたしも皮剥ぎに行くからぁ。やらかしたら制裁ねぇ?」
 クリミナルスタア的に、落とし前という。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:田奈アガサ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年07月22日(火)23:08
 田奈じゃありません。
 たながっさーです。
「田奈・ネタ・ノーマル」の時間がやってまいりました。
 きちんと戦わなくてはいけませんが、ネタに乗らないと空気と化します。
 タイトルどおり、お胸の「人」の直下を穿つと楽なお仕事です。
 今回、世にも珍しい「石像の皮」を採取に七緒さんも同行します。

E・ゴーレム「魅惑のご婦人」
*胸元がけしからん元大理石像。美人でぐらまぁ。
*夜中にスキップします。一般人が踏まれたらもちろん死にます。 
*大体四メートル。 
*弱点は底辺10センチの正三角形ですが、相手はスキップしている上に、わがままな推定Iカップが上下左右、魅惑の三次元的に暴れまくりますので、弱点部分の回避は非常に高いです。ここに当たるとBS・致命が自動的につきます。
*それ以外のところは普通に当たります。ですが、非常に効果は薄く、弱点部分の5%にしかなりません。
*なるたけ壊れている部分が少ないと、七緒さんが喜びます。

場所・某県某市・某公園
 *深夜です。
 *大人の都合で何があっても目をつぶってもらえますので、人目を気にすることはありません。
 芝生の真ん中に設置されてますので、周囲は20メートル四方以上あります。
 足元は、安定。ただし、明かりはないです。

*NPC・曽田七緒
 *クリスタです。
 *フィンガーバレットも使えます。縦型ピーラーも使えます。
 *作戦考えるのメンドクサイので、相談板の一番上の指示を素直に聞きます。
参加NPC
曽田 七緒 (nBNE000201)
 


■メイン参加者 8人■
アウトサイドナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
メタルフレームナイトクリーク
ジェイド・I・キタムラ(BNE000838)
ジーニアスクロスイージス
内薙・智夫(BNE001581)
アウトサイドスターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
フライダークナイトクリーク
月杜・とら(BNE002285)
アウトサイドスターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)
アウトサイドスターサジタリー
ブレス・ダブルクロス(BNE003169)
ジーニアスソードミラージュ
佐藤 遥(BNE004487)


 ずずん、ずずん、ずずん、ずずんっ!
 身長4メートルの女性像が、足元も軽やかにスキップしている。
 音が軽やかではないのは、大理石なので仕方ない。
 いかなる神秘の御業か、柔らかな肉と同じような動きをとる。
 ロケットIカップが、四方八方前後左右、つきたてのおもちをジャイアントスイング・二連で。ノーブラヤッホー。荒ぶるプロペラ状態。
 こんな状態で、一体弱点を貫けるのか。
 ヤブ蚊に貫かれながら、リベリスタはしばし言葉を失くした。
「すっごいおっぱい」
『死因は戦死以外』曽田 七緒(nBNE000201)は、文字通り大理石の肌から目を放さない。
「……いやしかし、思い切り揺れてんなァ」
『チープクォート』ジェイド・I・キタムラ(BNE000838)は、半笑いを浮かべている。
「あいつあんなに揺らして痛くないのかな。なんか見てる俺様の方が痛くなってきた……」
『銀狼のオクルス』草臥 木蓮(BNE002229)は、顔をしかめた。
「石の皮ってどんな感じかなぁ……」
 最後尾で魔女のように笑う七緒の笑い声だけが聞こえてくるが、振り返っちゃだめだ。塩の柱になる。
「狙撃の腕を試す事が出来るからであって、他意はない。ないのだ。」
『八咫烏』雑賀 龍治(BNE002797)が、見た目相応の歳なら、「黙れ、小僧」と一喝されるのが関の山なのだが、婚約者様ご同行な辺り、きたねえなさすがおっさんきたねえ。
「出来るだけ死人が出ないような仕事を選ぼうって思ったんだよ、な? 別に他意は無いんだ」
 ジェイドは、「人」 の意味に気づくのが遅れたと毒づいている。
 期せずして、同じ台詞をはくことになった二人。特に『常套句』を二つ名に持つジェイド的には、頭をかきむしりたくなる事態だ。
「そりゃあ女っ気の無い生活してるけどよ。嫁も彼女も居ねえがよ」
 とか言ってるけど、フラグは立ってんだぜ、この中年。
「――だってさ。龍治」
 木蓮は、笑顔だ。
「他意はないんだッ!」
 ブルンブルンしたのが近づいてきてるが、「誤解」 は解いておかねば。
「分かるよ。スターサジタリーとして気になる案件だもんね」
 女子の鷹揚。
「そうなんだっ!」
 おっさんの必死。
「誰かが問いました。『なぜ、あなたは山に登りたいのか』 と」
『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)が、オーバーハングしている壁を見上げて言った。
「誰かは答えました。『そこにおっぱいがあるから』 と」
 開発しなくてはいけない強迫観念に襲われるBGMが脳の底から聞こえてくる。
「美人でぐらまぁだと?! これがE・ゴーレムじゃなくてアザーバイドなら是非ともお近づきになりたかったぜ!!」
 おっさんにはまだ早いお年頃、『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)の正直な所見に僕らは思わず涙する。
 おっさんの主張、台無し。
「えーっとドコ狙えば良かったんだっけ? 七緒さん、もう一回実演して☆」
 月杜・とら(BNE002285)の、もう一回、もう一回のシュプレヒコールに、七緒はにべもなく「メンドクサイ」 と答えた。
「『いいです、あの、ワカリマシタからけっこうです』 とか言うウブいのをカラカウから楽しいんであって、待ち受けられたら興醒めでしょお? そこんとこわかってほしい訳ぇ」
 わかったぁ? と、ブレスに、七緒は剣呑な笑顔を向ける。
 ブリーフィングルームで「もう一回」 をかましたのは、七緒の記憶に新しい。そして、大抵のことを普段思い出しはしないが、いつまでも覚えている。
「――みぞおちであって欲しかったなぁ」
『ニケー(勝利の翼齎す者)』内薙・智夫(BNE001581) が、鼻をすすり上げた。
 でも、そんなことはなかったぜ。反語。

「……あ、曽田さんバスタオルどうぞ身体冷やすといけない。後ちゃんと食事取ってますか一応ゼリー飲料を買って来たので――」
 ごそごそと荷物を探るウサギは、曽田七緒生活向上委員会有志である。
「え~、あっついよ」
 三角ビキニでは捕まると、申し訳程度に腹の上部を隠している布がある。2014年のトレンドはへそ出しなのだ。これはキャミソールです。
「――おなか冷えそうですよ」
「大丈夫よぉ」
 実は、七緒さん、腹筋浮き出し系女子だ。
「だよねぇ」
 おなじく、腹筋浮き出し系女子、『無銘』佐藤 遥(BNE004487)がうんうんと頷いた。
 色気ありすぎ腹出しと、色気ほのかな脇ちら。
 アークは、いい職場だなぁ。
 さ! そんな訳で頑張りましょうか!



「前衛同士声をかけ合って敵を囲む陣形を作り、公園外へ逃げぬようブロックするね」
 戦闘となると、途端にきりっとするのが智夫のいいところ。
「正面の人が集中攻撃されぬよう、移動後行動も使って正面に立つ人は順次入れ替わるよ」
 は~い。と皆がいいお返事をし、それぞれ最適と思われる位置取りをしたところ。 
「え? 僕が最初に正面担当?」
 滝のような汗が背筋を伝う。ひゃっこい。
 どっしんどっしん接近してくる自分の身長の二倍以上ということは、三次元的に8倍。しかも大理石製。
(πタッチ出来て嬉しいかって? その前に潰されちゃう!)
「たゆんたゆんの胸の、ムニっと重なり合ったその間の、下のそのムッチリした『人』の形した所の三角形!」
 うさぎは横から、低空飛行。
「見落とさない為にも基準となる胸は凝視しませんとね。凝視しませんとね!」
 攻撃位置を見定めているだけです。何の問題もありませんよ!
 その頭上を、ブレスの銃弾が通り過ぎて、魅惑の急所に一直線。
(これは直撃は期待してない。当たり具合からどれ位集中が必要かを考える試射みたいなもんさ)
 それを上から下に荒ぶるおっぱいが軌道をずらした。
「――へえ」 
 ブレスの針穴通しがまともに当たらないのは、きわめてまれだ。
 おっぱいブロックは、その場にいたスターサジタリーのハートに火をつけた。
「敵の体を登れば潰されない?!」
 智夫の呟きは半疑問系な時点でもうだめだ。というか、自分の二つ名の由来を忘れている時点でもうだめだ。
 背中でピコピコしてるちっちゃい翼は何のため!?
 じゃーんぷ。あーんど、ほーるど!
「――大きい」
 大の字に張り付いている様は、ニホンザルの子供のよう。あるいはセミ。
「こんなに大きいのでしたら――」
 智夫君のリアクションは、ちょっと斜め上っていた。
「少しくらい分けて貰えると嬉しいんですけど……?」
 ダークナイトもびっくりなおどろ線と効果音を発しながら、声を絞り出すのは。
「ミラクルナイチンゲールじゃん!」
 とらが、智夫の又の名を呼んだ。
 男子が乳を分けてもらってどうするというのだ。ただでさえ、最近ポチャ気味なのに。
「大きな胸を見ても、羨ましがったりしないのがミラクルナイチンゲールの務めですよ? ええ」
 怨み節。
「いいから離れて下さいユーキャンフライ! 風穴開けられちゃいますよ!?」
 冷静に飛んでるうさぎが、わくわくしながら標準をあわせているスターサジタリー及びレッツ飛び道具な方々を指差す。
「わかってます。けれど、やらねばならないことがあります!」   
 ミラクルナイチンゲールの指先から、呪いの氷が染み出してくる。
 おっぱいが上方に振りあがったのを見計らい、問題の部分に氷に指先が触れた。
 ピキキ! わずかな氷結だったが、確かに氷がその部分に残り、夜目に輝き、目標を際立たせている。
 やり遂げた次の瞬間、上から振り下ろされたおっぱいのツープラトンメガトンハンマーにより、智夫は地面に叩きつけられた。
「この大きさですし……うっかり胸に攻撃が当たって無くなっちゃっても不可抗力ですよね……?」
 逆恨みの一撃。
 
 火縄銃の引き金が絞られる。
 巨大な乳房が立ちはだかろうとも、跳ね返る弾が正鵠を射抜く。
 ぶち抜くためだけに生きている男の真骨頂である。代償に何を払っているのだろう。
 それでも、本来なら四散するべき大理石が未だ健在。威力が足りない。
(とにかく、狙いを定めて撃てば良いのだ。やる事は何時もと変わらんのだから。造形がああなだけで、ただの的である事には違いない。的を狙う事など、これまで数限りなく行ってきたではないか)
 無意識のうちに自分を鼓舞している時点で平常心ではないのに、自分で気がついていないのが見ていてバレバレである。少なくとも木蓮には。
「……龍治、龍治!」
 木蓮は、忙しなく龍治を呼んだ。
「もし戦いに集中出来ないのなら、これで中和できる?」
 三高平でたてセタ――でっかいおっぱい強調アイテム――着せたら指折りの木蓮が、ぴょんぴょんその場で跳ねた。
 たゆんたゆん。新式魔術機甲、今すぐパージしろ!
 どうして、冬じゃないんだ。今度は是非たてセタで!
「ま、真面目に戦わんか……!」
 ぎょっとする。インパクト、大。明らかに大。
 揺れを止めようにも触ったら負けなので、収まるのを待つしかないのだ。
 機構からはみ出た部分がぽゆんぽゆん。揺り戻し。
「……! お、おおおお仕事はちゃんとするし、ちゃんとしてるぞっ!」
 失礼なっ! と怒って、むきになると更に揺れます。どうしたらいいのどうしたらいいの。
 その素晴らしい眺めをきっちり脳裏に焼き付けて、ジェイドは呪われたコインを親指ではじき上げる。
「まともな手じゃ、歴戦のリベリスタさんにゃ勝てねえ。だから俺は今日もコインを弾くのさ」
 七緒が、予備のフィンガーバレットに内蔵されたカメラのシャッターを切る。
「面白いじゃなぁい」
 嫌いじゃない。と、ナイトクリークの技を掠め取ったクリミナルスタアは笑う。
「――クリティカルかファンブルか、ハズレを引いたら傷すら付かねえ。ま、少し欠けたら許してくれよ?」
 と、クリミナルスタアの技もたしなむナイトクリークが笑った。
「集中するって事は相手の動きをよく観察する事だ」
 ブレスは、よく見ている。
「特に弱点周辺の動きに注意を払う訳だし、素敵に、もとい、激しく動いて弱点を隠す巨乳様に目が行くのは当然の事だ」
 そうだそうだと、うさぎの合いの手が入った。
「巨乳様が最大の障害だし、そちらをじっくり干渉するのは何も間違ってないよな、うん」
 それでOK☆ と、とらがサムズアップ。
「なので、美人さんのけしからん巨乳様を穴が開くほどじっくり見てやるぜ!」
 穴開けちゃって下さい。と、ミラクルナイチチ――乳はある訳がない――智夫が言った。
「追い込むぜ!」
 スライディング気味に乳の下に滑り込んだブレスは、身の丈ほどのマシンガンの引き金をひきっぱなしにする。
 重たく正確な銃弾は、下乳を蜂の巣にする代わりにそのたわわな乳を『持ち上げた』
 いい感じにまとまるおっぱい。
「――その乳の谷間にこのカードを挟む!」
 とらの発想は、斜め上を行く。
「ヘイ彼女、ご機嫌だねっ☆」
 とらの指に挟まった小粋にいたずらなジョーカーのカードが魅惑のスリットに吸い込まれていく。
 巨大なバストに挟まったカードは、縮尺的にさながら切手。
 しかし、そこから染み出す不吉はじわじわと魅惑のご婦人を蝕む。
 べっとり張り付いたカードが剥がれない。
 下から持ち上げるように凍らされ、左右をカードで貼り付けられ、 「人」 の形が固定されてしまった。何たる不運。BSではない意味で!
「巨体ですし、いっそ取り付く様にして一撃を入れましょう。片手武器ですしね」
タヌキの左手で相手の身体の出っ張った所掴んで安定度の保持。肉球つきですよ、ぷにぷに。
「出っ張った所って胸しかありませんね。仕方ないなあ。げへ」
 五人のうさぎが、おっぱいに文字通りぶら下がるようにして、弱点に刃入りタンバリンを叩き込んでいく。
「ナイアガラバックスタブってのはさぁ、背後から忍び寄って、そっ首かっ切って、ぱあっと飛び散るからこそ楽しい訳よぉ」
 七緒の縦型ピーラーが鳴る。
「ゴーレムじゃ、ナイアガラにならないでしょお?」
「じゃ、他のでいいです」
 うさぎ、押してはだめなら引いてみな。
「やらないとは言ってないぃ。今日は弾こめてきてないも~ん」
 ちょうど、首一本分。
 柔らかな部分だけ抉り出した七緒の作った傷が、核心の部分に横線を刻む。
 遥の目が貪婪と刻まれた横線を見据える。
 本来なら抜くことも難しい、刃長三尺三寸柄長八寸の大太刀を精妙に操るが林崎流。
(水月の二寸上狙うけど、石像のデルタゾーン見て調整しよう)
 跳躍は、仮初の翼の作用とあいまって一瞬遥を重力の首から解き放つ。
 果断ない突きが、縦線を刻む。
 近接していたリベリスタが、魅惑のデルタゾーンに死の照準を刻み込んだ。 
 ここまで、集中を重ねてきたスターサジタリー達の指が、厳選された刹那を探り当てる。
 火縄銃と大口径のライフルと半自動小銃。
 まったく異種の銃から放たれたのに、一つに聞こえる銃声の中。
 刻まれた十字ははじけとび、魅惑のご婦人はその動きを止めた。
「ご婦人、いつか生まれ変わったら絶対に下着を付けろよ! ちゃんと隙間の出来ない安物じゃないやつ!」
 木蓮の別れの言葉は、巨乳に向けるアドバイスとしては適切だが、彫像に対してはどうだろう。
 ちなみに、ちゃんとした奴は一枚で諭吉が飛ぶ。


「堪能させて頂きました」
 ツヤツヤした頬で、うさぎが合掌した。
 そのうさぎに、ジェイドは困惑した視線を浮かべている。
「……胸が嫌いな人間なんていませんよ?」
 淀み無く断言するうさぎに、そうだけどよ。と、一応肯定するジェイド。
「こちらのご婦人は色々と少々デカ過ぎるけどな……まあ、もう少し慎みのある方が好みだがね」
「散々熱視線を送ってた貴方達だってそうでしょう? そう、でしょう?」
 反対意見などこの世にないという顔をするうさぎに、ジェイドはため息をついた。
「あーあーうるせえな、胸の大きい女性が好きですよ、これでいいか? カッコつかねえなあ……やめろよ、そんな目で見るんじゃねえ。チェ。」
「げへへ、人間素直が一番ですよ」
 口調ばかりがニヤニヤした無表情。
 笑いながら怒るより難しいことをやってのける、もうすぐ成人は、おっさんから青春に目を移した。

「男ってやっぱ巨乳好きなのかな……」
 木蓮が呟くのに、こそそっと遥が近づいた。
「……男の人って、ああいうのが好きなのかな? 木蓮は結構大きいでしょ?」
 自分の胸元覗き込みながら呟く。
「え、あ、うん……」
「ボク? Cだよ。普通だと思うけど」
「ご飯いっぱい食べて牛乳も飲んでるんだけど、お肉付かないんだよねえ。むしろ、アバラと腹筋ちょっと浮き出てるし」
 張り詰めたタイプですね、分かります。
「ボクは不自由感じないかなあ。動きづらそうだし、ブラ選ぶの面倒になりそうだし」
 でも、需要はあってほしい。そんな複雑な乙女心。
「テレビで唐揚げとキャベツ食べると大きくなるって言ってたっけ」
 情報交換。
(修行とか遊ぶのが楽しくて、恋愛なんてしたことない)
 でも、非モテでOKかと問われたら、迷わずNOである。
 もてなくてもいいから、誰かにちょっとくらいは目で追っかけてほしいじゃないか、青春なんだから!
(ある意味、切った張ったより難しい問題だった)
 こんな僕でも好きっていってくれる人、いるかなぁ。


 曽田七緒さんが、アークに在籍している理由の三割がここにある。
「あ~、この瞬間の為に生きてるぅ! いやあ、みんな腕が良くてあたしは嬉しい」
 縦型ピーラーがギラリと光った。
 恍惚に限りなく近い七緒の顔に、木蓮はひぃ。と小さく声を漏らした。
「ほら、邪魔してもアレだし! 龍治帰ろう帰ろうっ!」
 七緒が石像の皮をはぎはぎするところは見ないようにしようか。などと、漠然と考えていた木蓮は、龍治の手をとってどんどん歩いていく。
 ここで振り返ったら、塩の柱だ。ロトの妻だ。
「期待してないが願わくば、美人さんが纏う衣の下にもう一つの三角形、女性の最奥を護る布があらん事を!!」
 ブレスの願いに七緒は言った。
「ないわよぉ」
「何!?」
 思わず凝視する石造の長衣の裾。
「ちょっとぉ。それめくってゆるされるのは、童貞だけだからぁ」

「……なあ」
 気になることは、本人に尋ねるのが一番なのは分かっているが、それを口に出すのはちょっと恥ずかしい木蓮。
「あ、あれくらい大きい方がいいのか?」
 何がどのくらいというのは、空気を読んで下さい。
「と、とっとと帰るぞ!」
 龍治は、あくまでスターサジタリー的にそそる案件を片付けたかったのであって、婚約者の心に不安の火をともしたかった訳じゃないのだ。
 いや、まじで。ほんとに。

 終了後、コンビニで飲み物やスイーツ買って七緒さんちへ押しかけたのは、とらと遥だ。
「誕生日おめでと~☆」
 そんな二人を迎えたのは、冬服と夏服がごっちゃになった、壮絶な七緒さんのお部屋だった。
「どこにビキニ突っ込んだかわかんなくなっちゃって、全部ひっくり返したぁ」
 しまった。曽田七緒生活向上委員会、最近活動してない。今年は、衣替えの手伝いに来てなかったお。
 祝いは、その後になりそうだ。いや、これを祝いにカウントして下さい。

 乾杯できたのは、それから六時間後。
 ラジオ体操を済ませたお子様が帰ってくる頃だった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 リベリスタの皆さん、お疲れ様でした。
 「おっぱい」って半年分書いた。ゲシュタルト崩壊。

 これで公園の芝生に謎の穴が開くこともなくなります。
 ゆっくり休んで、社会的フェイトの回復に努め、次のお仕事がんばって下さいね。