●ラトニャとの戦い ボトム・チャンネルに巣食った『フェイトを持つミラーミス』――フィクサード『ラトニャ・ル・テップ』による恐怖事件は、いよいよ最高潮を迎えようとしていた。 目的不明と見られていた彼女の真の目的に繋がる情報を、アークの神の目が察知したのだ。万華鏡の演算によれば、この所加速的に進行しつつあった日本の『特異点化』は、近い夜に最高潮に達するらしい。『特異点化』とは、その固定座標の神秘影響力が通常からかけ離れて増大する現象である。ジャック・ザ・リッパーによって『閉じない穴』が形成されたのも、過去に生じた影響の一つなのだ。 ラトニャは最高潮を迎える夜を『神話』になぞらえて、『星辰が正しい位置につく時』と呼んだ。彼女の目的は、外界の異物たる自身がその力を最大限に振るう事が出来るこの機会に、己の世界とこのボトム・チャンネルを完全に繋げる事であった。もしそれを許せば世界の黄昏は避け得まい。 『特異点』の中心地は言わずと知れた、あの三ツ池公園の『閉じない穴』である。 数々の激闘と因縁を刻み付けてきたその場所で、神との戦いが今始まろうとしていた。 ●『特異点化』、とは 「揃ったか。じゃ、ブリーフィングをスタートするぜ」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は、集まったリベリスタの姿を確認すると、書類を手にして語りだした。 万華鏡は神の目だ。人間には到底知り得ない情報を知り得ない段階で得る事が出来る。それは時に色濃く破滅を予感させるもので、時に何らかの救いをもたらすものでもある。この程、世界中を騒がせている『ミラーミスにしてフィクサード』ラトニャ・ル・テップの真の狙いと言えるかも知れないものが判明した。 「お前達、『特異点化』は知っているか?」 問う伸暁にリベリスタ達の反応はまちまちといったところか。『ラ・ル・カーナより流れる風』フェスターレ・アルウォン(nBNE000258)も首を傾げる。 この所、日本では神秘的影響を増大させる『特異点化』という現象が進んでいた。『特異点』と化した地帯では、様々な神秘が通常より濃い濃度で顔を覗かせる事がある。『賢者の石』等が多く観測されたのもその影響の一端だ。日本に『閉じない穴』をこじ開けたジャック・ザ・リッパーの事件は記憶に新しいが、これは前回の特異点化の発生に拠る事件だ。アークは近くこの特異点化が数年振りに最高潮を迎えるという事実を観測したのだ。 万華鏡の観測したイメージは断片的な情報に過ぎない。ただ。 「あのラトニャが三ツ池公園に出現したという報告と合わせれば、正確な答えを出すのはイージーだ。そうだろう?」 『神話』になぞらえてこの時『星辰の正しく揃う時』と称したラトニャは、自身の行使する神秘影響力が最大限に増大するこの時を利用して、己の世界とこのボトム・チャンネルを完全に接続・結合しようとしているようだ。彼女の上位世界がこの世界と結合してしまえば、言葉は結合でも、実態は吸収に過ぎない。今の世界は破滅の黄昏を免れないだろう。 ラトニャの圧倒的な能力を考えれば分のいい話ではないが、これまでのリベリスタ達の動きから微かな希望は見出せている。第一、これを阻止しない訳にはいかないのだ。今回の事件は、日本やアークの浮沈をかけたものと言うよりも、この世界の命運を占うものと言っても良い。 「勝利しない訳にはいかないな。何としてもお前達の手で食い止めてくれ」 ●異形に立ち向かう為に 忙しなく動いて依頼の説明に回る伸暁に変わり、資料を受け取ったフェスターレが状況を確認する。 「わたくし達は、ラトニャの配下を叩くのが役割となりますわね」 時刻は夜。三ツ池公園の北側。野球場に配下達は現れる。以前、博多で現れたのと同じ異形、四つ足と魚頭がこの地に現れるのだという。 「先程、伸暁様がおっしゃっていた『特異点化』によって、かなり強化されていますわ」 とりわけ厄介なのは、倒して倒しても復活する能力にある。 それだけでも厄介だが、さらに、この異形どもを操るリーダーがいるという。 「単体ではさほど強くないのですが、生きている配下の数に応じてその能力が上昇してしまうのです。このリーダーを倒すことで、配下の復活は止められるのですが……」 配下を倒しながらリーダーを倒すか、それとも配下を無視してリーダーを相手にするか。悩みどころだ。 また、この異形達は隙あらば野球場の外に出ようとする。外に出たならば、他の場所で繰り広げられる戦いに水を差しかねないし、公園から出て一般人に被害を及ぼしかねない。野球場から敵を出さないように注意をしたい。 「オルクス・パラストの方々も共闘していただけるようですわね。……もっとも、こちらに来ていただくのは5人ほどですけれど」 オルクス・パラストは大部隊大戦力を今回の作戦に投入しており、シトリィン、セアドも参加している。とはいえ、主戦力はそちらへと回されていることもあり、こちらへはその一部のみを回して援護をもらえるようだ。 「オルクス・パラストの皆様と協力して、なんとかして異形を討伐したいですわ」 フェスターレは資料から目を離し、リベリスタ達の顔を見やる。 「わたくし達の手で、この戦いに勝利を……!」 懇願する彼女の想いはリベリスタ皆同じ。勝利を目指し、三ツ池公園へと赴く……。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:なちゅい | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年07月13日(日)22:54 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●異形との草試合 夜の三ツ池公園――。 リベリスタが過去激戦を繰り広げたこの地で、『ラトニャ・ル・テップ』が呼び出したというアザーバイドとの新たな戦いが始まる。 「やれやれ。この世ならざる者どころか、深淵の神々との対峙とはね」 『赫刃の道化師』春日部・宗二郎(BNE004462)は、それらを前にして悪態づく。ナイター用のライトが点灯した野球場に湧き出したのは、この世のものとは思えぬ異形達だ。 「うわあ、チモチワルイ敵がいっぱい! まさにモンスターってかんじだね!」 触手を蠢かす異形達。その姿、存在感は実に圧巻だ。 「うふふ、これをぜーんぶ食べちゃってもいいんだね。とっても楽しみだなぁ」 『アクスミラージュ』中山 真咲(BNE004687)は喜んで見せた。幼い彼女の顔には笑顔が浮かぶ。これだけの怪物を目にしてでも、だ。 「油虫よりゃあマシだろう?」 「は、はい……」 一方で、『悪漢無頼』城山 銀次(BNE004850)に声をかけられた『ラ・ル・カーナより流れる風』フェスターレ・アルウォン (nBNE000258)は浮かない返事。虫と異形とを比較するのも野暮な話だが、気味の悪い敵に変わりはない。 「それじゃあ、気張っていこうぜ」 はいと静かに答える彼女に、銀次は満足そうに頷いた。 「相変わらず何がしたいのか判らない奴らねぇ」 異形が何を求めているのか。『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)は全く持って、その考えが理解できない。 コウモリの翼を広げた人型がこちらを指さすと、四つ足と魚頭が一斉にこちらを向いた。視覚があるのかすら分からぬ四つ足はともかく、ぎろりと動く魚眼はこちらを凝視している。 「そこから現れる存在は、概して敵対的なのですね」 敵は目の前の生き物の生命活動を止める為に動く。『風詠み』ファウナ・エイフェル(BNE004332)は十分にそれを理解していた。 「あのラトニャなる存在の司る世界に生まれた者……。眷族故に世界の意志に従うというのなら」 ある意味では、異形は自分達に近い存在なのかもしれないと、ファウナは考える。 「我々は崩界を食い止めるべく為に行動を起こしている。懸念事項は徹底して排除しなければならない」 敵の活動はこの世界において、崩界を招く。共同戦線を張る、オルクス・パラストのメンバーもそうだが、アークからの依頼を受けた『生還者』酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)はもちろん、他のメンバー達もそれを止める為にこの場所にいるのだ。 「状況は良いとは言えないが、我々も手を拱いている訳ではない。脅威に対向する手段を講じさせて貰おう」 雷慈慟が考えるその手段とは、異形を殲滅することに他ならない。 「全く、この世界はどうして平穏に暮らすことを許されないのかね」 (箱舟の依頼はどうしてこう無茶振りが多いのかしら?) これは、自分達の能力を超えるものなのではないか。宗二郎の呟きに、『蒼碧』汐崎・沙希(BNE001579)がハイテレパスで応える。 (まあ、世界の危機であろうがなかろうが、私は私の役目を果たすのみね) この場に立つからには、今はできることを。それがごく普通の癒し手である自分の役目だと沙希は考える。宗二郎もそうだねと返す。何も知らずにただ終焉を迎えるよりは、抗えるだけ幸せなのかもしれない。 「さて、今回も喜劇の幕引きといこうじゃないか」 敵は以前相対した個体よりも、強力になっているという。溢れ出る力を抑えられずにいるのか、異形の口からは吐息が断続的に漏れ出す。人型がいななくと、異形どもは揃って動き出した。 「……いくら強くなったからって、わたしたちが前のままだと思うな。みんなそろって、のこのこやって来たことを後悔させてやる」 『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)が小さく決意を言葉にすると、敵は威嚇するように触手で空気を薙ぐ。 「まあ、何をするのであれ阻止するのには変わりないのだけど。残念だけどあなた達には、野球場なのにドッジボールに付き合って貰うのだわ」 その触手を、敵の歩みを、エナーシアは止めると断言する。そして、彼女はゆっくりとライトを装着したライフルに手をかけた。 「ボールは鉛弾とかダンビラ、それにあなた達自身だけどね!」 放たれる銃弾。最後までコート、いや、野球場に立っていられるのは、リベリスタか。それとも異形か。人知れぬ草試合が開始される……。 ●観客のいない試合 突っ込んでくる敵に対して、オルクス・パラストのメンバーも動き始める。 「オルクス・パラスト率いる勇者達と 作戦を共にするとは光栄だ」 雷慈慟が挨拶を交わす。敵前ということもあり、彼らは軽い会釈で返す。 「前衛は逃亡する敵の抑え、後衛は支援放火を要請する」 「心得た」 自分達の陣形を維持しながらでよければと、オルクス・パラストの面々は要請に応えてくれるようだ。 その間にも、異形とリベリスタの交戦は始まっていた。リベリスタは皆、バラバラに散開するも、それでいて、回復が行き届くように立ち位置を考える。 「みーんなバラバラにしてあげる。イタダキマス」 雷光で自らを覆った真咲が狙うは、魚頭。状態異常を付すことができぬ敵は危険という考えから、リベリスタ内で優先して狙うことにしたのだ。真咲は己の生命力を暗い瘴気に変える。 「逃がさないよ、一人も。……こいつらだったら、一匹かな?」 瘴気は真咲の意思に応じて魚頭の周囲に取りつき、生命を脅かす。ただ、異形は簡単にやられはしない。立ち塞がる真咲目がけて2体がかぶりつく。 沙希は仲間達へと翼の加護を与えると、仲間達の傷を気に掛ける。 (手隙ならば、援護攻撃を願います) まだ、仲間達の傷は浅い。沙希はならばと、ハイテレパスでフェスターレへと呼びかけた。発声することを好まぬ彼女の言葉。しかしながら、それは確かにフェスターレに届く。真咲の次なる暗黒の一撃に合わせ、フェスターレの展開する魔法陣から光の矢が放たれた。 状態異常を全て無効化する魚頭を優先して叩く一行だが、四つ足の抑えも忘れてはいない。ファウナが優しく呼びかけると、フィアキィは氷を纏う氷精に変わった。周辺の冷気を集めたフィアキィが一気にそれを解き放つと、魚頭を凍てつく冷気で包み込み、さらに四つ足の体を凍り付かせる。 その四つ足には涼子と銀次が張り付き、他のメンバ―へ注意を払わぬよう抑えを行っていた。 「派手に散ってもらおうかい!」 敵を引き付ける銀次。四つ足に向けた挑発は、彼の思惑通り2体が向かいくる。そいつらは滅茶苦茶に体へとついた口で彼の体にかぶりついた。 「くたばれ糞野郎」 自身のみ適用される理で自らを強化した涼子がぶっきらぼうな言葉を投げかけると、別の2体の四つ足が猛進してくる。そいつらは涼子へとのしかかり、自重で押し潰そうとした。 抑えを請け負う涼子はダメージに耐え、群がる四つ足へと片っ端から拳を叩きつける。数ある口が一斉に気持ち悪い嗚咽を吐いた。 銀次も負けてはいない。自らの黒いオーラを八又の大蛇のように瞬時に伸ばす。首をもたげる大蛇は、四つ足に致死毒を刻み込みながら荒ぶる。 思惑外れてフリーになる1体の四つ足。ただ、それはオルクスメンバーが相手を行っていた。後衛から射抜かれた矢が四つ足の体を穿つと、前衛が刃を刻む。噂違わぬ腕のようだ。涼子、銀次は互いに連携を取り合いつつ、その1体自分達の攻撃範囲へと引き込んでいくのである。 激戦が続く中、雷慈慟は公園に集まる小鳥と会話を行う。 「各々の活躍に期待する」 ファミリアも行使し、囀る鳥達が敵の指示が分かればと考える雷慈慟だったが、さすがの動物達も、異世界の住人の意志疎通までは理解できないようだ。 ただ、怪しい動きをする敵に注意を払うことはできる。 にやりと微笑む人型。大きくコウモリの羽を広げ、飛び立とうとする。配下にこの場を任せて別の場所に行こうと考えたのだろう。 「人型が逃げるぞ!」 それを聞き、すぐさま対応したのはエナーシアだ。 「させないのだわ」 ライフルの照準はコウモリの羽へと合わさる。そして……、見事に羽に穴を穿つ! 「おああああおおうう」 不気味な声を上げて落下する人型。そこに、オルクスのソードミラージュが人型を止めに入る。その瞬発力と、素早い斬撃は見事だ。 さらに、道化の仮面の奥から敵全体を見据えた宗二郎が告げる。 「さて、深きものどもよ。より昏き闇に魅了されるといい」 宗二郎の手から生み出される暗黒のオーラ。いくつもに分散したオーラは四つ足、魚頭を射抜き、人型の体をも貫いた。 「おぁあああぁぁあああおおおぅぅ」 人型は理解不能な言葉で呻き、忌々しそうにリベリスタを睨む。まずは自らの手でこいつらを片づけねばならぬと認識したようだった。 ●宴は佳境へと 互いに譲らぬ攻防戦。異形どもは、リベリスタ、オルクス合同チームを破らねば外へは行けぬと本能で感じ取っていた。もちろん、リベリスタ達はそれを許す気は毛頭ない。 鬩ぎ合いの末、先に崩れたのは……魚頭だ。異形の中で僅かながら体力に劣る魚頭は、1体、また1体と崩れる。 宗二郎が放つオーラを受ける魚頭は口からどす黒い何かを吐き出した。それは異形の体液だ。魚頭が弱ってきた証拠とも言える。 リベリスタの攻撃はなおも続く。エナーシアは敵へと銃口を差し向けるのだが、倒れている魚頭の復活も懸念して射線を通しているのがさすがだ。 乾いた音が球場に響く。魚頭が魚眼を射抜かれ、理解不能な言葉を吐いて倒れていく。 魚頭が倒れて戦況に動きこそあったが、消耗戦になりかけていた戦いだ。四つ足を抑える2人の負担は大きい。ただ、そちらにオルクスの面々が補佐することもあり、負担はかなり軽減されていたようだ。 とはいえ、オルクスのメンバーとて、2対1でも異形の相手としては分が悪い。スターサジタリーの面々が涼子、銀次を含め、前衛にいるソードミラージュのカバーを行っていた。 「てめェら如きがボトムを荒らせるか!」 銀次はオルクスメンバーに敵が注意を払わぬよう、さらに敵の神経を逆なでた。挑発されて怒り狂う敵は触手を大きく伸ばし、神秘の力で触手を膨らませて銀次を叩きつける。 四つ足の注意が自分達のみに向いているならばと、涼子はくるりと逆側を向いて傷の少ない魚頭目がけて弾丸を撃ち抜く。見事に射抜いたのを確認した涼子だが、彼女が挑発した四つ足に食らいつかれて苦い顔をする。 敵を抑えて傷つくメンバーを、沙希は見過ごさない。他の回復持ち、雷慈慟とファウナには攻撃へと専念してもらう為。沙希はフェスターレと連携を取りつつ、大いなる存在から息吹を授かって仲間達へと分け与える。 それもあって、リベリスタ一行の攻勢は強まる。雷慈慟はタペタムグラスで光源を確保しながらも、気糸を練り上げて一直線に伸ばす。立て続けに、ファウナがフィアキィへと静かに呼びかけると、力は炎の雨となって球状に降り注いだ。弱り切っていた魚頭は、炎で頭を包まれて成す術なく倒れる。 順調に敵の数は減っているが、今も健在なのは人型。羽に穴を穿たれて戦線離脱こそ諦めていたが、その攻撃は脅威だ。 「おおおおあああぉぉうぁおああうう」 力任せに薙ぎ払う爪。広範囲を巻き上げるつむじ風。前衛に立つ雷慈慟、真咲の体力を容赦なくえぐっていく。 それに耐える真咲は……。 「ボクを狙ってくれるなんて嬉しいよ。一緒に遊ぼう!」 魚頭を放置し、真咲は人型を狙って颯爽と迫る。彼女は地獄の猟犬の名を持つ三日月斧を球場のライトを受けて煌めかせた。 「スピードとパワーなら負けないよ!」 少女とは思えぬ力、そして速さで光の飛沫と共に見事に斬撃を浴びせかけ、人型の体に傷を負わせる。 「ボクとキミ、どっちが先に死ぬかガマン比べだね!」 「おおおおううおおぉぉおおお!」 気のせいか、いや、確実に人型は配下から力を得ている。それでも、配下の力が減っている今ならば。一行は人型に狙いを集め、その殲滅を図る……! ●ナイトゲームの行く末は…… 集まる四つ足、それら目がけてオルクスのスターサジタリー達が一斉に矢を放つ。 四つ足を抑え続ける銀次。さらなる挑発を行うと、彼の体へと四つ足がのしかかる。そいつを涼子の放つ漆黒のオーラが貫いた。1体の四つ足が足を折って崩れ去る。 足がふらつかせた銀次の穴を埋めるように、涼子が前へと立つ。やや後退する銀次にはフェスターレが球場に清らかなる存在による福音を響かせる。 銀次は礼を述べて立て直しを図る。触手を伸ばす敵の攻撃を受け止め、再度黒いオーラを大蛇のように幾本も伸ばす。体を蹂躙されるよう食らいつくされた四つ足が芝生の上に転がった。 まだ、魚頭が起き上がる様子はない。ここぞと一行は人型に攻撃を叩き込む……! 「化物共が人の庭でよくも好き勝手やってくれたなァ。一匹たりとも逃がしはしねェぜ、さァ派手にいこうかい!」 人型は見た目には動揺しているようには見えず、訳のわからない呻きと共に叫び声を上げる。羽を射抜かれても滑空する分には問題ないようで、少し飛びあがった人型は鉤爪を振り回して突っ込んでくる。 真咲と雷慈慟、後方のエナーシアが薙ぎ倒される。とりわけ、真咲は致命傷に届く傷になっていたが、沙希がすかさずその手当を行い、大いなる存在による奇跡を起こして彼女の傷を見る見るうちに塞ぐ。 ただ、回復を続けて疲労する沙希もまた、疲労を隠せない。すかさず雷慈慟 が周囲のメンバーと同調して異能の力を分け与える。 これで少しは……その時。ゆらりと動き始めた魚頭。 「魚頭が復活するのだわ!」 エナーシアが仲間達へと警告を飛ばす。むっくりと起き上がる魚頭。最初に倒した1体が起き上がったのだ。 彼女はすかさず、そいつを含めてライフルで敵を狙撃した。魚頭と人型が同時に呻く。敵の復活を遅らせることはできないと悟っていた彼女ではあったが、さすがに復活した魚頭は万全な状態で復活するわけではないらしい。これなら、すぐに倒せるとエナーシアは確信し、前向きに復活した敵を葬らんとする。 異形の殲滅の為、全員が力の限り己の技を異形に叩き込む。異形からも攻撃が繰り返されてメンバー達の体力を蝕んだ。味方の疲弊が大きいと、ファウナもフィアキィと意識を一体化することで、緑色のオーラを広範囲に降り注がせ、味方の体力、精神力を回復させる。 しかしながら、誰もがすでに限界を迎えていた。これ以上長引くと、確実に誰かが倒れてしまう。 「ラトニャの眷属だかなんだか知らないが」 ゆっくりと異形に呼びかけたのは宗二郎だ。お前達はこの世界にいて良いものじゃないと、彼は言葉を紡ぐ。 「この世界はこの世界で住み暮らすもので管理する。お前たちの玩具にはさせない」 活動を再開し、毒液を飛ばす魚頭。そして、己の能力を技をもって誇示する人型。それらを見据えて宗二郎は自身の体力を漆黒のオーラへと化した。 「さっさと幕を引かせてもらおう」 複数の敵に飛ぶオーラ。魚頭の体を再び撃ち抜き、物言わぬ骸へと再び化した。 四つ足が涼子、銀次に未だ抑えつけられている中、一行は早く人型を倒そうと攻撃を集める。 殴り合いを続ける真咲。仲間の援護を受けながらも、体中血を流す彼女だが、幼いながらも無邪気な笑みはとても残忍にも見えて。 彼女の刃が人型の体深くへと食い込む。流れ出る漆黒の体液。それはもはやその活動を止めるには十分だった。 「あぁぁああ、おお、うぅう……ぅ……」 重たい音を立てて、芝生に倒れる人型。そいつは二度と動くことはなかった。 「ゴチソウサマ」 真咲は命を奪った異形へと、そう声をかけた。 メンバー達は残りの異形を倒すべく、体力、精神力を振り絞る。2対の魚頭が復活していたものの、異形達は全て崩れ、生命活動を止めた。 宴は静かに幕を下ろす。精根尽き果てたリベリスタ、オルクス・パラストのメンバー達もまた崩れるようにして球場の芝生の上で眠りについたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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