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リベリスタなら、お茶の子さいさいの簡単なお仕事です。

●誰にでも出来る簡単なお仕事です。
「仕事としては、すごく簡単。だけど、多分すごくつらい」
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、しばらく目を閉じていた。
 これからリベリスタが受ける苦しみを、わずかでもわが身に受けようと天に祈るかのように。
 これからリベリスタを過酷な現場に送り出す自分に罰を請うように。
 やがて、ゆっくり目を開けると、ぺこりと頭を下げた。
「お願い。あなた達にしか頼めない」
 苦しそうに訴える幼女、マジエンジェル。 
 だが、断る。なんて、言えるわけがなかった。

●お仕事はカードの検品です。
「どろー。くりーちゃーかーど」
 しゃきーん。
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)、デッキは青主体です。 
「これ、今度発売されるトレーディングカードゲームの新しい拡張セット。千セット限定版。マニア垂涎。行列必死。人気イラストレーターによる気合の入りまくったデザイン。プレミアカードの塊との前評判……日本人なら、みんないっぺんくらいは触ったことあると思うけど……」
 学校で、しょっちゅう持ってきちゃいけませんと通達が出る類のものです。
 小さなカードにクリーチャーだの呪文だのアイテムだのが書いてあって、何十枚か組み合わせて対戦するのだ。
「で、今回、このカードが……」
 エリューション化しちゃったんですね。 
「今回の追加カードの中に、本当に神秘が内包されたカードがある。『具現化したい』という欲望は止め処もない」 
 具現化って……。
「もし、このカードを手にしてゲームで使用した場合、術者、つまり使った人がコストを払うことになる。自分の生命力で」
 それって、まずいんじゃ……。
「二重の意味でまずい。クリーチャーが出てきたらいわずもがな。攻撃魔法でも同様。更にコストは、一般人なら、たぶん一枚で死に至るくらいになると換算された」
 おのおの自分のAFの表示画面を思い浮かべる。
 あれをあれするとあれくらいだから、あれがあれな感じ。
 確かに一般人の体力に換算したら、そんな感じかも。
 神秘パワー、すご~い。
「このまま放置できない。どういうルートか現段階ではわからないけれど、何者かが本物の魔法陣が書いてあるカードを混入した。そのカードがエリューション化し、あとはどんどん拡散していってる。このままでは、『本物の魔法カード』が売りに出されてしまう。ただし、幸い未来の話。というか、現在進行形の話。今介入すれば、対応可能」
 そのためのあなた達と、イヴは言う。 
「ある程度はできるでしょ? みんなには、検品バイト兼テストプレイヤーとしてここに入ってもらう。エリューション化したカードを見つけるのは簡単なはず。問題は数」
 ちなみに、エリューション化する数は77枚。
「幸い今回は小型拡張セット。150種くらい。限定版だから、一種につき千枚。さらに拡散をふせぐため、作業は交代制で不眠不休で作業してもらう」
 ぶっちゃけ全部チェックし終えて、77枚みつけるまで帰れません。
 77枚見つけてしまえば、それでOKなのがわかっているのが唯一の救いだ。
「戦闘にはならない。ばかばかしいと思うのもわかる。ストレスがたまると思う。でも大事な仕事」
 イヴは、もう一度頭を下げた。
「お願い」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:田奈アガサ  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2011年08月12日(金)22:46
 田奈です。
 夏休み職業体験。早い話が、簡単な仕事月間。
 思いつくまま、「簡単な仕事」をエントリーします。
 小さなカードの印刷ずれやら、誤植やらをチェックしながら、エリューション化したカードを握りつぶすお仕事です。
 EASYです。つまり「自重しないぜ、ヒャッハー!」です。
『こんなトレーディングカードはいやだ』祭りで、かつ『もうこんな仕事いやだー! ここから出せー、俺を番号で呼ぶなー!』祭りです。
 リベリスタさんには、カードにうっとりしたり、指先切ったり、うっかり呪文唱えたり、中二心刺激されたり、励ましあったり、妄言はいたりしていただきたいと思います。  
 もちろん監禁状態や不眠不休を「われわれの業界ではご褒美です!」と楽しんでいただいても結構です。
 この検品ブースは厳重隔離状態なので一般人の目はありません。
 アークの機密漏えいの心配なし。安心ですね。

TCG「探求する迷宮エキスパンション・赤い月の魔方陣」
 *クリーチャーカード、魔法カード、有名人カード、アイテムカード、状況カードとか何とか。
 *適当にでっち上げてください。可能な限り拾います。
 *販売前の、持って帰ってきちゃだめですよ? 
 *ほんとに77枚考える必要はありません。
 *実在するもの、実在人物を流用しないで下さい。著作権、大事。
  怪しいのはマスタリングしますよ~。

場所:印刷工場、特別検品ブース
 過酷な状況については、お任せします。
 適当にでっち上げてください。
 可能な限り拾います。
 戦闘? なにそれ。
 最低、6人が「カードは始末する」と書けば成功です。

 毎度のことですが、
 心を折らないように、方策を相談しておくのがいいです。
 修羅場を体験すると、人間、連帯感を増すといいます。
 チームの皆さんと仲良くして下さいね。

 サポートさんは諸般の事情で途中で挫折します。
 適当に理由をでっち上げてください。
 要するに、リタイヤ組の役です。
 印象的に落伍すると、本参加者さんの頑張りが引き立ちます。 
 
 はっちゃけ大歓迎ですが、小さなお友達も読んでいい全年齢対象ゲームですので、田奈の「そういうのいけないと思います」カウンターに抵触した場合、マスタリング対象になります。
 
 それでは、楽しい検品作業を。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
プロアデプト
本条 沙由理(BNE000078)
ホーリーメイガス
臼間井 美月(BNE001362)
クロスイージス
アウラール・オーバル(BNE001406)
スターサジタリー
結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)
デュランダル
虎 牙緑(BNE002333)
デュランダル
真雁 光(BNE002532)
インヤンマスター
レッド・ホット・チリペッパー(BNE002713)
クリミナルスタア
祠堂 嚆矢(BNE002835)
■サポート参加者 4人■
ソードミラージュ
ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
クロスイージス
ステイシー・スペイシー(BNE001776)
ナイトクリーク
レン・カークランド(BNE002194)


「150種、1000枚ずつで15万枚?一人のノルマは12500枚、1枚5秒で見ても、……17時間てところかしら……こういうの計算しちゃうの、わたしの悪い癖よね」
『プラグマティック』本条 沙由理(BNE000078)、検品ブースで現物を前に肩を落としながら。

「カードゲームで遊ぶ仕事現場はここですか?遊びながらエリューション退治が出来るなんてすばらしいですね!」
 『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)、希望に満ち溢れていた開始20秒


 人は、学習する。
 イヴがああいう顔をして話し出した仕事をするに際しては、心が折れたら負けだ。
 リベリスタ達は、任務を完遂するため、こんな条件を作った。
「この仕事が終わったら、みんなで焼き肉食いに行く」
 馬の鼻先ににんじん。リベリスタの鼻先に打ち上げ。
「さて、一番枚数を見つけた人には奢るんでしょう? 頑張らなくちゃね。ブービー賞も用意しましょうか」
 沙由理はおっとり笑った。
 勤労意欲アップのために、賞品。
 ブービー賞設定で、万遍ない公平感。
 敗者、即ちビリにはおごりの刑。
 もちろん、エリューション化したカードを見過ごしたら、大ペナルティだ。
「負けないんだからね」
『だんまく☆しすたぁ』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)、周囲に不敗宣言。
「テストプレイでの勝利及び見つけたカード数No1を目指すです」
 光、その上を行く完全勝利宣言。
「なんたってボクは勇者ですから。常に一番じゃないといけませんですよ!」
 (ご褒美で美味しい元食べさせてもらえるみたいだし奮闘するのです!! 食欲は何にも勝るのですよ)
 
 汗防止対策でギンギンに効いた冷房が、骨の隋まで冷やす。
 ふやけないようつけさせられた極薄ゴム手袋がきしょい。
 とっととエリューション77枚見つけ出し、アークの人が予約してくれてる焼き肉屋さんのお座敷で、
「上塩タンと特選カルビ。とりあえず、ドリンクバー人数分!」
 とか叫ぶのだ。
 できれば自分では一銭も出さずに!


「ゲーム好きが高じて研究部まで設立した僕だ。勿論『探求する迷宮』だって大好きだとも! そんな僕にとってこの仕事は天職さ!」
『From dreamland』臼間井 美月(BNE001362)、検品ブースで現物を前に小躍りしながら。

「俺からすれば、こういう仕事より命を張った様な物の方が落ち着くんだが。仕事は仕事だ。最後まできっちりやり遂げてみせよう」
『黒い幽霊』祠堂 嚆矢(BNE002835)、黒い指なし手袋をゴム手袋にはめ変えながら。


「この辺、この辺、この辺、この辺」
 エリューションは透視できない。
 なら、見えない辺りにカードがあるということ。  
 嚆矢がひょいひぃと指差すあたりを崩さないように持ってきて、重点的にチェック。
「印刷ズレや、誤植については……仕方あるまい」
 お察しの通り、手作業で~す。
(ミスなく、なおかつ迅速に…これは精神力が削られる作業だな……)
「ある意味、精神修養だろう、これは。面白くなって来た」
 はははと軽い笑いが漏れてくる。嚆矢さん、割と細かい手作業好きなタイプ?
「だいたいね、こういう機械にも出来そうなこと人間がやるのが間違ってるのよ」
 沙由理さん、ぶつぶつ。
 でも仕事、すっごく速い。
 エリューションはリベリスタが視認して確認しない限り、わからない。
 残念だけど、これも大事な仕事。
 もちろんわかっちゃいるけど、目の前のカードの山見るとぶつぶつ言いたくもなるよね。
 大体どこにあるかわかっても、その前後左右に大量のカードがあるから、チェックしないとその山に手が出せないんだもん!
「これが『赤い月の魔方陣』の新カードかあ!」
 沙由理さんの絶望の山は、美月さんには宝の山。
「うっわ、凄いなこの効果! お、こっちの効果は面白いね! 既存のあのカードと組み合わせてコンボとか……」
 きゃっきゃっと、美月大はしゃぎ。
 先ほど沙由理が暗算していた時間の根拠、1枚五秒。
 文章の誤植、印刷ずれをチェックするなら、それで足りるかもしれない。
 しかし、世の中にはそのカード一枚で五分、10枚もあれば1時間、60枚あれば半日、100枚も渡せば、寝食忘れるタイプの人間がいる。
 人、それをゲーマーという。
 そんな人間に発売前のカードを持たせたりなんかしたら。
 手なんか全然すすまねー。
 ……美月さん? そろそろ皆さんの視線がブリザードでございます。
「……あ、いや、コホン。ちゃんとチェックしてるよ?」
 ああ、さっきからレア度とコンボ積みやすい順とかの使いやすさをなぁ!
「これだから部長は」
『ぐーたらダメ教師』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)さん、あなたが顧問している部の部長でしょう。
 それはそうと、そのほっぺたに張り付いてるカードと口元がぬれてる理由について、簡潔に説明して?
「ちぇっ」
 大人なんだから、ちぇっとか言わないの~。
「おおぅ……このディティールかっこいいのです……」
 光は、カードのイラスト見つめてプルプルしている。
 ゲームはわからなくても、今回オンリーの豪華イラストレーターてんこ盛り。
 アイテムカードはイラスト大き目、細かいとこまでくっきりはっきり!
 勇者の心をくすぐる要素てんこ盛り。
 そして、また一人手が止まる。
 なんせ、こないだアークのラボが開いたばっかりで、みんないろいろ思うところはあるのだ。
 って、夢見る目つきしてる場合じゃないのだ。
 働けー!

 だんだん、頭がぼやけてくる。
 ちっこい字ずっと見てると、目痛くなってくるし。
「こいつは、大丈夫。こいつも平気だ、こいつも特に問題は……いや、違うな。『ニ』の文字が『二』に誤植されている……。俺の目を誤魔化せると思うなよ、こっちのカードもわずかではあるがズレがあるな……」
 脳からいい感じに汁が出てる。
 とっても精密な嚆矢の口出し確認が、子守唄状態になってまいりました。
「お菓子分が不足してきたのです……」
「こっちには板チョコがあるわよ。心ゆくままに、かぶりつくといいと思うわ。何枚か重ねて」
 沙由理さん、光さんの前歯が折れます。
「なんか食べようか……。俺、最近料理勉強中なんだ」
『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)、今日はお友達の『臆病強靭』
設楽 悠里(BNE001610)と、『まめつぶヴァンプ』レン・カークランド(BNE002194)も一緒。
出されたのは、真ん中がこんもり膨らんでいる食パン二枚重ねと、茶色いものが挟まっているコッペパン。
「何だ、これ……」
「食パンにマヨネーズ塗って、ちくわを挟んで……包丁買っておけば良かったな、まあいいか」
 アウラール、止める間もなく、おててでぶちぃ。
「ちくわ、切れない」
 「引っ張るな、マヨネーズがたれる。机が油に、カードがよごれるぅ!?」
 ぜーぜーぜー。
「そんじゃこっちにするか。これ今ハマってるんだ。コッペパンにミソとマーガリン」
「パン傾けんな、味噌とマーガリンがこぼれる、机が油に。カードがよごれるぅ!?」
 ぜーぜーぜー。
「……皆もどう?」
 はぎゃはぎゃと騒いでる仲良し三人組に、おなかにたまりそうなお菓子を分けてあげる虎美。
 いい子だ。
 ありがとーの声にえへへと照れ笑いしながら、おべんとを開け、これと同じ弁当のことを思ってふと呟く。
「今頃、何してるんだろ……ご飯、ちゃんと食べてるかな。女の人にうつつを――」 
 主語が抜けてますが、虎美の頭の中には「お兄ちゃん」しか住んでません。今のところ。
 この季節、鼻伸ばしてる兄の顔しか思い浮かびません。
 ぐぎぎぎぎ。
(く、次こそはお兄ちゃんも巻き込むんだからねっ)
 依頼でもおうちでも学校でもその行き帰りも、いつでも一緒だよ。お兄ちゃん。
 くくくと笑う虎美の隣に座ってた牙緑のコーヒーが、何かの作用で急にぬるくなった。 
 怖い子だ。


「まーアレだ。あんまり気ィつめても疲れるだけだし。適度に休憩をはさみながらやりましょうかねー」
『ダニ・カリフォルニア』レッド・ホット・チリペッパー(BNE002713)、居眠りをとがめられて。

「オレ好きな娘がいるんだけど、なかなか振り向いてもらえなくてさー」
『輝く蜜色の毛並』虎 牙緑(BNE002333)、なんだとぅ!? と、もみくちゃにされる5秒前。


 出てくるよレアカード的にエリューションに汚染されたカードが。
 牙緑が見つけちゃったのは、「状況:天使からのお願い」
 特殊効果・エンチャントされた攻撃ユニットカードは、常に一番強力な防御ユニットを攻撃しなくてはならない。
『天使の頼みを断ることは許されない。見上げてくる天使マジエンジェル』
「握りつぶせばいいんだよな、なっなっ!?」
 うんうんと回りに見守られながら、ギュッとね。あと76枚。
「出ましたぁ!」
 光が声を上げる。
「クリーチャー:不浄なる迷い猫」
 丸々と太り、ぬめんとたるんだ皮が重力に引かれて下に落ち、腹の下に葉っぱとかゴミがいっぱいついている。
 ゆるきゃらテイストに、うきゃ~と声が裏返る女子。
 なにこれ。全然世界観とあってねえじゃん。限定版だからってこれってどうよ。いらね、超いらね。と、冷静な男子。
 握りつぶすとき、女子から悲鳴が上がった。
  

「あれは、そう……人形の検品バイトの時の事。子供の頃、お兄ちゃんが私の着せ替え人形をペロペロしてたとか言い出して――」
 退屈しのぎの怖い話。虎美、笑顔で。全員がすくみ上がる2秒前。

「俺、こないださぁ。ふっと気がついたら、台所の隅に、昔死んだはずのぬこが座ってこっちをじっと見てたんだ……と、思ったらコンビニの袋だったんだけどな」
 怖い話二番手、アウラール、笑顔で。オチのぬるさが許せない衆生にボコられる三秒前。


「嗚呼、検品って退屈ねぇん。集中して、オーララッシュを使うわぁ。ビルを駆け上りつつ自分の幻影と対峙するけどぉ、追い詰められたら新たな力を引き出すため、胸元からカードを取り出すわぁ。更に、秘められた力を解放する禁呪・光の封印刃を召喚して、敵の動きを少しでも長く止めて……」
 寝言だ。
『メタルフィリア』ステイシー・スペイシー(BNE001776)の、非常に明確な寝言だ。
 一人でアイテムカードの『封印・光』シリーズ の検品をやり遂げて、彼女の心はやつらに食らわれてしまった。
 やつら、すなわち睡魔。
 脇にのけてあるエリューション化したカードが激戦を物語ってる。
 誰か、戦いきった彼女の口元の涎を吹いてやってくれ。
 そんで、1時間経ったら、たたき起こしてくれ。
 まだ、『封印・闇』シリーズは手付かずなんだ。
 レンの口には、猿轡がかまされていた。
 だって、無意識の内に歌いだすんだもん。
 そんで許せない程度に音痴なんだもん。
 ゆろーんゆろーんとゆれている。
「レン……」
(おれは……ねむくないぞ……ねないぞ……おふとん……カードがお布団に見えてきた) 
 もごもごと口を動かすレンの背後に寄り添う悠里。
 悠里の手がレンに触れる前に、レンは机に突っ伏した。
 意識を完全に失っている。
「あぁ、レンが倒れた! 連れて帰って看病しないと! じゃあそういうことで!」
 シュタッと手を上げレンを小脇に抱え、悠里、退場。
(やりゃがった……)
 経験の差はあれ、ここにいるのはリベリスタ。素人ではない。
(あいつ、死角からレンに当身かましやがった! ここから逃げるために!)
 それでいいのか、アーク指折りの覇界闘士。
 いいのか。いいならいいんだ。
「ねみゅいかえりゅ」
 ソラは轟然と宣言し、ドアを開けて出て行った。
 数瞬の沈黙。
 すぐまた、カードをめくる音が部屋に響く。
(でもなあ、どーせ、すぐ戻ってくるんだ~)
 訓練されたリベリスタは思う。
(一度請けた仕事、そうそう投げ出せないもんな~)


「ドロー! お兄ちゃんを召喚。場に妹キャラがいれば妹の数に比例して強くなる! 妹の数は……十二人。これでかつる!」
「ボクのターン!!ここからが本番。逆転勝利なのですよ!!」
「アイテムカード:黄金のりんご」
『誰が至高か、争え!』
 特殊効果:組まれたバンドを崩壊させる。
「しまった。もっと魔法カードとか集めておけば……!」
「すべてはこの時の為に……!! 召喚『クリーチャー:天魔金色龍』!!」
「ぎゃー、中二病クリーチャーきたー!!……って」
 ぐしゃ。
「あ、そんな」
「だって。エリューションだし」

 テストプレイもお仕事です。
 使ったとたん、変なエフェクト垂れ流したのがエリューションカード。
 さっくんさっくんと握りつぶされる。

「は、はわわっ! しまった、維持コスト払えな……っ コスト払えなきゃ、まけぇっ!?」
「はい、私の勝ち。美月君の負け。うふふ、誰の挑戦でも受けて立つわよ。このゲーム、やったことないけど!」
「なのに、何で勝ってんの!?」
「出したら負けそうなカード出してないだけよ」
「そんなもんなの!?」
「その胸は飾りなの?知恵とか勇気は詰まってないの?」
「ソラ先生いつの間に!?」
「ねてきた。あそんでるからみにきた」
「フリーダム!」

「ええっと、『クリーチャー:青い目の白猫』召喚。その山札、上から十枚見せて」
「ぎゃひぃぃ!」
「はっ……白猫様が、あらぬ一点をじっと見つめていらっしゃる! そっちに何か見えますかっ!?
ぬこにはどんな風に世界が見えてるんだろ……不思議」
「クリーチャー全部墓地に送るなよ。見よう見まねなのに。もう絶対カードゲームなんてやらねー!」
「……今、ポケットに何入れたんだ?」
「ああ、それは許して!」
「『有名人:金の髪の乙女・ソフィア』……これエリューション化してるじゃねえかっ!」
「だってっ、金髪ポニーテール! ちゃんと潰すから、俺が潰すから。もうちょっと持たせててくれ!」

 ……自分で破りました。


「組み手しよ、組み手」
「体を動かしたくなったのなら相手をしよう」
「本気できていいぜ?……俺、最後にマトモに戦ったのいつだっけ?」
「ほどほどにしとけよ。カードが崩れる」
「ねる」
「ほら、寝たら死ぬわ。みんな、頑張りましょう。あと少しのはず」
「私、この戦いが終わったらお兄ちゃんとイチャイチャするんだ…」
「やってらんねぇな。こっそり居眠りしちまえ」
「脳みその中身、もれてるわよ」
「この魔法ボクも使えないですかね」
「ほどほどにしとけよ。カードが崩れる」
「有名人カード『百合桃の純白天使』か。何でコレ属性が闇なんだろう。しかも効果もえげつない。何か瘴気漂ってるし……」
「『主への反逆』ね。使ったら、ゲーム企画者呪えるかしら。不幸があったら発売中止になって、ゆっくり探せるわよね。……やらないわよ?」
「今、エアーキャット召喚してモフってるんだ。顔に毛がいっぱいついちゃった。え、何もいないって、ハハハ。何言ってんだよ」
「ここまできたらお兄ちゃんだけが心の支えだもん!」
「武器は勇者らしく好奇心と最後まで諦めない心!」
「検品は真面目にするよ」
「一枚、一枚、確認、して……」
「寝たら、死ぬわよ」
「油断していたら、足元は掬われそうだがな」
「なんか不思議な味だ」
「なぁに、ちょっと舌が青くなるだけよぉん♪」
「ほどほどにしとけって、うわあああああああっ!?」

 何が原因だったかわからない。
 11万五千枚のカードが。
 雪崩となって。
 リベリスタを飲み込んだ。


 それでも、無事77枚始末したのだ。おめでとう。
 後は焼肉だ!
「食事とかパス、今は何よりお布団が恋しいわ……」
 最後の最後まで一睡もしなかった沙由理さんと眠気に勝てなかった人たちは、アークの人に送られていった。
「誰が勝ったの?」
 見つけたエリューションカードの数。チェックしたカードの総数。テストプレイの総当りリーグ戦の成績。殻計算された貢献度ランキングは……。
「誰がカウントしてたの?」
 あれ~?
 でも、焼肉は行こうね。
「おにいちゃーん! 私、私、がんばったよ。だからほめて!」
 虎美が電話の向こうに叫んでる。
 うん。がんばった自分をほめなくちゃ!

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 リベリスタの皆さん、お疲れ様でした。
 なんか皆さん学習されてるようで……。
 この次は、もっと皆様に考える余地を与えないような簡単な仕事を用意したいと思います。
 
 ありがとう、僕らのリベリスタ。
 またこんな仕事があったらよろしく頼むね。
 ゆっくり休んで次のお仕事がんばってくださいね!