●最悪の結末 気がつけば私はそこに居た。 ぴちゃぴちゃと歩くたびに足に粘つくそれはとても綺麗な赤い色をしていた。 この時に初めて私は靴を履かずに素足だということに気づいた。 轟々と絶えることなく耳へと届く音が聞こえた。何かが燃えている音? 何かが崩れていく音? その中から聞こえる誰かの声もある。でも、小さすぎて何て言っているか分らない。 辺りが真っ赤で、すごく眩しくて。まるで小さい頃に好奇心で太陽を見上げちゃった時みたいに。 思わずその赤から手で顔を庇ってみる。目の前には赤いナニカが現れた。 毛むくじゃらで、鋭い爪が生えていて、傷だらけで汚れている獣のようなナニカの手だった。 あれ? そういえば私は何でここに居るんだろう? あれ? そういえば私は何で歩いているんだろう? あれ? そういえば私は何で……。 ぐるぐるグルグル考えるけど何でだろう。全然答えが見つからない。 ふと、気づけば目の前に大きな鏡があった。割れちゃってるけど、私の姿はちゃんと全部写してくれた。 靴をはいてない素足――どこ行っちゃったんだろう? 汚れて破れちゃったワンピース――お気に入りだったのに。 ぼさぼさに乱れた長い髪――よかった、リボンは残ってる。 そして赤い獣の両腕と――……え? 顔の半分を覆う獣毛と、鋭い瞳――……ああ。 「思い出した。私、化け物になっちゃったんだ」 少女がそう呟くとその瞳から理性が消え、赤い世界がさらなる大声で啼きだした。 ●未定の選択 「胸糞悪い」 走る輸送車の中、映し出された映像を見終わって一人のリベリスタが吐き捨てた。 その言葉に他のリベリスタ達は肯定も否定もせず画面の向こうに居る『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)の言葉を待つ。 「これが観測された起こりえる未来。その最悪の可能性だ」 今見せた映像はまだ発生していない。フォーチュナである伸暁の能力を『万華鏡(カレイド・システム)』により増幅し、予知された一つの事件。 一人の少女が運の悪いことに破界器(アーティファクト)を手にしてしまい。さらに運の悪いことに少女自身も革醒してしまう。 「不幸中の幸いは。彼女が世界に愛されたことだ」 それがフェイト――強制進化からくる未来の破滅から解き放たれ、この世界での存在を許された証。ここにいるリベリスタ達にも宿る特別な才能だ。 しかし、己の革醒くる変化にパニックに陥った少女は力を暴走させ、破界器はそれに応えた。 その結果が先に見せた赤い世界――炎の海に飲み込まれた一つの商店街だった。 そんな事件がもうすぐ起こる。 「事件を円満に解決するのも大切だが。それ以上に事件を起こさないようにするのがもっとも大事なことだと思わないか?」 リベリスタ達の目の前に浮かぶウィンドウに商店街の地図と、少女の写真が映し出される。 可愛らしい洋服、綺麗な長い髪、浮かべる笑顔は安直な例えであるが天使のソレだ。 断片的であるが拾えた情報によると、少女の名前は『篠原 棗』。中学生になったばかりの女の子。 今日は貯めに貯めたお小遣いを使って何かを買いに来て、それを手に入れる前に事件は起きてしまった。 と、軽いタイヤの擦れる音と共に輸送車がその車体を止める。目的地に到着したのだ。 「お前達の掴み取る未来。クールな奴を期待してるぜ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:たくと | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年04月23日(土)23:38 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●慈しみの心 商店街の北口。昼時も少しばかり過ぎ人通りも疎らになってきた頃。 「棗ちゃん、まだ見つからないな」 『この世の春をみる』天城 こずえ(ID:BNE002255)は入り口近くにあったベンチに座って商店街を出入りする人の顔を確認している。 その手には少女の写真が一枚。長く赤い髪の少女――『篠原 棗』が笑顔を浮かべている。 選べるなら最高の結末を。この少女の未来を守る為に全力でと誓ったこずえは少女の訪れを待ちながら小さく息を吐いた。 商店街の中では今日も活気ある光景が見られる。 その数多にある店舗の中、一つの洋服店にて『天眼の魔女』柩木 アヤ(ID:BNE001225)は一つのワンピースを手に取りじっと見つめる。 事前に得られた情報から試着するワンピースが破界器ではないかと想定した彼女はこうして洋服店を回り一つ一つ確認しているのだ。 「ここには無いわね」 この店も空振りだと判明した。店外へと出て黒髪を一つ撫でたアヤはまたすぐに次の洋服店を探す。 彼女もまた、棗という少女に強い想いを抱く一人なのだ。 同じくして服飾や装飾の店を渡る少女が二人。本来別行動をしていたのだが今この店で偶然に鉢合わせていた。 「少女も破界器も共に見つかっていませんか」 『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(ID:BNE000024)は淡々とした調子で言葉を返す。 日没までかければ全ての店舗の確認は終わるだろうが、それでは流石に遅すぎる。 アラストールの隣で携帯を仕舞う『童話のヴァンパイアプリンセス』アリス・ショコラ・ヴィクトリカ(ID:BNE000128)は小さく息を吐く。 これから起こる一つの惨事。それから棗という一人の少女を遠ざけて、ただ平穏に暮らして欲しいと願っているのだが。 次第に表情が曇ってしまうアリスの頭に軽い重みと暖かさが伝わり、またすぐに離れる。 アリスがきょとんと少し呆けている内に、アラストールは店の出入り口まで辿り着いていた。 「悲しみを感じるのは全てが終わってから――でしょう?」 「……はいっ! 悲しみなんて無くしちゃう為に頑張ります♪」 調子を取り戻し笑顔を浮かべたアリスとアラストールはまた二手に分かれ次の店へと向かった。 『優しい屍食鬼』マリアム・アリー・ウルジュワーン(ID:BNE000735)は南口の手前で立ち止まり、その白い髪に指先をくるりと絡める。 「けど、神様も随分と酷いことをするわ」 頬に手をあて困ったという表情を浮かべるマリアムはそんな言葉を溢す。 今まで歩いてきたこの商店街はまさに平穏そのもの。その平和な世界から人の少女が弾き出されようとしている。自分の半分も生きていない少女がである。 マリアムは一つ息を溢し、すぐに微笑みを浮かべ直す。そして踵を返し今度は北口へと歩みを進めた。 商店街の中央。そこには石製のベンチと小さな噴水が設けられておりちょっとした憩いのスペースとなっている。 その噴水の手前で間宵火・香雅李(ID:BNE002096)は足を止めた。覗き込む水面には僅かに揺れながら自分の姿――何の変哲も無いただの少女が写し出される。 しかしそれは幻想だと知っている。自ら触れれば分かる、その場所にはひんやりとした冷たさと硬さがあることを。 「……彼女にはボクと同じような想いはさせたくない」 己の決意にもう一度火を点し、香雅李はまた捜索へと戻る。 ●少女の日常 商店街の南口、『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(ID:BNE000759)がバイオリンの演奏を一曲を終えたところで小さな拍手が起こった。 アンジェリカのすぐ目の前、そこに腰を屈めて曲に聞き入っていたワンピース姿の少女が惜しみない賛辞を送る。 少女はその長い赤い髪をポニーテルに結び、白いリボンが風に揺れていた。 「よかったら少し触ってみる……?」 急の申し出でおろおろとどうしようか悩む少女。アンジェリカは微笑を浮かべてそのままバイオリンを少女の手の上へと差し出す。 突然手の上に置かれた重みと艶やかな肌触りに更に慌てる少女だが、すぐに気を持ち直し。感嘆の声をあげながらバイオリンの隅々までをじっくり見やる。 「それじゃあ一緒にやってみよっか……」 アンジェリカは少女の隣に寄り少女にバイオリンを弾く構えを取らせ、弓を重ねてゆっくり弾き始める。 拙く曲ともなっていないが、初めて手にし音を鳴らすバイオリンに少女は目を輝かせて喜ぶ。 「あっ、そろそろ行かなくちゃ」 と、少女は何かを思い出したように立ち上がり。慌てた様子でバイオリンをアンジェリカへと返す。 そのまま駆けだしてしまう少女にアンジェリカは声をかけようとしたところで、少女の方から振り返りアンジェリカを見る。 「私、棗っていうの! 君の名前は?」 「あっ、ボクはアンジェリカ――」 「じゃあアンジェちゃんだね! アンジェちゃん、また会ったらバイオリン触らせてね!」 アンジェリカの名前を聞いたところで早くも渾名を付け、棗ははにかむような笑みを見せて足早に立ち去った。 駆けていく後ろ姿にアンジェリカは同行しようとするのを諦め、幻想纏いから携帯電話を取り出す。 『篠原 棗』――今回の事件の全ての中心となる少女を発見したと。ただ、その報は数名にしか伝わらなかったが。 商店街の南口から少し入ったオープンカフェの椅子に腰掛ける『誰が為の力』新城・拓真(ID:BNE000644)。先ほど届いたメールにて急ぎやってきたのだ。 その視線の先には赤い髪の少女に加えもう二人、金髪と黒髪の少女が並んで歩いていた。 「あの子が棗か」 拓真は赤い髪の少女を写真と見比べ確認をする。身体的特徴も完全に一致。名前も『棗』なのだからまず間違いないだろう。 見る限りでは全く革醒している様子もその前兆も見られない。となればこの後に何かあると思うが……。 「今は見守るしかないか」 少女・棗への対応を共に居る二人の少女に任せて静観の構えを取った。 その二人の少女、アリスと香雅李は受け取ったメールからどう話しかけるかと顔を見合わせて悩んでいるところ、棗のほうから声をかけらてしまったのだ。 少し驚きはしたが二人はうまいこと話を合わせて棗とこの商店街を共に歩いていた。 「棗さん。あのお店なんか素敵な感じです♪」 「あっ、あのお店は綺麗なパワーストーンがね……って、駄目駄目!」 アリスが一つの装飾店を指してそこに誘おうとする。棗もそれに賛同するがすぐに首を振って頬を張り気を引き締める。 「篠原さん、どうかしたの?」 その様子に香雅李が声をかける。棗はたははっと苦笑いを浮かべて頬を掻いた。 「実はね。今日買う物はもう決めちゃってるの」 だから他の店に入って気持ちが揺らいでも嫌だし、何よりまっすぐにそのお目当ての物を手に入れたいらしい。 「そういうことなら。まずはその目的の品を買いに行こう」 「勿論私達も一緒に付き合います♪」 香雅李は年上らしく頼り気に、アリスは同年代の友達のように気軽に。 その言葉に棗は笑顔を溢して頷いた。 「うんっ!」 そして商店街の中ほど。そこに棗の目的の場所――ぬいぐるみ屋があった。 何を買うかは秘密と道中何度聞いても教えてくれなく、一人で店内へと入っていった。 買って来てからのお楽しみという言葉にアリスと香雅李は店の前で待つ。 カランッ――程なくして鈴の音がして扉が開いた。 ただ、出てきた棗の手には何も持っていない。その表情も先ほど店に入っていく時に比べて酷く暗い顔をしている。 どうしたの、と声をかける前に棗は笑みを浮かべた。 「あはは、ちょっと前に売り切れちゃったんだって」 とても心からとは思えない何かが欠けた笑みでそう答えた。 「そっか。でもきっとまた入荷するかもしれないよ?」 「そうです。もしかしたらもっといい物が見つかるかもしれません」 慰める二人。その言葉に棗はまた笑みを浮かべ――。 「うん。でも欲しかったな……くまさんのぬいぐるみ」 ぽつりと呟いた言葉。残念そうに悔しそうに、寂寥の心が零れる。 その時、この世界から一人分の魂が外れた。 「もしかしたら他のお店に――!」 香雅李がそう言いかけたところで息を呑む。 棗のリボンが揺れているのだ。それも風などではありえない動きをして波打っている。 破界器――それがそうだとすぐに理解した。 「かがりちゃん……どうかしたの?」 その状況に気付けない棗は小さく首を傾げる。 「何でもな、い……」 それに答えようとしたアリスの言葉が止まる。彼女が見た棗の瞳が、黒塗りの獣の瞳へと変化していたから。 革醒は既に始まってしまっていたのだ。そしてそこからの変化は劇的であった。 「あ、れ? 手が、変な感じで、顔も……気分が、気持ち……悪い」 「篠原さん!」 僅かによろめいた棗を香雅李が支える。 見れば脈打つようにして棗の腕が異常な程に盛り上がり、そして指の先からは黒い爪が生え、指先から肩の近くまで赤い体毛が伸びその腕を覆っていく。 「落ち着いて棗さん――見ちゃ駄目っ!」 アリスが焦ってそれを留めようとする。しかし混乱する棗にはアリスの声も、香雅李の声も届かない。 「いや……何、コレ? 私の手、なの?」 理解できるはずがなかった。体毛に覆われた獣の腕が自分のモノなのだとは。 襲ってくる初めての感覚への戸惑い、怯え。勝手に体の奥底から溢れ出るナニか。 もう何もかも、全てが訳が分からなくて。 「嘘、だめ……助けて。こんなの……嫌ぁぁぁ!?」 零れた涙と共に棗の瞳から色が消え、赤い世界の扉が開いた。 ●世界が少女を愛した日 炎の柱が上がる。赤く、紅く、アカク、世界を一色に染めようと輝く。 パニックに陥る商店街の一角、ことの成り行きを見守っていたリベリスタ達は急いで一般人の避難を行う。 「間に合いませんでしたか」 事が起きて初めて事態を知ったアラストールが苦渋に声を絞り落とす。 その他にも数名、携帯電話を持たず状況を把握しきれていなかったリベリスタ達が遅れて現れる。 「わわっ、二人とも大丈夫かなっ?」 こずえは少し離れた場所で蹲る香雅李とアリスを見つけて駆け寄る。 あの時、棗が暴走した瞬間に一番身近に居た彼女達はその被害を一番に受けていた。 幸いにその身に宿す神秘により燃やし尽くされることはなかったが、それでも無防備に受けたダメージは大きすぎるものだった。 「手が足りない。手伝ってくれ!」 拓真の叫びが聞こえる。 「私は避難のお手伝いをしますので。皆さん、棗ちゃんをお願いね?」 そう言ったマリアムは炎と煙に撒かれる一つの店へと歩いていく。 既に事件は起こり、次々と進行している。それならば、最高は掴めなかったとしても。 「最悪の未来だけは避けないといけないわね」 アヤは自身の体にマナを滾らせ、赤い火が揺れる世界へと目を向けた。 商店街の中心にある噴水の広場。そこで一人、アンジェリカは棗の振るう炎を防いでいる。 「棗さん、ボクが分からないの……!」 アンジェリカの言葉に棗は答えない。棗の黒く濁った理性を失った瞳はただ無慈悲に冷たい印象だけを返す。 その視線に思わず顔色を曇らせるアンジェリカに棗は獣の如く飛びかかり腕を振り上げる。その瞬間に獣の腕には赤い炎が纏わりついた。 「はあっ!」 そこにアラストールが割り込んで炎の腕を受け止める。 さらに棗を目掛けて飛来する光の魔弾。棗はアラストールの盾を蹴りつけ大きく後方に飛んで迫る魔力弾を回避する。 「威嚇程度のつもりだったけど。軽々と避けられてしまったわね」 アヤは次弾の魔力球を浮かばせながら地面に降り立つ棗を見やる。 攻撃の瞬間に燃え盛る炎。それは使用者自身は焼かないが、それ意外に例外はないらしい。 彼女の靴は炎にやられ既に黒く焦げてしまっているのが見て取れた。 「何とか棗ちゃんが沈静化するのを待たないと……」 アンジェリカの言葉に応えるように、アラストールは顕現させた盾だけを構え一歩前にでた。 その出で立ちに奇異な視線が注がれるが、彼女は凛々しく表情を引き締め胸を張り答える。 「騎士の剣とは民衆に向けるものではありませんので」 また炎が燃え上がる。三人のリベリスタは迫る炎を鎮めようとそれぞれの力を開放した。 「よし、これで大丈夫ですよ」 人懐っこい笑みでこずえはアリスの肩をぽんと叩く。 神秘の力による癒しは先ほどまであった痛みや痺れを取り除き、それによる倦怠感も抜け思考もハッキリとしてきた。 「猶予は残り少ないぞ?」 周辺の火災を何とか食い止め鎮火してきた拓真は告げる。 それがどういう意味なのかはこの場に居るリベリスタなら分からないはずが無い。 香雅李は一つ頷くと、四肢に力を入れ立ち上がり。赤い世界へと駆ける。アリスもその後へ続いた。 「それじゃあ私ももう少し頑張ってくるわ。あとはお願いね、拓真ちゃん」 上品な笑みを携えたマリアムは背中を向け赤い世界へと向かう。こずえもその背中を追いかけた。 「全く、今日は損な役回りだな」 残された拓真は軽く頭を掻き溜息を溢した。 赤い世界では棗を助けようとリベリスタ達の戦いが続いた。 その爪を防ぎ一切の攻撃の意志を見せぬアラストールが告げる。少女が化け物でないことを。 迫る炎を同じく炎で相殺するアリスが告げる。最良の未来で笑顔でお茶を共にしたいという願いを。 漆黒の羽根を現したアヤが告げる。これからの運命を選ぶのは貴女なのだと。 「だから、その力は怖いものじゃないよ」 こずえの言葉に。棗の動きが僅かに鈍った。 棗が腕をだらんと下げ、顔を伏せた時に赤の世界に静寂が訪れる。 「…………よ」 棗が呟く。小さすぎて聞こえないその声。 「……怖いよ」 もう一度呟いた。今度は聞こえたその言葉はくぐもった怯えた声で。 棗の瞳からは涙が零れだす。それを拭える手は無くて零れる涙は頬を伝って落ち、熱された地面に蒸発して消える。 そこにいるのは紛れも無くただの少女だった。 「大丈夫だよ」 その言葉と共に香雅李が棗へと近寄る。棗は怯えるように一歩後退るが、それを気にせずに香雅李はその正面に立つ。 そしてそっとその小さな体を両手で包み込んだ。優しく、大丈夫と声をかけながら。 「あ、いや……違う。駄目なのっ!」 瞬間、棗と香雅李を巻き込んで火柱が上がる。 混乱と戸惑いからくる拒絶の意志までをも汲み取った破界器がその対象を丸ごと炎で包み込んだ。 「キミは……心があれ、ば。まだ戻ってこられるんだ」 熱も痛みも感じずに、声が出ているかも自分でも分からない中で。香雅李は最後に力を振り絞って伝えた。 「帰ってきて、篠原棗さん」 一際輝きを見せた炎の柱は、ふっとその力を失って小さな火の粉となって辺りに舞い散る。 赤い世界が閉じ、あとに残るは泣きじゃくる少女が一人だけ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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