● ロン家、九頭竜と呼ばれる九人のフィクサードを中心にした暗殺組織。 この上海の裏世界でも名の知れ、恐れられたその九頭竜が四、『死弾』のスウシは、……けれども今追い詰められ、罵声を吐いていた。 「クソッ、クソ、クソクソクソッ! 白華会如きが! 如きが! このロン家に!!!」 シリンダーに手製の弾丸を叩き込み、スウシはトリガーを引き絞る。 各種の弾丸に呪いを籠め、多種のバッドステータスを敵に与える、死を招く弾丸使いのスウシ。 以前に日本で喫した手痛い敗北以来一時も研鑽を休まずに己を鍛え上げ、『死弾』と呼び恐れられる程になったと言うのに。 「ははは、だからそれじゃあ此処まで『届かない』って。後さ、もう一寸ゆっくり喋ってくれない? 上海語の発音ってまだ慣れてなくて聞き取り難いのよ」 哂う男に、スウシの技は通じない。否、スウシだけではなく引き連れた部下達の銃撃も、それどころか符術師の範囲支援、守護結界さえもが殴り合える程度の距離までしか届かないのだ。 そしてその距離は、敵方が多くそろえた覇界闘士の得手とする距離だ。 「そろそろ諦めない? あんた等じゃ相手にならないって。今降伏すれば命だけは助かる様に俺からも頼んでやるからさ。穏やかに行こうよ穏便にさ」 どんなに伸ばせど、その手は星に届かない。 敵が、あの哂う男が何かをしているのは明白だった。けれど、なのに何をしてるのかが判らない。 退路も既に防がれている。あの男は穏便等と寝言を言っているが、敵方に捕まれば組織の情報を吐かせる為に凄惨な拷問が待つのだろう。 仮にもし本当に命永らえたとしても組織は敵に捕まった自分を必ず狩ろうとするだろうし、そもそもこの身は数多の恨みを買い過ぎていた。 スウシはこの上海の裏世界を知り過ぎていた為に、己にはもう未来がないと決め込んだのだ。 「クソがッ! 呪われろ白華会!!!」 己が部隊がほぼ壊滅してしまったスウシに出来る事はもう2つしかない。 1つは怨嗟の罵声を敵に浴びせる事。そしてもう1つは、口に咥えた拳銃のトリガーを自ら引き絞る事。 ロン家の構成員が1人残らず血溜まりに沈んだ戦場に男の懐で呼び出し音が音を立てた。 男は大きな溜息を1つ吐いて首を振り、スマートフォンを耳に当てる。 「もしもし、ああ仁君か。そっちはどう? 上手くやってる? うん、こっちの仕事はまあ順調よ。てか順調すぎて俺もう帰りたいよ。此処んとこ毎日毎日血生臭くってさあ……」 空の星が消えていく。 ● 日本を離れて空を約3時間程、上海へと降り立ったリベリスタ達を出迎えたのは、 「態々出向いてもらって済まないな。さて諸君仕事の時間だ」 遠く海を渡っても見慣れた顔『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)と、今回はリベリスタが到着するまでは彼の護衛役でもあった『paradox』陰座・外(nBNE000253)の二人だった。 異国の町の片隅でも、普段と変わらず事件の詳細を話し始めるフォーチュナ。 「近頃この上海で白華会という組織がその勢力を伸ばしている。それも尋常ならざる速度でだ」 コツコツと逆貫の指が車椅子を叩く。 1組織の急成長は、長い時の間に自然形成された裏社会の勢力バランスを崩しかねない。 所詮蛇蝎の喰らい合いに過ぎぬとは言え、裏社会の勢力バランスが崩れた時に起きる事件発生の大規模な増加は日本でも既に経験済みだ。 それが何れこの上海でも起きるのだとしたら……。 「現地リベリスタ組織である『梁山泊』はこの急激な変化を警戒して調査に乗り出したらしいのだが、白華会と他組織の抗争現場で、彼の組織に協力する日本人フィクサード達の姿が目撃されたそうだ」 つまりは、それ故にアークのリベリスタがこの地へと呼ばれたのだろう。 巨大勢力の乱立する日本の事情は複雑で、日本人フィクサードが絡むのなら日本の組織であるアークに判断を任せるのが無難であると。 そのフィクサード達は金で雇われた傭兵グループなのか、或いは大きな組織なのか、もし組織的に動いて居るのなら何故白華会と共に動くのかを調べて判断し、必要ならばその動きを潰す為に。 個人が金で雇われてるだけならば話は簡単なのだけど……。 「まあ、つまりそう言う事だな。どう考えても厄ネタだ。故に私は諸君等に先んじて此処に来た。この地は万華鏡が届かぬから、少しでも情報を集める為にな」 そう言い、逆貫は調べた情報を纏めた手製の資料を差し出す。 ● 白華会側戦力 白華会フィクサード:馨華(シンファ)、白華会の女性フィクサード。強力なマグメイガス。二つ名は『銀』。 その他クリミナルスタア×2、以前の抗争では絶対絞首を多用していたらしい。 日本人フィクサード:??、詳細不明の日本人男性フィクサード、非常にハイレベルなインヤンマスターだと思われる。 またこの日本人フィクサードの所持アーティファクトの効果だと思われるが、以前の抗争では全ての遠距離以上に届くスキルの距離が一段階短く(遠距離→近距離に、遠2距離は遠距離に)なったとの事。 その他覇界闘士×4、以前の抗争では土砕掌や森羅行を多用していた。 ロン家戦力 九頭竜の六、『焔龍』リュースィ。ランク3まで使用可能な男性マグメイガス。その他炎に関する独自技を持つらしい。 九頭竜の七、『対』チーメイ。ランク3まで使用可能な女性ソードミラージュ。左右の手に持つ柳葉刀の2刀流で、嵐の様な連撃の独自技を得意とするらしい。 その他クロスイージス2、スターサジタリー2、ホーリーメイガス2。 白華会、ロン家ともにデータは不完全であり、非戦等も含めて不明部分は多い。現場の誰か、或いは複数がジャミングを所持している模様。 戦場となる貧民街には既に広範囲にわたって油がまかれている。一般人の退避は行なわれていない。 「今夜、もうあまり時間は無いな。貧民街で現地フィクサード組織であるロン家と白華会が戦闘を行ない、その結果大規模な火災が貧民街を焼くだろう」 幾度かの抗争で追い込まれたロン家の一隊が自勢力圏に白華会を誘い、自分達をも巻き込んだ焼き討ち行為で敵戦力を削ろうと目論んでいるのだ。 如何考えても火を放った方も無事では済まない作戦だが、手負いの獣であり、暗殺組織でもあるロン家には最早常人の理屈は通じない。 「諸君にはこの火災を防ぎ、尚且つ件のフィクサードを調べ、必要ならば白華会にもロン家にもダメージを与えて欲しい。色々と無理を押し付けて済まない。私はこれから帰国するので、もう護衛は必要ない。外も諸君等を手伝わせよう。……健闘を祈る」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:らると | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年06月17日(火)22:56 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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