● 横たわるE・ビーストの死体から離れ、相棒のところに歩いていく。 小さな体。転がる魔道書。 運命の恩寵で、再び立ち上がる。 今回は大きな怪我は残らなかったようだ。 少し安心した。 だが。 いつもと違う気配に、足が止まった。 「なによ」 ぐしゃぐしゃに乱れた髪を手櫛で直し、いつもどおり半眼でこちらを見る。 「お前……」 間違いではないかと思う。いつもどおりの憎まれ口。 いつもどおりの皮肉な笑顔。 「お前とか言わないでくれる?」 「そうじゃなくて、お前……」 「……ああ、そうね。ついに愛想つかされたか。しょうがないわね。今までずっとあんたをかばい続けて何度も生き返ったんだもん。そろそろ見放されて当然よね」 ふふんと、笑って見せる。 ノーフェイス。 女は堕ちた。 もはやリベリスタではなく、元リベリスタ。 女は狩る側から、狩られる側に変わった。 「で、どうするの。あんた、あたしを殺すの」 なんと答えたらいいのかわからない。 男は、リベリスタなのだから。 今まで、フェイトがないという理由だけで、エリューション化したモノは、人でも獣でも器物でも死んでいても事象でもお構いなしに、屍の山を、血の河を、瓦礫の山を、空虚を、この女と、年をとらなくなったこの女と築いてきたのだ。 どうして、お前は殺さないと言えようか。 「即答できないんだ」 なんと答えたらいいのかわからない。 女は、男に何もかもを捧げたようなものだから。 無茶な戦い方をする男をかばい、身を削り、命を削り、恩寵を削って生きてきたのだから。 「ヒドイ男ね。一緒に逃げようとか言えないの」 「エリューションが増殖する……」 それは許されることではない。と、男は言う。 そうねと、女は応じた。 「でもね、今まであたしたちが狩ってきたエリューションの数まで増える時間くらいの猶予はあってもいいと思わない? だって、ここまで人生掛けてきたんだもの」 一緒に逃げて。堕ちろとは言わないから。 女は、少女の姿の女はそう言って、一人だけ年をとった男を見上げた。 ● 「残念ながら、この世界はそんなに公平にできてはいない」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、にべもない。 「男、本田真太郎。女、上田緑子。二人組で活動していた。フリーのリベリスタとしては、古参の部類」 四十がらみの男と、十代半ばに見える女。 男はどこか疲れたような。女は達観しているような。 「同い年。革醒時期もほぼ一緒。活動時期も。違うのは……」 女の時が止まったこと。 「本田は、上田を殺す。正確に言うと、殺し合いになる。フェイトを削られて……」 リベリスタ達は、目を伏せた。 「本田も、堕ちる」 イヴは、そう言い切った。 「世界はそれほどやさしくはない。けれど、フリーとはいえ、長年頑張ってくれたリベリスタがノーフェイスになるのをただ黙って見ているのは、アークのリベリスタの名が廃る」 イヴは、わずかに微笑んだ。 「今回の作戦は、原因の除去と、今後の対策。上田がフェイトを使い切る原因になるE・ビースト戦に介入。上田にフェイトを使わせないようにして」 方法は任せる。と、イヴは言う。 「更に、今後フェイトが減らないように、引退なりアークに来るなり説得して。この二人のフェイトが減りやすいのは、二人きりで無理な戦い方をするから。多人数チームなら、これ以上のフェイトの減少は抑制できる」 イヴは、モニターに場所と詳細を映し出す。 「場所は、廃棄された倉庫。今から行けば、ちょうど二人がE・ビーストと対峙したところに間に合う。リベリスタ二人をノーフェイスにしないで」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月10日(水)23:27 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 熊の爪が、上田緑子の胸を横薙ぎにした。 黒髪が幾筋か断たれて、風に流される。 セーラー服のスカーフはちぎれて、どこかに飛んでいった。 熊の側頭部に叩きこまれる電撃を帯びた、幅広の剣。 はぜる雷撃は熊と打ち込んだ本人さえも傷つける。 ぶふーっと鼻息荒く、熊はじろりと緑子を見る。 「しのいでくれ! 俺は限界を超える!」 真太郎の言葉に、緑子はいつもどおり、回復呪文を唱え始めた。 黒い巨体が、見た目を裏切る俊敏さで緑子めがけて突っ込んでくる。 高々と振り上げられる速度は、緑子ではよけきれない。 ああ、どうやら、今日も死線を越えなければ帰れそうもない。 ● 「貴様が今日喰らえるのは、少女じゃない……精々が、刃と銃弾だ……残念だったな」 熊の爪が胸椎にめり込む。 きしむあばらをものともせずに、桐生 武臣(BNE002824) は、にやりと笑った。 「アークだ。介入させてもらうぞ!」 『酔いどれ獣戦車』ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)が続き、複数の男女が廃倉庫に駆け込んでくる。 「な……、この熊は俺たちの獲物だ!」 本田真太郎は、声を荒げた。 今まで、誰にも二人の戦闘に手出しさせたことはない。 真太郎が攻め、緑子が癒す。 ずっとそうやって戦ってきたのだ。 「上田さん、あなたのフェイト、尽きかけてるの。『後輩』の私達に、手伝わせて貰えないかしら……?」 『微睡みの眠り姫』氷雨・那雪(BNE000463)、屹然として立つ。 つい先ほどまで、眠いと目をこすり、あくびをかみ殺していたとは思えない。 あいまいな表情を浮かべる二人に、 小さくため息をついた。 「貴方達が、運命に見放されたくないのなら、よく考えて欲しいものだわ……」 (わざわざ助けるギリは、ないけれど……、ノーフェイスが新しく出来るのは、防がないと……ね) フェイトが尽きれば、世界の害悪。 狩られる側に変わるのだ。 じゃりっと砂を踏む音がする。 「救えるのなら、絶対に救う。ノーフェイスにはさせないし、殺させもしない。フェイトをすべて失う前に、片を付ける」 不釣合いに巨大なボウガンを携えた幼げなシスター。 古い知り合いが持っていたものによく似ていた。 「……アリアドネの……。アークに間違いないようね。てことは、私、このままいけばノーフェイスになるのね。とっておきのご神託でも降りた?」 ふふっと、緑子は小さく笑った。 諦めと安堵と未練と。 複雑な感情が、あどけない面差しに僅かに浮かんで消える。 「おまえ!」 「お前とか言わないでよ。そろそろ限界でしょ? 私もあなたも」 言い争う二人。 「やだな。人の話聞いてなかったの? 限界なんか迎えられちゃ困るよ」 『fib or grief』坂本 ミカサ(BNE000314)は、まずは熊を気糸で縛り上げることに集中した。 「何の為にリベリスタが雁首揃えて来たと思ってるのか、逆に聞きたいね。俺はね、どうせ戯れるなら、熊より猫のが好みなんだ」 「死に急ぐのは勝手だが、後の処理を考えた死に方をして欲しいものだな」 『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)は、みもふたもないが、正鵠を射ている。 猫耳女子高生が、びしっと二人を指差した。 「でも、一緒に死にたいより、一緒に生きたいの方が、素敵じゃないですか?」 緑子は少し目を丸くして、ほんの少しだけ悲しげな色を落として笑った。 「救える命がそこにある。助ける理由なんて、その程度でいい」 『消失者』阿野 弐升(BNE001158)は、戦闘思考の海に身を投げる。 それが、アークのリベリスタだから。 ● 「『森の熊さん』とはその凶暴さとは反対に随分ロマンチックな名前じゃないか」 自らの闘気を高めながら、ディートリッヒが苦笑する。 E・ビースト「森の熊さん」は、少女を好んで襲う習性がある。 そこからついた識別名だ。 「猪武者の世話は大変だな」 ユーヌは、淡々と言いながら、手印を結び、守りの結界を敷く。 戦闘範囲内が自分達をやさしく包み込む空気に変わるのを、リベリスタ達は肌で感じた。 猪武者が誰かは言わずもがな。 緑子は、盛大にぷーっと噴き出し、言われた真太郎はむっとする。 「仕方ないじゃないか。猪にならなければ、生き残れなかったんだから」 二人だけ。 当初、癒しの術しか持ち合わせていなかった緑子を守るには、猪になるしかなかった。 そして、気がついたら。 守るべき緑子に守られなければ戦えない自分になっていた。 「デュランダルは敵の前面に立って戦う。いたってシンプル。駆け出しリベリスタでも出来る簡単なお仕事だぜ。チーム組めばな」 ディートリッヒは冗談めかして、そう言う。 「二人なのに、自分の身を省みず攻撃するから、上田が庇ってフェイトを削る羽目になるんだ。ちったあ、自重してくんないか? 」 (リミットオフを使用するなんてとんでもない。更にギガクラッシュなんて使おうものなら、わざわざ自分で死のうとしているようなもんだ) 肉体の限界を解除し、身食いしてまで高められる戦闘能力。 「がきんちょ共、大人だと思ってなめんなよ! 大人なんてな、子供が大きくなっただけなんだからな! 小器用にな、生きてる余裕なんかなかったんだよ!」 叩きつけられる雷撃。ぼたぼたと流れる血が、真太郎の覚悟。 「力押し実に結構。俺も好む所です。ただし、折角数がいるんですから、数の暴力で行きましょう」 神経伝達速度の調整を終えた弐升は、森の熊さんの痛打点を正確にえぐる。 緑子やユーヌを見ていた熊の標的が、弐升に変わった。 「回復手は戦場の要。真太郎を後ろから支えるのは、貴方の役目。それを支えるのが私の仕事。半人前だけどね」 杏樹はそう言って、流星の力を宿した指でボウガンの引き金を引く。 「ごめんね。ひどい男で。あんな感じだから、誰と組んでも長続きしなかったのよ」 緑子が苦笑しながら、真太郎を癒す。 「あんまりひどいもんだから、愛想尽かすこともできなかった。ほっといたら、死んじゃいそうなんだもの」 (良い歳して何やってるんだか。これだから愛だの恋だのって奴は困るね。上手くこなせなきゃ心が腐るよ、違う?) ミカサは、鉤爪をひるがえし、次の刹那、熊に複数のミカサが踊りかかる。 「『自分を庇い続けたから相棒はノーフェイスに堕ちました』なんて、そんな戦い方してるからじゃないの」 真太郎はうなるしかない。 図星だからだ。 「まあ…全てを自分に捧げて尽くす女の存在は便利だよね、違う?」 「あいつはそういうんじゃない……っ!」 引き裂かれる熊の毛皮。 赤黒い肉が露出する。 「そう? そう扱ってるように見えるけど。ねえ、馬鹿な事をしてると運命は大事な物を取り上げていくよ」 女の子を追い回す熊さんがリベリスタに退治されるように。 ノーフェイスはいかなる者もこの世界から抹消しなくてはならないように。 それがこの世界の摂理。 リベリスタは、世界を救うため、目隠しをしてチキンレースをしているようなものなのだ。 恩寵を受けし者たちよ。奢り高ぶる事なかれ。蛮勇を恐れよ。 恩寵尽きることあらば、世界に仇なすこととなり、世界が仇なすものと化す。 ● 「か弱い女性ばかり狙うとは、な。呆れたものだ」 体内に湧き上がる毒に、白目を真っ赤に充血させた熊を見上げて、那雪がようやく目が覚めてきたと呟く。 「そこだ」 プロアデプトの正確な戦闘計算。 脳を真っ赤に染め上げるほどの痛み、倉庫中に響き渡る熊の悲鳴。 「とはいえ、負担しか掛けられない様な愚かな男もいるようだが、な」 ちらりと放たれた気糸に勝るとも劣らない氷の視線が真太郎を貫く。 縛り上げられていた気糸を引きちぎり、一気に後衛に迫ってきた熊の前に緑子の前に陣取っていた桜が立ちふさがる。 かまわず熊は桜を渾身の力で地面に叩きつけた。 ずどんとありえない音がした。 「好き同士なのに、なあなあの関係とか駄目! 絶対!」 頭の上で腕を十字にかざし、全力で体を守る。 熊は逃がさない。動かさない。 衝撃で口の中を切り、前歯を真っ赤に染めながらズバッと切り込む現役女子高生。 愛とか恋とかそういうんじゃなくて、相棒なのだ、腐れ縁なのだと感情に蓋をしている二人にとって、蓋した容器を蹴飛ばし、風穴を開ける暴挙だ。 「聞いてます? そこのおじさん!」 真太郎を指差し限定。 「おばさん!」 ぐるっを振り向き、緑子も指差し。 反論できない。娘と言ってもおかしくない年頃だ。 「命懸けの恋なんて、羨ましいです。大事にして下さいっ。以上!」 口元の血をぐいっとぬぐう。 「後は黙って熊さんの相手です。今日の桜ちゃんは、ちょっと一味違うですよ!」 ● フェイトを削ってとはいえ、真太郎と緑子二人で倒せる熊に、更に八人の加勢。 熊の命運はそもそも風前の灯だった。 リベリスタたちは懇切丁寧に行動を以って、真太郎と緑子の戦い方を否定した。 真太郎の無理な特攻を行う前に、那雪やユーヌが呪印や気糸を用いて、熊を束縛し、攻撃手の危険を軽減する。 結果、攻撃手の危険は分散し、負担の少ない業で確実な結果を出せる。 もちろん、前衛が術手を防御する陣形を組んでいるからこそだ。 人数がそろっているからこそできる、損害が少ない戦い方。 皆で明日を迎えるための戦い方。 真太郎と緑子が戦い続けるというのなら、これから覚えなくてはならない戦い方だった。 「上田……さん、この猫娘癒してくれないかな」 武臣が、血まみれの桜の変わりに後衛までの射線に立つ。 「あ、はい」 毒気を抜かれたように緑子は応じ、全体回復詠唱を始める。 第二次世界大戦にって激減した日本のリベリスタ。 大規模なリベリスタ組織がなかった混乱期に革醒した二人に、先達はいなかった。 現在のアークのように、人数を集めてチームを組んでエリューションに対応するなんて夢のまた夢だ。 新人の時点からそういう戦い方を学べるアークのリベリスタ達は、幸運な革醒者と言えた。 二人は何もわからない状況で、出会う革醒者がまともな人間であることの方が少なかった。 成長が止まることで少しずつ周囲になじめなくなっていく緑子を連れて、真太郎は必死にリベリスタという立場に踏みとどまった。 戦うことが緑子を守ることにつながった。 時には、革醒者にも牙を向いた。 先のことは考えなかった。今日を積み重ねていれば、いつかは終わりが来ると信じていた。 そして。 今日、運命の日を迎えるはずだった。 「この先どうするかは二人の勝手だけどさ。でも今の儘だと、相当キツイ選択が待ってるのだけは解かってよ」 と、ミカサが真太郎の脇をすり抜け、熊の毛皮を剥ぎ取っていく。 「歯車は、歯が多いほどよく回るんだ」 杏樹の手により解き放たれた矢は、そこに突き立つのがあらかじめ決められていたように熊の目を射抜き脳を貫く。 「はっ、叩くと肉の旨味は増すらしいな? 大人しく挽肉にされてしまえ」 ユーヌの呪印は、泡を吹くほど猛る熊をぎりぎりと締め上げる。 「自称正義の味方括弧笑いです。全てを救う、なんて大言壮語は吐けませんが救える命は救いたい」 この局面で、弐升は、極大の一撃ではなく、確実に体力を削り取る精密な一撃を選択した。 手にしたハルバートが、熊の動きを先読みして、最も隙の多い部分に吸い込まれるように一撃を加える。 「人の恋路を邪魔する熊さんは――」 桜。本日、絶好調。 「猫に噛まれて、死んじゃえ!」 黒い波動の三叉劇が熊の頭部を完膚なきまでに破壊した。 首を失った熊が、どうと倒れた。 ● 「とりあえず、この馬鹿、引退しても生活力ないから」 引退してはどうかと進言しようとしたリベリスタの口をふさぐように、緑子が言った。 この馬鹿とは、言うまでもなく本田真太郎である。 空気は完全に真太郎にとって、アウェイだ。 (てめえに甲斐性があったら、そもそもこんなことにはならなかったんじゃね?) 的空気が、廃倉庫の中に充満している。 「アークに来てもらえると色んな意味で助かりますね」 弐升は普段の柔和な表情に戻っている。 実戦に出ないとしても、蓄積された戦闘経験のフィードバックは発足したばかりのアークには必要なものだ。 「……互いを活かし、互いを補い合い……互いに支え合う、そういう戦い方ができる仲間を増やせばいい」 あまり口数が多い方ではなさそうな武臣が、訥々と、どうやら説得しようとしているのに、古参のリベリスタは顔を見合わせる。 (……アンタ達とまた轡を並べるのも……悪くない) 消え入りそうな声で言い、握手を求めて差し出す手を、緑子に促され、悩んだ末握る真太郎を見て、緑子はくるりとリベリスタを見回す。 「それで質問なんだけど、三高平って住民登録と婚姻届、どっちを先に出せばいいの?」 真太郎は、ぐげっと喉から異様な音を出した。 「おまえー!?」 「おまえとか言わないでくれる? あんたが片っ端から近づいてくる男蹴散らしてたおかげでお嫁に行きそびれたんだから、もらってくれたっていいでしょ」 おおっ。と、リベリスタ達から声が上がる。 「どっちにするにしろ、そろそろ身を固めた方が良いんじゃないの。俺は人を想うってのが余り理解出来ないからさ。是非、男女の本懐って奴を見せてよ、先輩方」 「結局、2人にはお互いしか見えてないんですよね。桜ちゃんも、恋したいなあ」 「いろいろ、アーク加入の説得するための理論武装してきたのに……」 「そろそろ限界。話が決まったなら、寝る……」 後は、お若いお二人で~的空気に、真太郎は最後の抵抗を試みる。 「お、お前ら、何を勝手な。事はそんな簡単なことじゃなくてだなっ。大体どういう了見で……」 「もし、相手がノーフェイス化した時に、あなた達はは半身を迷いなく殺せるの?」 真太郎をさえぎるように、杏樹が、まっすぐ真太郎を見つめて言った。 今回、リベリスタたちが介入しなければ。 真太郎は緑子の亡骸の横でノーフェイスになっていた。 今頃は悔恨の慟哭を挙げながら、世界の敵になっていただろう。 「エリューションを増やさないのもリベリスタの仕事。でもそういうことで言ってるんじゃない」 杏樹は、勝手な言い分だけど。と、前置きした。 「何より、あなたのために生きてきたこの人のことを、もっと見てあげてほしい。リベリスタとしてではなく」 年端も行かない女の子にそう言われて、四十男が赤面した時点で、もうどんな言葉も照れ隠しにしかならない。 「ほらほら、観念しなさいよ」 その女の子と大して年は変わらないように見える、四半世紀を共に歩いた女。 いつの間にか、皮肉な笑いしか浮かべなくなった女。 その女が、今はすこぶる楽しそうに笑っていた。 「この、おまえなっ」 リベリスタ達は、ニヤニヤと二人のどちらが勝つかわかりきった言いあいを見物し始めた。 場の空気は、真太郎にとって完全にアウェイだ。 緑子は、憑き物が落ちたように、にっこり笑った。 「この先もお前呼ばわりするなら、籍入れてからにして」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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