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<究極望まば>貪欲なる蛇の群れ


 その時、ある国で、リベリスタと悪が戦った。
 悪の名はペリーシュナイト。彼の悪名高きウィルモフ・ペリーシュの創りしペリーシュシリーズの中でも自律行動を取れる、創造主に忠実な駒達。
 彼等の狙いは賢者の石だ。この世界に稀に現れる神秘にして、優れたる魔術増幅器。
 ペリーシュの実験の為に世界中でペリーシュナイト達の賢者の石を始めとした魔力増幅器を集める動きが活発化していた。
 もしも、例えばある国が日本で、悪と戦うリベリスタが、例えば世界に名を響かせるアークのリベリスタであったなら、話は大きく違う展開になっただろう。
 だが不幸な事にある国のリベリスタ組織はアークよりもずっと小さく、ペリーシュナイトに抗する事は適わない。
 そして続く此れは誰にとっても不幸な事に、その賢者の石は欠陥品だった。
 未成熟なままだったのか、或いは幾度かの使用にその力を減じたのか、ペリーシュナイトはウィルモフ・ペリーシュが望む水準には到底及ばないと判断する事になる。
 だが其れは決してペリーシュナイト側だけの不幸では無かったのだ。
 力の足らぬ賢者の石を己の腹の中に格納したそのペリーシュナイトは、賢者の石に足りぬ力を補填する為に神秘存在の捕食を始めた。
 そう、先ず最初の犠牲となったのはペリーシュナイトに敗れて近くに転がる神秘存在、リベリスタ達。
 死んだ者も、傷付き動けぬとは言え生きた者も、彼等の所持していた武器防具、アーティファクトさえも、一つも余さずペロリと。
 ペリーシュナイトにとっては恐らく神秘存在なら何でも良かったのだろう。エリューションでも、アザーバイドでも、フィクサードでも。
 しかし其れ等は所在が知れなかったが、今返り討ちにしたリベリスタ達の所属組織は割れていた。
 不幸な事に力足りず返り討ちに合い、不幸な事に賢者の石が欠陥品だった為に喰われ、不幸な事に次は所属組織が襲われる。
 不幸な事に、不幸な事に、不幸な事に。


「急を要する案件だ。諸君等には任務の説明が終り次第用意した専用機で現地へと飛んで貰いたい」
 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達を前に『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)が口を開く。
 まあそもそも逆貫からの要請には急を要しない案件の方が少ない気もするが、しかしそれにしても専用機を使用とまでなるとは、随分と忙しない話である。
「北米大陸、カナダとアメリカの国境付近にペリーシュナイトが出現し、現地リベリスタと交戦に入った。彼の地の賢者の石がペリーシュナイトの目的と思われる」
 無論現地リベリスタ組織は単独では手に負えぬ案件に周辺組織への救援を要請する。己が組織の擁する精鋭達を時間稼ぎにと出撃させて。
 しかしあまりに時が悪く、相手も悪いその救援要請は周辺組織にも持て余される。
 世界各地で恐怖神話の題材にもなった怪異の動きが活発化された影響は大きく、己が地域の警戒に人手を大きく取られる今、よりにもよって厳かな歪夜十三使徒、その中でも悪名高き第一位『黒い太陽』ウィルモフ・ペリーシュが創り出した自律型アーティファクトにして彼の忠実な配下、ペリーシュナイトを相手取る余力を持った組織は彼の地には存在しなかったのだ。
「救援は何処の組織からも派遣されず、出撃したリベリスタ達は全滅する。……否、もう既にしているかも知れん」
 ペリーシュナイトとも幾度となく交戦し、更には世界中の案件解決の為に傭兵として人員を派遣する事のある極東の大組織『アーク』、そこにこの話が廻って来るまでに流れた時間は些少では無い。
 だが其れでもアークに話が流れて来たのは、迎撃の為のリベリスタが全滅し、ペリーシュナイトが賢者の石を手に入れても尚事態は終らないからだ。
「ペリーシュナイトが彼の地で手に入れた賢者は保有する力が求める水準には足りず、奴等は其れを補填する為に神秘存在の捕食を開始する。そういう能力を所持している個体のようだ」
 最初は倒したリベリスタ達の身体、装備を。そして次に戦いで機能停止した同類を。
 体内に納めた賢者の石の、その滋養とする為に。
「次に狙われるのはリベリスタを派遣した現地組織だ。神秘存在ならばエリューションでもアザーバイドでも良い筈だが、彼の現地組織は所在が割れた上に、……最も強い戦力を時間稼ぎに投入した為、抵抗力も残り少ないと判断されたのだろう」

 資料

 ペリーシュナイトA:大喰らいの石蛇
 魔力を秘めた石材で創られたペリーシュナイト。ビショーネと呼ばれる大蛇がモチーフ。
 巨体と材質が相俟って非常に頑強。巨大な尻尾や頭での薙ぎ払いや、巻きついての締め付け、或いは飲み込み攻撃を行う。
 大喰らいの石蛇に飲み込まれた者は外部から何らかの手段で外部から救出されぬ限り継続ダメージを受け、そのダメージは石蛇のHPに変換される。

 ペリーシュナイトB:銅の雷蛇
 魔力を秘めた銅で創られたペリーシュナイト。シュガールと呼ばれる蛇の姿をした雷神がモチーフ。
 敵対者複数に対して雷撃を放つ他、巻き付き電流を流し込む攻撃、敵対者からの近接攻撃が命中すれば反撃にBS付与(敵対者からの攻撃命中が100%未満なら感電とショックを、100%以上なら雷陣と麻痺を)。
 

 ペリーシュナイトC:青銅の槍蛇
 魔力を秘めた青銅で創られたペリーシュナイト。ヤクルスと呼ばれる怪蛇がモチーフ。
 飛行能力と、敵対者はターンの頭にWP判定に成功しなければ青銅の槍蛇を見失う(認識できなくなる)能力を持つ。
 攻撃手段は槍の穂先の様な牙での咬み付き突き刺し。青銅の槍蛇を認識出来ずにモチーフと成ったヤクルスの得意とする狩りパターンの攻撃をまともに受けた場合、致命打となる。


 リベリスタ組織『Hope』
 北米大陸、カナダとアメリカの国境付近、カナダよりを守護地域とするリベリスタ組織。
 20~30lvの彼等の組織にとっての精鋭20名弱が全滅した為、組織には戦闘経験の乏しい1~10lv程度の人員が20~30名ほどいるのみでまともな抵抗力は残していない。


「私の勘、半ばは予知だと思ってくれて良いが、恐らく諸君等が現地に到着する頃には現地組織が襲撃を受けている頃だろう。諸君は時間の都合上、組織拠点上空から投下されるので、着地には必要ならば備え付けのパラシュートを使用してくれ。では諸君等の健闘を祈る」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:らると  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年06月06日(金)23:21
 成功条件は敵の撃退+『Hope』の壊滅阻止です。

 ちなみに全滅した『Hope』の精鋭は20~30lvとありますが、シードや高性能装備の恩恵が無い為皆さんの想像よりも大分弱い戦力でした。
 当然拠点に残る残存の戦力はお察し下さい状態です。しかしそれでも彼等は拠点を守る為に退かないでしょう。
 彼等の帰る場所は其処だけなのですから。

 時間帯は夜、戦場となる拠点は人里離れた場所にある施設です。
 上空から降下となり、特に作戦等の都合がなければパラシュートでの落下になります。風は其れなりに吹いています。

 賢者の石はペリーシュナイトのどれかが腹の中に所持しているでしょう。
 ではお気が向かれましたらどうぞ。


 このシナリオに成功すると賢者の石が手に入り、賢者の石の欠片(リセットアイテム)が購買に補充される可能性があります。

参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
ハイジーニアスデュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
ノワールオルールクロスイージス
ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)
ジーニアスクロスイージス
シビリズ・ジークベルト(BNE003364)
ハイジーニアスホーリーメイガス
海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)
ジーニアスデュランダル
五十川 夜桜(BNE004729)
ビーストハーフダークナイト
テレザ・ファルスキー(BNE004875)


 夜空を行くはアークの専用輸送機。
 白い雲の切れ間から、リベリスタ達にとっては遠い異国の大地が黒に染まって闇と見える。
 高高度からの降下、それも夜間に行なうともなれば幾度と無く効果訓練を積んだ熟練者であろうと緊張を強いられる行為である筈なのに、
「風斗君、下着みちゃだめよ! あと海依音、蛇怖いわ」
 何をカマトトぶってるのか、随分と余裕のある言葉を吐くのは『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)、捨てた筈の神の愛を金で売る女。……或いは対価を受け取った仕事だと言い訳が出来るのならば進んで癒しを行なえると張り切ってしまう捻くれ者で、結局は優しいシスター。
 そう、リベリスタ達にとっては慣れぬ降下も所詮は前提に過ぎない。本番はあくまで降下後のペリーシュナイト達との戦いなのだ。
 高々高さ程度で怯んだり緊張してはいられない。
 そんな心算も無いのにいきなり不名誉な濡れ衣を着せられかける『不滅の剣』楠神 風斗(BNE001434)は聞こえぬフリをして剣の握りを確めた。
 勿論そんな訳無いだろうと言い返したい気持ちがない訳ではないだろうが、その剣で数々のフィクサードを叩き切って来た風斗とて勝てぬ相手は居るのだ。
 一言返せば更に三言が返って来て、どうせ手玉に取られるのは目に見えている。それに風斗の場合は意図せぬままに行なわれた前科が割合と多くあるのでそれを突かれるのも面白くは無かった。
「蛇など、都市で日常生活をしていると滅多に見ませんので、慣れようにも無理がありますわね」
 やんわりと、言い返さぬ風斗の代わりに横合いから口を挟んだのは『朱蛇』テレザ・ファルスキー(BNE004875)である。
 テレザも戦闘を前に昂ぶるのだろうか、薄っすらと口元に浮かべた柔らかな笑みは、その柔らかさとは裏腹に何処か鎌首を擡げた蛇を思わせて……、その時ガクンと輸送機が揺れた。
 目的地を間近に、輸送機が高度を下げ始めたのだ。せめて雲の下までは出ねば千里眼を持たぬリベリスタ達が降下のポイントを認識するのが難しいからである。
「ミラノはヴィスコンティの紋章、バスク神話の雷神、そして古代中世の怪蛇……、能力もモチーフに沿う等、W・Pも凝った事をしますね」
 最後にもう一度資料に目を通し頷くは『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)。
 ビショーネ、シュガール、ヤクルスの名前のみでその来歴に思い当たる知識の深さ、あらゆる物から『護る』為に広くを識る騎士としてのユーディスの教養は、それはもう1つの武器とも言って良い。
 知識は妄信すれば時に枷となる諸刃の刃だが、ユーディスは信徒でなく騎士である。武器を正しく扱う者なのだ。
 故に彼女は資料に足りぬ情報を想像で埋めて備えはすれどその全てを鵜呑みにはしない。敵が伝承の其れその物でなく、能力は添えどモチーフに過ぎぬ事を正しく認識していた。
 輸送機の床が開く。眼下の遥か遠くに、一瞬何かが青白い光を放った。
 既に襲撃は始まっているのだろう。だとすれば先の光は銅の雷蛇が放った雷光か。
 海依音の詠唱に、リベリスタ達の背に小さな羽根が付与される。パラシュート代わりの、パラシュートより遥かに便利な空を舞う手段、翼の加護。
 そして再び地上で青白い光が煌めいた。そう、間違いなくあの場所で戦いが起きているのだ。
「たかだか建物のために命を捨てるような面白みの無いリベリスタには、勝手に死んでいただいて構わないのですが」
 ペルソナの仮面を心に深く被せ、テレザは言葉を吐く。
 無論『Hope』、地上で勝ち目の無い戦いに身を投じる彼等にとって、拠点が単なる建物でない事位は承知の上だ。
 活動の為の機能を備え、訓練をする場であり、生活の場であり、集合場所であり、帰る場所でもある。形は小さくともアークのリベリスタ達にとっての三高平市と何ら変わらぬ。
 だが其処に其れだけの価値が彼等にあると判っても尚、命と引き換えにするには足りないのだと。
 自分たちで撤退する事を選べぬのなら、仕事だから、助けを乞われたから、或いはペリーシュナイトを潰すついでに、救ってやろうとリベリスタ達は空へと其の身を投げ出した。


 其の三種の蛇は正に絶望であった。
 銅の雷蛇に切り掛かったHopeのリベリスタはろくなダメージも与えられぬままにカウンターの雷光に囚われ成す術なく身の自由を奪われ、動けぬ彼等を悠々と大喰らいの石蛇が飲み込んで行く。
 近接攻撃を避け、マジックアロー、マジックミサイル等で対抗しようとしたメイガス達や、1$シュートを放つ銃手も居たけれど、銅の雷蛇の雷光に拠点の電気設備はショートしまい、灯りを奪われた彼等に夜闇が敵となって視界を覆う。最も、視界が良好だったとしても石や金属の彫像である敵に対して彼等の貧弱な火力が何処まで通じたかは甚だ疑問であるけれど。
 そして夜闇から不可視の敵が飛来し、哀れな彼等の背から心の臓に届く、槍の様に長い青銅の牙を突き立てる。
 士気等とっくに崩壊していた。Hope、彼等の先輩たる精鋭達が敗れた時に希望は絶たれたのだ。希望が絶たれば其処には絶望が顔を出す。
 それでも逃げない理由は唯一つ、此処より他に行く場所など彼等は知らぬ。
 彼等の先輩は命を失いながらも時間を稼いだ。
 稼いだ時間はどうやらHopeにとっては無駄になってしまったが、此処より他の組織には未だ意味がある筈だと、彼等を導いた先輩達と同様の事を成さんと、震える手足を、隣の仲間が倒れる度に出そうになる叫びを、意志の力で押さえつけて唯の一度でも多く攻撃を繰り出す。
 指揮を取る者も居らず、バラバラに、無様に、悲壮に、必死に、凄惨に、彼等は命を諦めながら戦い散って行くのだ。
 故に、其れが飛来した時、最初は何が起きたのかを彼等は理解できなかった。
 また1人、動けぬHopeのリベリスタが大喰らいの石蛇に飲み込まれようとした時、空より飛来した何かが、彼等があれ程何をやってもびくともしなかった石の巨体をはじき飛ばす。
「救援にきた! この場所を護る手伝いをさせてくれ!」
 其の飛来した何か、Hopeのリベリスタからすれば決して自分等と同種の生物とは認めがたい、圧倒的に隔絶した力を持つデュランダル、風斗は移動中に仲間に教えて貰った、発音も滅茶苦茶で彼等には全く通じない付け焼刃の英語で無意味に呼び掛ける。
 最もパニックに陥っていたのは、風斗に今救われたばかりの地に横たわる1人だっただろう。
 彼等の先輩達も、彼等とは比較にならない実力を持っていた。だが其の先輩達の力は未だ理解が可能だった。訓練と戦いの経験を積めば、何時かはああなれるだろうと憧れる事も出来た。
 けれど眼前に現れた、風斗は違う。貧相な東洋人の体格とは裏腹の化物染みた膂力や、寒気がする程に力と存在を主張する武具は、神秘後進国と言われるこの国のリベリスタには決して届きようが無い物だから。
 しかし、化物と呼ぶより他に無い力を持っていようとも、彼等が味方である事は心で感じ取れた。
 何故なら、風斗の攻撃に怯んだ石蛇に追撃のハイメガクラッシュを叩き込む更に小柄な少女、風斗の服の裾を掴む事でぴったり離れず舞い降りた五十川 夜桜(BNE004729)は紛れも無く怒っていたから。
 眼前の敵に夜桜が感じる怒りは純粋だ。ペリーシュナイトや賢者の石と言った背景など難しい事は良く判らないが、其の非道が産む悲しみだけは理解出来る。許せない。
『あたしはもう悲しみの涙を誰にも流させない!』
 其れが彼女の信念だ。夜桜の純粋な其れは、国境、人種の違い、言葉の壁、そして畏れをも越えて、異国のリベリスタの心に、彼女が紛れも無くリベリスタである事、自分たちの為に怒ってくれている味方である事、その優しさを理解させた。
 更に其れを後押ししたのは、『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)に依って付与された加護、黄昏の聖戦すらをも戦い抜く力を授けると言われる、戦士の心身を賦活させるラグナロクの、身体と心の底から力が沸き起こる感覚に、心の絶望が拭われる。
「よろしければ加勢させてもらっていいかしら、ワタシ達は日本のアークのものです」
 そして海依音が名乗る、神秘界隈では東洋の空白地帯とすら言われた日本から、僅かな年月で其の名を世界に響かせた歪夜を討つ者、『アーク』の名前にHopeの幾人かが理解の色を示した。
 遥か彼方より深い闇を払う光がやって来たのだと。彼等の先輩、同胞達の死は、決して無駄にならなかったのだと。


「さぁ死合おうか!」
 シビリズの放った裂帛の気合に、大気が震える。
 6人のリベリスタ達は誰一人欠けず逸れず戦場に降り立つ。
 無論其れは神の加護でも奇跡でも無く、彼等の備えの賜物だ。
 上空の風は強く吹いていたし、戦闘で発せられる音や光だけでは着地地点を見定めるのは夜闇の中では困難だった。
 けれど彼等は風に流されやすいパラシュートを使用せず海依音の翼の加護で、テレザの小型ライトを目標に全員の合流と、そしてユーディス、夜桜、テレザ等の暗視を持つ半数が残る半数とペアになって着地地点に導く事で、一人の欠員も出さずに最短時間での降下を成し遂げて見せたのだ。
「石の力を補填する為に神秘存在を見境なく喰らって取り込む等と……、そんなくだらない事の為に、これ以上の犠牲は出させません」
 敢然として振るわれる槍が雷光を裂く。
 降り立ったリベリスタ達が最初に行なったのは、ペリーシュナイトとHopeのリベリスタ達の切り離しだ。
 ユーディスが銅の雷蛇を抑え、姿見えぬ青銅の槍蛇にはシビリズが警戒を、大喰らいの石蛇を風斗、夜桜、テレザの三人が叩き、そして全体のフォローをするのが海依音である。
「下がれとまでは言いませんが、無理はなさらないでくださいね。捕食される可能性がありますので、戦闘不能の方を保護してくださいな」
 そうHopeへと呼びかけた海依音だが、……彼等とて先の一手を見てもう理解している。
 今此処から始まるのが次元の違う、自分たちには関わり様も無い、世界のレベルの戦いである事を。
 そして恐らくは、やって来たアークのリベリスタが僅か、……そう、この恐ろしい敵、ペリーシュナイトに対して僅か6名しか来ていないのは、それで充分に事が足りるからである事を。
 出る幕等あろう筈がない。其の圧倒的な隔絶に理不尽さを感じぬ訳ではなかったけれど……、それでも唯目を離せずに、Hopeのリベリスタ達は負傷者を抱えて引き下がる。
 この戦いを、逃さず必死に見て取る為に。

 実際、アークのリベリスタ達は万全と呼んで差し支えない体勢を取っていた。
 例えばユーディスのクロスジハードでWPの底上げをされた海依音は高い確率で槍蛇の不可視の力を打ち破り、ジャッジメントレイ、裁きの閃光で逃さず敵にダメージを刻む。
 不可視の力は例え居場所を教えられようと己の意思の力で打ち破らねば其の所在を見通す事は叶わないが、それでも槍蛇の前に立っているのはシビリズだ。よりにもよってシビリズだ。
 姿見えぬ槍蛇の奇襲は確かに決まり、背後より長い牙が致命打、心の臓を確かに貫いた筈なのに……、それでもシビリズの息の根は止まらない。
 類稀なるタフさで日本のフィクサード達に嫌な顔をされるシビリズは、心臓すらがタフなのだ。例え穴が開こうがお構いなしに動き続ける。
 無論穴の開いた心臓からは血液が零れ続ける為、ラグナロクや癒し手からの癒しが無ければ危なかっただろうけど、痛みに嗤うシビリズは寧ろ嬉々として攻撃により所在の知れた槍蛇に反撃のラストクルセイドを叩き込む。
 そしてリベリスタに圧されるは槍蛇ばかりではなく雷蛇も同様だ。
 雷蛇の前に立つユーディスは身に纏わり付く雷光を意に介せず魔力を秘めた槍を振るう。
 並みの者なら攻撃した武器を介して、敵対者の体を怯ませ、縛る筈の雷蛇の雷神としての力がユーディスには全く通じないのだ。
 意志の力で抵抗して持ち直しているなら、其の抵抗が失敗するまで幾度も付与し続ければ良い。シビリズの様に聖骸闘衣と言った自付で状態異常を無効化しているなら、その自付を引き剥がせば良い。
 けれどユーディスは違う。己が内に秘めたる力、絶対者と呼ばれる其れにより、雷の副次効果を無視して動く。
 雷光によるダメージは流石のユーディスにも通るし、複数を相手に放つ事でダメージソースとしての役割は雷蛇も果たしていたけれど……、それでも最も脅威である筈の反撃状態異常付与が封じられてしまう影響は非常に大きい。
 実の所、万華鏡が無かったが故に予知に現れなかった能力として、以前アークのリベリスタが遭遇した別の彫像型ペリーシュナイトも所持していたサイズ故に単体でのブロックを無効化する力をこの雷蛇や大喰らいの石蛇も持っていたのだが、この状況下ではさしたる意味を発揮しなかった。
 Hopeのリベリスタがちょろちょろと動き回っているならば兎も角、賢者の石の滋養とするなら圧倒的に優れたアークのリベリスタが眼前にいる以上、それに背を向ける危険を冒して囲みを突破してHopeを襲う意味は無い。

 とは言え全ての戦いが苦戦無く進む筈は勿論無い。相手は悪名高いペリーシュナイトなのだから。
 残る一体、大喰らいの石蛇との戦いは最も多くの人数を割り振られたにも関わらず、些か厳しい物となっていた。
 真っ先に落とすべしと多くの攻撃手を割り振った石蛇だが、けれどもこの個体の実力は槍蛇や雷蛇に比べて明らかに高かったのだ。
 タフさ、動きの鋭さ、的確さ、全てが他の二体を上回る。銅や青銅、石材といった素材の違いは有るのかも知れない。彼等の創造主たるウィルモフ・ペリーシュが気まぐれに石蛇の作成にのみ多くの魔力を割いたのかも知れない。
 けれど、しかし、恐らく、最も考えられる要因としては、この地にあった賢者の石を取り込んだのが他ならぬこの大喰らいの石蛇だったからだろう。
 そして、石蛇と相対する最大火力である風斗が其の顎門に飲み込まれる。まあ風斗が犠牲に選ばれたのは火力以外にもう1つ理由があったのだけれど。


 大蛇に飲み込まれたなら、先ずは周囲からの締め付けによって全身の骨を砕かれて死ぬ事になる。
 大喰らいの石蛇も其れは同様で、……先に散々Hopeのリベリスタを飲み込んでいたのに跡形も無い事を見れば其れのみでない事も明らかなのだけれど、風斗も強烈な締め付けによって身動きが取れず、それどころか割合タフな前衛である筈の彼でさえ骨が軋み砕けていく。
 そして風斗が選ばれたそれだけでないもう1つ、Hopeのリベリスタを跡形も無くした、風斗のみでなく身に付けた武器や防具といったアーティファクトまでをも対象とした消化も同時に始まった。
 要するに風斗が犠牲に選ばれた理由とは、スタイルの良い女性であるテレザを剥くのは割りと色々危ないし、まだ年若い少女である夜桜に至ってはもっとはっきりデンジャーだからである。勿論そっちの方が需要があるのは重々承知しているのだけれど……。
 其の点風斗の場合は男だし、女性が剥かれる位なら自分が辱めを受ける程度の男気はある筈なので全く何ら問題が無い。
 とは言え風斗が全裸にされる、或いは社会的にも物理的にも死を迎えるのを黙ってみている必要も特には無いので、当然テレザと夜桜の二人が助けに入る。
 テレザが石蛇の硬い身体に突き立てるは、真紅に染まったコンバット・ナイフ。血を啜る赤い魔具での一撃、奪命剣は致命を与え、風斗へのダメージが石蛇の体力に変換されるのを防ぐと同時に……、其の攻撃自体が次の、風斗の救出の本命である夜桜のハイメガクラッシュから気を逸らす為の布石だ。
 コンバットナイフを突き立て続けるテレザを振り払わんと石蛇が気をとられたその隙に、夜桜が狙うは巨体の中でも一層膨らんだ、飲み込まれた風斗其の物だ。
 本来ならば寧ろ其の部分だけは避けてあげたいと思っていた夜桜だけど、半端な行為で風斗を助け損ねれば、警戒した石蛇は決して二度目を許さぬだろう。
 一撃で確実に決める必要があった。例え中の風斗にダメージを与える事になろうとも。
 振るう夜桜のハイメガクラッシュは的確に石蛇の中に囚われた風斗の身体を捉え、彼の体はまるで滑るように石蛇の口から弾き出される。

 そうして再び石蛇に対する攻撃手が3人になり、ユーディス、シビリズは雷蛇と槍蛇を抑え続け、海依音の回復が飛んでリベリスタの体勢が立て直されれば……、風斗の服が半ば溶けている事以外には問題が無く、テレザの奪命剣が再び突き刺さり、後ろに回りこんだ夜桜に意識を逸らした瞬間、風斗の剛刃、120%が大喰らいの石蛇の頭部を砕く。
 全ての決着が付くには未だ少しの時間を必要としたけれど、それでもリベリスタの勝ちは動かずに、やがて彼等は幾つもの命で育ってしまった赤い輝きを其の手にする。




■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様でした。
 敵の能力には良く対応がされてたと思います。
 お気に召したら幸いです。