●ラトニャ・ル・テップという存在 ブリーディングルームに集まったリベリスタ達を、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が出迎える。リベリスタが集まったことには安堵していたようだが、イヴの表情は険しい。彼女は早速とばかりに、今回の依頼内容を語り始めた。 「日本全国で同時に、しかもいくつもの場所で大規模な事件が起きる」 欧州を震源地にして、昨今頻発している極めて無残なアザーバイド事件群が日本をターゲットに定めたようだ。 通常のフィクサード事件やエリューション事件とは桁外れの危険性、被害規模が推測される事から、アークはこの対応に全力を挙げる事になるだろう。 「この事件は、『ラトニャ・ル・テップ』という少女が大きく影響していると推測される」 先のオルクス・パラストからの調査依頼で遭遇した、異世界の神を名乗った存在。この世界の『恐怖神話』にも語られる存在は『ニャルラトテップ』そのものではないが、物語が真実を口伝のように伝えている可能性は否めない。部分的にそれに近しい存在なのかも知れない。 実際の所の正体が完全に判明した訳ではないが、シトリィンの追加調査によれば現在のラトニャは同時にバロックナイツの一員、厳かなる歪夜十三使徒第四位『The Terror』であると考えて間違いないらしい。彼女自身もラトニャに遭遇した事があり、『暗黒の森の大消失』と呼ばれる事件では当時のリベリスタ組織『クラウン・アクト』が壊滅する大敗を喫した事があるとの事だ。 「彼女が本当にミラーミスだとするなら、同じ世界のアザーバイドが『侵略』の動きをしてもおかしくない」 ラトニャの目的は不明だが、調査隊の受けた感触からして彼女がアークに強い関心を持っているのは間違いない。 ●怪物に襲われる街 イヴの話は続く。 「皆には、福岡県福岡市に行ってほしい」 福岡県福岡市。ここが敵に狙われてしまうのだという。そこに突如現れたのは、肉塊という表現が最も近い怪物達だ。 滅茶苦茶に口と触手の生えた肉塊に獣の四本足が生えたモノ、イカのような足にいくつもの魚のような頭が蠢くモノだ。これらが無数に福岡の市街地へと現れている。いずれもアザーバイドであり、ラトニャと同じ世界からやってきている。 「怪物が出現するのは、博多、天神、それに中洲の3か所。同時に出るから、皆には3手に分かれることになる」 イヴが挙げた3ヶ所は、交通の拠点となる博多、福岡の中心地である天神、そして、九州最大の歓楽街である中洲だ。後2点は比較的近いが、博多はやや距離がある。3手に分かれて怪物を討伐するのが妥当だろう。 ところで、今回の事件については、万華鏡の感知タイミングが遅れている。理由はそれが余りにも唐突だったからだ。何の前触れも無く生じたこの異変について、被害を完全に防ぐ事は難しいだろう。 状況はシビアだ。それでも、できる限り何とかせねばならないだろう。 詳しくは資料を確認してほしいと話を締めた後、イヴはリベリスタ一人一人の顔を見上げた後で、続けた。 「ほっとくと、日本が崩界の震源地になりかねない。危険だけど、皆に全力で事件解決に当たってほしい」 リベリスタ達はその為にこの場に駆けつけていると意気込むと、イヴは少しだけ嬉しそうに頷き、うさぎのぬいぐるみを抱きしめた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:なちゅい | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2014年05月21日(水)22:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●筑前を襲う異形達 昼下がりの博多の街。 ここは九州最大の都市。駅前はかなりの数の人が行き交う。 そこへ、突如として異形の怪物が現れる。触手と口とが固まったモノ、イカの足といくつもの魚の頭が付いたモノ。おぞましい化け物を目にした人々は、市街地側に向けて逃げ出す。 化け物は人々を振り返り、見た目以上に素早い動きで飛びかかる。触手が手近な者をつかみ取ると、甲高い声で悲鳴が起こった。捕らえられたら死ぬ。直観でそう考えた人々は力の限りその場から逃げ出す。 駅で一度携帯を確認した、『剣龍帝』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)は、慌てふためく駅員を捕まえ、駅員と一緒に駅の事務所へと向かっていった。 さらに、市街地側から走ってきたのは、アークから派遣されたリベリスタだ。彼らは異形へと立ち向かうべく、福岡までやってきたのだ。 強結界を張る『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)は、怪物が襲い掛かる光景に呆れる。 「……ったく、いくらワケの分からない敵でも、やることは同じね」 涼子は『敵には違いないんだから、そりゃ、そうかもしれないけどさ』と呟きながらも、一般人を捕らえた怪物へと向かう。 ほぼ時を同じくして、駅とその周辺に鳴り響く放送。それは、竜一が駅長をリベリスタとしての力で懐柔した結果だ。彼は人的被害を小さくすべく、駅の封鎖、駅員、客の避難を進めていたのだ。駅はシャッターが締められ、簡単には侵入できなくなってしまう。 魚の頭、いくつもの口、触手。『慈愛と背徳の女教師』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)は醜悪な見た目の敵に顔を顰めてしまう。 「全く……魚介類だか大いなる物だか知らないけれど、ミラーミスの思い通りにはさせないわよ」 「ともあれ俺達がやることは1つだ。少しでも被害を失くすために、俺みたいな不幸を作らない為に俺達はこの場に存在しているんだ」 『咢』二十六木 華(BNE004943)は怪物の見た目に嫌悪感を抱きながらも、全力で敵へと迫っていく。このアザーバイド達を倒す為に。 そこから少し西、九州一の繁華街、天神。この地も、怪物による強襲を受けていた。道路上に突如現れた怪物が往来する車両を向き、口から舌なめずりをしている。危険を感じた運転手は車をUターンさせ、あるいは、愛車を乗り捨てて逃げ出す。 そこへ向かうのは、やはりリベリスタだ。3人がトラックで現場へと近づいていく。道路前方には異形の姿がある。その為、『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)がすでに強結界を展開し、周辺の人払いを試みていた。 「ふむ、此度の異形は、この世あらざる、という言葉が良く似合いますね」 中性的な風貌の『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)の言葉に、トラックの荷台に座る『Nameless Raven』害獣谷 羽海(BNE004957)はううんと唸りこむ。バイクを希望した彼女だが、已む無くこうして荷台でちょこんと腰かけている。 「クトゥルフって普通のエリューションとどう違うんだろ」 その違いはどうあれ、人が襲われるのを放置できない。彼女の言葉とほぼ同時に、トラックは横倒しになり、あたかも事故のように往来していた車が止まる。幸運にもその場を挟む交差点は赤信号。一時的に道路の流れを止めたことは、一般人の避難にはプラスへと働く。 「全く、数を出して脅せばいいってものでもないと思うけど。恐怖をばら撒くならこれ以上ない方策だな」 この世にあらざる生物。それが何匹も現れると、それは畏怖の対象となる。杏樹は内心納得しながらも、トラックから降りて一般人の誘導を始める。 「早く、建物の中へ!」 杏樹が指を差すと、一般人は急いで近場の建物に避難していく。 「こちらに逃げてください!」 同じく、アラストールは怪物が出現しない西方向へと一般人を誘導する。その間にも怪物は数台の車を触手で絡みとってしまっていた。メンバー達は捕まった人々を助けるべく、異形の討伐へと乗り出していく。 天神からやや距離を置いて中洲がある。歓楽街として知られるこの地にも怪物が現れていた。 他の場所に向かった仲間よろしく、『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)が強結界を使う。人通りの少ない昼間だ。ここへと立ち入る者はこれでほとんどいなくなることだろう。 だが、問題は、この近場に住み、あるいは働く者達だ。怪物達はそんな人々をあぶりだすかのように、建物の破壊を始めていた。 メンバーはそれを阻止すべく全力で移動していく。不気味な怪物を前にして、『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)は真顔で『街中にこんなのが彷徨いてたら即SAN値チェックなのだわ』などと考える。果たして、その見た目は精神に影響を及ぼすのか。 「何でこいつらそんなに触手押しなのかしらね?」 ふと、エナーシアはその見た目について考える。しかしながら、そんな彼女の疑問はどこへやら。その見た目に嫌悪を覚える仲間達は、怪物に凛然と立ち向かう。 「気味の悪い化け物共がわさわさと……」 おそましい見た目の怪物に『墓堀』ランディ・益母(BNE001403)が毒づくのに対して、エナーシアがそうかしらと首を傾げる。 (「……私は可愛いと思うけど」) 感性の違いはさておき、怪物を止めねばならない。その点では一致しているメンバー達は、建物を壊す怪物に肉薄していくのである。 ●怪物から人々を守るべく 博多。 駅を封鎖し、さらに人々の避難誘導を行うメンバー達。迅速でかつ的確な行動は功を奏している。多くの人々が怪物の手の届かない場所へと離れていた。 しかし、すでに4体いる怪物に女性2人と男性1人が捕らえられていた。その人達を助ける為、メンバーは怪物へと駆け寄る。 「わたしを喰いちぎってみなよ。一噛みで終わるような人じゃなくて」 触手で女性を捕まえる四つ足を挑発する涼子。怪物は悲鳴を上げる女性と涼子とを見比べる。そして、涼子に興味を持ったのか、ゆらりと動き始めた。拘束が解けた女性は地面へと落下し、力が抜けたのか這うように離れていく。 こちらは華。やはり、捕まる人質を気にしている。 「お前等の相手は俺達だ。間違えんな、異形共!!」 彼は颯爽と駆け、魚頭の怪物に斬りかかる。グエエと気持ちの悪い声を上げたものの、魚頭は男性を捕まえたままだ。そこへ、事前に力を高めていたティアリアが怪物へと差し向けた指先で、その精神力を奪い取る。 3対4での争いが続く。人質となった2人が傷つかないよう注意しながら、リベリスタは攻撃を繰り返す。捕らえられた男女を気にして思うように戦えなかったのは大きいが、敵を怒らせながら戦う戦法は有効だった。敵は涼子や華へと怒りを覚え、女性を触手からするりと離してしまう。 ここぞと、涼子は暴れ狂う大蛇のように敵陣へと銃を撃ち放つ。魚頭がいくつかの頭部を撃ち貫かれ、体液を流して倒れ行く。怪物の死によって最後の人質だった男性が解放され、その場から逃げ出す。 そこへ現れたのは、竜一だ。駅の壁を走って近づく彼は戦気を纏いながら落下し、渾身の一撃を四つ足へとお見舞いする! たくさんの口から嗚咽が漏れた。怪物にも痛覚は存在するらしい。 「駅長さん達に無理させたんだ。ここで、そうさせた俺がヘマするわけにはいかないんでね!」 とはいえ、人々の解放に成功した博多組。後は怪物相手に専念するのみだ。 天神。 人々は車すらも乗り捨て、この場から逃げ出す。長い目でみると、交通が麻痺してしまったのは、良し悪しとなっていた。確かにこの場を訪れる者は減るが、車で逃げたい人にとって見れば、邪魔にしかならない。 「走れ!」 右往左往して避難ができない人々へと杏樹は叫ぶ。わけもわからずかけられた声に圧倒された人々は、近くの建物を目指す。 そして、そちらへと敵の注意が働かないようリベリスタは敵を挑発する。闘気を纏った羽海がものすごい勢いで魚頭へと駆け、手にいた鋭い棘と共に敵へと突進し、吹き飛ばす。触手が絡みとっていた車を手放し、後方へと吹っ飛んでいく。停車していた車数台が巻き込まれ、鉄くずと化した。 手放した車からは怪我を負いながらも乗車していた人が下りて逃げ始める。魚頭は触手から車が零れ落ちたのに視線を傾けた。……そもそも視覚として認識しているかは怪しいが。 「壊し足りないならうみを壊せば? 相手になるよ」 敵は魚の口から舌を出し、羽海に向けてかぶりついていく。 さて、四つ足もまた、車を捕まえて弄んでいる。どうやれば中にいる人が出てくるのか、こねくり回しているらしい。その姿はまさしく、とある神話に現れる怪物を彷彿とさせる。 「ううむ、まごうことなき暗黒神話大系」 その姿は悪魔か、邪神か。しかしながら、リベリスタにはそれに対抗する術がある。 「抗えないものではないと、我らリベリスタで証明してみせましょう」 敵を見据えるアラストールは、しばし考えて敵へと叫びかけた。 「さあ、かかってきなさい。……私が怖いのですか?」 アラストールの言葉苛立つ怪物。聴覚があるかどうかは分からないが、四つ足はそれを認識して声の主へと襲い掛かる。 避難誘導を行っていた杏樹も戦いに加わる。どうやら、近辺にいた人々はこの場から退避できたようだ。 「さぁこい怪物ども。その恐怖、この場で焼き尽くしてやる」 彼女は視認できる怪物達へと燃え上がる魔力の矢を空から突き落とす。炎に包まれる怪物がおぞましい叫び声を上げた。 中洲。 人の往来が少ないこともあり、人的被害は未だない。 ただ、敵の数は他の箇所の倍。メンバー達はかなりの苦戦を強いられていた。 ランディの両手の斧が怪物の身を大きく引き裂く。裂いた傷口からは緑色の体液がこぼれ出る。とてもではないが、食欲をそそる色ではない。傷口から溢れ出る体液が彼へと浴びせかけられ、その身を毒へと侵す。 「皆殺しにした所でこいつら煮ても焼いても食えそうにねーな」 『おかしら』はあるようだがと考えるランディ。頭はいっぱいあるが、尾は確認ができない。 フツは符術を使い、四神朱雀を呼び出す。一声いなないた朱雀は、燃え上がる炎で建物狙う怪物の体を燃やしていく。 その間も、四つ足が建物を壊し続ける。建物が限界と感じた人々が表に現れて逃げ出そうとするが、別の魚頭が襲い掛かった。 鳴り響く銃声。エナーシアの弾丸が数体の魚頭を穿ったのだ。 「鉛弾をサービスよ」 外で起こっている出来事が理解できずにいた人々を見ることなく、エナーシアは言葉を続ける。 「死にたくなければ逃げるのね」 とにかく、今は敵を。エナーシアは距離を取りつつ、鉛玉を怪物へと撃ちこんでいった。 ●戦況は明暗分かれて 博多班は竜一が加わり、かなり優勢に敵を追いつめていた。残る3体の四つ足へと狙いを固める。 傷口の自己修復を行う怪物達は時折、気まぐれに周囲へと目を向けるが、竜一が一般人に注意など払わせはしない。彼は刀を振りかぶり、ありったけの力で怪物へと叩きつける。そいつは吹っ飛びながらも体を破裂させ、四本の足が道路へと転げ落ちた。 リベリスタを獲物として認識しているのか、四つ足はリベリスタへとのしかかり、そして食らいつくことで自身の体力を回復させる。 その間もティアリアが敵の精神力を奪いとっていた。敵の動きが鈍ったのを見計らった涼子が銃を構え、敵の口の一つに鉛玉をぶち込む! がっくりと倒れる怪物。仲間の死を気すら留めずに触手を絡めつける四つ足。それを涼子が簡単に裁いてしまうと、彼女はため息をついて敵を挑発する。 「もう終わり?」 多くの口が怒りで吠える。そのまま四つ足は涼子を食らわんとするが、華がそいつへと先に躍りかかる。 「こんな馬鹿げた状況、終わらせるんだ」 自身に秘めた力を瞬時に滾らせ、彼は斬撃としてそれを四つ足へと浴びせかける。怪物はばっくりと二つに割れ、道路の上へと潰れたのだった。 天神班は道路を封鎖しながらも、怪物の討伐を目指す。 アラストールが敵を引きつつ、羽海が衝撃波を伴って魚頭を棘で貫く。叫ぶ怪物に杏樹が焔の矢を落すと、そいつは消し炭と化していく。 「恐怖神話の怪物? 暴れるだけの肉塊ならいくつも見てきたぞ」 四つ足は杏樹の言葉を気に留める様子もなく、触手に埋もれるようについた多くの口をこれでもかと開き、または鈍重そうに見える体を跳躍させ、杏樹の真上にのしかかる。自らの骨が折れる音を彼女は確かに聞いた。 しかしながら、引き下がるわけにはいかない。敵に近接していたアラストールが味方全員に加護を与えて援護を行うと、傷つけても回復を図る怪物に、メンバー達はそれ以上の力で怪物に攻撃を叩き込む。 羽海が突進した後に繰り出した一撃。ついに四つ足が倒れた。残る1体に、メンバー達は更なる攻撃を繰り出す。 「これで、終わりだ」 祈りの剣が神気を帯びる。アラストールは四つ足の体の中心を十字に切り裂くと、体液を吹き出してそいつは絶命したのだった。 中洲班は苦戦を強いられていた。 抑えることのできない怪物が建物を次々に狙い、破壊を企てる。 倒壊を始める建物。逃げ遅れた人々が瓦礫の中へ閉じ込められてしまう。 フツが助け出そうとするものの、倒壊を起こす建物は1棟だけではない。ほぼ同時に崩れ去る建物から、人々が逃げ出す。博多、天神よりも人数は少ないが、この場から逃げ出すことのできない人がいた。 「待ってろ、今助けるからな!」 フツは攻撃の手を止め、逃げ遅れた人々の避難に当たる。それがランディ、エナーシアの負担を大きくしてしまう。銃砲を発射するエナーシアの弾丸は化け物を穿つ。その身に鉛玉を飲み込みながらも、敵は攻撃を仕掛けるリベリスタを相手にする。 ランディの傷は徐々に大きくなっていた。一度に2体を相手する彼は両手の斧を振るい、魚頭の顔を刻む。ただ、その顔でかぶりつかれた彼に天は味方するのを止めてしまった。ランディの斧が空振りしたその隙に、魚頭2体が一斉に体液を飛ばし、そして、足触手で締め付ける。ついに、その意識が途絶えそうになるものの、彼は運命に頼って気を強く持つ。 他の場所が無事に片が付いたことを、エナーシアはAFでの連絡で知る。しかし、中洲は……。 フツは怪物から触手で締め上げられ、体液で毒を受けながらも、一般人の誘導を行う。その目に、この場から離れゆく四つ足の姿が視界に映る。ただ、今はこの場にいる一般人の対処が先だ。 「こっちに逃げてくれ!」 瓦礫に囲まれて動けない人を庇い、フツは魚頭の体液をその身に浴びる。体内に入り込んだ毒は、彼の体を確実に蝕んでいった。 ランディにも余裕は見られず、気力だけで戦っているようだった。 (負けられないわ) 己の精神力が底を尽きかけていると感じたエナーシアは、早撃ちに徹する攻撃へと切り替える。距離を取ろうと戦いを試みる彼女だが、敵はしつこくエナーシアにまとわりつき、かぶりついてくる。 (……救援は、まだ、来ないの?) フツもエナーシアも、薄れゆく意識を運命を使って引き戻しながらも、力の限り怪物の殲滅、そして中洲を守ろうと戦い続ける。 ●守れなかった街 怪物を殲滅した博多班は中洲班の苦戦をAFで聞きつけ、移動を行う。竜一が魔眼の力でパトカーを呼び、その上で中洲へと急行していく。 中洲は、かなりの建物が壊されてしまっていた。崩れた建物で砂埃が上がる。強結界のおかげで野次馬が集まることがなかったのは幸いだったが、それでも、近隣の建物が、自分の店が被害にあったことを嘆く住人の姿もあった。 天神班も参戦し、幾体かの怪物は始末できたが、四つ足2体はこの場から行方を眩ませていた。近辺に人がいなくなったことで、怪物もいずこかへと移動してしまったようだ。竜一、涼子が周囲の捜索に当たるが、未だ四つ足の発見には至っていない。 閑散とした中洲の街。崩れ去った建物からは、所々人々の流した血の跡、そして、腕や足、中には頭だけが転がっており、いずれも体の一部だけが無残な状態になって転がっていた。中洲班3人は疲れ果て、深手を負ってしまっている。フツも、エナーシアも動けずにいた。ランディに至っては傷が深く、目覚める様子もない。 「……これが、恐怖か」 「抗うことができませんでしたか……」 その光景に、杏樹、アラストールは立ち尽くしたまま呟く。 「くっ……!」 華はやり場のない怒りを近くの壁へとぶつける。パラパラと壊れた漆喰が零れ落ちていった。 博多、天神班は中洲班3人の救護、そして、傷つく中洲の人々の対応に追われた。ティアリアは休む間もなく、傷つく人々の回復へと当たる。 中洲の街だけ救えなかった。その事実に愕然とするリベリスタ達。アークが到着するまでの間、一行はできることをと、1人でも多くの街の人を救おうと中洲の街を駆け回るのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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