● 「……ったく、夏だからってこんなボロボロの洋館で肝試しとか、ねぇだろ……!」 打ち捨てられ廃墟となった洋館は、一歩奥へと進むごとに薄気味の悪い空気が肌に纏わりつくようで居心地は悪い。 外で待っている仲間達へ軽く恨み言を零した少年は、懐中電灯で狭い回廊をの先を照らすと、『まだ先があるのか』と軽いため息を零した。 「鎧、気味が悪いね」 少年の傍らで一緒に歩いていた少女が周囲を見渡せば、回廊の左右には西洋甲冑が回廊の先までずらりと並べられている。 「だな、この通路に入ったらずっとだろ……ここの持ち主って何考えてたんだ」 「アンティーク趣味だとは思うけど、ちょっと多すぎる気がするわ」 この先には持ち主の大事な物でもあったのだろうか。回廊に並んだ西洋甲冑は、まるでこの先にあるだろう部屋を守るための衛兵とも思えた。 「まさかこの先の部屋にホントに宝でもあったりしてな?」 ニヤニヤと笑いながら、男らしく見せようと余裕ぶって言う少年だが、実際彼も内心では少しびびってしまっているらしく、余り余裕はない。 むしろ――。 「そんなのあるわけないでしょ、だったらこの家を捨ててどこかへ行くって事はないと思うけど」 共に進む少女の方が豪胆だった。 それもそうだと少年が頷きさらに一歩進んだその時、後ろから想像はしていても聞きたくはなかった音がその耳に届く。 ガチャリ……ガチャリ……。 「なぁ、なんか変な音が聞こえねぇ?」 「……聞こえるわね。それも鎧が歩いてくるような音が」 ここにいる2人が同じ音を聞いているのならば、それは幻聴ではないらしい。 「あいつ等の誰かが着てるのか?」 「それはないわ、私達より先回りして鎧を着るような時間はなかったはずよ」 そうこうしている間にも、迫ってくる鎧の足音はだんだんと近付いてくる。 「おい、どうす――!」 「逃げるわよ、走って!」 言うが早いか、少女は少年の手を取り奥へと駆け始めた。幸いにここは1F、変質者の類ならばこの先にある部屋の窓を突き破れば外へ逃げられない事もない。 ガチャン、ガチャン、ガチャン! 「おい、足音増えてるぞ、千鶴!」 「気にしない!」 バァン! と辿り着いた部屋のドアを開け放てば、彼等の眼前には月明かりが差し込む大きな窓の姿。 後ろから迫る足音は何人ものモノとなり、考えている余裕もない。 「くそ、鍵が……」 「どいて」 窓の鍵はすでに錆付き、開かずの窓になってしまっていた。ならば壊してしまえ。少女は近くに転がっていたボロ椅子を窓にたたきつけ……。 ガシャァーン! 「……はぁ、びびった……!」 「足音も聞こえないわね。どうやら外に逃げて正解だったみたい」 なんとか逃げおおせた少年と少女。だが恐怖心が際立ち息を荒げた少年とは対照的に、千鶴と呼ばれた少女は息も荒げず、冷静そのものだった――。 ● 「こういう時って意外と女の子が冷静な場合もありますよね」 それにしては少し冷静過ぎる部分もあるが、と付け加え、『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は集まったリベリスタ達の顔を見渡していく。 千鶴という少女は何やら場慣れしているというか、驚いていないと言うか――。 「それはさておき、これは西洋甲冑のE・ゴーレムですね。回廊に並んでいる甲冑の3体がエリューション化しているようです」 左右あわせて40体ほどずらりと並んだ西洋甲冑の内、動き出すのは3体。どれもフェーズは2。 回廊には昼間でもあまり光が差さないために視界も悪く、どの甲冑が動くかも近付いて動き始めるまではわからないらしい。 「しらみつぶしに破壊しながら進む方法もありますが……どうやら、並んだ鎧の中には価値のある甲冑も混じっているみたいなんですよ」 楽な方法を取れば、貴重な物も破壊してしまうかもしれないだろう。しかし普通に対処すれば被害が大きくなる可能性もある。 「どうするかは皆さん次第ですけど、後味が良いのは破壊しないほうでしょうか」 和泉のその言葉は、不利な戦況を覆して勝利を得られるはずだという信頼があるからこそ出たのだろう。 だがフェーズ2が3体という情況を省みれば、安全に攻めた方が良いのも事実。苦戦必至な戦いの中で、戦闘の影響を受けて甲冑が壊れる事もあるかもしれない。 「なお、回廊へと進むルートは2つあります。玄関からの道と、奥の部屋の窓から侵入する道ですね」 窓からの侵入を狙う場合は、先んじてエリューションと遭遇した千鶴達が破壊した窓から入る事になる。 場合によっては二手に別れて回廊で落ち合うといった戦術も取る事は出来るはずだ。 回廊自体は鎧が並んでいるため、それほどに広くはない。3人ほどが並ぶだけで精一杯の広さだと和泉は続けて言う。 「敵も相当に強く、戦場も細く長くとあまり戦闘に適してはいません。ですが……」 再び和泉はリベリスタ達の顔を見渡し、凛とした声で言葉を紡ぐ。 「あなた達なら、きっと勝てます。頑張ってくださいね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月15日(月)23:25 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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