●誰にでも出来る簡単なお仕事です。 「仕事としては、すごく簡単。だけど、多分すごくつらい」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、しばらく目を閉じていた。 これからリベリスタが受ける苦しみを、わずかでもわが身に受けようと天に祈るかのように。 これからリベリスタを過酷な現場に送り出す自分に罰を請うように。 やがて、ゆっくり目を開けると、ぺこりと頭を下げた。 「お願い。あなた達にしか頼めない」 苦しそうに訴える幼女、マジエンジェル。 だが、断る。なんて、言えるわけがなかった。 ●お仕事はお化け屋敷探索です。 「すでに解体が決まっている館。業者が入って何度も試みているんだけど、次々に作業員の具合が悪くなり、何度も頓挫」 え、それってまずくない? 「作業員は口々に『お化けが……』って言っているらしい」 あらたに地図が表示される。 静かな湖畔の別荘ってところか。 ブルジョワジー。 「目撃談によると、斧持ったのとか、白骨化した使用人のとか、こうもりの羽が生えてたりとか……」 あっはっは。 こわいね。どっかでみたことあるけど、こわいね。 「調べたら、ここ、一家惨殺事件があったところで……」 ということは……。 「ご家族、使用人全滅している」 ということは……。 「平たく、E・フォース。お気に入りの場所を壊されたくないという一念が、館に出没している」 あのさ、イヴさん。 そういうの、すごく簡単に言い表す言葉あるよね。 「まあ、特に悪さしない。出るだけ。でも、一般人に拡散すると非常にまずいので、解体をみんなでやってもらいたい。かなり古いし、それなりに作業はしてたので、後はリベリスタが馬鹿力で暴れてくれれば壊せるから」 でも、出るんだよね。 地……。 「E・フォース」 地縛……。 「この世のあらゆる神秘は、エリューション現象の仕業」 地縛れ……。 「あーあーあー聞こえないー」 どうしても認めない気だな、このフォーチュナ。 「戦闘にはならない。ばかばかしいと思うのもわかる。ストレスがたまると思う。でも大事な仕事」 イヴは、もう一度頭を下げた。 「お願い」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2014年04月19日(土)22:30 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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● 「イヴはこういうの苦手なんだ……へぇ……」 『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)、黒い微笑。 「…ところで、このお屋敷に出るエリューションって…その…本当にエリューションなんですの? エリューションかどうかよくわからない存在だったりしませんわよね?」 『残念系没落貴族』 綾小路 姫華(BNE004949)、この世のすべてはエリューションだって、イヴたんが言ってた。 「非現実的なもの大好物です! 不治の病(ちゅうにびょう)よ? ただし幽霊オメーは駄目だ」 小島 ヒロ子(BNE004871)、何か辛いことでもあったの? ● 「前にあった解体依頼は気のいい人らばっかだったけど、今回は明らかに地縛霊だよね」 虎美がバシッと言い切るのに精神的耳栓をしたものは少なくない。 「幽霊なんて今更怖くないし、ドンドン行くよ」 手には、銃である。 解体作業だと言うのに、拳銃が二丁である。 虎美にとって、それはいかなる重機に勝る。 「第一私にはお兄ちゃんがいる!ブレラヴァとハーレムが合わさって最強に見える……つまり私のお兄ちゃんは百八式まであるぞ!」 ハーレムの面子を全部同じにしたら、ハーレムにならないじゃないか。そんな風にお考えの紳士淑女もおられるかもしれない。 「まあ、大体殆ど同じ動きするんだけどね、お兄ちゃんだし」 しかし、ハーレムにする価値は十分にある。 各年代別おにいちゃん。軽装から重装甲、もちろん2Pコスチュームは言うに及ばず、デフォルメ、オニイチャンダヨー、ちょっと想定しただけで108式のモデルなど使い切ってしまうわ。 「これが――私の――」 そこから先は爆音にかき消されて聞こえない。 虎美の魔力を吸い込むだけ吸い込んで炸裂する星さえ砕く銃撃が、館の壁面一階と二階の境目の梁を粉砕し、重量に耐えかねた二階が一階部分に崩落する。 おばけを倒しに行け。ではなく、そのよりしろをぶっ壊しに行け。と、赤毛のフォーチュナは言った。 世の中には、お化けを惹き寄せてしまう罪作りな建物があるのだ。 「幸い方法判明してるし、一人きりじゃないってのが救いか」 そろそろお肌にフィルターを付けたいお年頃のヒロ子は、タオルとマスクでお顔ガードである。 「埃やアスベストも幽霊並に怖いので」 「作業着は助かりますわ」 送迎車の陰に隠れてのお着替え。至急品の作業着は、事前申請でジャストフィットだ。 (私、余り服を無駄にするわけにはいきませんから) アークからのお給金、貴族に相応しき格調高きものをと揃えている現在、主食は野菜の姫華さんには米食え米。と、進言したい。 (ガスマスクは…埃や粉塵の発生を考えると、付けた方が楽かしら……) どこからどう見ても、前に突き出した部分がグロテスクだ。貴族的にどうだろう。 「衝撃波来るぞ! 対ショック体勢!」 (は!?) 次の瞬間押し寄せてくる大量の粉塵に、拍手の代わりに止まらない咳とくしゃみを連発する羽目になった。 (が、ガスマスク、必要。不可欠……っ!!) そして、今日もリベリスタは学習する。 姫華、簡単なお仕事の最初の洗礼はハウスダストだった。 ● 「オヒョー!何か寒気すると思ったら、うっかり水着で来てたよ。まいったね、コリャ」 月杜・とら(BNE002285)、うっかりなんて、嘘だ。 「この世のあらゆる神秘は、エリューション現象の仕業。エリューション現象の仕業。ゆ、幽霊なんて、居ませんよね……」 『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)、フラグ設置完了。 ● 「これも工事道具なんでしょうか……」 壱和が軽トラに載せられてきた工事用具一式の中で場違いな桐箱を見つけて、ふるふると震え始めた。 どう見ても、お台所で使う感じがしない壺には「お清め・開封はこぼさないように丁寧に」と封が張られ、恐る恐る蓋を取れば中には白い結晶――塩が入っている。 「持参工具に貼ってください」と付箋が貼られた和紙をめくれば、「工事安全」 と書かれたお札だ。 「なんだか御札とかお塩とか……!!」 魔よけです、本当にありがとうございました。 かつてこの現場で作業した人達に災いが降りかかったと言う。 お化け退治ではなくリベリスタの自滅を防ごうとする事務方の努力に涙がちょちょ切れそうだ。 「解体とか得意っすよ!やったことないですけど」 『ジルファウスト』逢川・アイカ(BNE004941)は、明るく壱和に話しかける。 「チェーンソー用意しときました!」 エリューション事件で大切な人を失った。都合のいいヒーローがいないなら、自分でどうにかするしかないのだ。その第一歩。 「でもなんかここ着いてからエンジン変な音するんすよね、人の声みたいな……なんかふらふらするし……刃に……吸い込まれるような……」 すっと、アイカの手が上に跳ね上がる。 「!?」 壱和の紙が数本宙を舞った。 アウトサイドの超反射神経が、チェーンソーを持っている者さえ意図せぬ一撃を見事に交わして、返す刀で、お札を貼り付ける。 悲鳴のようなひときわ高い唸りを最後に、チェーンソーは沈黙した。 「大丈夫ですか?」 「……はっ! あたしは何を……」 「これ全然簡単じゃないじゃないっすか!やだー! あたし帰ります! 定時ですし」 うん、まだ作業開始されてないから。 お仕事前に逃亡すると、追っ手が掛かるぞー。 「私達は簡単なお仕事をする事を強いられているんだっ! 敵前逃亡は許されない!」 アイカの前に、虎美が立ちはだかった。 「そうだよねお兄ちゃんお兄ちゃんが認めてくれるから私もう迷わないぺろぺろさっさと終わらせて一緒に月杜の粕汁食べようねよーし虎美頑張っちゃうぞー!」 アイカは、涙を振り払い。 おとなしくなったチェーンソーを構えなおした。 逃げたって、助けてくれるヒーローは来ないのだ。 様子を見守っていた壱和は、ヘルメットにお札を貼って、使い慣れてる斧を手に持った。 「作業場所に着くまで目を瞑っていてよろしいか? 大丈夫、仲間に掴まって歩けば……」 「…ま、まぁ、私に掛かれば暗闇なんてものともしませんし! く、暗い所でも昼間のように見えますし!」 ヒロ子に頼られて、ちょっとのブレス・オブ・リージュな感じで嬉しい姫華が振り返る。 (………要らない物まで見えてしまうとか、そんな余計な事は言わなくても結構) 姫華さんの作業着の腰をつかんでいるのは、弘子さんじゃなくて、うつろな眼科から何かをたらした裸足パジャマのお子様デスヨ。 あれ、じゃあ、ヒロ子さんは? 服をつかんでいた手にゴスンと結構な質量が当たり、その拍子に手を放してしまった。 まぶたが、開けてはいけないと言う大脳の指令を受け取り損ねた。 ガスマスクの中からくぐもった悲鳴が溢れて、顔に水滴を結ぶ。 (首しか無い) お化け。 「ワァォ! 国際化社会だね」 さすがに腰を冷やしたら遺憾と、水着の上から借り物の作業着を着込んでいたはずのトラが素っ頓狂な声を上げた。 三高平市民が、国際色豊かなのは今更である。 「で、その仮面はどこの仮面?」 壱和は、記憶をめぐらせる。今日、仮面つけてた人っていたっけ? 「あれ、ずいぶん透き通ってるんだね。光学迷彩?」 振り返ることは出来なかった。 ただ、首にタオル。頭にヘルメット。顔にはガスマスクをつけたとらの背後を追いかける仮面の、透き通った、変な服を着た、誰かが……。 「びぇぇぇぇ……!!」 沸騰を知らせるやかんの咽びのような悲鳴が辺りにこだました。 「――惨劇の中に散っていった命の無念、恐れてはいけません。彼らの想いを受け止めること、それもまた、わたしたちリベリスタの為すべき使命です」 『永遠の残念美少女』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)が、聖女の微笑を浮かべていた。 黙っていれば、美少女。 (きゃー、まいちゃんってばカッコイイ! 超COOL美少女だよ! エターナルフォースビューティだよ) 脳内で荒乱舞と書いてあらぶっていても、幸い今日はハイリーディング持ちはいない。 「あなたたちの全てを、わたしは受け止めます。さあ、一緒に行きましょう」 虚空に差し出される腕。 だが、諸君、覚えておいでだろうか。 舞姫さんは、色々影響されやすいタイプなのだ。詳しくは、ログハウス解体で検索。 「……おまえたちみんな、しぬんだいきてこのやしきをでられるとおもうなひゃはああああ」 お客様の中で、除霊に詳しい方はおられませんか! 「うみ、こういう所でしてみたかったんだ。誰か一緒にやろうよ」 『Nameless Raven』害獣谷 羽海(BNE004957)、ガスマスクの誰かさんと紙を挟んで向かい合って正座。口に出すなよ。年の数だけ謝らなくちゃいけなくなるぞ。 「うみの運命の人を教えて?」 「はい」 「はいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはい」 ガスマスクが床に落ちる。 顔の見えない誰かさんの顔はなかった。 「わたしがあなたのうんめいのひと」 ● 「最近、足まで金属化したからな。実戦前の慣らしには丁度いい」 『立ち塞がる学徒』白崎・晃(BNE003937)、耐久限界試験(神秘)、開始。 「はーい、今回の簡単なお仕事は新人も居るので、ベテランは模範を見せるように。……わかってるね?」 アメリア・アルカディア(BNE004168)、今日の面子だと、まだまだ新参。 ● 「しかし、ここでもマスクか!」 晃の嘆きに、訓練されたリベリスタは一様に目を背けた。だって、いきなり粉塵アタックが来るじゃない、来るじゃない。 夏のハイキングに付き物のガスマスクを地面に叩きつけようとする右手を左手が押さえる。 (我慢だ) WPロールに成功。 (いくら深化しても粉塵は防げないし、支給品を壊すわけにもいかないからな) その冷静な判断が、君の呼吸器を炎症から守る。 「というわけで、洋館の解体だヒャッハー! 成果が目に見えてわかるよ! 素晴らしい! 後どれだけで終わるか一目瞭然! 素敵!――ところで悲しい、悲しい話をしよう」 アメリアがにやりと笑う。 「目の前で家族が自分を捜しながら爆発四散する様子を何度も見せられたら幽霊ごときでは怖くなくなるのだ」 寒い季節に、未練の円環を壊してきた。 「……なくなるのだ」 それが、身につけた、あの日亡き家族の残滓がアメリアにくれた強さ。怖くない。あれは、空間にこびりついた記憶の残滓だ。 「はい、そんなわけでね、これを楽しい話にするためあたし考えました」 にっこり。 「……狩ろう。Eフォース狩りだー!」 きゃあああああああああっ! 「脱走王、逃げられると思うなよー。被害者枠になりたくなかったらな」 『アメリアの足元に三角錐が転がっている。拾いますか? (Y/N)』 ● 「拙者、危険を察知した故出ないでござるしっ☆」 『ニケー(勝利の翼齎す者)』内薙・智夫(BNE001581)、逃亡者に災いあれかし。 ● 「へくちっ」 女子力ってこういうところに出るんだぜ。間違ってもちくしょーめとかつかないんだぜ。 「はぁっ、はぁっ、随分走ったと思うんだけど。なんだろう、いかにも湖畔のキャンプ場とか別荘とか、それっぽいところに来ちゃった……」 館周辺は、快適なお散歩周回コースとなっております。ぶっちゃけ、ぐるっと回って現場に逆戻りだ。ちーす。お疲れでーす。 (冷えてきたなぁ。顔に風が当たって寒いよ) でも、鼻水はずるずるなんだぜ。男子だからじゃないよ。残念だからだよ。 (何か寒さを凌げそうなものってあるかな?) 気づいて。こんな人気のないところに落ちてる装備品は大抵怪しいのよ。 「あれ? ホッケーマスクが落ちてる」 気づいて。こんなところでアイスホッケーする人なんかいないのよ。アメリカほどメジャースポーツじゃないんだから。 「とりあえず被っておけば寒さが凌げるかな? あ、斧もあるみたい。木を切って火をつければ、暖が取れるかも……」 お若いリベリスタは知らないだろう。その昔静かな湖畔のキャンプ地には、ホッケーマスクかぶって武器は現地調達のお茶目な殺人マシーンが出没したのだ。 「さて、では私は上の階から手を付けますわ」 (下の階から破壊して、重みに耐え切れず上階崩壊……というのは、手間としては楽かもしれませんが、流石に無傷でいられる自信はありませんから) 姫華さんは、堅実な人だった。 (上から下への落下は……まぁ、私には踏破がありますから、落下しきる前にはなんとかなるのでは無いかと) 貴族たるもの、なるたけ高いところに颯爽と現れなくてはならない階級的掟があるのだ。 「さぁ、どんどん壊していきますわ!」 カーンカーンカーン。 「ここ、えフォースさんがさっきから指差してんだよね」 とらも同じところをカーンカーンカーン。 「Oh. ファイバー? 何か壁の強度とかあがるのかな? お金持ちの家は違うね! え、ここはもっと優しくやれ?」 いや、その場合のファイバーって透明じゃないか? 黒ではないだろ? なんか先っちょが枝だったり、ましてや反対側に玉状のなにかはついてないだろ? 「今、叩き砕いた壁に一瞬何か手のようなものが……き、気のせいですわ」 わずかな沈黙。 「ほら、何かの破片でそのように見えただけって――」 「うん、破片だね。白い骨の破片だね」 「なんか手首だけがこちらに向かって来てますわー!?」 「あー、ちょっとタンマタンマ。これはアレだ、クーリングしてしかるべきところで供養してもらうってやつだね」 ひめかはおおづちをふ 「とととりあえず叩き潰してしまえば……ちょ、ちょっと、こっちに、来ないで、下さ……あ、床がああああああ!?」 「あ゛っ――!!」」 がらがらがらがらがらがら。 崩落音の跡のしばしの静寂。 もうもうと立つ埃が薄れると共に、見えてくる上空に逃げたとらと、すっくと立つ姫華の影。 「……踏破が無ければ怪我をするところでしたわ……」 その目が涙目だったのは、埃のせいだ。きっと。 ● 手に斧。ホッケーマスクをかぶった作業着の男を見て、攻撃態勢を取らないリベリスタがいるだろうか。いや、いない。 「ええと……自分で未練を断ち切りご昇天されるのと……」 『雨上がりの紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)の言葉は風に途切れる。 真空を伴う旋風が、ごっそりと積み重ねられていた木片を木屑に変え、辺りに削り節みたいなふわふわが降る。 「いずれをお望みになられますか?」 「ちょ、なんで僕が襲われるの? たたた助けてミラクルナイチンゲール!」 ホッケーマスクをかなぐり捨てた智夫に視線が集中する。 「――赤いプロアルバイターが言ってました。定刻にノルマを果たし帰るのがプロだと」 彼は、伝説の男。どんな場所からでも、定時に現場を去るぜ。 「私はこれから夕食の支度があるので、お先に失礼させて頂きますね」 丸投げた! ちょっと怖い目を見た三人に、「相談があるならうかがいますよ」と微笑みながら、紫色の髪をしたワーカホリックもアットホームに去っていった! 後には、脱走兵――いやさ、敗北主義者が残った。 ● 「暖炉を壊すのは最後だったな。夜はまだ冷えるから賛成だ」 「そういえば最後は燃やすらしいので、食材を用意しました」 「燃え広がらないようちゃんと場所に気をつけて火を放てー!」 「肉です。鉄板も長い串もあるよ」 「お握りでも振る舞おう」 「焼くならやけどしないように気を付けようね」 「お兄ちゃんと一つの毛布に包まって暖めあうんだ……」 「え、鉄板を置く場所がない? やだなあ、火の近くの地面に置くんだよ」 「ま、そこまで派手に燃やすかはともかく、暖を取るのに焚き火はいいよね」 「打ち上げアリ? じゃあ自分酒いいすか!?」 「おかかの醤油和え入り、梅干し入り、塩だけ」 「あー、暖まるネェ……粕汁うめぇ」 「怖いことはコレで忘れちゃおう、イエーイ!」 「あそこにも浮き輪持った男の子が……。あれ? 皆さんには見えてない……?」 「種類は少ないが、数だけは多いぞ」 「最悪湖方向にぶっ飛ばすしかないね……」 「終わったら、湖で水浴びしたいですね。ボク水着持ってないですけど」 「脱落者が出るのはいつものことだが」 「私の筋肉痛に免じて安らかに眠ってくれよ~」 「そうやってロマンチックに夜を過ごして夜明けのコーヒーでも飲もう」 「残りは瓦礫にぶっかけて弔いとしましょう」 「大食いがいないとも限らないしな」 「あれ、一人分余ったのは何故だ」 とらは、余った御椀を見て首をかしげた。 「口に合わなかったのかな?」 と、自分で平らげる。 それを、まだ作業をしていた智夫があきらめの境地で見ていた。 ● 「上手に更地になりましたー!」 晃が叫んだ。 何度目の朝日か忘れてしまった。 (……仕事終わって疲れてるんだな。似合わないこと口走った) 赤面する晃を笑う者はいなかった。 みんな叫びたい気持ちだったし、晃のオカカと梅と塩おにぎりはおいしかったから。 終わったら、壱和がお菓子を供え、それぞれがそれぞれの方法で祈りを捧げた。 (ここが大事なのは感じましたが、そろそろお別れの時間です。新しい場所を見つけられますように) |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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