●多くは語るまい、というか語ることが無い 志摩にある某ゴルフ場、9番ホール一帯にビッシリとジェル状のアザーバイド、いわゆるスライムが居る。 丁度カップの穴がDホール化しているらしい。次々と穴からスライムが湧いてくる。 穴を塞がない限り、スライムは湧き続けるだろう。 なおスライムは、体を変形させた触手で敵対者を飲み込もうとしたり、体内や衣服の中に入り込もうとしたりするようなので、注意。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:あき缶 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年04月15日(火)22:56 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●孤独に戦うゆえに孤独 虹色のスライムにうめつくされたゴルフ場の上空を、女達が飛ぶ。 それを見上げ、『』ベオウルフ・ハイウインド(BNE004938)は、始まったな、と呟いた。 空中戦を望んだ彼女らとは違い、ベオウルフは孤独にスライムに地上戦を挑む。 「やれやれ……なかなか骨が折れそうだな」 と言いながらも、表情はさほどネガティブではない。余裕の表情で五感を研ぎ澄ませる。 「ハッ!」 気合の息を吐き、ベオウルフはぎっしり蠢くスライムへと殺到した。 白木の鞘から刃を抜き放ち、月煌閃はその名に恥じぬ一種幻想的とも言える銀の軌跡をもって、スライムを裂く。 パァンッ! 破裂音とともに、中身であろう虹色の粘液が飛び散った。 「ぷぁっ」 古傷だらけの彫刻のような研ぎ澄まされた体に、ぬらぬらした粘液がついても、彼は止まらない。次、とばかりに刀を振り抜こうとし……。 「ひっ」 スライムの伸ばす触手にとらえられる。 「や、やめっ」 もがくように鞘を振り回し、初撃は弾いた。だが、第二撃三撃、四撃……スライムの攻撃は休む間もなく止めどなく。 孤立無援の中、彼の手番よりも無数に取り巻くスライムの触手のほうが多い。いかに弱いスライムであっても、数の暴力は確実にベオウルフを苛み、削っていく。 「あっ、ひあ、……あ、ぉアァッーー!!」 彼の悲鳴はどこか悦を孕んでいた。 だが、幸か不幸か――彼の嗚咽は上空の令嬢たちには届かない。 孤独に屠られる。故に孤独。 運命を消費する覚悟は、既に完了。 ●上空から無敵 「わぁ~大量発生ですね~。どれも虹色ですけど~ひっついて消えたりしてくれないですかね~?」 のんきに『』ユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)は、地上のみつしり詰まったスライムたちを見下ろして、呟いた。 「……多分、あそこがディメンションホール……ですね……」 見取り図と現場を交互に見比べ、『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)が、どこか虚ろな儚さのある細い指で、とある一点を指した。 「それにしても、ディメンションホールは、ゴルフのカップなのでしょう? あんな小さな穴からこんなに大きくなるなんて、面白いですわね」 ほほほとどこか他人事のように笑う『聖闇の堕天使』七海 紫月(BNE004712)こそ、今飛んでいるリベリスタに翼を与えた少女だ。ユーフォリア以外は翼を持たないが、スライムの攻撃を極力避けるために飛ぶことを選んだ。自ら正々堂々の地上戦を望んだベオウルフを別にして。 「うーん、今はここだけだけど……ほうっておくとあっという間に日本が埋め尽くされちゃいそう?」 ひどい光景だ、と『魔法少女マジカル☆ふたば』羽柴 双葉(BNE003837)はワンドを構えた。華やかなオーラが双葉を包む。 空中でくるり、愛らしく回って。 「木漏れ日浴びて育つ清らかな新緑――魔法少女マジカル☆ふたば参上! お嫁にいけなくなっちゃうようなお色気展開は嫌だから、……だから、近寄らない! 絶対にだッ!」 決め台詞がそれでいいのか魔法少女。 彼女の隣で、直立し、腕を組んだ『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)は、ふふりと笑っていた。 「こういう仕事してると、色んな敵に出会うけど、だいたいは多くても二十体くらい。戦闘することはあっても、制圧とか火力で圧倒とか、他の迷惑顧みずに盛大に魔法をぶっ放すとかって、滅多に出来ないのよね」 うずうずと彼女の腕はうずく。 「つ、ま、り……たまには、マグメイガスらしく盛大に行くわよ」 相手がザコであるからとて手加減はなしだ。むしろ、相手がすぐにプチッといくザコだからこそ、爽快に蹴散らせるというものだ。 突き出す腕から、一条の雷竜が飛び出す。 竜はまるでひび割れるかのように空中で拡散、セレアが認識する全てのスライムへ無数の槍雨のごとく突き刺さる。 バチュンッ。 一斉に消え失せるスライムだが、全ては消しきれなかった。セレアが認識できる視界の範囲よりも9番ホールが広いのだ。しかも、空白を埋めるかのごとく、どよどよとまた穴からスライムが湧いて出る。 「消しきれはしないか。でも全体をまとめてふっとばす感覚。これぞ大魔導って感じよね」 スカッと爽快! 満足気に頷くセレア。 彼女の上から弾丸のように一人のフュリエがスライムの群れへと突っ込んでいく。 「難しいことは考えない。まっすぐ行って……ぶっとばす!」 巨大な斧を引っさげて、『空色の飢獣』スォウ・メモロスト(BNE004952)は、まるで放たれた弾丸のように、破壊槌のごとく、敵陣へと切り込んだ。 ――活路を見出すための存在、アークリベリオン。 地上に降り立つなり、衝撃波を伴いながら斧をスライムの土手っ腹へとぶっつける。 ブシャアアアッと内容物を噴出しながら、スライムは消えた。 「発生源まで疾走るよ!」 斧を担ぎ、水色の三つ編みを揺らしながら、スォウは猛烈な突進を試みる。どこまでも押し通る。 だが、スォウの力は一度に一体しかスライムを倒せない。 進めば進むほどスライムに挟まれていく彼女を援護するかのように、彼女が開けた場所へヒラリとリンシードが舞い降りる。 まだスォウは駆け出しだ。注意を払ってやらねばならない。 「私はプチプチは一個ずつ潰す派です……。あの空気の抜ける瞬間の感触が病みつきになると思います……。ですが、敵は纏めて片付ける派です……。其方の方が爽快感があると思います……」 言うなり、時すら切り刻む斬撃によって氷霧を創りだしたリンシード。高速過ぎて捉えられなかった姿が、ようやく常人にも視認できるようになった瞬間。 ぷるぷるしていた周囲のスライム達は凍りつき、次の瞬間粉々に砕け散る。気温で溶けた体液は、細かく粉砕されすぎてまるで靄だ。 「本邦初公開~、私の~、遠距離複数攻撃です~」 上空からのんびりした声とともに、光弾がいくつも落ちてきた。スライムを消し飛ばす光。 紫月は、己の瘴気を黒に変え、上空からグリーンであろう地域目掛けて振り落とす。 瘴気に溶かされるように消えたスライム。 一瞬、あらわになるディメンションホールへ、その瞬間を虎視眈々と狙っていた『トライアル・ウィッチ』シエナ・ローリエ(BNE004839)が、すたんと着地。素早く穴を塞いだ。 「いたちごっこは避けたい……よ」 もうこれで、スライムは増えない。 あとは掃討するだけだ。 ●遊んだ後はお片付け シエナは、まだうじゃうじゃと存在しているスライムへ向けて、 「構成展開、型式、湖上の白炎――composition」 炎を展開。ゴウッと燃え盛る焔がいくつもスライムを溶かしていく。 「研究所の能力開発プログラム……思い出す、な」 戦闘シュミレーションのようだ、とシエナは思う。能力開発のいい機会だ。 軽い足取りで、次のスライムが射程に入るように走りだす。 「我願うは星辰の一欠片。その煌めきを以て戦鎚と成す。指し示す導きのままに敵を打ち、討ち、滅ぼせ」 長々と集中と長尺の詠唱を重ねていた双葉が叫ぶ。 「これが私の全力全開、いっけぇー!」 空は一瞬にわかにかき曇り、唸りを上げて鉄槌が落ちてくる。 最大魔術マレウス・ステルラが発動し、双葉が認識しているスライム全てを天上から堕ちる星々で破壊する。 「あら、あんなところに殿方が」 紫月は、だいぶ良好になった視界の端に、ふらふらのベオウルフを認めた。 「孤独な戦いをされずともよろしいのに」 と、ベオウルフの風前の灯ともいえた生命力を、癒しの息吹で癒してやる。息吹は彼だけでなく、スォウやリンシードなど、近距離戦を挑んでいる者の傷も癒やす。 リンシードはほぼ回避していたため、無傷に近かったが、スォウは並々ならぬダメージを負っていた。 「私みたいなのが前衛張るなら、文字通り血を吐くくらいしないと、と思ってたけど……」 しかしスォウが、そこまで追い詰められる前に癒やしは施された。 「く、済まない……」 体勢を整えたベオウルフは、息を深く吸い込み、自然の力を取り込んで気力を貯める。 その間に、ユーフォリアはベオウルフの頭上に飛来すると、光弾を地上へと注いだ。 「ふふふ~こっちのエリアは大分片付きましたね~」 「……まるで虫食い状態ですね……。もう正直飽きてきました……」 リンシードがため息を吐く。俺TUEEEも長々とやっていればつまらない。 「まとめてロードローラーかなにかで轢き潰したいですね……」 それはまるで、プチプチをシートごと絞るかのごとく。 だがロードローラーで解決するならリベリスタは呼ばれていない。 「地道地道……」 リンシードは次の掃討対象へと走った。 「あれ、なんだかエッチな方向にはいきそうにないわね。……一部を除いて、だけど」 セレアは思ったよりも簡単に事が進みそうなのに、目をいつもより大きく開いた。 彼女は一応腐女子のケもあるので、除かれた『一部』も眼福とまではいかなくても、抵抗はない。 「ま、いいわ。よーし、お姉さん厨二病しちゃいますよ!」 目を閉じ、ソレっぽく手をかざす。 「紺碧の空を駆ける雷よ、盟約に従い我が眼前の敵を穿て」 と振り下ろした手のひらから再び雷撃が。 その攻撃を学習するかのようにじっと見届けたシエナは、視線をスライムへ向ける。 「覚えたての構成。まだまだ精度が低い……から」 ぐっと手をのばす。ぐにょりと冷たく柔らかでベトベトしたスライムの触手が、シエナの手に絡みついた。 構えを一旦解き、シエナは不思議そうに手を見やる。 「ん、ぁ……なんか、変なかん、じ?」 初めての感覚に戸惑う。これは、これからの人生に必要な感覚だろうか(反語)。 気を取り直して、シエナは再度手を突き出した。 「型式、極北の雷帝――composition」 セレアと同じ雷撃が迸る。 全体攻撃がマグメイガス達から幾度となく放たれたことで、スライムはほぼ消え去った。 「あとはあの五体だけだね。この炎を以って浄化せ……」 詠唱を始めようとした双葉を、紫月が止める。 「あっ……と。少しお待ちになって。非常に気になることがありまして」 ひらりと着地した紫月は、軽い足音を立てて、一匹のスライムに駆け寄った。 伸ばされた触手を気に留めず、あぐと小さな口を開いて、ぷよぷよのスライムにノワールオルールの牙を突き立てる。 吸血を試みたのだ。 (これと同じようなお菓子があったような……柑橘系なら嬉しいのですが……) どろっと油臭い。 水溶き片栗粉が中途半端に糊化したような、すこし不快な弾力だった。 「うぅ……回復はしますが、美味しいものではありませんでしたわ。つまらない……」 むぅと眉を寄せ、紫月は後退する。 「もういいかな? じゃ、最後行くよ。この炎を以って浄化せん。紅蓮の華よ、咲き誇れ!」 ジュッと微かな音と共に、ようやくゴルフ場は元の美しいグリーンに戻ったのだった。 ●貸し切りの露天風呂にて ゴルフ場に併設されている温泉は、アザーバイド退治のためにゴルフ場が閉鎖されていたので、客は誰もいなかった。 つまり、リベリスタの貸し切りである。 「これ、アークの経費で落ちますよね! 落ちなくてもいいけど!」 上機嫌でセレアは、酒盆を湯に浮かべていた。 「温泉の中で一献~、何時も以上にお酒が美味しいです~」 焼酎をあおるユーフォリアも笑顔である。なお、全裸。女湯で裸なのは当然至極である。 シャワーで汗を流してから湯船に使ったリンシードは、 「……ゴルフが終わった後の休憩を19番ホールと言ったりするそうです。たぶん」 とうろ覚えの知識を披露して、世間知らずのシエナと異世界人たるフュリエのスォウに、ふむふむと真剣に頷かれている。 「裸の付き合いが仲良くなる秘訣、日本人はそういうものらしいね。日本人はお風呂には水着では入らないと聞いたけど?」 スォウはどこからか仕入れてきた知識で、たった一人水着姿の双葉に疑問を呈した。双葉は、恥ずかしいからッと叫ぶように返事をしたが、スォウの興味は既に全裸のユーフォリアに移っていた。 「羨ましいな……」 あばらのういている己の体が少し恥ずかしい。思い出すのは、ゴルフ場で見たベオウルフのたくましい体だ。 (ああいうのも憧れるな……) なお、彼はもちろんだだっ広い男湯で一人湯を堪能しているはずである。 「同年代の子達と一緒にお風呂は楽しいですね。……しかし、洗い流したスライムはどうなるのでしょうか……。またどこかで増殖…………考えないようにしましょう」 紫月は一瞬遠い目をしかけたが、頭を振って妄想を吹き飛ばした。 「ところで……スライムや触手は……良いもの?」 きょとんと尋ねるシエナに、女性陣は一様になんと答えればいいのか、口ごもった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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