●この暑さはもはや敵である 暑い。 今日は日様はとっくに沈んでしまっている。それなのに暑い。 この暑さの原因は日中に太陽の熱をたっぷり吸い込んだ地面がここぞとばかりに放熱するからだとかなんだとか。 ぶっちゃけそんな小難しいことはどうでもいい。要はこの暑さに皆が参ってしまっていることが重要なのだ。 「そーゆーわけだ」 「どーゆーわけですか?」 狭い個室で二人の男女が暑さでフローリングの床に寝そべっていた。冷房も掛けず窓も開けないでさぞ暑い部屋で。 男の方は簡単に言えば科学者。丸眼鏡に白衣と非常に分かりやすい格好をしている。 女の方は簡単に言えば侍。長い髪をポニーテルにして服は和服に一応腰には刀を下げている。 そして二人は非常に汗だく。脱水症状や熱中症にならないか非常に心配である。 「つまりだな。この暑さを戦術に利用しようと言うわけだ」 「確かにこの暑さは非常に厄介ですが。それはどうやって?」 もはや起き上がって話をするのも億劫なのか二人とも寝そべったままの会話である。 男のほうが指を鳴らそうとして――力が入らないので床を叩いて合図をする。 すると個室へ繋がる唯一の扉が開いて一人の少女が姿を現した。その手には一抱えあるアタッシュケースを持っている。 「ご苦労だ、ロボ子」 「別に。あと誰がロボ子だ」 白のワンピース姿の少女は男の腹を足蹴にする。鋼鉄製の踵がめり込み男は悶絶して床を転がる。 「それで、それ何ですか?」 「破界器だ。取説はこっち」 気だるげに起き上がった女に少女は女に薄っぺらい冊子を一つ渡す。 内容を読み進めるとどうやらこれは周囲の気温と湿度を操ることのできる破界器らしい。 そして特殊効果として…… 「……何を考えてるんですか」 「その方が面白いだろ?」 女は丸めた冊子で男の頭を叩く。割と本気で。 また床を転がりだした男を放っておいて女と少女は部屋を後にする。 「すごく嫌な予感がします」 「同感」 ●暑ければ脱げばいいじゃない 冷房完備のアーク本部のブリーフィングルーム。 リベリスタ達が暑さにぐだって説明をちゃんと聞けなければ大変なので当然の設備だ。 その快適な部屋の中で『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は開口一番にこう言った。 「今回はとっても暑い中でお仕事だから頑張ってね」 リベリスタ達のテンションが一気に落ちた。 アークが誇るマスコット的キャラクターなイヴの声でもその内容は非常に堪えた。 「特に女の人は気をつけたほうがいいかも」 ぽそっと言ったイヴの二言目に疑問を呈しつつもとりあえず今回の依頼の説明を受ける。 イヴがコンソールを叩くと大型スクリーンにある物が映し出された。 「……何コレ?」 映ったのは一枚のパネルのような機械。上半分に液晶パネル、下にはボタンが幾つか。 「これは破界器。周辺の温度と湿度を操ることが出来る」 つまりである。これを使えば周囲の温度を下げて真冬にすることも出来れば、温度と湿度を上げて灼熱のサウナのようにもできる訳だ。 「この破界器が使われるとこんな感じになる」 そう言ってすぐにスクリーンに映し出されたのは服装の乱れた艶かしい女性の姿だった。数名のリベリスタが噴き出す。 そして次に映し出されたのは鍛え抜かれた鋼の肉体を持つマッチョな男のパンツ一枚の姿だった。また数名のリベリスタが噴き出す。 映像の視点が後ろに引くとその周囲には何名もの人が街中にも関わらず倒れていた。そして例外なく服が乱れていたり脱げていたりする。 「この破界器の特殊能力。暑さに負けると服を脱ぎたくなる」 破界器の『おそるべき』力にリベリスタ一同は戦慄する。 確かにこれはイヴの言うとおり暑い戦いになりそうだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:たくと | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月12日(金)00:24 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●熱帯夜の始まり ビル建設予定地の前に訪れたリベリスタ一行は早速うだる暑さを感じ始めていた。 破界器が既に使われているのかこうして立っているだけでもじっとりと汗を掻き始める。 「何をしたいかどうかは兎も角、放置する事は出来ないな」 『誰が為の力』新城・拓真(ID:BNE000644)はコートを翻して予定地の周囲を探る為に歩き去った。 そしてリベリスタ一行から道路を一つ挟んだ反対側に待機している桃瀬 瑞穂(ID:BNE002772)はうーんと首を捻っている。 仕事以外では脱ぐわけにはいかない彼女は破界器の効果範囲に入るわけにはいかなく、それを考えるとここが限界地点だ。 ただ、そこからは戦場になるであろうビル建設予定地はちゃんと簡易の壁を立てて中を見えないようにしているので入り口部分しか見えない。 それに周りには一般人も多くて下手な行動をするわけにはいかない。 「うーん、どうしようかな~」 一方で敷地の正面にて『自称・雷音の夫』鬼蔭 虎鐵(ID:BNE000034)は堂々とした様子で腕を組んで立っているが、実は心の中では戦々恐々としていた。 彼はその背中に若気に至りの黒歴史を背負っているのだ。今回の破界器のことを考えるとそれが暴かれてしまう可能性がある。 「絶対に、死守する出ござるっ」 心持ち新たにした虎鐵は胸を張った。 そんな虎鐵の隣では全く正反対のことを考えている少女が一人。 「威風堂々と服を脱げるのはここですか?」 戦場に赴く前から脱ぐ気満々である『毒絶彼女』源兵島 こじり(ID:BNE000630)はブレザーのネクタイを緩めながらそう呟く。 もう少し落ち着けと注意したいところであるがこの場にはそんな配慮、もとい余計なことをする誠実な紳士諸君は存在していなかった。 「ふっふっふ、ここだな。素晴らしい景色を撮影できる絶景スポットは!」 ただし変態紳士は存在した。今日の為にデジカメを用意してきた『劣情暴走便』安西 郷(ID:BNE002360)は一般の方に見られるとほぼ100%警察に通報されそうな顔で笑っている。 その姿を見ている『さくらさくら』桜田 国子(ID:BNE002102)は背筋に冷たいものを感じて思わず目を逸らす。 至極全うな感性の持ち主の彼女は肌を晒すことには当然羞恥を覚えるわけで。対策はとってあるがそれでも心配が消えるわけではない。 ただ、そんな彼女の露出度が現状では一番高いという事実を彼女自身はまだ気づいていない。 「けどこれだけ暑ければ脱いでも仕方ないな。つまり俺の体を美女や美少女にじっくり観察されても問題はない訳だ」 ジャケットをぱたぱたと仰いで暑さをアピールする『冥滅騎』神城・涼(ID:BNE001343)がそうぼやく。 女好きな彼としては今回の仕事はラッキーと思って参加したが……暑さにやられた所為か思考が斜め上へと向かっていた。 そんなリベリスタ達の一番後列でそわそわしているのは『臆病強靭』設楽 悠里(ID:BNE001610)だった。 「も、持ってきてしまった……!」 そんな彼が持っているのは手のひらサイズのビデオカメラ。勿論最新式である。 男としてこの機会を逃すわけにはいかない、しかし20代でこれは犯罪じゃないか? そんな葛藤する様を見ていた郷がその肩に手を置いた。 「俺達は紳士だぜ。それなら胸を張りな!」 「そう、だな。これは男のロマン。なんら恥じることはない!」 互いにサムズアップを返して男の友情を確かめ合った悠里と郷であった。 それぞれの決意も決まったところでリベリスタ一行はビル建設予定地の敷地の中へを足を踏み入れた。 敷地の中には情報通りに資材や重機が鎮座しており視界はさほどよくない。 ここで奇襲を受ければ……と思っていたが。それはすぐさま杞憂で終わった。 「お客様ですか? 予定にはなかったのですが……」 「知ってる。リベリスタって奴らだ」 積み上げられた鉄骨の上に立つ二人の女。 袴姿をした蓮華は頬に手を当てて首を傾げる。その隣のワンピース姿の檸檬はリベリスタ達の存在をしっているのかそう応えた。 邂逅したリベリスタとフィクサード。双方の視線がぶつかり合う。 「もう駄目、暑いわ」 と、突然に呟いたこじりはブレザーのスカートのホックを外した。スカートはそのままストンと白い脚を伝って地面に落ちる。 露わにになったのは黒いスパッツであるがその脱ぐという行為に反応してしまうのが男性諸君の男の性。 「うおー! こじり、ナイス! さあさあ、蓮華も早いところ脱ごうぜぇ!」 その興奮して暑くなってしまったのかジャケットを無意識のうちに脱ぎ捨て、シャツのボタンも全て外してしまっている涼。 暑さに抵抗する気が全くない二人は早速半裸状態である。 こうして戦闘前から破界器の力に侵されていくリベリスタ達。では、戦闘が始まれば果たして……。 ●服は脱ぎ捨てる物 「ふっふっふ、俺の相手は蓮華、君に決めた! おっぱい大きいからな!」 「この、変態……」 心の声を全く隠そうとしない郷に、少し頬を染めた蓮華が罵る言葉をぽつりと零す。 鉄骨の階段を登ってくる郷に蓮華は腰に携えた刀を抜いて迎え撃った。 打ち合わされる脚甲と鋼の刃。散る火花を数弁残し互いに大きく弾かれて地面へと降りる。 「あ、やべ。これは我慢できないな」 そして徐に服を脱ぎだす郷。一応この場に来るために着てきたTシャツを脱ぎ捨てると彼の身にまとう衣類は下半身のハーフパンツタイプの水着のみになった。 刀を構えてもう一合打ち合わせようとしていた蓮華は突然に脱ぎだした郷の姿に呆気にとられる。 「な、何を脱いでるのですか!」 「えっ? そっちの破界器の所為だよね?」 突然吼える蓮華に郷の方も呆気に取られる。そう返されて蓮華のほうはうっと言葉に詰まった様子でたじろいだ。 その様子に郷はとりあえず。手にしたデジカメのシャッターを押して撮影を開始した。 「なっ、やめなさい!」 「だが断る!」 キリッとした顔をした後ホクホク顔で後ろに下がる郷。そしてそこに割り込むように悠里が体をねじ込む。 その手には炎を纏わせたナイフが一本。メラメラと燃え上がるそれは本当に暑そうである。その魂胆は勿論……。 「蓮華ちゃん暑いんじゃないかな? ほら、袴なんて熱が篭るでしょ?」 揺らめく炎の熱気の所為か、それともじりじり接近する悠里の迫力の所為か。蓮華は額に汗を一滴滑らせ一歩後退る。 因みにその火元である悠里は既に上着を脱ぎ捨てており上半身は裸だ。 「この、何で、変態ばっかりなんですかっ!」 激昂した蓮華は振り上げた刀を大きく振るい、真空刃を乱れ打ちし始めた。 一方でこちらはこじりと檸檬。互いに先制攻撃を仕掛けようとした銃弾を弾きあい無言のまま見詰め合っている。 「なあ、黒髪の姉ちゃん」 「何?」 言葉をかけた檸檬にこじりは淡々とした調子で答えを返す。 「ちょっと暑くないか?」 「ええ、もう少し脱ぎましょうか」 こじりはブレザーの上着を脱いで傍のフェンスに引っ掛け、檸檬は麦藁帽子を重機の喋るの中に放る。 こじりはさらにシャツのボタンを上から外しはじめ一つ、また一つと白い肌を少しずつ露わに。 檸檬も肩にかかっているノースリーブのワンピースの肩紐をずらすが、あまり意味がないと思い至りスカートの部分を掴んでゆっくりとたくし上げ。 「す、ストップストーップ!」 突然に脱ぎ始めた二人を国子は慌てて止める。 流石に同性と言えど目の前でストリップショーなどされて平常心を保つことはできなかったようだ。 「何で止めるんだよ?」 「そうよ。暑いじゃない」 「「だから脱ぐしかないでしょう(だろう)?」」 「いや、その理屈はおかしいと思う」 お前達は本当に敵同士かというほど息のあっているこじりと檸檬。 国子は自分がおかしいのかという疑念を振り払って何とか二人を脱がさぬように説得をしようとする。 「そういえばピンク髪の姉ちゃんは脱いでねーな」 「えっ、と?」 こじりや檸檬から見ればタンクトップとショートパンツという服を着ている国子だが、実はそれは彼女の作り出した幻覚であった。 実際は既に服は着ていなく黒に布地にピンクのフリルを飾ったビキニ姿だったのだ。 これが彼女の暑さに対する対策。もしこれで水着まで脱がされるもしもの事態があっても大丈夫だという作戦だった。 「ピンク髪の姉ちゃんも暑いだろ。脱ごうぜ?」 「そうね、脱ぎなさい。暑さで動けなくなったら殺すわよ」 二人の目が本気と書いてマジと読むような迫力を持っている。 頬を引きつらせて後退る国子、だがその手の両方が突然に掴まれた。 「わ、私は遠慮――うにゃーー!?」 猫化なビーストハーフの少女の悲鳴が暫くの間、重機の陰から響いていた。 「お~、皆がんばってるな。いいぞ、もっとやれ~」 そして破界器の効果範囲に入らずに現場を見る方法を考えた末。瑞穂は隣のビルの屋上に登ることにした。 手にしたビデオカメラのズーム機能でのんびり撮影中である。 「おっ? そこだー。張り切って脱がせー!」 完全に観戦ムードであった。 ●最後の防衛線 蓮華の横薙ぎにした刃を虎鐵は身の丈ほどある大太刀で受けとめて見せた。 「貴方はまともなようですね」 「拙者には心に決めた方がいるでござるからな!」 その声とともに虎鐵は刀身に雷を纏わせた刃を大上段より振り下ろす。蓮華はそれを真っ向から迎え撃つべくオーラを刀に圧縮してそのままに打ち付けた。 ――閃光、轟音、衝撃 太刀を振り下ろした姿で残身を取る虎鐵の視界で、数メートル向こうに積み上げられたセメント袋の山を背にして咳き込んでいる蓮華が見える。 暑さに耐えながらもその実力を発揮してみせた虎鐵。その背に背負う忌まわしきものは未だに封じられたままであった。 「こほっ……お強い」 脚をふらつかせながら立ち上がる蓮華の目の前に虎鐵は無言で立った。 蓮華は観念したのか次の一撃の覚悟を決める。 「ふう、脱いだら少しは涼しくなった気がするな」 「明らかに気のせいだと思うよ、それは」 突然聞こえてきた声にそちらをちらっと見れば。何故か工事用の高出力ライトの下に集っている少女が三人。 「どうせ取られるなら美しく。でしょう?」 ついにシャツも脱ぎ捨ててスポーツブラとスパッツだけの格好となったこじり。片手でうなじの髪を掻き上げ、もう片手は腰に。そしてそのまま上半身を前に傾けてポーズを取る。 「……こうか?」 そして何を思ったかその隣に立って両手を胸下で組んで、片足を前にだしてから上半身を軽く捻ってシナを作るポーズを取る檸檬。 因みに彼女もワンピースを脱ぎ捨てて子供用ブラと可愛らしいくまさんプリントのパンツという姿だ。 「ハハッ、そのポースをするには胸が全然足りないようね」 「……そーいうお前も揺れるほどはないじゃねーか」 そして落ちる沈黙。それに反比例するように沸きあがってくるのは。 「殺すわよ」 「ぶっ殺す」 明確な殺意だった。こじりがその腕に力を集中させると檸檬も同時に魔力を手にした銃に装填する。 「あの子は何を……」 と、つい見入っていた蓮華はふと気づく。同じく見入っていたのであろう正面に立つ虎鐵の体が震えていることに。 「ぐふっ、これはやばいでござるな……」 そして良く見れば、虎鐵の鼻からは一筋の赤い道が。そして気が緩んでしまった所為かこれまで我慢していた服を脱ぎたくなる衝動を抑えられなくなっていた。 自分でも気づかぬ内に上着を脱ぎ、ズボンも脱ぎ。そして最後の砦のシャツも脱ぎ捨てたところで……我に返った。 「はっ! ……あ、あああぁぁぁ! やってしまったでござるよ……」 虎鐵はその場で項垂れた。ずーんという効果音も聞こえそうなくらいに顔に影が差している。 そして、それを黙って見ていた蓮華は白い目を向けて一言。 「やっぱり貴方も変態だったのですね」 そしておまけと言わんばかりに刀の峰で首筋を打って虎鐵の意識を刈り取った。 一方で胸のことで殺し合いを始めたはずのこじりと檸檬だったが。 「あれ、こじりちゃん何処!?」 いつの間にかこじりが戦線離脱をしていた。 「ピンク髪の姉ちゃん。余所見はいけないぜ?」 頭上から落ちる声に国子は素早く地面を蹴ってその場を離れる。それと同時にその影を追うように金色の魔弾が地面を抉っていく。 最後には地面を転がり鉄骨を前にしたところで迫る魔弾は途絶えた。 「不意打ちなんて私には通用しな――」 「なあ」 と、国子の言葉を遮って鉄骨の上から飛び降りてくる檸檬。 言葉を遮られて突然姿を現したのに国子は面を食らう。 「これ、落としたぞ?」 そういって檸檬はしゃがんで。落ちていたそれを拾う。それは黒くてひらひらとした布で。 と、そこで国子は自分に襲う違和感に気づく。そう、ないのである。アレを付けているはずの感触が。 「ちっ、やっぱ私よりはでけーな」 それを徐に自分の胸元に当てる檸檬。そう、それは黒いビキニ水着であった。恐らく今までの戦闘で紐が緩み、先ほどの攻撃でトドメとなったのであろう。 「か、返してー!」 それに気づいて国子は今日一番のトップスピードで檸檬へと迫った。 そしてその様子の物陰から奇襲の為伺っていた拓真だったが、今はこめかみに指を当ててぐりぐりとしている。 「相手も真面目に戦う気はないみたいだな」 目の前の追いかけっこを眺めながらそう結論付ける。 しかし相手はフィクサード。不真面目でもこちらは真面目に対処しなくてはならない。 拓真は一つ息を吐いて気持ちを落ち着けると、両手のメイスを握り締め戦場へ乱入した。 と、そんな一悶着がある中で場面は戻って蓮華側。現在は虎鐵がリタイアした為に涼と悠里が二人掛りで攻め立てる。 「暑い、駄目だ。もう一枚……」 「そうだな。あと一枚あるからな」 「ちょ、ちょっと待ちなさい貴方達!」 そう言って各々の水着に指をかける二人。流石にそれはと蓮華は顔を赤くしてそれを止める。 二人はもはや戦闘でなく違う意味で蓮華を追い詰めていた。 「いいや、俺は脱ぐね!」 「俺達の雄姿を見ろ!」 威勢良く男を見せる涼と悠里はついに手にかけたパンツを思いっきり下――に下げる前に隙だらけの頭目掛けて飛んできたセメント袋が直撃して昏倒する。 投球ポーズでハァハァと息を荒くする蓮華。その息切れは果たして暑さの所為だけか。 「もう少しで全部脱ぐところだったのに。無粋ね」 実は物陰から超ガン見していたこじりは舌打ちをして蓮華を非難する。もはやどっちが正義の味方なのか分からない。 そしてフリーになった蓮華に最後の一人が立ちふさがる。 「さあ、蓮華ちゃん。今度こそその服を脱いで貰おうか!」 郷である。因みに蓮華は既に戦闘にて大分着崩れしており胸元も見れば少しばかり肌色が……。 と、飛んできた真空刃を郷はブリッジをして避けた。 「貴方だけは、斬りますっ!」 激昂した蓮華が一足で間合いを詰めてオーラを込めた連撃を放つ。郷は数発を脚甲で弾きながら後退し、そして器用にも空いた手でそのまま写真を一枚撮影。 だがそれが隙になってしまった。下段から振り上げる一閃が放たれる。郷は慌ててソレを防ごうとするが間に合わなかった。 「あーっ!?」 「っ!?」 切り裂かれるデジカメ。それもご丁寧にメモリーカードの入っている箇所を真っ二つだ。 と、しかし。その叫びが蓮華の動きを狂わせた。運ぶ足を滑らせて前に倒れるようにつんのめる。そして正面には勿論郷がいるわけで。 ずてーんと漫画の効果音の聞こえてきそうな様で二人は地面に転倒した。 「む、が……何だ。この柔らかいものは?」 「っ、きゃあぁぁぁ!?」 自分に圧し掛かる重圧と。顔を塞ぐ何かに気づいた郷。 ただそれが何なのかを知る間もなく脳天に強い衝撃を受けて意識は闇に落ちてしまった。 「あらら、流石に不味いかなぁ?」 男性メンバーが次々に倒されて不味いかなと思案する瑞穂。 このまま依頼が失敗しても不味いしと思ったが……。 「ああ、蓮華がついに脱いだ! ん~、色っぽいわ~」 結局そのまま撮影を続行した。そしてこのまま彼女は撮影係として初依頼を終えるのである。 ●熱帯夜は終わって 「とりあえず、投降する気はないか?」 惨状、と言っていいだろう。ほぼ全裸の男達と半裸の女性が並ぶ中で拓真は勤めて冷静にそう問うた。 この暑さを我慢しきってまだコートも脱いでいない。天晴れな精神力である。 その視界の先には振袖の上を脱ぎサラシ姿になった蓮華とコートをかけられて目を回している檸檬。因みにコートは拓真の物だ。 蓮華はちらりと檸檬を見てから深くため息を着いた。 「いえ、それには及びません。そろそろ帰る時間ですから」 と、蓮華は檸檬を抱き上げてそのまま離脱を試みる。拓真は勿論それを逃がさずと追うが、蓮華はその拓真に向けて何かを投げつける。 「それを壊すとこの一帯が大変なことになりますよ?」 そんな言葉と同時に。 迫るそれが破界器であることは見ればすぐに分かった、そして未知の破界器であればその言葉が本当の可能性はゼロではない。 「ちっ、壊すわけにはいかないか」 舌打ちと共に拓真はメイスを一本離し、飛んできた破界器を受け止める。 そしてその隙に二人は夜の繁華街に姿を消していた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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