● 「E・フォース『暖かくなるとでてくるもの』を退治してきて」 『擬音電波ローデント』小館・シモン・四門(nBNE000248)は、にっこり笑った。 「あ、今、なにか思い浮かんでても言わないでね。混ざるから」 お話ないない。と、四門は両手で口を押さえる。 はい、ご一緒に。と促された。 とにかく、今、余計な口を利かないことが得策と言うことだけは分かった。 「申し訳ないんだけど、発生したばかりで、特徴が『暖かくなるとでてくるもの』 だけなんだよ。でもさ、それって、ちょっと考えても色々あるでしょ? で、意思統一しないと、混じるから。色々」 何が混じると言うのだね。 「それ言ったら、みんな思い浮かべちゃうじゃない」 ノンノンと、四門は顔の前で指を横に振る。 「ここで、俺が『出てくるのは、なんとかってことにします!』 って言ったら、別なの思い浮かべてた人のイメージが混じるの。やでしょ、それ」 ストップ・ザ・妖怪化。 「集まる面子によって何なら倒しやすいとか違うしさ。お互いの特性見ながら相談してよ。意思統一されてるばあい、フェーズは1だから、ワンパンは無理でも、1ターンですむかもしれないし」 つまり、きちんと相談さえ出来ていれば簡単なんだね。 「そのものずばりの名詞出したらだめだよ。代名詞もだめだよ。みんなの思念に反応して姿を変えるから」 つまり、連想ゲーム、八人全員答えを揃えられるかな? うん、そう言うこと。と、フォーチュナは重々しく頷いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年03月28日(金)22:18 |
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■メイン参加者 5人■ | |||||
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● 「わーい、春が近いのです。ぽかぽか気持ちいいー。のんびりピクニック日和っ」 シーヴ・ビルト(BNE004713)の声が弾んでいる。 実際、お天気は最高だ。 昨晩雨が降って空気がしっとりしているため、スギ花粉の気配もなく。 しかし、うらうらと降り注ぐお日様が、地表の温度を上げている。 若葉は萌え、土は黒く肥え、ああ春よ。生命の季節よと、うっかり足取り軽くなってしまう。 「植物さん植物さんっ、陽気でぽかぽか良い気持ち? なんとなく、楽しそうな感じがするのですっ」 シーヴの素敵なお胸も弾んでいる。比ゆ的に。物理に関しては、構成メンバー、本人、アラサー女子、ショタ男装アラサー女子、男の娘、ミラクルナイチンゲール(特殊)。の、ラノベ環境にするにはしょっぱい状況ではたいした問題にはならない。ノーセクハラの素晴らしい世界だ。 (何かなっ何かなっ♪ にょきにょきにょきーって何が出るのかなっ? 蝶々かなっ? みんな色々思い浮かべてるみたいだけどっ。春には一杯色々出て来て楽しいのですっ) スタッカートな独白は、春の喜びに満ち溢れている。 甘酸っぱいNLとか、ほんとに存在すんのかな。ちょっと遠い目になっちゃうよね。 ● みんな、答えをそろえる努力はしたのだ。 あたたかくなってでてくるものといえば、「蝶々」 いい感じの答えだ。 飛行特化型のE・ビーストなら、羽根を的にして撃ち落として、羽根もいじゃえばいいのだ。 ただ、その、なんていうか。 その思いをひとつにするタイミングがちょっと遅かったって言うか、雑念が結構入ったって言うか。 ――連帯責任だよね。 「――ってなんなのですかこれー!」 『ショタババアつーかショタ三十路』的間・透真斗(BNE001413)は、可憐な叫び声を上げる。 「私のイメージしてたのは「蝶」だったんですが…」 『儀国のタロット師』彩堂 魅雪(BNE004911) は、困惑の細い声を上げる。 それは、揺らめく陽炎に見えていた。 うらうらと暖かな、春めいてきた野原。 まだ形をとっていない、世界の揺らぎ、あるいは歪み。 その場にいる神秘存在の影響を受け、その意識の水面に浮かんだ影を吸い取り、よすがとして、現世に縁を結ぶ。 蝶々だった。 清楚な羽根は鱗粉を散らし、単彩色の色彩は可憐ささえ想起させた。そこだけ見ていれば。 しかし。残念なことに、大きさが人間大だ。 ばさりばさりと羽根を開閉するのにあわせて突き出た腹部を突き出す様は、露出狂的下品さだ。 「ひっどい絵面な組み合わせで混ざっちまってる気がするのです……」 透真斗の一見ショタの割りにやさぐれた口調なのは、中身はアラサーの女子だからである。 口にこそ出さないが、顔にご勘弁と書いてある。 (元喪女でこういうのに出くわしたことがないとはいえ、お風呂上がりに全裸でうろうろするお父さんくらいは見たことありますので……) しかしながら父上は、こんなモーションはなさらなかったであろう。 (誰ですか。これ想像してた方は! 気持ちはわからんくもないですが……) 日本人は、空気を読む民族です。 「ご、ごめんなさい……」 小島 ヒロ子(BNE004871)は、戦いに負けてしまったことを悟った。 「みんなの気持ちを一つにしてアレを思い浮かべようとしたのよ。でもね」 アラサー、涙目。 「でも実は私、虫、中でもこういう羽根モノが一番苦手で。――な、なんでだろう、幼虫とかサナギはまだ大丈夫なのにね――万一Lサイズだったら涙目。うえーん」 って、考えたら。 弱い自制心が、最初に思いついたほうに全力でダッシュしちゃったのです。 「……正直、真っ先に「変質者」が浮かんだよね。いや、寒くても出るけどさ? イメージ的にね」 注意喚起の立て看板も増えるよね。 「体感的に暖かいだけじゃなく、冷たく閉ざされた季節が終わって、気持ちも開放的になるのかな、それで増えてくるようなイメージが……」 先走っちゃったんだよね、ちかたないね。 無数の頭の数だけあるコイル状の口吻が、規則性を忘れてうねうねと動くのは、海中で揺れるイソギンチャクのよう。 「気のせいでしょうか? 触手が混ざっていませんか?」 『ニケー(勝利の翼齎す者)』内薙・智夫(BNE001581)という名の、ミラクルナイチンゲール(コスプレ元ネタ)が、それを言ったらおしめえよ。な、重要項目を口走った。 「……ぅぅ……半分は私のせいですよね……なんか…どこのアヤカシですかこれ……」 涙声混じりの魅雪の繊細な呟きに、智夫の胸に罪悪感が地吹雪。 魅雪のせいじゃない。うっかり智夫が考えちゃったせいだ。 『触手でござるYO。男の娘代表って事でがんばれー』 脳内会議で却下する前に言い逃げだよ、脱走王! (どうしようこれうねうねしてるのは脱走王のせいなんですって脱走王って僕だよね本当にありがとうございました自作自演脳内劇場です) いっそ手を取り合って慰めあったりすると結構絵になるんじゃないかと思うそんなユリモドキは、滅びた鼻行類の一種です。 智夫のてんぱった頭の中では、キンコンカンコン警報が鳴る。 ここしばらく、素でこなさなきゃいけない、逃げられなくて、でも恥ずかしくもない仕事ばっかりで、この冬、幸いにも、現実逃避的コスチュームを身につけずにすんでいた。 (しかし触手なんて恥ずかしいものがでれば言い訳が立つ的な心の動きがなかったとは言えないけど出ちゃったものはしょうがないというか――でもそんなことで新人の魅雪君が落ち込んでしまうなんてだめだよねああでも見た目女の子みたいだしえっと資料だと男の子だけど女の子扱いでいいのかなああどうしようそういうのよくわからないよ!) なんか思考回路に変なものが紛れ込んでいるんじゃないかと著しく心配になるが、あいにくハイリーディング所持者はこの場にいない。 てんぱった智夫の逃避先は、ただ一つ。 「たとえ相手が兎であっても全力を尽くすのがミラクルナイチンゲールの努めです!」 今日も、どこの誰が贈りつけてきたかも分からないジャストフィットなコスチュームに袖を通しちゃう僕を誰か叱って。でも、だって、可愛いし。 突然の大胆アクションにも対応のフレアタイプのラップショートパンツは、女装男子の味方である。 「んー、なんか混ざって変なものに? ふにゃ? もしかしてボトムの普通の生物だったりするのかなぁ?」 フュリエのシーヴの素朴な疑問に、ボトム・チャンネルの人間はこの世界の万物の霊長として声をそろえて叫んだ。 「「「「だったりしない!」」」」 「そっかぁ。不思議だねっ!」 うん、そうだね。神秘だね。涙が出てきちゃうね。 「まあ逆に、心置きなく鉛玉撃ち込めるから、悪いコトばっかじゃないかもね」 ヒロ子さん、声が震えている。 「早いトコ視界から消えて貰う為にも、容赦なくやらせて頂くっ!」 (出来れば羽根に模様のないタイプでお願いします……!!) 切実なヒロ子の願いは、春先の可憐な蝶のイメージのおかげで、どうにか叶えられた。 それしか、かなえられなかったと言う点は華麗にスルーすべきだ。 倒さなくちゃいけないのは、首がいっぱい生えてて、ばっさばっさとリンプン飛ばしつつ、変質者みたいにくねくねした動きをする言語道断なでっかいちょうちょだ。 「蝶と混ざったせいで余計変態感が増したような気がしますです……とりあえず下品なものは見たくねーですよ」 透真斗は、体内の魔力の泉を想起させる。 全力で排除しなくちゃ、今年の春を満喫できそうもなかった。 ● うまくやれば、八人投入で楽勝。と言われた現場に、五人の時点で、楽勝ムードでは行かなくなる。 今回は、新人である魅雪のチュートリアルも兼ねているのだ。 シーヴと智夫が前に出るが、飛行できるちょうちょにどこまで対応できるかものか。 「こっちも飛べればいいだけです!」 今日はちょっぴりオフェンシブな長槍で突進しつつ加護を願えば、仮初の翼が全員の背中に現れる。 「前進ごーごー。抑えましょう」 シーヴの口調はのんびりしているが、動きはすばやい。 「右と左どっちでしょうか?」 両手に握り締める魔力銃。右手の銃は魔法陣を射出し、左の銃は裁きの祈りがこめられる。 エリューションは答えない。そもそも答えられるだけの知能を持ち合わせているようには思えなかった。 「ふふふっ、答えは両方なのですっ! 0距離射撃でごーごー」 間合いは詰められる。浸りと押し当てられた銃口から射出される銃弾。 「まずはオーララッシュで、ていやーっ」 かける魔力を斬撃に変え、続けざまにひかれる引き金がやけに軽い。 「もーいけいけですよっ」 押し込む前衛をたすけなければ。 そんな、新人の意気込み、イエスだね! 「多分……蝶のイメージが適応されてるのなら、低空を低速で飛びまわれるはずなので、まずは呪印封縛で行動制限を掛けてみます」 魅雪の細い指に挟まれた呪符が、E・フォースに向かって飛んでい――かない。 ばち、べべちっ! あさっての方向に飛んでいく符を突き破る、無数の口吻。縁日でおなじみの吹き戻しのような動きだ。 さすがに、駆け出しの魅雪の一撃では、「混じってしまった」 ちょうちょを戒めることは出来ない。 み、魅雪ちゃん、割りとのーこん。 「集中、集中! しっかり見てから!」 「ドンマイですよ」 「当たりが悪いようなら一度集中を挟んで」 スポーツ競技のエールのようだが、神秘の世界では、ヘタな鉄砲は当たらない。 攻撃機会を捨ててでも、相手と自分の波長を同調させなくては、駆け出しの攻撃が、力を得たエリューションに当たる訳がない。 (相手の容姿にもよるけど……なんか……こういうのも慣れなきゃいけないのかな……) 「かよわそーな人から付与しますですよ」 悩める魅雪に、透真斗から見えない鎧のプレゼントだ。 一見、お姉さまにショタが捧げる加護だが、実質は、少年に貢ぐアラサーだ。 神秘界隈は、さまざまな人間模様を産む。 ばさばさと羽根をはためかせる蝶のリンプンがばらまかれる。 鼻と目に来る。あふれる鼻水、と涙。立て続けに放たれるくしゃみ。 「スギ花粉!?」 「そんなの考えてません!」 「面倒なちょうちょ! みんな下がってねっ! 巻き込んじゃうからっ!」 突っ込みながら放たれるシーヴの後退指示に、敵味方の区別なくぶっ放される範囲攻撃をぶっ放す仲間独特のハイテンションがにじむ。 逃げ足には定評があるミラクルナイチンゲールは速やかに下がった。 どんどんと銃口から飛び出す魔法陣は暴風を呼ぶ。 「うわーんっ、こないでーっ! こわいーっ!」 叫ぶシーヴの声に、その場にいたリベリスタは、ダウトと呟いた。 ● 「邪悪なるものよ、去れ! ナイチンゲールフラッシュ!」 ミラクルナイチンゲールの神威の光でしびしびになったちょうちょ。 「キミは新たな季節の風物詩かな?」 ひろ子の予想は、図星だった。 ここで逃がせば、これが来年からの春の風物詩に付け加えられる。 「だが残念、私はキミを斃して、本格的な春を迎える気満々だ!」 指先に乗るほど小さな硬貨を射抜く銃弾が、ちょうちょの羽根を射抜く。 よし。体力はなさそうだ。「ちょうちょは、はかない」が、共通認識として役に立ったらしい。クマムシじゃなくてよかった。 いける。ナントカいける! 「魅雪さん、そろそろいけるんじゃないかな!?」 「そ、そうですね!」 (もし、全うにイメージ統合出来てて、極力フツーのだったら普通にGraveで対処しようと思ってたけど――) 出てきたのは、思いの他おっかないのだった。 「符式起動……お願いね!」 放たれた符が、黒い鴉に変わり、ちょうちょの羽根に穴を開ける。 ぱっと魅雪の顔に晴れやかな笑顔が浮かんだが、その技が使えるミラクルナイチンゲールの顔は青ざめた。 「守るのが。ミラクルナイチンゲールの役目です。役目ですとも」 鴉は、相手の怒りを煽ります。ぶっちゃけ、てめえをロックオン。魅雪にちょうちょをよけるのはまず無理。 初めての戦闘で、そんな変質者テイストの触手なんかにさらされちゃうなんてかわいそうだと思いませんか。男の子? そんなの関係ねえ! 「命は大事に、です!」 社会的フェイト含む! かくして、ミラクルナイチンゲールは、ちょうちょの変質者っぽい触手を魅雪の代わりに受けることになったのだ。 かばわないとかあり得ないし。仕方ないですしおすし。 「智夫さんと違って、触手なんかに負けたりしません!」 社会的フェイトも大丈夫。そう、ミラクルナイチンゲールならね。 そんな名誉女子の奮起に、みんなの心は一つになった。 「不思議な物体にも負けないもんーっ!」 「しっしっ! こっち来ないでくださいよ!」 もはや耐え切れぬと、急激にそれは輪郭を失った。 存在を否定され続けることで、今年の『間違った春』 は、霧散していく。 後に来るのは、『正しい春』 だ。 ● 魅雪は、無傷だった。 「――守りきりました」 誰かさんのコスチュームの大事なところも守りきったのも言うまでもない。 「みっしょんこんぷりーとっ、いぇーい」 シーヴはぴょこぴょこ跳ね回り、ころりと草の上に寝転んだ。 「ふみゃー、お日様ぽかぽかで眠くなっちゃうのです。ひなたぼっこに良い季節っ」 ねえ? と戦闘の余韻覚めやらぬ仲間を見上げる。 「連想ゲームって、なかなか揃わないもんですねぇ……」 透真斗が、ため息交じりで呟く。 「――怖かった」 しかしリベリスタとしての責任感とうっかり変な属性混ぜちゃった罪悪感が、ひろ子さんの原初の恐怖をねじ伏せた。 「相手はどうあれ、こういう任務が出てきたって言う事は……もう春なんですね……すっかり忘れてました……」 初任務の緊張で、そんなことにも気がつかないほどてんぱっていた魅雪は、晴れ晴れとした顔をしている。 程なく、全員草原に寝転んで、もう気色悪くないぽかぽか陽気さんとお友達になった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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