●三高平防疫強化施策(略称『三防強』) 『夏の到来に伴う衛生状態の悪化、関連エリューションやアザーバイド事件の増加を危惧した三高平市は、独自に衛生強化施策を展開します』 こんなビラがアーク内に貼られたとか貼られなかったとか。 ●異人が来たりて笛を拭く ソレは笛吹き。それが生み出すメロディは数多くの動物を魅了した。 その笛の音に引かれ、上位階層の穴を抜ける。ボトムチャンネルにおちてきた笛吹きは、しかしそれを気にすることなく笛を吹く。 十……二十……四十……メロディは止まらない。笛吹きの足元に集まる動物は、笛に合わせて鳴き声を発し、笛吹きとともに進む。 歩む先で草木を食らい、木々を焦がし、病魔を撒き散らす。すぐに再生するには叶わないほど汚された環境があった。 笛吹きに悪意はない。ただ彼は笛を吹く。 ●防疫は大切です 「討伐対象はアザーバイド四体。ヒトのようなモノが一体とネズミのようなモノが三体」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集まったリベリスタたちに向かって口を開く。同時に映し出された映像に、集まったリベリスタたちは慌て呻いた。 映し出されたのは地面に集まる大量のネズミ。そしてそれを引き連れるヒト型のアザーバイド。口に笛を当てて山道を歩いていた。ネズミはアザーバイドを追う様に進んでいる。 まるでネズミの絨毯。数がそろえばネズミも充分脅威である。しかしその小動物が恐ろしいところは、そこではない。 「笛吹きのアザーバイドは大量のネズミを引き連れて山を歩いている。ネズミはエリューション化していないただのネズミだけど、アザーバイドが持ってきた病原菌を体内に宿している。それに噛まれれば一般人は衰弱して動けなくなる」 ネズミが媒介する病原体。かつてはそれで町ひとつが滅んだという。ましてや今ネズミが有しているのは上位階層の未知の病原菌なのだ。 医学が発展した今でも病原体に抗する基本的な対策は変わらない。病原体を持つ生物や物を生活圏内に入れないこと。つまりこのネズミを人の住まう区域に入れれば、病魔は一気に広がる可能性がある。 「あと同じチャンネルから連れてきたネズミが三体。この世界のネズミよりも大きく、牙に炎熱を含んでいる。素早さと体の小ささで攻撃が当てにくいから注意して」 ネズミの群れに混じって赤い体毛のネズミ……と呼ぶには大きすぎるアザーバイドが映し出される。大きさは子猫ぐらいはあるだろうか。 「皆にはこのアザーバイドを倒してほしい。アザーバイドが消えれば病原体も自然消滅する。ネズミもコントロールを失って山に帰る」 「任務事態は普通の討伐みたいだが……アザーバイドが持ってきた病原体、ってなんだ?」 「傷口からの粘膜感染。四十八時間の潜伏期間を得てから発病。 頭痛、発熱、嘔吐の後に激しく衰弱して発疹、胸痛、腹痛、関節痛をおこす。激しく咳き込んで動悸、息切れ、めまいのあとで四肢の震え。最後には――」 「いい! とにかくネズミに噛まれたらやばくてアザーバイドを倒せば病原体は消えるんだな!」 すらすらと並ぶ症状に顔を蒼くしたリベリスタたちは、大声を上げてイヴの説明を遮った。無言で頷くフォーチュナ。 「アザーバイドは笛の音を使って衝撃波を飛ばしたり、ネズミを操って皆に襲わせたりする。皆気をつけて」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月08日(月)23:37 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●防疫チーム 遠くから笛の音が聞こえる。軽やかなメロディで思わず踊りたくなるような音。 それが病魔を運ぶ異世界の存在だと、誰が知りえよう。近づけば未知の病原菌に犯され、苦しみもだえる死の行進。それは一歩一歩、人の住む場所に近づいていく。 しかしそれを察知していたものがいた。『万華鏡』により未来を知り、神秘に抗する術を持つもの。リベリスタが。 「はた迷惑な死の行進を一刻でも早く止めましょう!」 重量のあるチェーンソーをぶぅんとふって地面に突き刺し、『特異点』アイシア・レヴィナス(BNE002307)は笛の音の聞こえる方向を見た。町に着いてしまえば深刻な被害が出るのは勿論、山道を通ってる今でも山の草木や動物に多量の被害が出てるのは想像に難くない。 「鼠や蚊は病原体として有名ですね」 『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)は弓の手入れをしながらそんなことを言う。活動範囲が人間と重なり、よく繁殖し、そして駆除が難しい。病原体を運ぶ生物として有名なのは、そういう条件が重なるからである。 「たかがネズミ……と侮れないわ」 ナポレオンコートを肩に羽織った『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)が畏怖を含んだ声を出す。かつて欧州で猛威を奮った死の病は、祖先達を苦しめた。アザーバイドが持っている病原体も、危険極まりないのだ。 「三高平を病原菌まみれにさせるものですかっ」 拳を握って『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)は気合を入れる。アザーバイドの持っている病魔が蔓延すれば、その被害は計り知れない。それは防がなければならないのだ。 「夏はエリューション事件が増えるのか……そういや、どっかの鬼も似たようなこと言ってたな……」 『赤光の暴風』楠神 風斗(BNE001434)は思案にふけるように顎に手を置く。自らを鍛え上げる為に活を入れて、自らの剣を握り締める。強くなる。それは風斗の目的。ナイトメア・ダウンで家族を失いその結果力を得た彼にとって、強さとは如何なる意味を持つのだろうか。その表情からは何もわからない。 そして演奏者の姿が見える。アザーバイドが引き連れている大量のネズミと、一回り大きな赤いネズミも。 「どっかの伝承みたく鼠退治でもしようっていうの? アタシが退治しとくから、悪いけどキミの出番はもうおしまいだよ」 空気からの感染を防ぐ為顔にマスクをした『ガンスリンガー』望月 嵐子(BNE002377)が銃を構えながら言う。アザーバイドを睨みながら神経を研ぎ澄まし、深く深く集中していく。 「面白い音色ね。でも、その音色はこの世界に計り知れない災厄をもたらすの。出来たら演奏を止めてもらえないかしら?」 ミュゼーヌの問いかけに、笛吹きは肩をすくめて首を振る。再び笛を口に当てて音色を奏でた。ネズミたちがそれに合わさるように殺気立つ。 ミュゼーヌも交渉できるとは思っていなかったのか、リビルバー式のマスケット銃を構えなおした。 「やれやれ。傍迷惑な事だけど。まぁ、お仕事はお仕事だし?」 虚ろな瞳を向けながら『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)は咥えタバコを揺らす。それじゃ一つ。不思議ナマモノ退治といこうかね。幻想纏いから武装を取り出しながらゆらりと身体を揺らす。 赤いネズミが笛吹きを守るように前に出る。リベリスタたちも展開を始めた。 ●笛吹きとリベリスタ 「汚物は消毒でござるよー」 自らの影を纏いながら『ニンジャブレイカー』十七代目・サシミ(BNE001469)は駆ける。それを妨げようと炎の牙を持つ赤いネズミが前に出た。ファイヤラット。異世界から来たネズミ型アザーバイド。 サシミはブラックコードを体の周りでリボンのように舞わせて、周囲を薙ぎ払う。重心を動かして糸の軌跡をコントロールし、最小限の動きで複数のファイヤラットを切り裂こうとする。が、 「む。避けられたでござるか」 思いのほかファイヤラットの動きは素早い。サシミの糸を全てかいくぐり、威嚇音を上げる。 ファイヤラットの回避性能を見て、リベリスタたちは頷きあう。あのネズミに攻撃を当てるのは難解だと悟る。 「敵は全て薙ぎ倒す!」 嵐子はショットガンを向けると、味方に当たらないように射線を変えながら連射する。ファイヤラット、笛吹き、そして普通のネズミも巻き込んで討撃ち続けた。ファイヤラットの一匹はこれを避けるが、二匹は避けきれない。笛吹きとその足元のネズミは銃撃に巻き込まれ、痛手を負う。 「蜂達の進軍よ。害獣駆除といきましょう!」 まさに弾丸という蜂の群れ。ミュゼーヌの掃射は嵐子と同じくファイヤラットの一匹には避けられるが、他二匹と笛吹きに命中する。赤い血が流れ、大地を染めた。 そんな痛みなど意に介さず、笛吹きは音色を奏でる。足元のネズミが一斉に散り、リベリスタたちに襲い掛かる。中には先の射撃で傷ついたものもいるが、異界の音色はそれでも動けと攻撃を強制する。逆らうことなどできず、傷ついたままリベリスタに襲い掛かってきた。 「うわわわ、うわぁ」 一匹だけなら愛嬌もあろうネズミも、集団で襲いかかられれば恐ろしいものである。ニニギアは自分の体内で魔力を循環させながら、迫り来るネズミを腕でガードした。傷口が焼けるように痛い。 「猛毒か。厄介だな」 体内に入った異物を自覚して、風斗は舌打ちする。取り合えず目の前のファイヤラットに向かう。体内の気を練り上げ、接近と同時に爆発させる。体内に満ちるエネルギー。そのエネルギーを加えて、愛剣を握り締めた。 「いきますわよ、サシミさん!」 アイシアはサシミのほうを見る。チェーンソーを構えてファイヤラットの一匹を真横に振りかぶった。打撃がファイヤラットを浮かし、サシミのほうに吹き飛ばす。 「素早い相手。いいじゃないですか。今一番相手をしたかった相手です」 七海は弓を構え、ファイヤラットの動きを見る。前の依頼では苦汁を舐めてしまった。早く腕と勘を取り戻さなくては。そんな向上心で弓を引く。 素早いネズミを見る。それ以外は空白。その挙動から次の動きを察知し、イメージし、そして心と弓を一体化させる。正しい姿勢から放たれた矢は仲間と仲間の間を通り抜け、その背中に吸い込まれるように矢は突き刺さった。 ファイヤラットが一斉にリベリスタたちに襲い掛かる。二匹がサシミに、一匹がりりすに。炎を含んだ牙はダメージ自体は大きくないが、傷つけられたところが発火して熱が体力を奪っていく。 「その不思議能力を平和活用できないものかな。タバコに火をつけるとか」 りりすは武器を持ち緩急つけた動きでファイヤラットに襲い掛かる。一定しない動きはファイヤラットを幻惑し、気がつけば振るわれていた武器にその皮膚を傷つけらていた。スピードだけではないソードミラージュの武技。それはゆらゆらと揺れるタバコの煙のような動き。 笛吹きの奏でる歌は止まらない。ネズミも死を恐れずリベリスタたちに向かって吼えた。 ●回る猛毒 戦いは硬直していた。 リベリスタたちの作戦は『サシミのところにファイヤラットを集め、範囲攻撃で一掃して殲滅速度を上げる』ことである。 しかし範囲攻撃は単体攻撃スキルに比べて命中精度が落ちる。ましてや相手は回避力に優れているのだ。三度攻撃して一度当たるという命中率である。ファイヤラットに対するダメージは、思ったより積み重ならない。 その間にも笛吹きが操るネズミによる猛毒や、ファイヤラットの与える火炎がじわりじわりとリベリスタたちの体力を削っていく。 毒と炎自体はニニギアが放つ優しい光で打ち消すことはできるが、それを行なえば彼女は回復行為ができなくなる。力尽き倒れるほどではないが、リベリスタ側の疲労は少しずつ溜まってきた。 もちろんリベリスタも状況に応じて柔軟に動く。範囲攻撃で一掃が難しいとわかれば単体攻撃に切り替え、それでも当たらないと思ったリベリスタたちは時間を掛けて相手を狙って攻撃する。 「悪夢の行進もここでおしまいでござるよ。休んでおくと良いでござる」 サシミが舞う。黒の糸がそれにあわせて動き、ファイヤラットを切り刻む。範囲攻撃があたりにくいと察した彼女はファイヤラット一匹に狙いを絞りその動きを拘束する動きに走る。赤い毛色に絡まる黒糸。その動きを拘束し、締め上げる。 「一気にいくよーっ!」 「殲滅してあげるわ」 嵐子とミュゼーヌの乱射は広範囲を狙っているのだが、この二人の命中精度が高いことともあり、ファイヤラットは避けることができない。乱射される弾幕はファイヤラットを少しずつ傷つけていく。 「そこです。その命、いただきます」 七海の放つ一矢がファイヤラットの命を奪う。狙いはずさず眉間に命中し、苦しむ間もなく絶命した。 「皆、回復するわよっ」 敵の手数が減れば、回復も余裕が出てくる。ニニギアが優しい歌を奏でる。笛吹きの曲とは違う静かな音楽。魔力を乗せた穏やかな歌はリベリスタたちの傷を塞ぎ、癒していく。 アザーバイドはそれに対抗するように笛を拭く。嵐子を襲う不可視の衝撃波。濃を直接揺さぶられるような音波に眩暈を起こす。 「曲の判別は……難しいか」 風斗は音のパターンから笛吹きの次の行動を予測しようとしていたのだが、難しいと断念する。戦闘中に判断するには、笛吹きの音楽は文化が違いすぎる。何せ異世界の音楽なのだ。 「致し方ありませんわね」 同様にリズムを刻んでいたアイシアも嘆息する。理解できるまで曲を続けられたら、こちらの方が先に倒れてしまうだろう。 「確かに。理解するには時間がたりなそうだね、これは」 りりすはネズミ達の群生としての動きを観察しようとしたが、笛吹きに操られてる以上元々の本能を抑えられていること。そしてファイヤラットは異世界のネズミだからこちらの世界のネズミと群れとしての動きが異なることを理解できたに過ぎない。 笛吹きがネズミたちを操り、リベリスタたちを襲わせる。 じわりじわりとリベリスタたちにダメージは蓄積していく。 ●病魔が来たりて笛を吹く 「っ! ……まだまだ、です」 度重なる猛毒に片膝をついたのは一番耐久力におちる七海が最初だった。運命を燃やして立ち上がり、ファイヤラットを狙う。傷の痛みも恐れも弓を構えた時に全て消える。何度も何度も繰り返した修練が、こんな状況でも平常心を取り戻していく。 「……おろ? 避けきれなかったでござるか」 そして次に倒れたのはサシミ。最前線でファイヤラットの相手を続けていた彼女は、猛毒と火炎の牙で疲労が蓄積していた。攻撃の半分を避けていた彼女だが、度重なる攻撃に意識を失った。 回復役のニニギアが何もしなかったわけではない。むしろ彼女は全力でリベリスタたちの癒しにかかっている。彼女がいなければ戦線はとうに崩壊していただろう。それ以上にネズミたちの猛攻が激しいのだ。 だがしかし、ダメージを積み重ねていたのはアザーバイドだけではない。リベリスタたちも堅実にダメージを与え続けているのだ。 「これで終わりだ!」 風斗が体内に集まるエネルギーを武器に集中させる。大地をしっかり踏みしめて、大上段に振り上げた剣を裂帛の気合と共に振り下ろす。剣戟で吹き飛ばされたファイヤラットは木にぶつかり、そのまま動かなくなった。 ファイヤラットの周りを回る様にステップを踏むりりす、ファイヤラットとの距離を離さずに相手を翻弄しながら、隙をうかがう。生じた隙はわずかなもの。それを逃さずりりすは踏み込み、武器を突き出す。 可聴域を超えたファイヤラットの悲鳴があがり、最後のファイヤラットも動かなくなった。 「ようやくお相手できますわね」 アイシアが笛吹きに近づいて、口を開く。その首筋に噛み付いて、アザーバイドの血液を吸い上げた。体内に満ちる異世界の血液。どくんどくんと自らの血液と混じり、アイシアの活力を満たしていく。 「異世界の病原菌を含んだ血液をそのまま飲むのは、危険ではないかしら?」 「……っ! 病原菌は倒せば消えてしまうのですから大丈夫ですわ!」 そんなミュゼーヌの心配を強気で振り払うシーンもあったが。 「笛吹きの笛、ゲット!」 嵐子が笛吹きの持つ笛を狙う。目をしっかり開け、照準具を通して笛を見る。狙ったのはわずか一瞬。その一瞬の間に弾丸が笛に向かって飛び、木っ端微塵に砕けるイメージを数度繰り返す。 当たる。確信はトリガーを引いた後。イメージどおりに笛は砕け散った。 「ま、こんなもの? アタシの腕なら当然よね」 くるくるとショットガンを回し、胸を張る嵐子。 笛吹きはアンニュイに肩をすくめ近くの草をちぎる。草笛を楽器にしてネズミを操りだした。地面を走るネズミの絨毯。もはや動けぬほどの傷であってもその意思を無視して操るアザーバイドの音色。 ミュゼーヌとりりすと風斗の背筋に悪寒が走る。体内に侵入した猛毒が死神となり、体温を一気に奪い取ったのだ。 しかし彼らは倒れない。奪われた熱を取り戻すように運命を燃やし、意識を留めたのだ。 「病魔をまき散らし止める気がないのなら、私達は決して共存不可能よ」 ミュゼーヌがマスケット銃を撃ち放つ。魔力で貫通力を増した魔弾。病魔を許さぬという意思を込めた弾丸に貫かれ出血する笛吹き。そして、 「オレたちリベリスタは、この世界の抗体……異界の病原体を根絶するまで負けはしない!」 剣を構えて風斗が走る。赤く彩られたバスタードソードを振るう姿は、まさに赤光の暴風。 ザン! 暴風の刃は笛吹きの胴を薙ぐ。絶命の悲鳴を上げることなく、笛吹きはその一撃で地面に倒れ伏した。 ●三高平防疫強化施策・状況終了 「ギリギリだったかしらん」 タバコを咥えて木に背中を預けながらりりすが言う。端的だが的確にリベリスタたちの状況を語っていた。 思いのほか長期戦になったため、経戦能力限界までスキルを使っての戦いだった。もう少し戦いが長引けば押し切られていただろう。 決して引かないという覚悟の差。リベリスタの持つ運命の加護が勝敗を分けたのだ。 ともあれアザーバイドは倒れた。異世界の病原菌はこれで自然消滅するだろう。しかし、 「救急箱と消毒液持ってきたし、噛まれた人いたら使ってあげるよ」 「手洗いうがいするまでおやつはお預けね」 異世界の病原菌が消滅しても、元々ネズミの持っていた病原菌はそのままである。それ以前に傷口をそのままにしておくのも問題だ。 用意してあった消毒液で傷口を洗い、清潔な包帯で塞ぐ。 「この皮で衣を作ればかぐや姫さんが求めた、『火鼠の裘』になるのでしょうか?」 ファイヤラットの死体を見ながらアイシアが興味を示す。人の体を覆うほどの皮は取れそうにないけど、小物入れぐらいは作れそうだ。 治療を終えたリベリスタたちは、気を失ったサシミを抱えて山を降りた。 三高平市の防疫は、こうして人知れず守られたのである。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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