●他所の揉め事持ってこないでください 時計の針がかっきりと、正午をお知らせした瞬間。 某私立女子中学校のグラウンド真上にディメンションホールが開く。 そしてよく晴れた空から、降ってきたのは何やらヘドロのような巨大な怪物と、愛らしいウサギとネズミの中間のような小動物がそれぞれ一匹。 昼休みを楽しもうとしていた少女達は、慌てふためき逃げようとするものの。 「ちょっと待ってくれっち!」 阿鼻叫喚の最中、愛らしい小動物の方が甲高い声で叫ぶ。 「僕はパピパ! メルヘン・レース・プーブリカのいたいけな住民っち! 助けてくれっち! この変身アイテムをあげるっち! だからこのハイドロと戦ってくれっち!」 だが、実際そんな得体の知れない変身アイテムを受け取って、謎のヘドロ怪物と戦ってくれるような無謀な女子中学生は居ないのである。 厨二病を発症していたってマジヤバいときは現実に戻る。それがシビアなオンナノコって奴である。 「ちょ、そんな、想定外……ぐはぁ!」 小動物はアイテムごとハイドロに踏み潰された。 そしてハイドロは——逃げ惑う少女らも、校舎も、近隣の施設も住民も皆みんな破壊しつくすべく、ゆっくりと仮足を伸ばしていった。 ●アニメじゃない、アニメっぽいけどアニメじゃない なんともはや、コメントしづらい未来が万華鏡によって予知されたが、放置しておくと謎のアザーバイドによって甚大な被害がもたらされてしまう。 「幸い、ディメンションホールが開く正確な日時が判明している。 ホールが開くのは避けられないから、出てきたハイドロとかいう怪物やら、パピパとかいう生き物やらを何とかして、ホールを塞ぐしかないな」 アークが手をまわし、グラウンドに不発弾が発見されたとでっちあげ、ホールが開く日は周辺住民を退避させるので、一般人の犠牲は心配しなくてもいい。 欲を言えば、怪物をグラウンドで食い止め、周辺の建物に被害が出ないようにしたいところだ。 「ハイドロはホールには戻らんだろうから、倒すしかないが……パピパとやらは無害そうだ。倒しても、強制送還でもどっちでもお前たちのしたいようにしろ」 面倒ならパピパがハイドロにやられてから介入してもいい、と冷血なコメントを添えるフォーチュナ、『黄昏識る咎人』瀬良 闇璃(nBNE000242)。 なお、ハイドロはタールのようにドロドロした小山であり、巨体で押し潰し、アメーバのように全てを飲み込み、触手を伸ばして対象を取り込もうとする。 「……以上だ。何か質問は?」 闇璃が周囲を見回すと、ハイハーイ! と元気に『空転する車輪』キリエ・ウィヌシュカ(nBNE000272)が挙手した。 「はい、キリエ」 指されて、キリエは笑顔で立ち上がり、 「パピパがくれる変身アイテムって、使うとどうなるのかなっ?」 目を輝かせて質問を放った。 が。 「……僕の知ったことか。お前たちがどうするかは自由だがな」 闇璃は久々にキメ台詞を使った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:あき缶 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年03月08日(土)22:49 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●夢オチ(ネタバレ) てーれってーてれれてーれってーー。 パステルカラーでキラキラしている背景を縦横無尽に、無駄にくるくる回る光り輝く裸体。 ぎゅるぎゅるとリボンが巻き付き、瞬時にファンシーなフリル付きの衣装に変わる。 くるるるるるるるる!! 独楽レベルで回転した挙句、キュワッとヒール付きブーツを、硬質な床に擦らせて止まった『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)三十七歳男性は、高らかに名乗った。 「魔法中年キヘイ・ザ・ワイルド!!」 シャッ、キュッ、ふわっ! 謎の効果音と共にビシビシと決めポーズを決めていく。そしてファーとフリルでいっぱいの魔法少女ルックと、リボン満載の髪を揺らして、背を向けていたカメラに、腰から上だけを捻って顔を向け、ウインクを贈った。 「ワルイコは、魔砲すーさいだるえこーでマジカル☆ジェノサイドしちゃうぞ!!」 ピカーン! 謎の効果音と共に、決め台詞が炸裂する。 「ハッ!?」 がばり。移動中の車内で飛び起きた喜平は、寝汗をびっしりかいた額を拳で拭った。 あわてて周りを見るも、ワゴン車の車窓からはまだ高速道路しか見えない。 「ゆ、夢か……」 こんな誰得な夢を見たのも、これからやってくると予言されたアザーバイドのせいである。 「おのれパピパ!!」 ギリギリと拳を握りしめ、喜平は、あざといアザーバイドに憎しみを募らせるのであった……。 無人の女子校グラウンドにリベリスタを下ろし、ワゴン車は去っていった。 ディメンションホールが開く時刻まで、あとわずか。 九人中、六人は殺意で満載である。主にパピパへ。 「俺様ちゃんさぁ、よその世界に他力本願でやってくる小動物系かわいこぶってる生物って好きじゃないんだよねぇ」 「正直アイテム貰ったら用無し。どうせボトムからは追い出すんだし、どーでもよし。流れ弾当っても仕方無いよね♪」 「パピパ? あぁ、変身アイテムの梱包材の名前ですか。……あ、プレゼントに喜んでテンションが上がった子供が、梱包材をぐっちゃぐちゃにして中身を取り出すのって、よくあることですよねぇ……」 「アザーバイド討つべし、慈悲は無い、って知り合いの忍者の人も言ってました!」 「取りあえず……一般人に生ごみ押し付けて戦わせるような奴は一度、全滅するがいいよ」 (隙あらばパピパに奈落剣……) 外道ばっかりだが――まぁ、アークはそういう奴ばっかり居る組織だから仕方ない(偏見)。 フュリエまでメチャクチャ物騒なことを言っている状況に溜息一つついて、『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)は、戦意満載シャドーボクシング中の『空転する車輪』キリエ・ウィヌシュカ(cn000272)に声をかけた。 「やる気だな」 「うんっ。えっと、なんか落ちてくるやつをぶっ叩けばいいんだよね?」 「うん。前に出ていい。……痛い思いをしたらすぐに下がるんだぞ。大怪我はさせん」 キリエはシャドーボクシングをやめると真顔になり、鷲祐の穏やかな瞳を眼鏡越しに見つめ、 「……やっぱり司馬ちゃんは、優しいよね」 と呟いた。 それに何か言い返そうとした鷲祐だが、ぎゅーんと空間が歪む音を聞き、バッと天を振り仰ぐ。 「来たか!」 広がるディメンションホール。 降臨する、黒い巨大な粘着物と……愛らしい小動物系アザーバイドのパピパ。 「おっとぉ☆ きたきたぁ!」 殺意満載、『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)、舌なめずりすらしそうな勢いで、巨大な鋏『逸脱者ノススメ』をシャキリと鳴らした。 ●あっさり(チーン) 「僕はパピパ! メルヘン・レース・プーブリカのいたいけな住民っち! 助け……」 二足歩行のチンチラっぽいアザーバイドのパピパが、成人男性の裏声のような声で助けを求めようとしたが、口上が終わる前に、すごいスピードで迫る男の娘。 全力疾走の『エゴ・パワー』毒島・桃次郎は、パピパが手に握っている棒状のアイテムにまっしぐら。 「魔法少女! 夢と可愛らしさを砂糖でコーティングしたような、ふわふわ加減。派手に動きまわるのに、何故か見えない不思議さ、実用性より可愛さ重視。何度か似たような依頼でコスしたけど、何度やってもいいよね! ロマンだよね! 可愛らしい衣装は絶対正義!」 口走るように魔法少女ルックについて熱く語りながら、 「ちょちょちょっち!? 未だ話し終わってな……」 桃次郎は、焦っているパピパからアイテムをもぎ取った。 そして、何の迷いもなくスイッチぽん。 てーれってーてれれてーれってーー。 迸るファンシーな音楽と光、そして謎のリボン状のオーラ。 背景が、快晴のグラウンドから、パステルカラーでキラキラしているものに……。 「やめっ」 鷲祐が自慢の足をここぞとばかりに使って、アイテム効果範囲からの逃亡を図る。 「ちょ!? やめなさ、おじさんがキラキラしたところで誰も得をしな……」 黒いフルフェイスヘルメットのバイザーを跳ね上げ、ヘルメットの中の虚空から必死に『口だけで』止める『』緒形 腥(BNE004852)も『一応』逃げようとするも、鷲祐ほどの速度はない。 「ま、正夢……だと……!?」 喜平は、移動中に見た悪夢そのものの光景に愕然としてしまい、逃げることが出来なかった。 (変身はしない、そんな事故を起こしたくない。世界平和。って言ったじゃないかー!) 愕然としたまま、喜平は世界を司る何かに苦情を訴える。 だが、数値だけで言えば、鷲祐は腥や喜平の八倍以上の速度を誇る。そんな司馬 鷲祐でも、謎空間の範囲外へは逃亡できなかったのだ。他の面々が逃げられるわけがなかった。 「なぜだ!」 知性の青き泉とか名乗ってしまいそうな、ばっくりと肩が開いた蒼メインのミニスカート姿になってしまった鷲祐は、泣きそうな声をあげる。ついでにトカゲのウロコが印象的な青い短髪の頭頂部には、蝶々のような長いリボンが揺れている。 「こんな依頼を受けてしまった瞬間に、運命は決まってたんですね!!」 満面の笑みで、『桃源郷』シィン・アーパーウィル(BNE004479)は大きく頷いた。 みんなみんな魔法少女になってしまえばいい。シィン得だ。 (マッチョと断言できそうな人が一人も居ないけれども、オッサンがふりっふりな格好なだけでも十分……ぷくくく……) 内心大爆笑のシィンは、赤いワンピースの首元に緑の宝玉が輝く、ピンクの掃除機で空を飛びそうな格好をしている。 「…………皆いいなぁ。なんでボク、これなの? いや、たしかにコレも広い意味で魔法少女だけどさぁ……」 何の装飾もない真っ黒いワンピース姿になってしまった桃次郎が、恨めしそうに他の男性陣を見つめる。ニシンのパイや猫の人形を届けてしまいそうである。ライフルをバトンのようにくるくる回しても、あんまりリリカルさが出ない。頭頂部に赤いリボンがあるだけマシだが。 「それ とってもいいよ。黒は美しく見せるんだから。……いや、ほんと、出来ることならせめて交換したいよ、おっさんは……」 なお、腥は、黒いヘルメットはそのまんまに、裏地が赤く表が黒いマントをたなびかせ、シンプルな黒のインナーに白いスカート姿だ。ヘルメットではなく、金色のツインテールが生えていたら、さぞや似合うだろう。 「ああ。一番の当たりくじじゃないか?」 喜平は喜平で、パフスリーブと青いアクセントカラーが高貴さを醸し出す、白いワンピースをまとっている。スカート丈が長いのがせめてもの救いだ。いや、スカートな時点で救われていないのだろうが……。 腥と喜平が並ぶと不思議と対のような感じが出る。年齢が近いからだろうか。 「逃げちゃ駄目だよ。黄桜も頑張るから一緒に頑張ろ?」 黒のノースリーブに赤いミニスカートワンピースを重ね、赤い手甲、黒いニーハイに赤いハイヒールの『骸』黄桜 魅零(BNE003845)が頭の黄色い大きなリボンを揺らしながら、鷲祐に近寄った。 それが隙であった。鷲祐の眼鏡が光り、ソードミラージュ特有の目にも留まらぬ手が閃く。 「とりあえず開幕……システム・ジャノサイドだッ!」 ぎゅむうっと骨のようなトゲトゲした魅零の尻尾を、思いっきり引っ張る鷲祐。 「ひきゃあああんっ!?」 甘くて甲高い声が響き渡る。 「だだだだだ駄目ぇ、イっちゃう! だ、めぇ、見ないでぇ! 葬識先輩もいるのぉぉ! 葬識先輩尻尾触っちゃ駄目ぇって言ってたのぉぉ! いやぁぁ、全敵殺しにぃ、イっちゃぁぁっ!」 泣き叫びながら、乙女走りで魅零はハイドロに突進する。 「やだぁ葬識先輩がイイぃぃ」 まるで彼女が彼氏に抱きついてポコポコ殴るかのように、太刀に呪いを込めて、バッシンバッシン振り回す。 どろどろしたハイドロに包まれながらも、彼女は止まらない。 「……勝ったな」 「見えないよー?」 後ろからキリエの目を手で覆いつつ、眼鏡の光る蜥蜴はドヤ顔で呟いた。キリエの格好は、着物の上からチャイナ服を被せたような上半身に、白いミニスカートと黄色のロングブーツ。なんとも九十年代のかほりがする。 だが、ぶにょぶにょのハイドロに、刃はあまり効果が無いようだ。 「うーん、やっぱり物理防御力が高い感じ? ちょっと測ってみようかなっ!」 顔半分を包帯で隠し、タートルネックで袖なしかつ赤いフリルと、後ろに長く垂れる赤リボンがアクセントな黒スクール水着に、長い黒手袋と黒いニーハイ・ハイヒールブーツ姿の葬識は、全身から黒い瘴気を噴き出すと、ハイドロ目掛けて差し向ける。 「ぎにゃーっち?!」 「……あ、死んだ」 パピパ、暗黒に巻かれてあっさりと死亡。 「あ、巻き込んじゃった。ごめんごめん☆」 目元で横ピースしながら、てへぺろ☆ と舌を出す葬識は、全くブレない悪びれない。 「はぁ、生ゴミが残ったか……」 腥は、もはや何も考慮することはないとばかりにドモワゼル・ディーのついた拳を固める。 「まっ、可愛いから助けてもらえるとかゆー獄甘い考えだから、こうなっちゃうわけだよね」 ウンウンと自分の中で納得して、葬識はパピパのことを記憶の彼方にぶっ飛ばした。 「さっ、堅実にたおしていこー! リリカル☆魔法殺人鬼☆ごーごー!」 ●あとは全力をぶつけるだけの簡単なお仕事ですわ(迫真) 「祭祀請願、痛みを和らげよ」 前衛と書いて肉壁と読む人々を支えるシィンの回復呪文はシリアスな方向に振り切っている。 「魔法少女パーフェクト・シィン、全力で厨二っぽいセリフ考えてきましたよ!」 と空中に浮いて得意げなゲス顔をするフュリエは、大分ボトムに毒されてしまったようだ。 「アザーバイドですし! 帰る気配なさげですし! 逆らうモノはキルゼムオール!」 怒涛のような『』ゼルマ・ゼーゲブレヒト(BNE004820)の暗黒魔法は、ハイドロに抜群の効果を発揮した。 「あたしすごいから火力でぶっ飛ばして全てを解決しちゃうんです!」 すごい手応えを非常に感じることが出来たゼルマは、とっても満足気に魔法をぶっぱなしていく。なお、普段からどう見ても魔(法少)女な格好の彼女は、変身しても服装にさほど変化が無かった。色が赤になって、格好が蠱惑的というかエロ度が格段に上がっていて、エレキギターが似合いそうな攻撃的なテイストになっているが。 マグメイガスの真価が発揮される依頼だ。前衛が皆、物理防御力に長ける相手に物理でゴリ押ししている中、確実にフュリエ達はハイドロを削っていた。 一人を除いて。 長い袂をひらめかせ、キリエはハイドロをぶっ叩きまくっている。 「うええ、ぶにょぶにょしてるぅー」 じゃあ、神秘で戦えよ! って誰か言ってやって。 と思っているうちに、 「ひやああっ?!」 ハイドロがその黒い触手を伸ばし、キリエを掴みあげた。 「い、いにゃあああ!」 ヘドロが彼女の袂から素肌へと流れ込もうとする。 「……全く。気になるったらないな」 鷲祐が地面を蹴る。 「硬かろうがデカかろうが――斬り刻むのみッ!」 破裂音のような爆発音のような轟音が鳴り響く。音速の壁が破られた音だ。 鷲祐の超音速の刃がハイドロの触手を切り刻み、キリエを空中に離す。 「みゃっ!」 びたんっと地面に落ちたキリエは、すんでの所で心の傷を回避したことを知らない。 「マジカル☆ジェノ……ゲフンゲフン、なんでもない……」 喜平の究極のエネルギー弾がハイドロの進軍を押さえる。呪文っぽい何かを唱えかけてしまうのは、きっと格好のせいだろう。 桃次郎は、自分だけ全然かわいくない(本当は可愛いのだが、桃次郎的には『無い』格好だった)ことにふてくされ、おざなりに精密援護射撃中。物理攻撃なのであんまり効果は出ていない。 ついでに狙いもあんまり定めていないので、パピパの死体に弾丸がいっぱい当たっている。いや、むしろこれは狙っているのか。八つ当たりか。 さて、絶賛ジャノサイド中の魅零は、 「うぇええん、どうしよう、葬識先輩を視界に入れたら心が壊れる気がする……ふぇええ、葬識先輩ぃいい……それでも、尊敬し……て、ま」 と泣きわめきながら、やけくそのように奈落剣し続けている。 その隣に、ちゃっかりいる葬識先輩である。神秘の漆黒の霧で、漆黒のヘドロ怪獣を包みあげ、痛めつけている葬識は、 「あれ? 黄桜後輩ちゃん、なんで泣いてるの? 撫でるよ」 わかっているのに分かってないふりで、ニッコリ魅零に笑いかけてみせる。手を伸ばしてナデナデもしてあげる。 「ひぃあああああ?! ほひゃぁあああ?! なっ、ナデナデ?! 葬識先輩のナデナデ!!」 魅零の心が壊れた。そして復活した。 もっと張り切って物理でハイドロを攻撃する魅零。 「今度こそ……勝ったな」 鷲祐はもう一度、光る眼鏡のブリッジを押し上げながら、呟いた。 ●燃えるヘドロ(くさい) 「あ、ちょっと離れてて下さいねー。……フレアバーストッ! おお、凄い! やっぱりあたし、すごいです!」 嬉々としてゼルマはグラウンドごとヘドロを火に包む。 ちゃんと仲間に退避を呼びかける彼女は知っている。なかまは大切だということを。なお、ソース元はスポ根である。 そろそろ終幕が近いことを悟り、シィンは目を閉じ、静かに詠唱した。 「灯火、延焼、星火燎原……瞬く光は天より来たり、裁きの時を地に告げん。爆ぜる焔は全てを喰らい、罪に諸共魂を灼かん――焦熱降天(エル・バーストブレイク)」 天から炎の雨が降り注ぎ、燃えるハイドロをより一層燃やし尽くした。 「はぁ、最後にコレも貰って行きな」 黒いマントの腥と、 「全力全開の、魔砲すーさいだるえこーの嘆きを聴け」 白いワンピースの喜平が、並んで銃口をハイドロに向けた。 エネルギー弾と物理弾丸が並んでヘドロに飛んで行く。 火だるまを貫く二条の銃撃――そして、四散する、外界生物。 「……なんだか知らんが、おっさんたちが並ぶと親友感が出るな……。なんでだ」 深く掘り下げてはいけない気がして、鷲祐は浮かんだ疑問を忘却し、パピパの海綿のように穴だらけの遺体を拾い上げると、天高く放り投げた。 ごくりと飲み込むようにディメンションホールは、小動物の死体を吸い込む。 あとは、ブレイクゲートが出来る者全員で、完膚なきまでにディメンションホールを砕いた。 腥がタバコ型禁煙グッズを口に咥えた。 「あー……空が青いねえ……」 「……焼肉行くぞ」 鷲祐が言い、 「わーい! たべるー!」 キリエが脳天気に飛び跳ねる。 「はぁー、堪能しましたねー。パピパを嬲れなかったのはちょっと残念でしたけど!」 シィンはふよふよ浮いたままクルリと反転した。 ようやく元の格好に戻れた一同は、口々に疲労を口にしながら撤収を始める。 そして桃次郎は、もう何の効果も産まない変身アイテムを、無言で明後日の方向にぶん投げ、後ろを振り返ることなくグラウンドを後にするのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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