●呪われし剣、呪われた銃 古来より、大切に扱われた物には命が宿ると言われている。 ならば、逆に恨みを受け続けた物はどうなるのであろうか。そうしたものは一般的に、呪いのアイテムとして扱われることが多い。特に物語上では、そうした物は人々に不幸や事故をまき散らすのが常だ。 そして、この世界にはアーティファクトというものある。つまりは、そうしたものが実在してもおかしくない世界なのだ。 例えば、剣。 その剣は、戦国時代から人を切り続けた妖刀であった。手にした者は、どんなに聡明で理知的な人物であろうと破壊衝動と、人斬り願望に囚われ、昼夜を問わず人を斬り続けた。しかも、その切れ味は天下一品。何重にも重ねられた机の下に隠れた者を、机ごと斬ったという逸話すら持っていた。 その剣に恐れをなした後の江戸幕府がこれを封印し、何代にも渡って厳重に管理してきたという。それほどまでに、この妖刀は人を斬った。天下泰平の世すらも揺るがすほどに、人を斬ったのだ。 剣の名を『カグツチ』という。荒ぶる神の名だ。 そのカグツチは今、江戸時代の風俗を伝える博物館に展示されていた。かつての大暴れはどこに行ったかと言われんばかりの大人しさをもって、ガラスケースの中に収まっているのである。 しかし、妖刀はガラスケースの中で本当に大人しくしているのだろうか? 否。アーティファクトとして分類されるこの妖刀は、訪れるであろう何かを待っていた。 何を? と問われれば、妖刀は「同士」であると答えるだろう。それを語る舌はないが、全身から発するオーラはそれを雄弁に語っていた。 そして、ガラスケースの中に潜んでいた妖刀が待ち望んでいた日は、ついにやって来たのである。 足音と銃声を博物館内に鳴らしながら、そのガラスケースへとやって来る気配は、もちろん異質だ。 例えば、銃。 その古びた銃は、奇跡的なパーツの組み合わせによって生まれる、大当たりと呼ばれる部類の良品であった。それ故に、戦いを望む人から人の手に渡り、数えきれないほど多くの血を流してきた。 いつからか、その銃自身が血を望むようになっていくと、銃を持つ人物は呪われ、銃の意のままに人を襲うようになった。死から死へと渡り歩く呪の一品となったのである。 銃の名を『チュトサイン』という。この銃が生まれたアメリカ大陸に伝わる死の神の名だ。 奇妙にも、どちらも神の名を持つアーティファクト。これら、同質であるふたつのアーティファクトは、お互いに惹かれあうようにして共鳴。チュトサインは哀れにもとり憑かれた者を使い、カグヅチの回収へと向かわせたのである。 そして、とり憑かれた者はリベリスタであった。アーティファクトにとり憑かれるような、精神力の弱いものではなかったが、アーティファクトの回収任務の中で、同じくチュトサインを狙うフィクサードとの戦いで消耗していたのが仇となった。いくら強靭な精神を持つ者であっても、消耗した体でチュトサインの呪いを一身に受けるのは無理があったのだ。 そうして、リベリスタだった彼女は呪いのアーティファクトの意のままに動く人形となり、博物館を襲ったのである。 もちろん、リベリスタであり、呪いの力を手に入れた彼女に叶うものはいない。正確には、その博物館の警備では、だが。 ともかく、彼女はガラスケースを割り、カグツチをも手に入れた。カグツチにもチュトサインと同じく呪いの力はあったが、むしろ操り人形である彼女には心地が良いものであった。 歓喜に震える体、銃、剣。すべてが一体のように共鳴し、彼女に喜びを与え、次なる目的を示した。もちろん操り人形である彼女はそれに従い、闇の中へと消えて行った。 銃と剣の次なる目的とは、殺戮の二文字である。 ●解呪の術は 地図上に示された赤丸を眺めながらも、リベリスタたちは資料を横目で見る。赤丸はカレイドシステムによる出現予想ポイント。資料はふたつのアーティファクトについての詳細だ。 まずは地図。これは高層ビルの屋上であり、アーティファクトに操られた者はこのビルの人間を皆殺しにしようとしているらしい。それは夜闇に乗じて行われるようなので、月明かりの下での戦いになるだろう。 カグツチとチュトサイン。どちらも武器として優れているだけに恨みを買い、蓄積した汚れはアーティファクトになってから恐ろしい能力を与えた。即ち、人を操るという力。 「今回は、アーティファクトふたつの回収とアーティファクトに囚われたリベリスタの救出が目的。だけど、」 そこで言い淀むのは、ここにリベリスタたちを集めた『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)だ。なにか言い難いことでもあるのだろうか。 「アークとしては、アーティファクトの回収が最優先。アーティファクトによる被害者を出さないためにも、アーティファクトは破壊しても構わない。これは、操られたリベリスタも同じ。最悪、殺しても構わない」 衝撃的な言葉である。これは確かに言い辛いだろう。 「放っておけば、神秘の秘匿も難しい。だから……」 顔は曇り、言葉尻も小さくなる。これ以上は無理、という意図がそこには含まれていた。 「お願い。アーティファクトを回収して、彼女を止めてあげて」 そして、ひねり出した言葉はこういうものだった。目は伏せられており、その表情は読めない。 しかし、言葉には真摯なものが込められていたから、リベリスタたちも真剣に返答をした。 その答えは――。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月05日(金)22:11 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●今日という日にリベリスタ ビルの屋上へ向かう階段の中で、リベリスタたちは今回の事件の被害者とも言えるリベリスタと、反対に加害者と言えるアーティファクトとの関係を考えていた。彼らと同じリベリスタが戦う相手であり、同時に普段回収したり使用していたりするアーティファクトが起こした事件だ。意識しないわけにもいかない。 「支配能力があるアーティファクト? 同じリベリスタが操られてるのっ?! 生死は問わないって……助けられるかなぁ? ちょっと心配だよー」 アークから渡された依頼の内容はアーティファクトを止めること。操られているリベリスタの生死は問わないという前提も出ているだけに、『犬娘咆哮中』尾上・芽衣(BNE000171)は横に流したポニーテールを撫でながら、尻尾をだらりと垂らしている。芽衣の感情に呼応するように動く犬の尻尾は、今回の事件に対する芽衣の想いを端的に表しているのである。 「アーティファクトに心身を奪われたリベリスタ……。以前アタシも精神に干渉するアーティファクトに触れたことがあるけれど、一歩間違えばアタシもこうなっていたのね」 アーティファクトについて、『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)は想うところがある。以前出会ったそれもそうであったし、アーティファクトというのは案外危険な物なのかもしれない。 「助けてあげないと」 普段はいい加減な顔をしながらふらふらしている杏だけれども、今回ばかりは真面目に行くと決めた。景気づけに杏は自身の頬を叩いて、首を振った。 「古来より数多の憎悪を宿した呪われし武器か。しかも剣と銃、両方揃っておるのが厄介じゃのう」 咥えていたキセルを離し、指で挟みながら『煉獄夜叉』神狩・陣兵衛(BNE002153)は天を仰ぐ。そこには屋上へと通じる道がある。その道の先で行われる戦いは、激しいものになるだろうと考えられる。 「その宿主に選ばれたリベリスタもなかなかの使い手と聞く。そうした者と刃を交わすのもまた一興。血に塗れし妖刀……その呪い、我が愛刀で断ち斬ってくれようぞ」 だからこそ、燃える。薄く笑ってから、徐々に笑いを豪胆に変えていった陣兵衛は、ひと通り笑った後、顔を引き締めた。 「ワシを本気にさせた分。楽しませてもらおうかの」 眼帯の奥に、鈍い光が灯る。 「(武は戈を止める力……武器はその器。……だが、ただ死と破壊を撒き散らす存在ならただの凶器。……その存在は悪だ。悪は……私が全て滅ぼす)」 思考はゆっくりと、しかし次第に早くなりながら、『消えない火』鳳 朱子(BNE000136)の頭の中を駆け巡る。燃え盛る情熱のような決意は、腕を強く握り締めることに現れている。本来の用途を超えて、死だけを求める武器を倒して、仲間を救う。それが自分のやるべきことだと思うから。 だから、ゆっくりと……しかしはっきりと言った。 「……やってみせる」 眼鏡のフレームが光って、赤い目を映し出す。 「……ん。今日も、電波の、受信感度……良好」 アホ毛をアンテナのように張って、エリス・トワイニング(BNE002382)は任務内容を改めて脳内にインストールしていく。まさしく電波人間といったところだ。 「呪われた武器……。回収か……破壊されるかは……、戦いの……結果次第」 エリスは細身の体でロリロリな体の胸元に手を置いて、電波越しに彼女の想いを受け取ろうとする。……しかし、聞こえてこない。電波は良好かと思ったが、どうも電波障害はあるようだ。どこかにノイズがあるから。 「でも……。操られている人は……、絶対に……助けたい」 ノイズの正体は恐らくこれだろう、とエリスは認識し、心構えを決める。同じ仲間が操られ、無残にも殺されるのだとしたら、それはとても気持ちの悪いものだ。それを許せないから、ノイズとなっていたのだろう。 「呪われた武器に操られた同僚を救出するのですが、出来る限り傷を負わすことの無いようにしたいものです」 黒髪とロリロリしたスカートを揺らがせながら、小鳥遊・茉莉(BNE002647)は屋上へ向かう階段を登っていく。手にした懐中電灯で照らされた先は、エリスの強結界の力もあって人の姿は見えない。しかし、夜中だけあって闇が多い。一寸先は……というやつだ。 「後顧の憂いを絶つ意味でも2つの武器はいっそ破壊してしまった方が良さそうです」 その先にあるのは闇だけかもしれない。だったらいっそのこと、と茉莉は考える。 やがて、リベリスタたちは屋上に続く扉までやって来た。この先は戦場となり、場合によっては過酷な運命が待ち受けているかもしれない。 しかし、それでも彼らはリベリスタなのだ。 「呪いの太刀? 面白ェ。神秘狩りの俺様と、人狩りの手前、要は同類っつーことだよなァ。だったらどちらが上か――ここらで白黒付けようじゃねェか。なァ、兄弟」 蹴破るようにして、『雷帝』アッシュ・ザ・ライトニング(BNE001789)が扉を開ける。 「人だって異形だって、そして神だろうが斬るだけだ」 そして扉の向こうに見えてきた夜空に向かって『悪夢の種』ランディ・益母(BNE001403)は手を広げ、そして空を掌握するかのように力強く拳を握った。 アッシュとランディ。ふたりは腕を組んで並び立ち、その傲慢で俺様な顔を銃と剣を持つ女へと向ける。 「俺たちが、」 「テメェをぶっ潰してやんよ」 はんっ、とふたりで笑う。 怖くない。呪いのアーティファクトなど、アッシュとランディには怖くはない。むしろ、戦う気力が湧いてくるクソ野郎だ。 ●明日を切り開く銃 目の前に広がるのは、巨大なすいか。 「うわぁ。胸が西瓜だよー」 ではなく、豊満すぎるというか育ち過ぎたというかそういうタイプの胸を持った女性のリベリスタこと沢谷沙緒里。意味もなくプルンプルンと震えているそれは、何故か戦いの緊張感を高める。……ちなみに先の台詞を言った芽衣も同じく胸がすいかサイズなので、チャイナ服の下から押し上げるようにして自己主張していた。つまり、すいかは四つだった。 「甘いぜ。胸がすいかな程度で、この俺様が釣られクマー」 男としては、目移りする光景である。 「ああ、先に戦いたい相手と言ったが、別に胸には敵意を抱いておらぬぞ?」 「って! そんなことよりぃー!」 戦闘である。銃と剣を構えて飛び上がった沙緒里は月を背にしながらチュトサインを連射していく。弾丸は雨あられに、しかし正確にリベリスタたちの急所を強襲していく。 「まずは序の太刀。見せてもらおうかの」 その雨が強かったのは、前衛に立っていた陣兵衛と朱子だ。陣兵衛は手にした斬馬刀を振り回すことで防御をし、朱子はメガネを勢い良く外してからラージシールドを使って弾丸を弾き返した。 そうして動きを牽制しているところに、急降下した沙緒里が手に持った日本刀――カグツチを朱子へと振り下ろす。呪いの銃と呪いの剣によるコンビネーション攻撃だ。 「……くっ」 その一撃はラージシールドによる防御すら貫いて、紅子の体に食い込む。が、フェイトの力を借りて、ラージシールドによるアンブッシュ。距離を離してカグツチの一撃を止める。 「ハッ、ずいぶんな挨拶だ。ってことは……、俺も挨拶していいってことだよなぁ!!」 アンブッシュによって開いた間に、ハイスピードによって速力を上げた影が飛び込み、舌を出して指を立てる。 「雷帝、アッシュ・ザ・ライトニング」 腕を振って両袖の中に入れていた二刀のナイフを掴み、目にも留まらぬスピードで幻影剣を繰り出していく。 「手前を救う男の名だ、魂に刻んで憶えとけ」 繰り出された連撃は何十にも重なった弧を描き、呪いのアイテムをしっかりと握っている腕を傷つけていく。 「……んん。無駄におっきい……けど」 天使の歌をダメージを負ってしまった仲間たちに向けながら、エリスは超直観により電波を受信。もとい、先程から派手に胸を左右上下に揺らしながら動いている沙緒里の動きを観察している。思わず視線がそちらに誘導されそうだが、それ以外にも操られて戦う彼女自身の体が心配である。……先の一撃では出血こそしたものの、まだ大丈夫なようだが。 そうして観察しているのはエリスだけではない。先に傷を付けたアッシュもまた、その動きを注視している。最も、彼が興味あるのは一撃の重さである。全力防御をしていた紅子の体ごと斬りつけたカグツチの力……これを警戒しているのだ。 「何余所見してやがる、俺様が眩し過ぎて眼が眩んだか?」 だから、再び指を立てて挑発をしてから、二刀のナイフを前面に構えて受けの体制を整える。 これに対して、沙緒里……いや、カグツチは反応。短気な性格であるのか、メガクラッシュによって一気に吹き飛ばそうとしてきたのだ。 「うおっ! へへっ……嬉しいねぇ!」 にやにやと笑うアッシュだが、その一撃は防御を貫きアッシュの体をビルの屋上から夜空へと吹き飛ばした。しかしアッシュはフェイトの力を使って、運命ことフェンスを掴みとる。 「大丈夫ですか? ……よいしょっと」 そこを茉莉によって助けられながら、アッシュは首を振った。一度戦闘不能になってしまったからには、慎重に行かねばならない。 その間にも、チュトサインによる雨のような連射は続いていく。……が、リボルバーである。弾切れは起こるもので、そのリロードに隙ができた。 「狙うはまず、チュトサイン。眠ってもらいます!」 そこに茉莉の魔曲・四重奏が飛んで行き、腕とその先にあるチュトサインにダメージを与える。 「出来るだけ加減はするが我慢しな」 更に、集中をしていたランディの疾風居合い切りがチュトサインを攻撃した。これは見事にチュトサインだけに命中し、ダメージが蓄積していたチュトサインを弾き飛ばすことに成功。 「うし。何とかなったな」 しかし、風の刃に乗ったチュトサインはそのまま夜空へと消えていこうとする。 「おっと、危ないわね。もう!」 それを、飛行中だった杏がキャッチ。だが、呪いの力は根強く持ち主を不幸にしようと干渉してくる。つまりは、杏を新たな持ち主として、操り人形にしようと精神を汚染し始めたのだ。 「……ッ! 言うことを聞きなさいよ!」 チュトサインを手にした腕をもう片方の腕で掴みとって、耐える。 「あんた、このまま落ちたら死ぬわよ? アタシだって、はいそうですかって体の自由を預けるわけには行かないの。手を差し伸べた人間にそんな仕打ちをするって言うなら。アンタの事このまま地面に叩きつけて粉々に砕いてやるんだから!」 自分はアーティファクトに負けない。あの時よりも成長しているはずだと、心の中で念仏のように何度も何度も繰り返していく。 そして、しばらく葛藤があり……。 「……」 杏はランディにチュトサインの銃口を向けた。 「……今はふざけてる時じゃないぞ」 「あはっ。バレちゃった?」 杏は舌をぺろりと出して、悪友に対して笑う。つまりは、何とか呪いに打ち勝ったのだ。 杏の体力が全快だったことが、勝利の鍵だった。もし、傷ついた体で触っていたのならば――、危なかっただろう。 ●昨日を断ち切る剣 沙緒里を操るのがカグツチだけになっても、戦闘は続いていた。それもそのはずだ、呪いの力はまだある。チュトサインだって、いつまた持ち主を乗っ取ろうとするか分からない。だから、長引けば長引くほど呪い側が有利なのである。 「(攻めて手首から出血すれば、体が重くなってもてなくなるはずぅーっ!っと!)」 しかし、その目論見を破るように突撃したのは何度も何度も集中を重ねた芽衣だ。犬の尻尾を左右に振りながら、右、左と狭い屋上の中を縦横無尽に飛び回り、駆け巡る。そして揺れるはすいか。 それに対して、沙緒里のすいかもぶるんと揺れて、迎え撃とうとカグツチを構える。 「次に出ます!」 だが、その動きをチャンスとして、リベリスタたちの中央から飛び出てきたのは、やはり何度も集中を重ねた『夜翔け鳩』 犬束・うさぎ(BNE000189)だ。その虚ろな三白眼はカグツチを外してギャロッププレイを仕掛ける。 「どうも、狸のビーストハーフのうさぎです。なんだか今日はエロい場面に遭遇しました」 このギャロッププレイは胸を締め付けるように沙緒里の動きを封じ込めて、隙を作り出す。 「さて、このタイミングなら行けるかな。……僕も、頑張らないと!」 更に動きを止めるべく、魔氷拳による氷漬けを狙うのは『臆病強靭』設楽 悠里(BNE001610)だ。彼の性格が出ているその一撃は、沙緒里の体を気遣って、足に集中している。 「手遅れにならなきゃいいけど……。後は頼んだよ!」 「……過去に囚われていてはこの先に歩む道は無い。数百年の呪縛から解き放ち、これで終止符を打たせてもらう!」 ふたりの攻撃によって生まれた隙に放たれたのは、メガクラッシュによって振り下ろされた陣兵衛の斬馬刀。そして、 「(ありがとっ。……さあ、あったれぇえぇぇぇぇぇぇぇえっ!)」 トップスピードに達した芽衣の斬風脚。 ふたつの一撃によってカグツチは弾き飛び、呪いの力から解放された沙緒里の体は地に伏せた。 「治療する。……電波は良好になったから」 エリスが天使の息を使いながら、沙緒里の体力と調子を観察する。 「私の長年の経験によれば……。たぶん、大丈夫です」 茉莉がこういうのだから、おそらくは、大丈夫だろう。 さて、弾け飛んだカグツチを拾ったのは、紅子だ。 「……っ! こんなにっ、重いっ……!」 しかし、やはり呪いの力は残っている。戦闘によって疲弊した意識がカグツチに持って行かれそうになる。 「そいつを貸せっ!」 「いんや。俺に貸しなァ」 ランディとアッシュ。ふたりが同時にカグツチを掴み、紅子から剥ぎとるようにして手に取る。そして、ふたりで握りながら念じた。 「武器は持つ奴次第、だから俺がテメーに新しい役割を与えてやる! 新しい命をくれてやる!」 「持ち主を支配する妖刀、かはは、面白ェ。てめェにこの俺様が支配出来るってのか? 兄弟よォ!」 ふたりの精神で、呪いの力を抑え込もうと力を込める。 「舐めンな! 雷帝の名は、伊達じゃねェ! 」 「神なんぞ知るか、人が作ったモンなら人を救わせてやる! 応えろ『カグツチ!』」 「従うのは、手前ェの、方だ――ッ!」 そして、カグツチは地面に落ちた。 「……滅びなさい。あなたの運命は、ここで終わり」 決め手になったのは、最後に手を化した紅子の精神だ。三人は、呪いの力に負けなかった。 三人は、天に向かって腕を振り上げる。人の意思が呪いに勝利した証だ。 それに続いて、七人も拳を振り上げる。 「俺たちの、勝ちだ!」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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