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天空に響く終末の詩

●風の中で唄う
 ららららら、ららららら。
 抜けるような青空の中、ぽつぽつと浮かぶ筋雲を抜けながら、にこにこと女は歌っていた。
「キモッ」
 後ろを飛ぶ若い青年が呟く。
「雇い主やで」
 フードを深く被り、鼻から下を布で覆う中年の女がボソリと返した。彼女にも翼があり、飛行中だ。
「ハッ、どうせ聞こえてネーよ。フェイトの無い人間が死ぬことが世界の為になるとかさー。イカれすぎだろ。頭おかしい思想は理解できまっしぇーん。金もらっちゃったからやることやるダケー」
「五月蝿い」
 ベラベラ喋る青年の口に、横を飛ぶ老年の男が刀の鞘を突きつける。漆を塗り重ねた鞘が、近い太陽の光に反射して、青年の目を灼いた。
「ベラベラ喋らず仕事をせい。きさんから叩っ斬るど」
 老人はイライラと太い声を響かせた。
「世界に愛されなかった人は世界にいらないの。世界がいらないっていうゴミは綾音ちゃんがお掃除しちゃう♪ るるる、ららららら」
 女の歌声を聞き、一同は顔をしかめた。
「あーあーキメーな。さっさと終わんねーかナ。護衛のオシゴト!」

●秩父の山奥で踊る
「……という情景が万華鏡で見えたそうなの」
 と、『谷間が本体』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)は、一同に上記のように語った。
「彼らは四人。全員フライエンジェで、新宿を目指して飛行中。今から急げば秩父上空あたりの人気の無い場所で戦えるはず」
 なぜ貴方達が呼ばれたか、分かるわよね? とシルフィアは仲間を見回す。
 彼女達はフライエンジェとスターサジタリー。飛行しながら、また超遠距離間の戦闘が可能なのだ。
「目標の目的は、東京のフェイトを得ていない人間達を狂い死にさせるため、アーティファクトを投下すること」
 おぞましいアーティファクトの名は『無垢なる魂』。強い衝撃を与えると、広範囲の人間の理性を奪うという。
 理性を失った人間は、力のリミッターも倫理観も失う。そんな欲望の赴くままに動く人間ばかりになれば、おぞましい状態に陥るのは火を見るよりも明らかだ。
「危険すぎる玩具は、使われる前に取り上げないとね」
 衝撃を与えると発動する以上、安易な破壊は推奨できない。奪い、処理を検討すべく、アークに持ち帰る必要がある。
「万華鏡のおかげでフィクサードの情報はある程度判明しているわ。この資料を元に対処を検討するわよ」
 シルフィアが資料を配布する。
 東京を救う相談が始まった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:あき缶  
■難易度:NORMAL ■ リクエストシナリオ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年01月30日(木)23:12
 お世話になっております。あき缶でございます。
 この度はリクエスト誠にありがとうございました。
 以下、詳細です。

●成功条件:アーティファクトの回収
 アーティファクトを破壊or持ち逃げされると失敗です
 フィクサードの生死は不問です

●戦場
 秩父山地上〜上空
 地上・上空ともに考慮すべき往来等はありません


●フィクサード:すべてフライエンジェ
  改 綾音:世界の為に歌う電波女。しぶといデュランダル
 月山 源太:短気ジジイ。手練のソードミラージュ
 一条 義清:皮肉屋青年。強運なクロスイージス
 青江 童子:無口関西おばさん。狡猾なマグメイガス

 月山、一条、青江は改に雇われた傭兵
 彼らの目的は『アーティファクトを新宿に投下すること』であり、『リベリスタと戦うこと』ではありません

●アーティファクト『無垢なる魂』
 接敵時の所有者は改
 ビー玉状で、強い衝撃を与えると広範囲のE能力者ではない人間の理性を奪う
 
●飛行について
 一度に飛び上がれる高さは10mまで
 飛行中は、命中と回避、物防と神防に大きなマイナス修正

 それでは皆様のご健闘をお祈り申し上げております。
参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
アークエンジェホーリーメイガス
来栖・小夜香(BNE000038)
フライダークマグメイガス
シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)
アークエンジェインヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
フライダークマグメイガス
綿雪・スピカ(BNE001104)
ハイジーニアススターサジタリー
白雪 陽菜(BNE002652)
フライエンジェスターサジタリー
我妻 湊(BNE004567)

●万人に空は開かれている
 秩父山中。
 リベリスタは飛来する人影を確認した。彼らが今回、アーティファクトを新宿へ投下するテロを目論むフィクサード共である。
「ゴミがゴミのゴミ掃除。愛し愛され下らない」
 己が頭上に目標が達する前に、『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)は複葉の羽を羽ばたかせ、急速に空へと飛び上がった。
 じぃと五感を研ぎ澄ませ、ユーヌはフィクサードの動きに集中する。
「白雪さん、私も気をつけるけれどそばに居てね」
 真っ白な三対の翼を広げ、『ANZUD』来栖・小夜香(BNE000038)が、『三高平の悪戯姫』白雪 陽菜(BNE002652)に告げる。
 こくりと頷く陽菜の背には翼がない。今回、依頼を受けたメンバーで唯一自前の羽が無いのが、彼女だ。
 が、次の瞬間、陽菜の背に翼が現れる。小夜香が翼の加護を与えたからだ。
「敵も味方も皆自分の羽根持ってて飛べるのにアタシだけ借り物の羽だよ……」
 と複雑な面持ちの陽菜だが、気を取り直して、仲間と共に大空へと駆け出す。
「来なすった、来なすったァ!」
 一条 義清が言うなり、
「頭に蛆が湧いてるな!」
 ユーヌの罵声がフィクサードの耳に飛び込むと、続いて桃色の花嵐が巻き起こる。
「遠路はるばるご苦労様!」
 花咲く翼の持ち主、『運び屋わたこ』綿雪・スピカ(BNE001104)が怒鳴った。
 取り返すべきアーティファクトを持った改 綾音は、案の定、一条に庇われて無傷。
「へいへい、揃いも揃って飛んでやがるよ。仕事だゼ、ジジイにババア! ロックンロール!!」
 一条が雇い主をかばいながら、叫ぶと、一条の前に――つまりリベリスタに対峙するように月山 源太と青江 童子が滑りこむ。
「恨みはあらへんけども」
 地獄の炎が空中の広範囲に広がる。
「これが稼業なもんじゃけえの!」
 横に持った刀を引き抜き、老人は近接するユーヌを二撃、二回、計四回切り抜いた。
「ふん、後衛ばかりじゃの。わしゃぁ、アークは玉を取りに来たと思うていたがの」
 老人は、相対するリベリスタの布陣を見て鼻息を吹く。
 ユーヌ以外は、『落とし子』我妻 湊(BNE004567)が若干前に出ているが、ほぼ後衛。極端な三角形の陣営は、アーティファクトを奪いに来ているとは思えない。
「ハッ、あれじゃね? 死ねば落とすだろう的な、暴力に訴える脳筋系統なんじゃネ? 女の子ばっかなのに乱~暴~ヒュー♪」
 一条が口笛吹いて、嘲笑う。湊が男なのには気づいていないようだ。
「ららららら、らららららら、運命に愛された人は傷つけたくない~。綾音ちゃんを見逃して欲しいの~」
 一条の後ろで、脳天気に綾音が歌うのを、一条はイライラと睨みつける。
「よそ見、禁止だよ!」
 それでも、刀身を分かち、中央部から陽菜が撃つビームから雇い主を守る一条はくさってもプロであった。

●狂った慈悲
「通りたければ、その面倒なアーティファクトをおいて行ってもらおうか」
 心底脳天気に困った表情をしている綾音に、『谷間が本体』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)が勧告する。
「どうして~? これは必要なの~。世界がいらないっていう者をお掃除するの~」
 まるでミュージカル女優のような綾音のしゃべり方に、苛立ちを掻き立てられつつ、シルフィアは続ける。
「ノーフェイスを殺すのは確かに世界平和に繋がるが、やり方が雑だ。そういうのは私達アークに任せておけ」
「顔無しを狩って潰せば良いものを」
 ユーヌも同じことを思ったか、言葉を添えた。
 しかし、綾音はきょとんとする。
「えー? エリューションじゃないのよ~。綾音ちゃんがお掃除したいのは、覚醒してない全ての生き物~」
「あーマジキチ」
 庇い続けながらも、一条はげんなりしたように吐き捨てた。
「あのさぁ、庇われ続けるお姫様プレイもいい加減にしてくんナイ? 戦えるでしょ、アンタ」
「え~、でもぉ、覚醒してフェイト持ってる人は世界が愛する必要な人だしぃ~。るるる、仲良くしよーよ、るらららら」
 それを聞いて、陽菜はポツと漏らす。
「アタシも正直言うと源太さんみたいなお爺さまの相手ってあんまりしたくないんだよねぇ。お年寄りはリベリスタはもちろんフィクサードでも大事にしてあげたいし……」
 とまで呟いてから、ブンブンと陽菜は首をふる。そんな微笑ましい理由とはぜんぜん違う。綾音の考えは過激で狂っている。
「うーわーあー、マジなぐりてええー」
「まともに相手すな。仕事や」
 青江がピシャリと一条を叱りつけ、再び炎を広げる。
「まぁ、フィクサード如きに言葉は通じんか。ならば武力を以って罷り通る」
 炎に巻かれながらもシルフィアは、荒れ狂う雷龍を放った。
 ユーヌも一条を引き離そうと、なんども挑発の言葉を放つ。
 だが一条は言葉では感情を表すが、行動には移さない。精神系の撹乱に強いようだ。
「打たれる前に、打ち落とすわ!」
 スピカが何度も羽を羽ばたかせて、風の渦でフィクサードを巻き込む。
 その風に乗るかのように、月山が後衛にまで滑り込んで無数の残像で有翼の乙女らを切り刻んだ。
「ばってん、そりゃこっちのセリフじゃっどん!」
 湊が魔砲杖で残像の隙間から、一条を撃つ。
「いった! 空中ってほんと、防御おろそかになるから、痛いよね。てゆーか、壁が邪魔!」
 延々と庇い続ける一条だが、彼を癒やす役がいない。さすがのクロスイージスも疲弊していく。
 一方、延々と攻撃のみを繰り出すリベリスタだが、彼女らは小夜香による癒しの力で、疲れもあまり無いようだ。
「癒しよ、あれ」
 と詠唱しながら、小夜香は一条に念で話しかける。
(私達はAFさえ手に入ればあとはどうだっていい。いつまでもこんな人を守っていても仕方がないと思わない? お金が必要なら買い取ってもいいわ。新宿をめちゃくちゃにしちゃったら、お金を使う場所もなくなってしまうわよ)
 だが、返答は真っ当でそっけなかった。
(でもなぁ、どんな仕事だって、途中で投げ出すとその後の評判に響くんだヨ。俺の未来の商売のために、ここは引けねえナァ)
 血まみれでも、へらりと笑う一条に小夜香は処置なしと知る。
 地上と違い、障害物のない空中は、追い詰めることも追い詰められることもありえない。

●堕ち、縋り、遠く
 一進一退の戦況に、綾音は焦れた。
「もー! 通してってばぁ~」
 というなり、綾音は真上へと飛んだ。
「あ、バカ! ……ぐあ!?」
 湊の狙撃が一条を秩父の林へと叩き落とす。
「盾が……いや、長く持ったほうじゃの。おんしの勇姿は広めてやる」
 月山が呟き、そして、彩音を追うユーヌへと、翼を駆って迫る。
「追わさぬ!」
 組むように老人は少女に取り付いた。
「鬼ごっこは上手くないんだ。邪魔をするな」
 ユーヌは老人を冷笑し、挑発した。
「なにをぉお!?」
 一条には効かなかった挑発が、うまくハマったらしい。月山はユーヌしかもう見えない。
 それを見た青江がユーヌへと魔法を撃とうと詠唱を始めるのを、
「マグメイガスは後衛の花形……といえば聞こえはいいが、敵として出ては真っ先に潰しておきたいな存在でもあるな。堕ちてもらおう!」
 シルフィアは雷撃で阻止する。
 すると、シルフィアの前にスピカが躍り出る。
「おばさまの相手は私が! どちらの詠唱術がより強いか、試してみましょ!」
 得意のヴァイオリンで放つはカルテット。
「うっとおしい」
 眉根を寄せ、青江も全く同じ魔法を撃ち返した。拮抗する魔法は押し合った末に、相殺される。
「スナイパーに背中を向けて逃げるとか正気じゃないよね!」
 陽菜が綾音を超遠距離から狙撃した。スターサジタリーだからこその精密射撃で、綾音がガクリとよろめく。
「どうしてぇ? 仲良くしてよぉ。同じ運命に愛された仲間じゃないのぉ」
 綾音がしくしく泣いてみせた。
「おねーさんの言ってる意味がわかんないんだよね。一般の人って、世界に愛されてないとか選ばれてないんじゃなくて、世界の一部なんだよね……きっと」
 だから、いらなくなんかない。と湊は言い返す。
 しかし彼の声が届く距離に、もう綾音はいない。
 リベリスタはユーヌだけに追跡を任せず、自分たちもアーティファクトを追う。
 全力で移動する綾音は近接戦闘のプロたるデュランダル。遠距離を戦う術は少なく、己を癒やす方法はない上に、本人に戦う意志がない。
 綾音は戦わず、一条は堕ちた。月山はユーヌにかかりきりで、青江はスピカとシルフィアが対応する。
 数としても布陣としても、勝算は十二分だ。
「慈愛よ、あれ」
 小夜香が癒やし続けるおかげで、リベリスタは未だに誰も危険な状況にはない。
 特に、小夜香は月山に執拗に切り刻まれるユーヌに神の愛を注いだ。
「ブロック役ができているなら私の仕事は十分だ」
 ユーヌは、不吉な影で怒り狂う老人を巻き、呪う。

●空よさようなら
 スターサジタリー二人が綾音の背を蜂の巣にする。
「んー、こんだけ撃たれても逃げるとか、ある意味すごいねえ」
 湊は感心しきりだったが、ふと思いついたように、陽菜に告げた。
「援護射撃頼むね」
 そして羽をバサリと羽ばたかせ、湊は移動にすべてを費やし始めた。
 それを見て、ユーヌは月山に背を向ける。
「阿呆め!」
 喜色満面で怒り状態の月山はめちゃくちゃにユーヌを切り刻むも、ユーヌは呪印を冷静に展開、綾音を縛った。
「あぐうっ」
 動きが止まったのを見て、湊は頷く。
「ナイス!」
「私はこの老人の相手をせねばならんようだからな」
 背中をミンチにされたユーヌだが、小夜香の力で倒れるほどの消耗にはなっていない。
「取った!」
 身動きの取れない綾音の体を探って、湊がアーティファクトを掴んだ。歓声をあげるなり、
「……! 畜生ッ」
 青江が湊に高位魔方陣からの銀弾を放つ。
 月山もユーヌも貫いて、湊を撃ちぬいた強力な一撃が、湊の手を一瞬緩ませた。
「あっ」
 日光を反射しながら、落ちていくアーティファクト。
「拾え!」
 青江が叫ぶも、月山はユーヌにかかりきりだ。彼女の挑発の言葉が効いているらしい。
「させるか」
 シルフィアが青江に魔法の大鎌を振り下ろした。
「野暮なおばさま、さようならよ」
 今度はスピカが、青江と同じ魔法で空をつんざいた。
 銀の太い光が青江を貫き、いや、全てを包んで、消し炭に変えた。
「キャーッチ!」
 陽菜が、普段はつけていない慣れない翼で必死にアーティファクトを追い、地上ギリギリでなんとか掬いあげた。
「ぬう!?」
 ようやく自力で冷静に戻ったらしい月山は、状況を確認し、目を見開く。
 そして、ゆっくりと身動きが取れない雇い主を見て、諦めたかのように頭を振った。
「やれやれ……。これ以上は、足が出るわい」
 刀を黒鞘におさめ、月山はゆっくりと甲府の方へと飛んで行く。
 任務を果たしたリベリスタに、月山を追う理由はない。
「お爺様を殺さなくてすんで、よかった」
 陽菜はどこかホッとしたように呟き、老人の背が小さくなるまで見送っていた。
 危険物がないならば、綾音を追い討ちせずともいいだろう。
 リベリスタは未だに空中で固まっている綾音を放置し、本部へ戻るべく秩父の山へと降下していくのであった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お世話になっております。あき缶でございます。
リクエストいただきまして、ありがとうございました。

回復って大事だなあ。という依頼でした。
空中のデメリットはありましたが、全員が同じ土俵で戦うので
あんまり意味はなかったですね。

またのご参加お待ちしております。