●真面目なフィクサード―― 「……いたぞ、あれだ」 物陰に潜む複数の人影。夏の熱気をものともせず、ただ一点に彼らは視線を集中させていた。 彼らの視線の先にあるのは一台の車両。それは、 「ふむ、あれが目標の現金輸送車ですか尊氏さん」 「中々厳重そうな車では無いか。“襲撃”のし甲斐があるなぁ……」 ――ATMの前に停車している現金輸送車。大量の資金を運ぶ車である。 見れば二名の警備員が作業を行っていた。一人は警棒を持って警戒を。もう一人はATMに資金を補充しているのか、何やら操作を行っている。 「まずは俺が車を止める。その後お前らが車を左右から攻撃、中の人員を無力化して現金を強奪し、集合場所の廃ビルへと逃げ込む。この手筈でいいな?」 「ええ。それが妥当でしょう」 「うむ、私もそれで構わん……が、一つ問題が発生した」 何だ? という視線を味方の一人に向ける尊氏。その一人が指を指す。指し示す場所は現金輸送車から少し離れた地点。そこにいるのは、 「……あれがどうかしたか? 見た所、小学生ぐらいの子供じゃないか」 横断歩道を渡ろうとしている児童だった。元気の良さげな子供たちの様で。 「うむ。それも女子だ」 「で、それがどうした亮?」 「どうした……だと? このたわけがっ!」 亮、と呼ばれた男性が思わず大声を出す。 その顔はまるで般若。何がいけなかったのか彼の逆鱗に触れてしまったようだ。 一体何がいけなかったのか――尊氏は必死に思考を巡らせる、が。 「――幼女の傍で騒ぎを起こしてどうする! あの子達が怖がるような真似は避けるべきだろうが! 一生物のトラウマにでもなったらどうするつもりだ!?」 「いや待て、お前は何を言っている?」 なんか全然予想外の返答が返って来た。思わぬ事態に思考が一瞬フリーズする。 ……え、今なんて言った? 幼女がどうとかこうとか…… 「尊氏さんの言う通りですよ! 落ち着きなさい亮さん!」 「幸之助……」 尊氏が“そうだ、言ってやれ”という視線を彼に投げかける。 だが、幸之助の絞りだした言葉はまた碌でも無い物で、 「――あんな幼女よりも近くにいるご婦人に危害が加わったらどーするおつもりですか!」 「おい、そこのお前。おい、ちょっとこっち見ろや」 「やかましいわこの熟女好きが! ババァを救ってどんな価値があると言うのだたわけっ! 幼女こそ至高の存在だろうがぁあ!」 なんだか話が妙な方向に逸れている。なんだ、どうしてこうなった。 そう思っている間にも口論はこれまた明後日の方向にヒートアップしていて。 「年配の方の魅力を分からないロリコンが! あんなガキ誰得ですか!」 「この流れなら言えるっ! まさしく俺得だっ――!」 「この流れなら言える、じゃねーよ! お前ら二人纏めて何言ってんだ! ……あっ」 その時だった。ツッコミ役に終始徹底していた尊氏が重要な事に気付く。 「……おいお前ら、現金輸送車もう行ってしまったぞ……」 先程まであった白塗りの現金輸送車はもはや影も形も無くどこかへと立ち去っていた。作業を全て完了したために次の場所に向かったのだろう。 当然と言えば当然の事だが、こんな事態になった原因は勿論―― 「何ぃ!? くっ、どこぞのロリコンがしつこい所為でこんな事に!」 「やれやれ下種な熟女好きの所為で逃してしまうとは何たる失態だ!」 「どう考えてもお前ら二人の責任だぁクソッタレどもがぁ――!!」 瞬間、不満に不満を抱えた尊氏の拳が、二人の顔面に炸裂した。 ●――だと思ったか!? 残念、変態だっ! 「……まぁそんなこんなんで――変態が出たよ」 「す、少しはぼかせよ! いくら連中が変態だからって、なんだ、その、可哀想だろ!」 オブラート等と言う言葉もなんのその。『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は淡々とした言葉を紡ぐ。 「だってどう見ても変態なんだもん。しかも自重しない変態で、ロリコンと熟女好きの二段コンボ――まさしく変態だね」 「そんな連呼しないでも……」 ちらりと視線をモニターに向けた先、そこではフィクサードが仲間内で争っている映像が映し出されていた。 いや、よく見ると争っていると言うか喧嘩していると言うか目がマジというか―― 『こんのペド野郎がぁ! 死ね! 熟した雰囲気の良さが分からない変態は死ね!』 『私はロリコンだペドでは無い! 幼女の良さが分からない変態は滅んでしまえ!』 『テメェら二人とも自重しろクソがぁ――! どうしてこうなった!』 ――非常に下らない理由で争っているようだ。さっきからツッコミばっかりしてる男性の気苦労が絶えない。 「……うん、まぁ変態だな……」 「ま、そう言う訳で貴方達にはこの変態どもを退治してもらう。変態達は現金輸送車を改めて襲撃するみたいだから、それを阻止して欲しい。場所は既に判明してるから、直ぐにでも行けるよ」 「……なぁ。あんまり関わりたくない変態なんだけど、行かないと駄目?」 「駄目」 行ってらっしゃい! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月03日(水)23:33 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●襲撃 「さて、まぁこんな所か」 地に崩れ落ちる警備員の姿を見つめながら、尊氏は言葉を紡ぐ。 襲撃。その第一工程を完了させた彼が次に視線を移すのはATMと現金輸送車。どちらにも金はあるが、さてどちらを盗っていくべきか。 「やれやれ、熟女でない警備員などやはりこの程度ですか!」 「幼女以外に私が止めれる物かフハハ!」 「……変態宣言してないでとっとと金を取れよお前ら。時間無いんだからな――」 馬鹿二人にツッコミを入れながら現金輸送車へと向かう尊氏。どちらでも良かったが、近くにあった方を選んだようで。 車の扉に手を掛ける――その時だった。 「そこまでで御座るよ!」 車と尊氏の前に飛び出す『ニューエイジニンジャ』黒部 幸成(BNE002032)。直前まで気配を極限まで潜めていたためか、完全に虚を突く事に成功した。 いや、よく見ればそれだけでは無い。物影より出てくる複数の人影。そのいずれもが既にフィクサード達を囲むように布陣しており、 「ストップ銀行強盗! それ以上はやらせないよ!」 「無駄だとは思うけど、早めの降伏をお勧めしとくわ」 『鉢かづき娘』篠原 みかん(BNE002665) に続いて『エーデルワイス』エルフリーデ・ヴォルフ(BNE002334)もライフルを構えながら言葉を。 「囲まれた……!? チッ、二人とも! 今すぐ迎撃を――」 「幼女――!!」 尊氏が声を走らせる中、馬鹿が一人その声をかき消す勢いで叫んだ。 馬鹿、もとい亮の視線の先にいたのは三人。『Trompe-l'oeil』歪 ぐるぐ(BNE000001)と『ぐーたらダメ教師』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)そして『ナーサリィ・テイル』斬風 糾華(BNE000390)の三人だ。 いずれも共通しているのはその容姿。馬鹿の性癖ドストライクの――つまり、幼女体型と言う事で、 「わるいこだーたいほするぞー!」 「尊氏スマン! 俺は今日逮捕されてしまうようだ無念ンッ!」 「何言ってんだお前はぁ――!」 特にぐるぐはノリノリである。実際の年齢的に言えばロリコンの目に留まることは無いだろうが、彼女の容姿は別。見事変態の注意を向ける事が出来ているようだ。ていうか変態の方は気付いてるのだろうか。年齢に。 「……まぁ何にせよとっとと始末させてもらうぞ」 しかしそんな事はどうでもいいとばかりに『機鋼剣士』神嗚・九狼(BNE002667)が変態、もといフィクサード達を睨みつける。そう、元々はこいつらの討伐が主な任務だ。注意を引けたのは幸いだが、それはそれ。 「そうだね――ああ、そうそう。人目は気にしなくて良いよ。念には念を入れておいたからね」 そして一般人対策の為に事前に結界を『獅士』英 正宗(BNE000423)が張っていた。その言葉は仲間に向けられた物か、あるいは敵に向けた物か。 いずれにせよ、これで余計な心配をする必要は大分減ったと言えるだろう。後は目の前の変態どもをどうするかだけだ。 「幼女ッ――!!」 ……って、まだ言ってんのかお前は! ●何でこんないるんすか! さて、いかに相手が変態だろうが戦闘を行う以上発端は何がしかの形で開かれる訳で。それはこの戦いにおいても例外ではなく――最初に響いた音は、銃撃音。 「本来なら、貴方じゃない人を攻撃したいんだけどね」 エルフリーデだ。引き金を絞り上げて、狙うは尊氏の足。 まず機動力を奪う事を重点に置いた攻撃。良い判断ではある、が相手も警戒しているのは当然の事。銃弾の着弾音は肉を穿つ音ではなく、硬いアスファルトを跳ねる跳弾音。 「そう簡単に当たる訳にはいかんな!」 地を蹴り、尊氏は懐からチャクラムを取り出し構える。 初撃はかわしたが、まだ油断は出来ない。何せ相手の方が人数の面で有利。対してこちらはと言うと、 ……熟女ズキーとロリズキーだからなぁ…… 熟女ズキーの幸之助はまだ良い。今回はその性癖に反応する者がいないからだ。一瞬だけぐるぐをちらりと見た雰囲気はあったが、結局あれはロリだという判定を下した様で――問題は、もう一人の方。 「たいほだー! たいほしたぞー! うごいちゃだめだぞー!」 「フィクサードなんて止めてこっち側にきたらどう? ……こんな娘ともお喋りし放題なのよ? さぁ、どう? どうなの?」 「フハハ俺はフィクサードを止めるぞ! 尊氏ぃ――!」 ……何言ってんだお前は本当に! 完全に亮はリベリスタ(のロリ)にたぶらかされているようだ。ガチで使えないなあの変態! まぁ止める云々は流石に冗談だろうが。 まぁ良い。あの変態が使えない事は今更だ。それよりも、それよりもだ。 「ど、どうして俺がこんなに狙われてるんだ――?!」 何故自分に――8人中5人もの戦力が集中しているのだろうか。 ●作戦です 「別に特別な意味は無いで御座る。強いて言うなら――ただの作戦で御座る!」 チャクラムを構えた尊氏に接近する幸成。 これは今回の作戦だ。ロリコンをロリ枠のぐるぐとソラで押さえつつ、他のメンバーで特殊な性癖の無い尊氏を即効でフルボッコにする。熟女ズキーに関しては正宗に押さえて貰う手筈にもなっている。 まぁそれにしても少々戦力過多であるかもしれないが――短期決戦狙いならば有用な戦術と言えるだろう。 「貴方には色々同情する余地はあると思うわよ。変態に囲まれて、さぞ大変でしょうね」 幸成に続いて、糾華も接近する。見ればその全身からは何やら気糸が発せられている。 「でも強盗なのはアウトよ。さようなら」 正面二手からほぼ同時に攻撃が迫る。一つは糾華の気糸。一つは幸成の手に集中している破壊的なオーラ。 どちらも回避したい所だが二手から迫っては仕方ない。尊氏は後方に“跳ぶ”形で下がり、さらにチャクラムも前方に“飛ばす”。ソレは空を走り、幸成の下腕に線を作る。 赤い線だ。しかし、出血と言うには余りに浅く、ダメージは極小と言った所か。 「武器を、手放したな?」 そしてそのタイミングを好機と捉えたのは九狼。尊氏が飛び退いた場所に横から連撃を加えようと踏みこんで来た。狙うは柔らかい左横腹。 「今がチャンス……! まだ、攻撃は終わりじゃないですよ!」 九狼の攻撃は左腕を畳んで横腹の壁にする事でギリギリなんとか凌いだ。だが、さらにその直後に後ろからやって来たみかんの攻撃を防ぐ事までは流石に叶わない。輝くオーラと共に打ち出される攻撃が、直に尊氏に降り注ぐ。 「――くそっ、相手が多すぎる!」 戻って来たチャクラムを右腕で回収しつつ、攻撃を逃れるために地を蹴る。 転がり込む形で攻撃を逃れる事の出来る場所へと移動を果たす、が。 「今度こそ、貰ったわ……!」 尊氏の足に激痛が走った。銃撃の痛み――エルフリーデの攻撃だ。 初撃を外した彼女だったが、今度の攻撃は当たった模様で。しかも当初の狙い通りに機動力を殺ぐ事に成功した。 「尊氏さん! くぅ、今援護に――」 「そうはいかない。お前を止めるのが俺の役目なんでね!」 尊氏の苦戦を目にした幸之助が援護に向かおうとするが、それをブロックする正宗。 彼の役目は幸之助の足止め。尊氏への援護を遮るために牽制攻撃をメインにした戦法を取って時間稼ぎを行い続けている。 「さっきから邪魔なんですよ……どきなさい、熟女でも無いくせに!」 「それは悪かったな。代わりと言っては何だが――」 正宗の体を光り輝く防御のオーラが包み込む。自己強化用の物が切れたので掛け直したのだろう。強く、しっかりとしたオーラを纏い、正宗は直も幸之助に立ち塞がれば、 「最後までたっぷりと相手をしてやるよ!」 言い放った。それは意思。覚悟、何を持ってしても通さないと言う――意地でもあるか。 幸之助も流石にこれには悪戦苦闘。尊氏の回りに布陣している者達にいくつか攻撃を加える物の、正宗の活躍によって中々意味のある一撃が通らない。 ――このままでは不味い。そう感じた熟女ズキーがロリコンに仕方なく目を向ければ、 「はい雷射出、雷射出――ほら、黙って血を吸わせなさい。動いたら容赦しないわよ」 「がおー! こっちにはいかせないぞー! ぜったいだぞー!」 「フハハ! 体が痺れながら血を吸われて足に取りつかれている……これが幼女パラダイスか!」 「何やってんだそこのロリコン――!!」 馬鹿が居た。 ●なんだかんだで、幕 ぐるぐとソラはロリである。……いやまぁ実年齢的な事はともかくとして、その容姿だけを見れば間違いなくロリである。で、あるが故にこそロリコンの足止めに抜擢された訳だが、効果あり過ぎであった。 ぐるぐが足に取りついたり、攻撃軌道上に立ち塞がる事によってほぼ完璧に亮の攻撃を潰し、ソラはロリコンが抵抗しないのを良い事に後方から雷撃を放ちつつダメージを受けたら都合の良い回復薬草の如く吸血し続けると言うコンボ。何これ怖い。 「私は何と言われようと幼女には攻撃しない……なぜなら私は紳士だからな!」 良いように扱われている亮自身もこう言っているので表面上は何も問題ない。何これ怖い。 「駄目だあのロリコン本格的に使えねぇ……!」 「……同情はするで御座るよ。うん、同情は」 攻撃が集中している尊氏がロリコンを見て嘆く。流石に可哀想に思ったのか、己の境遇と似通って居る為か幸成も少しばかり同情の面を見せる。 しかしこれはこれ。それはそれ。今は戦闘中である。 「やれやれ……一番まともだからこそ、一番狙われるなんて不憫ね」 エルフリーデの心が色んな意味で折れそうだ。なんでこんな連中を相手してるんだろう――的な意味でだが、こんな事で折れる訳にはいかない。心の内で渇を入れ、ライフルを尊氏へと構えて正確な銃弾を放つ。 銃弾が肩を抉るも、まだ尊氏は倒れない。 いやむしろ戦意は強まっている。その証拠に、 「まだだ……! まだ負けん!」 彼の眼は、まだ死んでいない。 直後、リベリスタの皆が見た。昼時であると言うのに一瞬だけ、しっかりと見えた“赤い月”を、バッドムーンフォークロアを。 「ちっ、これは直撃してはまずいか!」 粘りついて来るような嫌な感覚。九狼は咄嗟に防御行動に入り、なんとか耐えようと踏ん張る。 その時に彼は視た。丸い、刃の様な物が飛んで行くのを。チャクラムだ。 あの軌道の先に居るのは―― 「ぐッ――俺、が狙いだと……!?」 正宗だ。幸之助の足止めをしている、彼をわざわざ狙った理由は唯一つ。 幸之助を自由にするためだ。正宗の注意が一瞬逸れ、直後に響くのは銃撃音。それも連撃。これが意味する所は、 「これだけ当てれば……耐えれはしないでしょう!」 足止めの役を担っていた正宗に集中攻撃が入ったと言う事実だ。 いくつか強化しているとはいえ、流石にこれだけの攻撃を受けては正宗も耐えれない。彼の体がゆっくりと崩れ落ちていく。 「ああ……流石に耐えれないよ……だが、な!」 地面に背中から倒れていく。しかし完全に倒れる寸前、彼は力を振り絞り言葉を発した。 それは、明確な―― 「我慢比べは、俺の勝ちだ!」 「何っ……!?」 ――勝利宣言だった。 直後、尊氏は背後より迫る気配を感じ取る。即座に振り向き、そしてそれに呼応するかのようなタイミングで胸部に添えられる細い手。 瞬間。 「ご、はぁ!?」 添えられた手の部分を中心として体内に広がる衝撃。思わず口からは吐血し、体は“く”の字に曲がる。これは、まさか。 「油断は禁物って知ってる?」 糾華だ。先程の一撃は、彼女の物。 破壊的なオーラによる攻撃――ハイアンドロウの一撃か。 「さっきも言った通り、変態達に囲まれているのは同情するで御座る。だがお主らはここで終わりで御座る!」 「チャ、ク、ラ、ムゥゥゥウ!」 「――もう遅いで御座るっ!」 声を枯らし、血を吐きながら尊氏は先程飛ばして“しまった”チャクラムを求める。だが、手元にはまだそれは戻っていない。 そしてチャクラムが戻るよりも早く幸成が尊氏の顔面を掴むように握り、即座にオーラを流し込む。先程と同じ、ハイアンドロウの一撃のオーラを。 尊氏の体に二度目の衝撃が走った。 「た、尊氏さん! まさか貴方が!?」 「HENTAIも、鳴かずば撃たれなかったろうにね!」 尊氏の体が逆“く”の字を描いて倒れていくのを視界に収めながら、幸之助は自身に迫る敵の姿も捉えていた。剣を構えながら突っ込んでくる、みかんの姿を。 「強盗なんかして無理に鳴くからこういうことになるんだよ!」 「くっ、小娘如きが!」 虹色のオーラを纏った攻撃。その攻撃を、ライフルを盾に見立てながら幸之助は状況の不利を悟る。 ……まさか尊氏さんが負けるとは! こうなってしまった以上は仕方ない。尊氏を救出して撤退する手を取らねば―― 「ここまで来て逃がすと思うか?」 声の主、九狼はみかんの攻撃を凌ぐ幸之助の直ぐ隣に居た。 いや、正確に言うならば接近していたと言うべきか。剣を構え、幸之助の体を斜め上に斬り上げる。 「く、そぉ! こうなれば、せめて一人でも……!」 九狼の一撃によってダメージを受けた幸之助。未だなお張り付くみかんを無理やり押しのけてライフルを目に映った者に構える。 引き金を絞り上げるだけ。それだけの簡単な動作――で、あるが故にその動作を行うものがもう一人いた。 「残念。その願いは叶わないわよ!」 響く銃声は二つ。一つは幸之助の物。もう一つは同時にライフルを構えていたエルフリーデの物。 銃弾が肉を抉る。一発の銃弾はエルフリーデの右肩を。もう一発は、 「が――ぐぁ!」 幸之助の左胸の少し上を。 衝撃により幸之助の体が揺らぐ。左半身を先として、その体が地に倒れ伏したのだ。 「づっ! これで、後、一人!」 エルフリーデが撃たれた肩を押さえる。血が溢れだし、押さえる手を伝って肘から零れ落ちた。 皆が視線を巡らせる。そう、まだ後一人居るのだ。ある意味今回の依頼に置いて最悪な性癖を持つロリコンが。 「ふむ、あの二人を倒すとはやるな……」 皆の視線が集中した先、そこには件のロリコンが居た。全身に闘気を集中させ、リベリスタ達に備えている―― 「だがこの伊達・亮! そう簡単に負けはせ」 「あ、おにいさんの趣味に付き合ったから今度はぐるぐさんの趣味に付き合ってねー?」 ――のだが、脚にくっ付いていたぐるぐが突如として離れ、亮の股間の急所に対して攻撃を加え始めた。膝蹴りから始まって、続いて脛の部分で股間を蹴り上げるコンボだ。 「――ごぅぅう?!」 男の悲痛な声が響き渡った。 ●ババァ……? 「ねぇ気持ち良かったー? どうなのー?」 「う、うわぁ……今のガチで入ったぞ……」 他二人のフィクサードとは違う形で地に崩れ落ちるロリコン。壁を背に座り込んでいる正宗は同じ男性的な意味で恐怖を感じ取った。あれはヤバイ。 「ていうかやけに簡単に崩れ落ちたで御座るな……いくら金的とはいえ」 「ああ何と言うか、援護射撃で雷撃ってたら地味にこのロリコンにもダメージが溜まってね。あと吸血とかでも」 幸成の疑問に答えたのはぐるぐと共にロリコンを相手していたソラ。先程までの激戦もなんとやら。このロリコン、真面目に使えない所の話では無い。まぁ最も、ロリコンが活動できないように彼女達が色んな意味で頑張って行動していた成果でもあるのだが。 「フィクサードにも色んなのが居るんだねぇ……」 「いやこれ大分特殊な例だと思うけどね」 一息ついたみかんが、未だにボコボコにされている亮を見て感想を。と言ってもエルフリーデの言う通り今回のフィクサード達はかなり特殊な例と言えるだろう。多分。 「どっちでも良いわ。いい大人がこんな馬鹿な事してる時点でマトモじゃないしね。いい大人が」 糾華は完全に呆れているのか“いい大人が”を連呼。かなり気に入らなかったご様子で。 「……まぁ色々思う所はあるが、幼女や熟女の安全を考慮していたこいつらは案外公僕などに向いていたのかもしれんな。小銭集めでいらん危険を招く辺り阿呆なのだろうが」 それなりに真面目に分析した九狼が軽蔑している様子でフィクサード達を見据える。 ま、何にせよ討伐は成功だ。全員逮捕に成功。これでまたリベリスタ達は危険を一つ排除に成功したと言えるだろう。 さてそれでは後はこいつらを連行して帰るだけ――なのだが、 「ねぇところで皆に聞きたいんだけど……私はロリでも熟女でも無いレディよね?」 ロリコンの囮役に抜擢されたソラが抱いていた疑問をぶちまけた。彼女自身は何故自分が囮に選ばれたのか釈然としない部分があったのだ。故に、終わりも近いこのタイミングで皆に問うてみた。 そして、帰って来た答えは。 「何を言うか! 君はロリだ! レディなどというババァではない! 君はロリだぁ!」 「……」 先程までぐるぐに金的を決められダウンしていたロリコンが地に伏せながらも自信満々に語る。 死亡フラグ、成立である。 「む、なんだその雷は。ちょっと待て! 君は幼女だろう!? レディなどというババァでは――ギャアアア何故だぁアア!」 ――人にはそれぞれ触れてはならない部分と言うものがあったりする。 それを見抜けないと……こういう手痛いしっぺ返しを食らったりする事になるのだろう。 何はともあれ、変態撃滅完了である。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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