下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






イー○・JOHN

●十二月某日
「はぁ……」
 部屋の中に零れる溜息は幾度目のものか知れなかった。
「……………はぁ」
 眉根を寄せるクリエイターの深刻な表情はまさに『冴えない』。それは多くを期待され、期待に応えて何かを創り出す――『形の無い』商売特有の難しさを示しているようである。
 室内の温度は自分好みに快適だ。丁度いい具合に入れたコーヒーは香ばしい匂いを鼻腔に届けている。睡眠は十分に取ったし、まさにこれから『追い込む』人間としては可能な限りの環境を整えていると言えた。
「うーん……」
 しかし、準備は準備に過ぎない。この手の業務は往々にして理屈ではないのである。ペンタブを指の間で遊ばせたクリエイターは、煮詰まった作業に視線を宙に泳がせて幾度目か分からない煩悶の声を上げた。
 クリエイターがちらりと視線を向けた卓上のカレンダーでは小麦色の肌が眩しい筋肉質のイケメンがやたら滅多に爽やかな笑顔で佇んでいる。
 一年も最後の月に差し掛かればめくった月日は十一枚に及ぶ。十一人のイケメンを過去に置き去りにしてきたこのアイテムはクリエイターが知人から頂戴した実に心をくすぐるアイテムであった。
「……ああ……」
 クリエイターは独白する。
「……男、描きてぇ……」
 切実な独白だった。
「男描きてぇ。イケメン、いやイケメンじゃなくてもいい。おっさんでも、チンピラでも何でもいい。男描きてぇ。思う存分、男描きてぇ! 自由に! 青空にサムズアップするような! 男描きてぇ、半裸の男!」
 口にする程強くなるその想いは煮詰まった仕事のガス抜きに過ぎなかった。されど、時に強い情念はこの世界の奇跡と余りに容易に結びつく。
「さて!」と気を取り直したクリエイターは当然そんな事を知らなかった。

●折角なので画像は友情出演の『駆ける黒猫』将門 伸暁 (nBNE000006)さんで
『塔の魔女』アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモア (nBNE001000) は言った。
「とある煮詰まったクリエイターの情念が此の世の神秘と結合して何だか筆舌尽くし難く面白……めんどくさいおかしなエリューションが出現したので何とかして下さい。尚、このエリューション・フォースは真冬でもそんなの関係ねぇとばかりにクッソ寒いビーチに出現したんですが、男性が水着を着用の上対処しないと全然ダメージが与えられません! ちなみにこのエリューションはスタイリッシュなポーズをキメつつNOBU様みたいな発言を並べ立てながら攻撃すると黒歴史を暴かれたような気分になってより大きなダメージを受けるようなので可能な限りおかし……もといカッコいい感じで己が肉体を晒してくるといいんじゃないですかね!」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 10人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年01月18日(土)22:44
 YAMIDEITEIっす。
 新春特別企画。男だらけの真冬のビーチ。
 以下詳細。

●任務達成条件
・イー○・JOHNの撃破

●とあるクリエイター
 イラストレーターらしいです。
 何か仕事で描いたスタイリッシュなイケメンが訳の分からない事を言うので困惑した過去があるようです。
 そのイケメンは実は『雑魚顔』の心算で書いたそうですがそんな事はあんまり無かった。
 実在の人物、団体にはまるで関係がありません。

●真冬の海辺
 唯クソ寒いロケーションです。
 イー○・JOHNには海の中に入らなければ接近出来ませんから。
 水飛沫を上げて躍動するがいいのです!

●イー○・JOHN
 エリューション・フォース。フェーズは2。
 とあるクリエイターの情念が神秘と結びついてしまったもの。
 真冬の海辺に出現し、リベリスタに水着を強いる憎い奴。
 なんか良く分からない不定形のオーラが人型を保っていますがその正体は不明です。当然実在の人物には何ら関係がありません。
 このエリューション・フォースは男子が水着を着用していないとダメージをまるで与えられない変な特性を持っています。又、スタイリッシュなポーズでNOBU的に論語しながら戦うと何故か大きなダメージを受けるようです。でも実在の人物にはまるで関係がありません。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
●重要な備考
 この依頼はVC発案企画による新年特別依頼です。
 この依頼には『男性PC』しか参加出来ません。
 又、性別不明のPCはこの依頼に参加した場合、その性別が開示されます。
(性別不明のPCであっても、実性別の適合する場合しか参加出来ません)
 
 リプレイ納品後2月末日までに『えまる・じょん』VCにより参加PC全員描写のピンナップがつきます。
 基本的に水着のデザインはVCのお任せとなります。NG要素がある場合はプレイングに必ず明記してください。

※ピンナップへの描写はBUを所持していることが条件です。
※BU未所持のキャラクターも参加は可能ですがピンナップには描写されません。

 参加費用は450LPです。全員描写ピンナップの料金が含まれています。


 男描きたいらしいです。
 以上、宜しければ御参加下さいませませ。
参加NPC
 


■メイン参加者 10人■
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ハーフムーンソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ビーストハーフソードミラージュ
神薙・綾兎(BNE000964)
ハイジーニアスデュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
ジーニアスクロスイージス
★MVP
犬吠埼 守(BNE003268)
フライエンジェホーリーメイガス
宇賀神・遥紀(BNE003750)
ナイトバロンナイトクリーク
ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)
フライダークプロアデプト
アーサー・レオンハート(BNE004077)
ギガントフレーム覇界闘士
コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)


●寒流
 ガチガチ、ガチガチと硬い音が不規則なリズムを刻んでいた。
 その理由は問うまでもない。単純だ。
 つまり端的な一言(ナイフ)が全ての『事実』を抉り出す――
「……い」
 紫色の唇を戦慄かせた『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗が灰色の海を目の前に呟いた。
「まじで寒いわ!」
 そう、つまりは寒いのだ。それもその筈、真冬のビーチに佇む少年は海パン一枚である。
 全身の肌には鳥肌が走っており――正確に言えばそこに居るのは夏栖斗も含め水着の十人の男達だ。
 ……彼の声が呟きだったのは一瞬前までの話である。
 ヤケクソ気味の大声は心からの――心底からの叫び声に違いない。
「この寒い中で水着! リベリスタなら仕方ないね! クール&スパイシーだ!
 頭を空にしたらきっとできる! できるよ! 熱くなる! 降りてこい僕のNOBUソウル!」

 ヒュウ、と風が吹き抜けた。

「――だから寒いわ!!!」
 半ば切れたかのような夏栖斗が叫んで小さく鼻をすすり上げた。
「……昨年から、俺は海に行き過ぎな気がするな」
『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)は小さく零す「フッ、つまり寒稽古という事か」。
 時期が時期ならば人がごった返すかも知れない海水浴場。素敵に無敵な渚の恋のエトセトラも、一月のこの時分に男ばかりで赴けばどんよりと曇った嫌気な空間にしか思えないのは必然だ。
「何で真冬に水着なんて着てるんだっけ?
 遥紀(おにーさん)に引っ張られたと思ったらブリーフィングルームで……
 そこから先は思い出せないんだよね……」
「俺は所謂クリエイターではないけれど、今回のエリューションには親近感を覚えてね。
 ……綾兎の水着見たくて引きずり込んだら何故か俺まで……」
 果たして『淋しがり屋の三月兎』神薙・綾兎(BNE000964)の言は現実逃避か、それとも物理的記憶の欠損なのかは定かでは無いが、仕掛け人(?)に当たる『祈花の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)が同じ運命を辿ったのは少なくとも因果応報の一環と言えるのだろう。
「というか、なんであの扉って開かないんだろうね。割と本気で」
「過酷な任務がアークには多いからじゃないか?
 貞操の危機とか珍しくないものな、今回は俺達以外が危機担当で頼むな!」
 入った後は一方通行(にげばなし)はシステム的に考えてアークの依頼に良くある事ではある。
「クールな世界に現れたクレイジーな敵、ね。
 ニューイヤーに相応しいホットなニュースだね……ちょっと、これで合ってるの?」
「オーケー、その調子だ」
 真剣な顔をした綾兎に白々しく応えた遥紀はさて置いて。
「真夏ならまだしも、なんで真冬に出てきたのか!?
 男性が水着で云々とか、条件が色々ピンポイントすぎるだろ!」
 抗議めいた 『OME(おじさんマジ天使)』アーサー・レオンハート(BNE004077)が口にした言葉は余りにも圧倒的に――言っても詮無い『正論』である。
「だがしかし、このまま放置しておけば崩界が進んでいくことは必至。
 ここは俺達が一肌脱ぐしかあるまい。いや、まぁ、本当に物理的に脱いだんだが……」
 ブツブツと呟くアーサー。
 世の中にはかくも理不尽が満ちている。
 ポストが赤いのもカラスが黒いのも、新春特別企画が水着なのも大いなる意思のAs you like it(お気に召すまま)。
 ……生贄、じゃなかった。彼等十人のリベリスタが好き好んで水着で一月の浜辺に降りたのは、二人が言う通り当然『仕事絡み』だ。アークの任務は、えま……『とあるイラストレーター』の生み出した裸の男達を描きたい……じゃなかった満喫したいという情念が生み出した神秘(エリューション)を何とかする事。そういう意味では人っ子一人いないのはある意味で好都合ではあるのだが、人っ子一人居ない理由の方は当然彼等にも直撃する。
「イケメンが必要って聞いたのに……寒中水泳とか……」
 色白の『ピジョンブラッド』ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)は特に寒そうに身を縮めていた。
 彼の表情がいよいよ冴えない理由は寒さと、あともう一つ。
(……カナヅチだなんて、今更言える訳がない!
 だって聖職だよ? 聖職に水泳は必要ないんだよ!?)
 言い訳めいても現実は変わらず、エリューションを何とかする条件に海に入る事が含まれる以上はどうにもならぬ。尤も外気が何度かは知らないが、気温によっては水の中の方が暖かく感じるのかも知れないが。
 リベリスタ達が寒さを我慢しているのが奏功したのか沖合いに怪しい気配が現れていた。
 何だか良く分からないがきっとアレがエリューション――イー○JOHNだ。そうに決まっている。
 詳細に書けば書く程、リテイク率が上がりそうなそんなもの細かく触れる必要はありはしない!
「さあ……Stageの幕を上げろ……」
 海に背を向け立つ『折れぬ剣』楠神 風斗(BNE001434)のロングコートが風にはためく。流石、楠神先輩。今まで一人だけちょっとあったかい格好してた流石汚い!
「違うわ!」
 律儀な突っ込みを入れた風斗が振り向くなり、コートを後方へ脱ぎ捨てた。
「始まるぜ……この場限りの、オレたちだけのLiveがな!
 屈強に鍛え上げられたその肉体を包むのは紅白の布地が一つ。
 何故か「ブフッ」と妙な感じに噴き出した沖合いのイー○さんを指止して風斗は続ける。
「今宵、この時、オレたちのSOULの輝きは舞台照明となってこの場を照らす!
 さあエリューションよ、付き合ってもらうぜ……オレたちとの、SHINKEN・BATLLEにな!」
「飼い馴らされたパピードッグがお望みなら一昨日来いよ。
 首輪(カラー)もチェーンもオレにゃノーサンキュー。
 三高平の悪党(バッド・フェロー)とはオレのコトだ」
 水着姿でもはためく赤いマフラー(トレードマーク)は変わらない――『きょうけん』コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)の譲れないSatisfaction。
「そうさ、知ってるか? 『コヨーテ』はトリックスターなんだぜ?
 番狂わせのブラックドッグが欲しけりゃ……全力で来な!
 このバーニングメタルアームで殺(あい)してやるよ。
 この世界(ハードラック)で戦闘(おど)ろォぜ?
 ラブアフェアの行先は地獄の果て(ヘル・オブ・ヘル)――」←カッコいいポーズ
「俺の泳ぎとハートは、何時だってフリースタイル。
 泳ぐときはひたすら自由形。俺はフリーしか泳がねえ。時代も! 運命も!」
 コヨーテに続き翻る青春の迸り、ブーメランパンツの『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)の『接待』に(来なきゃ良かった来なきゃ良かった来なきゃ良かった)みたいな顔をなさるイー○さんの一方で、
「フッ……」
 成長(?)した彼等の姿に鷲祐(ポエマー)が薄く笑む。
 彼はと言えば背の低い桐材のベンチに腰掛け、頬杖をつき、これまで微動だにしていない。
 指を遊ばせ、脚を傾け、首に手ぬぐい。何時もの立ち姿とは違うラフな様子を――
 まさにそれは『彼の情念』が真冬の現場に蘇らせた夏コンの発注文(まなつのよのゆめ)である!
「やっぱり流石に鷲祐さんだね。何時でもクールだ。僕は今冷蔵庫(クーラー)の中だけど!」
「フッ……褒めるな」
 思わず感嘆したロアンに余裕たっぷりの鷲祐が言った。
「俺は元獲得因子が変温動物だ。寒くて意識がまともに回らん!」

※体調の優れない方の寒中水泳等は大変危険ですのでお辞め下さい※

「え、えーと」
 やはり危険な水泳行事に困惑した顔を見せたのは保護者の『俺は人のために死ねるか』犬吠埼 守(BNE003268)(28)だった。どうしてか重ねた年輪以上にやたら頼りになる存在感を醸す彼は言う。
「俺は警備員です。仕事柄、安全厳守が身に染みついています。
 それはリベリスタとしての任務に於いても同じこと。
 そして、ここはビーチです。
 今、俺達のすべきことは――皆さん仰る通り、寒中水泳も同様ですね。
 では、どうするか。そう、準備体操です。海をなめてはいけません。
 水辺での危険な事故は年々増える傾向にあり……」
 駄目な人達に訥々と準備の大切さを説く守の姿は何故だか知らんが、純和風短足ガニ股六等身ではなくシュッとした逆三角形細マッチョ八等身に見えたりもする。
 そんな些細なイー○時空の凄さは余談として彼は沖合いで待つ人にくるりと向き直り念を押す。
「そういう訳で、暫くお待ち下さいね!
 ヘイ! ファッキン・ニュー・ガイズ!
 吹き荒れるストリームを前にチャージインしたい気持ちは分かりますが……
 大いなる海(マザー)は何時だってドント・ラナウェイ、ですよ。
 アテンション、ガイズ! スタンドライン!
 剣持つその手に今はやすらぎを……力を抜いて、アップ・アンド・ストレート。
 The Sixを数えつつ、くりかえしです。おお、悠久なるレディオ・エクササイズ……Hey!」
「――ザッツライト、準備運動もなしでウィンターフォールは凍えてしまうぜ?」
 トランスした夏栖斗が最早誰だお前に相違ない。
 イケメン(仮)共が牧歌的に準備体操をする風景も決して悪くないものである。
 親指をビッと立て同意のサインを送ったイー○さんは屈伸する八頭身共を楽しそうに眺めている。

●【悲報】ポエム大会
「一月の風は、正に麗しきレディーのため息。俺の心と体をどうしようもないほど震えさせる」
 慣れないポエムを口ずさむアーサーは自分で自分が分からない。
「一月(ヤヌス)の吐息がオレの肌を撫で、細かなネイルマークを残しても。
 オレのバーニングスティールハートで何もかも溶かしてやる。
 恐怖でもアレでもねェ…サムライバイブレーションだッ!」←カッコいいポーズ
 コヨーテの意訳はつまり「寒ィ!鳥肌立つわマジで!でも気合で頑張ンぜッ! ッてか寒くねェし!」。
「Tadukuri...の夜、アイツは――あの虚ろな缶はこう言ったのさ」
 凍てつく世界を快の言葉が震わせた。
 これぞ全く快痒(かいかゆ)フレーズ。(※但し彼女には効かない)
「『司馬鷲祐は好物だ設楽悠里。はどうしてやろうかといつも妄想している。だが新田快。お前は地味だ。よって対象外』。あき缶――その虚ろな缶には世の倒錯でフィリングした混沌の使徒――の言葉は安全宣言、俺のセフティを担保する」

 だが――

「どこかから聞こえるもう一人の俺の声が、俺のゴーストがウィスパード。『そんなセフティ、くそ食らえだ』。
 レッツ・ロール。Coldな缶をHotにしてやろうぜ」
 ――殻を破れ! そんなもん破る前にヘッドフォンさんを押し倒せ!!!
「僕の16ビートは誰にも止められないぜ、行くぜイッツショータイム!」

 ――さあ、ウィンターバトルの始まりだ。最高のライブを始めようぜ――

 大体、夏栖斗が言うまでも無く。
「僕の華麗な美技に武技ウギ酔いしれていいんだぜ、仔猫ちゃん」
 水面を奏でるループするベースライン、高揚のインプロヴァイゼーションを加えたパッショナブルを改めて確認するまでも無くである!
「随分と暴れん坊なバンビーナちゃんだね、Meeting you is a miracle.
 だけど、それと同時に別れの哀歌(エレジー)になるのは残念だよね」
 ……激しい戦い(笑)は事これに到る前のっけからクライマックスだった。
 元より不足必至な尺との戦い。前半部分だけで半分以上を使い果たしたやみに死角しか無く。
 この先何を言っているか多分分からないと思いますが、それは一つのデスティニー。
「そんなに強く抱きしめないでくれよ、Winter。お前の体温、身体の心まで伝わってくるぜ。
 でも、冷たいくらいで丁度いい。何せ俺達のハート――燃えちまってるんだ、A-chi-Achiにね――
 ワン・ウィンター・カーニバルだ。ステージは暖めないとな!」
 場を温める快の言葉はまるでラグナロクの熱狂だ。
「ウィンタービーチに戯れる俺達は、美しくも力強いウィンタードルフィンズ」
 ハイライトの無い瞳でこちらを見つめるイー○さんに見せ付けるようにヤケクソ気味の水飛沫を上げて身体を反らしポーズを決める快に負けじと、
「Let's dance together」
 水滴を滴らせ、前髪を指先で払い上げた綾兎がウィンクを送る。
「そんなに水着が好きなら、俺がエスコートしてあげようか?」
 合体殺法の如く、この動きに対応するのは言わずと知れた遥紀だ。
「烙印に擁かれ眠れ、飛沫の眠り姫(スリーピングビューティー)……
 ファンタジックな願いを叶えに来た、俺達はそう――君のハートのドルチェかな?」
「泡沫の夢に包まれて、逝きなよ」
「満たされない子猫(キティ)、お前を俺のパトスでフルチャージ」
 息もつかせぬ見事な連携はお揃いのシルバーバングルが示すソウル・リンク。
 NOBUを十分に意識した意味不明の連続は重い打撃のショット・ガン。
 行動プレイングがどうとか戦闘判定がどうとかそんなチャチなもんじゃねぇ何かを味わったイー○さんの脳内には恐らく――『彼』の姿が再現されている。何処ぞの冊子媒体で、ウェブサイトの片隅で我が子が広い世界に『それ』を発信し続ける様が……
「がぼごぼがぶ」
 海水に顔まで浸かる『物理的冷却』で攻撃をやり過ごさんとする敵(ひがいしゃ)に更なる猛攻が襲い掛かる!
(相手は大物クリエーターの思念、か。
 モノ作りをする人には、純粋に敬意を持ってる
 普段は脱ぎキャラじゃないけど……今回は……NOBUリッシュ、やってみるよ!)
 ロアンの気合は十二分。
「張り付く髪、水も滴るいい男……ってね?」
 水を被ってブルブルガタガタ、しかし艶技にそんなステータスは関係ない!
「今、僕のBLACKが貴方をJACKする――
 肌刺すノースウィンドが僕を阻もうと、冷たい海がこの体温を奪おうと。
 このパッションは決して消えないエターナル……
 さあ、Baby! 貴女に刻もう、決定的で絶対的な僕を!
 この瞬間、この世界の中心は間違いなく――僕と貴女。世界で一番の恋の駆け引き(ハイアンドロウ)を!」
 スキル名を被せてくる芸の細かさに高い芸術点が記録された。
 水面にぶくぶくと泡を立てる気泡はイー○さんの呼吸が又危険だった事を意味している。
「その剥き出しのウィークポイント、ハードに責められたくてたまらないんだろう?」
 確かに剥き出しの弱点(NOBU)にのたうつエリューションをからかうようにアーサーが囁いた。
 動く度にばっちゃんばっちゃん上がる水飛沫と吹き抜ける風は面々から正常な判断力を奪っている。
 だから彼等はイケるのだ。臆面も無く、唯破壊的に激しく。
「俺の予測通りに動くお前は、さながら哀れな操り人形だな?
 俺の背中のRadiant Wingがお前のSoulをAscensionする――」
 アーサーの言を深く取るならば、劇中の登場人物は全て哀れなマリオネット状態である。
 悪乗りの、悪乗りによる、悪乗りの為の将門伸暁増産計画は尺が尽きるまで止まる事は無い。
(いかん、自分が自分で分からん。さっぱり分からん。
 色々間違ってる気もするが……しかし、何だこの解放感は……!?)
 殺伐とした世界に舞い降りるFallen Angel...
 止まらない疾走(ハイ・スピード)はルルルのルーでレレレのレである。
「オレはクレイジードッグ。
 ダイアモンドゾーンから、ヘルバーニングアタック……おっと火傷しちゃったか?」
「いてつく冷気がこの身を刺すぜェーっ!」
 コヨーテの無慈悲な鉄槌にキャラが壊れた守が彩を添えた。
「そして生まれ出ずるは新たなるLegend……いや、きっとそれは俺達のMythology……」
『伝説』を越えんとする『ギグ』は今、風斗の言葉で『神話』に到達する!
「屈強なる男たちが織り成す、死闘という名の芸術……
 父よ、母よ、貴方たちに感謝しよう。この世界に産み落としてくれたことを。
 そして神よ、貴方に感謝しよう。オレをこの場に導いてくれた奇跡に……!
 さあ、解き放て我が力! 魂の鼓動! この美しき物語に、『勝利』という点睛を描き込むために!
 今、オレの命は赤き光の奔流となってこの身を包み、加護と為す!
 たとえ道半ばで倒れたとしても、この身に宿りしFateは、俺の朝まで眠らせない――」
 全身鳥肌がいとおかし。
 クライマックスに加速する物語(ストーリー)は最早長い猶予を待ちはしない。
「刹那の動の美しさも然ることながら永劫の静の美しさもこの世界のアートたりえるんだぜ、Baby」
 死に体のイー○さんを夏栖斗の美しき冷気が包み込む。
「フッ……」
 満を辞して最後のシーンに登場するのは大御所。
「全く、よくも待たせてくれた――」
 御老公様が四十分過ぎに印籠を出すように、極々自然に当たり前に。
 カメラ目線の流し目から世界を置き去りにする司馬鷲祐その人である!
「だが、だから俺はお前が愛しい……」

 水着は決して不利ではない。
 身を晒し、神経を研ぎ澄ませると、筋肉の脈動が聞こえる。
 それは如何なる体制であっても己を支え、地を水を蹴り放つサイズミックなImpulseになり、鳴り響く。
 そう、肌を晒し己の内なる肉に耳を澄ませば、触れる指先さえ――凶器になる。
 いっそ、脱がない理由などない。むしろ脱がせろ、今すぐに!

「この舞台、決してウェルメイドでは済まさない。
 描きたいなら描け。脱がせたいなら片っ端から脱がせばいい。
 高揚を友にし、恍惚を結末の先へ導け――」
 光が炸裂し、世界はそれで『静寂』した。

 ――さぁ、煌めくフィナーレへとッ!



 それから全員風邪引いて熱出した。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 YAMIDEITEIっす。

 ルーとか言うなですぅ。
 準備運動しなかったら死亡判定が出る所でしたね。
 嘘でーす。いぇーい。

 シナリオお疲れ様でした。