● 「そんなに世界が大事なの?」 戦い続ける男に女は問うた。 歩もうとする彼の服の裾をそっと掴んで、咎める様に。 「今までこの世界が滅びた事が無いなんて、貴方本気で信じてるの?」 女は思う。この世界は油絵の様な物だと。 きっと今まで何度も何度も何度も、理不尽に踏み躙られて、上書きされて此処に在るに違いないと。 だってこんなに絶え間なく危機の芽が芽吹く世界が、遥か古から無事で居られた筈がないではないか。 「だから貴方が無理に守る必要なんて何処にも無いと思わない?」 女は未来を見る力を僅かばかり持っていた。 それ故に本来ならば見なくて良い物を見続けてきた。女は世界に絶望していたのだ。 けれど唯一つの救いは、女が唯一つ見続けていたいと思ったのは、彼女と共に歩む事を決めてくれた男の姿。 「ねぇ……?」 男は何時も世界を救う為に傷付いていた。女は其れを見る事が辛かった。 目は逸らせない、見続けて居たい、けれど辛い。 世界の為になんて傷付いて欲しくない。 振り返った男は僅かに笑んで彼女の手を握る。唇が動き言葉を紡ぐ。 とても甘くて、ずるい言葉だ。照れ臭げな男の言葉に、女はもう引き止める事ができない。 でも其れは、綱渡りの様な物だったのだ。 2人なら、2人だけで逃げていれば、彼と彼女なら何処までも2人きりで生きていけた筈なのに。 ● 「さて諸君仕事の時間だ」 苦い珈琲を一口啜り、顔を顰めた『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)が口を開く。 今日の彼は、何時に無く不機嫌が極まった顔をしている。 「ある所に一組の男女が居た。男はリベリスタ、君等の同類で、女は私の同類だった」 逆貫は告げる『だった』と。 言葉を紡ぐ間に混じる溜息は、彼の表情と相俟って非常に重い。 「別段自身を持ち上げる訳ではないが、フォーチュナはそれなりに希少性と有用性がある存在でな。……2人組み程度の人数で、片割れが其れであるならば狙われるには充分であったのだろうよ」 その二人を襲ったのは七派には属しないフィクサード集団。 男は女を守る為に懸命に戦ったが、その懸命さ故に彼女を操る枷とする事も困難だろうと殺されてしまう。 捕らわれた女は協力を拒否し、酷い拷問の末に、世界を呪い人としての全てを投げ出した。 「有体に言えば彼女はノーフェイスと化したのだよ。其れも非常に特殊な力を備えた、な」 『運命改変』 女は直近の未来を見、その結果を改変する事を望めば自身に手を加えることで運命への抵抗を可能とする。 彼女が望めば物理無効、神秘無効、耐久力、攻撃力、回避力、バッドステータス付与攻撃、命中力、バッドステータス無効能力等の様々な力を得る。(自身のステータスシートを弄れる) この効果は女が見た未来の時間を迎えれば解除される。 「ああ、彼女が『本心から力を望めば』並の革醒者では太刀打ちする事は難しいだろう。事実彼女を捕らえたフィクサード集団は彼女1人の力で残さずこの世から消え去る事となった。……無論諸君等とは比べ物にならん程度の連中だったが」 逆貫は既に少し冷め始めた珈琲をグイと飲み干す。 彼女は世界に絶望し、世界を憎み、世界を殺したがっている。 「けれど私は思うのだ。彼女は恐らく罰を受けたがっているのだろうと。ただの年寄りの、……同類としての勘だがね」 哀しみは憎しみに転化せねばやり切れない。恨みを抱かねば虚無感に塗り潰されてしまう。 大事な人を奪った世界は許せない。けど本当に許せないのは、無力だった自分自身。 「……フェーズが移行すれば心は消える。酷く歪んだ化物のみが後に残るだろう。どうかそうなる前に、諸君等の手で始末をつけてくれ。狂い心消える事が救いだとは、私は思いたくないのだよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:らると | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年01月15日(水)22:24 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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● 灰が、風に流され消えていく。 あっけない。それはとてもあっけない。 私の憎しみはあまりにあっけなく仇をこの世界から消し去った。 要するに、あの人を殺し、私が化物に成り果てるまでに追い詰めた仇達は、この世界を揺るがす巨悪等では決してなく、とてもありふれた神秘の一つでしかなかったのだ。 つまりは、その程度の神秘に殺され追い詰められたあの人や私もまた、この世界にとってとるに足りないものに過ぎなかったという事。 胸に穴が開いている。胸の穴から感情が、憎しみが流れ出していく虚無感。 なのに憎しみはなくなら無い。流れても流れても、後から後から湧き出してくる。 あの人を殺して私を化物に追いやったアイツ等が憎い。あっけなく消えてなくなるなんてずるい。 憎しみのままに力を振るってアイツ等をあっさり消し炭に変えてしまった自分の浅はかさが憎い。 世界が憎い。あの人はあんなにも世界を守ろうとしたのに、こんな、いつ壊れても可笑しくない、今までに何度も壊れて塗り直されていても可笑しくない、油絵の様な世界を守ろうとしたのに、世界はあっさりあの人を切り捨てた。 あの人が憎い。私とあの人2人だけなら、世界を守ろうとなんてしなければ、危険を避けて2人で生きていけたのに。 そんなに世界が大事なの? そんなにこの油絵が綺麗なの? 私よりも? ……わからない。わからない。わからないわからない。 その時、未来が見えた。少し先の、未来が見えた。果ての姿が確かに見えた。 やって来る。悪性神秘を狩る為に、世界を守る為に、リベリスタがやって来る。 あの人と同じリベリスタ。そして狩られる悪性の神秘は私。 嗚呼、その人達は答えを知っているのだろうか? 私は世界がとても憎い。世界もきっと私が嫌いだ。 私は今とても虚しい。逃げる気にもなりはしない。全てが消えて、なくなれば良いのに。 ● 「……世界とは何なのでしょう」 サクと土を踏み、既に『元』となったフィクサードのアジトである廃墟を眺めて『蒼茨想哀』亜汐 柚利(BNE004709)は呟いた。 死した彼と成り果てた彼女、2人は果たして同じ世界を見ていたのだろうか。 吐く息の白さが、空にほどけて消えていく。 「何もかもがままならないよね」 口から零れた胸の内、『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)のそれは同情だ。 決して安っぽい其れではなく、正しく同じ情を抱えるが故に、同情。或いは同病を哀れむ心根。 絶え間なく蹂躙される最下層だから、英雄(いけにえ)が必要なこの世界。 愚かにまっすぐに、傷付く事を厭わなかった男の気持ちが夏栖斗にはわかる。 そして同時に自分の無力で大切な人を亡くしたときの喪失感も、夏栖斗は経験し理解していた。 そう、だから夏栖斗は言うしかなかった。 「本当に、ままならない」 と。 想いは湧き出す泉の様に胸に溢れ満ちている。なのにそれが言葉になら無い。 廃墟から、女が1人姿を見せた。 素足に、襤褸を纏い、風と地の冷たさに僅かに身を震わせながら。 何処にでも居る娘に見えた。虚ろだが、まるで今にも泣き出しそうな、そんな普通の娘に見えた。 けれど、リベリスタは一目で革醒者である事は理解してしまえる。そしてもう彼女が運命に愛されて居ない、つまりは化物である事も。 願えば簡単なのだ。寒さに身を震わせる必要なんて何処にも無い。 虚ろに飲まれれば、人を捨てれば、悲しみも消える。 胸の十字を握り、『ピジョンブラッド』ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)が告げる。 「初めまして、あゆさん。君の罪を裁きにきたよ」 震える彼女は、三田村あゆは、捨てきれないから、きっと罰を求めているのだ。 ● 女の、あゆの翳した掌に火球が浮かぶ。彼女が攻撃の力を願ったから。 フィクサード達を一撃で焼き尽くした時と寸分違わぬ火力の其れ。これで死ぬ相手なら、リベリスタ達があのフィクサードと同程度の神秘なら、彼女を滅する事なんて叶わない。 彼と同じリベリスタとの最初の出会いがそうならば、次も、その次もきっと同じだ。 だったらきっと彼女は成り果てるだろう。身も心も完全な化物に成って、最期の瞬間まで世界を憎んで果てるのだ。 けれど、一斉に散開したリベリスタに構わず放たれた火球は真正面に飛び出した夏栖斗によって受け止められた。 火球は夏栖斗の体の半ば以上を焼き尽くしながらも、其れでも彼を倒す事も、彼以外を傷付ける事も叶わずに終わる。 其れは予測されていたから。対処と覚悟は既に為されていたのだ。 敵対者を分析、見通す神秘であるエネミースキャンに、更に僅かな予兆も見逃すまいと超直感を組み合わせた『名無し』ジュリー・モーガン(BNE004849)はあゆの力の変化を見逃さない。 でもそれでも、力の分析がどれ程出来ても、ジュリーにあゆの心は判別が付かなかった。 彼女がどんな言葉を望み、彼女がどんな言葉で狂うのか。 やれやれだとジュリーは思う。 はっきりと、判って居るのは唯一つ。世界は彼女を異物だと断じた事だけ。 「……Let's do this」 小さく呟き、瞳を凝らす。 そして銃声が鳴り響き、再び火球を作り始めた掌に穴が開く。 「世界を守る? そんなお題目で動くほどおじさんは人間出来ちゃいないさな」 硝煙の匂いを漂わせ、『足らずの』晦 烏(BNE002858)は言葉を吐く。 あゆは、掌に開いた穴と、なのに痛みを感じぬ己にホンの僅かに顔を歪めて、 「だったら消えて頂戴? 今なら、今回は見逃すから」 言葉を返す。 彼女が相対すべきなのは、世界を守る為に戦うリベリスタ。彼がそうだった様に、世界の為に身を削る者。 そうでないなら、消えてしまえば良い。自分で消えてくれないなら、消すだけだ。 思考まで化物染みて来た事に気付き、あゆは己の時間が然程残ってないのだと再認識する。 もし今の自分の前に、生きた彼が居たならどうしただろう。どんな顔で自分と言う化物を殺すのだろう。 前提からして在りもしない、けれど彼が生きていたらと言う甘美で、なのに自罰的な思考に逸れかけた彼女の意識を、 「そうはいかんさ」 烏の言葉が、更にはリベリスタ達の攻撃が呼び戻す。 伝えたい言葉が在るから、伝えるべきだと思った言葉があるから、化物に成り果てるという逃げ道を許す訳には行かない。 烏は思い、言葉を紡ぐ。 彼は世界の為なんかに犠牲になったんじゃ無いと。ただ、守りたいが為。それだけだったのだろうと。 「それはずっと側にいた三田村君自身が良く判っているはずだ」 確信を持って語る烏の言葉に、しかし世界は炎に染まる。 烏の言葉に間違いは無い。だがほんの少し足りなかったのだ。 其れは柚利の直感どおりに、2人の見ている世界の違い、彼と彼女の間に在ったズレ故に。 先程よりも更に強く、骨まで焦がさんとする火力で放たれた一撃に、けれども烏が無事耐えれたのは、彼を庇った影人、柚利の指示に陰座・外が事前に作成していた壁が一枚在ったから。 だがそれも恐らくは一度限りしか通じない。何故ならあゆは庇われる未来を見る事が出来、更に望めば彼女はそれでも烏を屠る力を願えるのだから。 あゆに追撃を許さず、縛り封じ込めたのは黒の箱。スケフィントンの娘で彼女を止めた『骸』黄桜 魅零(BNE003845)の瞳は、ともすればひょうきんですらある普段の明るさはなく、哀れみと覚悟の色を帯びていた。 もう少女とは呼べぬ女と言える年頃になっても、愛しい人は目で追ってしまい、切ない位に見詰めてしまう、恋さえまだ迷う彼女だけれど、それでも、だからこそ魅零はあゆを止めねばならないと強く思う。 愛と、愛しい人の姿を彼女が忘れる前に、なんとしてでも。 「あゆちゃん。どれくらい、痛みと悲しさを瞳に隠して微笑んできたの?」 愛しい人と共に戦えぬフォーチュナの貴女よ。 ● 戦いは、終始リベリスタの優位に進んだ。 その理由は二つある。 一つはリベリスタ達の戦いの巧みさに対して、あゆの戦闘経験が圧倒的に足りていなかった事。 確かにあゆの、未来を見、それに対応すべく自らを書き換える能力は強力だ。 その力を十全に発揮すればリベリスタ達と伍する事も出来ただろう。 しかし、外の極縛陣に速度封じられ、夏栖斗の虚ロ仇花、烏のB-SSの物理を軸とした攻撃にジュリーのピンポイント……神秘攻撃が絡み、更には魅零はスケフィントンの娘と奈落剣・終で、ロアンはメルティキスとギャロッププレイで、柚利は呪刻剣と魔閃光と物理と神秘の両面を使いこなす面々が攻撃に多様性を持たせ、それに付随するバッドステータスがあゆの身を縛る。 例え物理神秘の両面に加え、バッドステータスにすら対応しようともスケフィントンの娘の呪殺は其れ等を越えて身を蝕むのだ。 もしあゆが戦闘経験豊富な能力者であったなら、切り捨てるべきは切り捨て、脅威度の高いものから優先して封じる戦法を取っただろう。だが彼女にその判断を行なうだけの修羅場を潜った経験がない。 あゆは未来を見れる。それはテストの回答を覗き見るが如き行為だが、けれど望む回答を導き出す為の式が彼女には紡げないのだ。 リベリスタの力任せでは無い戦い方に翻弄されるあゆは、未来を見れるが故に混乱を深めてしまう。 そしてもう一つの理由は、やはりあゆが未だに人を、大事な何かを捨て切れないでいる事。 理性を捨て、ノーフェイスとしての本能に身を任せたなら、リベリスタ達の戦術に過剰に惑わされはしなかっただろう。 其れはとても楽な逃げ道だっただろう。 しかしあゆはまだその道を選んでいない。戦いながらも紡がれるリベリスタ達の言葉が、彼女に安易な逃げをまだ許さないから。 優位は次第に圧倒にすら変わるが、だがあゆは倒れない。 何故なら、まだリベリスタ達は自分に語りかけているから。その言葉を最後まで聞かなければきっといけない筈だから。 「逃げないでよ、最後まで君らしく抗ってよ」 夏栖斗が言う。なんて優しく、なんて酷い人だろうと、あゆは少し笑む。 きっとその優しさも、酷さも、自覚なんて無いのだろうけど、あの人も少しそうだった。 「傷つく大切な人を守れず、見ているだけ」 振るう技より、あゆを切り裂くロアンの言葉。 「力を得た所で失った人は戻らない。償いにもならない。そういう運命、沢山見てきたでしょう?」 あゆより放たれる攻撃に、切り裂かれた彼女の悲鳴に、身を焦がされながらもロアンは眉根の一つも動かさない。 それはロアンにとっても自分への罰だから。ロアンも彼女と同じ罪を抱える。 「無力は罪、だよ」 あゆだけでなく、死んだ彼も弱かった。同じ罪を背負うからこそ、ロアンはその言葉を吐く。 強まる火力に、割って入ったのは、引き継いだのは烏。 世界を憎まなければならない程のあゆの嘆きと怒りは誰に批判されるものでも無いと、烏は断言した。 先程、その怒りに焼き尽くされかけたにも関わらずだ。 「だがね、おじさん達は三田村君と同じ嘆きや怒りを持つ者をこれ以上増やすわけにゃ行かないわけだ」 なのに偽り無く、変わりなく、揺ぎ無く、飄々と、烏は言葉を続ける。 まるで恐れる風もなく。 「だから、ここで全てをぶつけていってくれ。君がひとの形を保っている内に」 唯言葉を与えるだけでは、きっと受け止めきれない。あゆと言う器が抱えた物で一杯では、それ以上を注げない。 だから吐き出させる必要があったのだ。 焼かれるロアンと、烏が、共に限界を向かえ、運命を対価にそれでも踏み止まる。 結末をその目で見届ける為に。 ● 魅零の言葉はまるで願いだ。 もうそれ以上、愛しい人と手を繋ぐ為の手をそれ以上汚さないでと。 「傷つく彼を見続ける切なさを知っているくせに今度は貴方が傷つくのは、おかしいよ」 あゆはもうぼろぼろだ。姿だけでなく、心までもが。 力を振るうその様は、魅零には彼女が泣いているようにしか見えない。 「間違えないで。いくら強くなったって、貴女が三田村・あゆで無くなってしまえば何の意味もない」 更に力を振るわんとするあゆに、ジュリーが左右に首を振る。 言葉はとても難しい。この状況に当て嵌めるべき四文字熟語も、彼女は知らない。 「忘れないでね。貴女は彼がただ一人愛した女だという事を」 だからこそシンプルに、ジュリーの言葉は泣きじゃくる心に染み渡る。 「彼は、貴女が見た未来を変える為に戦っていたのでしょう」 そして揺るがす言葉を吐いたは柚利。 それは単なるフォーチュナとリベリスタの当たり前の関係ではなく、守りたい大切な存在がこれ以上嘆かぬように行なわれたのだと。 即ち彼の戦いはあゆの為にと。 柚利の言葉に、頷いた魅零。もう言うべき事は残り少ない。 あゆとの別れの時は近づいて来ている。 本当はあゆも知っていた。思い出せなくなっていただけ。 だからどうか思い出して。 「彼が大好きな貴女自身を、これ以上滅茶苦茶にしないで! 彼が護って来たのは『世界』じゃなくて『貴女がいる世界』だって事に気づいて!!」 男は何時も世界を救う為に傷付いていた。女は其れを見る事が辛かった。 目は逸らせない、見続けて居たい、けれど辛い。 世界の為になんて傷付いて欲しくない。 振り返った男は僅かに笑んで彼女の手を握る。唇が動き言葉を紡ぐ。 『俺は君と出会えた今の世界を守りたいんだ。君と一緒に』 とても甘くて、ずるい言葉だ。照れ臭げな男の言葉に、女はもう引き止める事ができない。 胸にあいた穴は埋まった。虚無感は思い出が埋めてくれた。けど、けれど、溢れた思いは瞳から零れる。 涙を流す女は想いのままに、最後の能力の行使を行う。 ● 「彼と墓を並べる場所、希望はある?」 ジュリーが問う。 全てが終わった事は、誰の目にも明らかだった。 「何処でも良いわ。彼と出会えて、貴方達が守るこの世界なら」 彼女の力は極限まで小さくなり、彼女の体は崩壊寸前となっている。 あゆが自身で願いそうしたのだ。 夏栖斗の言葉通りに、彼女は逃げずに、人として最後を選んだから。 もう良いの?と問えば其れは蛇足だろう。 別れの時に、かけれる言葉は多くない。 「これからは永久に彼と共に有りますようにだ」 烏は最後まで飄々と。 「君は赦された」 ロアンは唇に笑みを浮かべて。 ……気がづけば、白い雪がちらつき始めた。 「ええ、痛くしてごめんなさい。それから」 「――ありがとう」 最期の言葉が向けられたのは……。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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