●無数 熱気の中に滲む、上弦の弓張りは青く、白く。冴え冴えと―― 僅かばかり景色に瞬く光芒を深い闇が飲み干していく。 眠り込む街に訪れた静寂は圧倒的で、邪魔をする者も無く見事な調和を保っていた。 しかし、それでも。些細な切っ掛けを理由に夜は特別な夜と成る。 世界と世界とが繋がるのは時に不幸な偶然の産物である。 互いの不可侵を破る心算が無かったとしても、事実は既と化し、既は僅かばかりの例外を喧伝し、肯定するものなのだから。 おおおおおお…… 何かが呻くような低い音が『静寂であった筈』の街に僅かなノイズを散らしていた。 風が鳴る音と言えばそうだろう。気のせいであると気に留めなくても相応しい音だろう。 だが、その音の正体は確かにそこにあったのだ。 風の音でも、耳の錯覚でも無い。確かな原因はそこにあったのだ。 暗い街の一際暗い暗がりには確かに『運命』が座っている。ぐにゃぐにゃと引き歪む空間は一定の形を取らず、常に揺らめく不定形。広がっては縮み、縮んではまた広がる。蠢くアメーバか何かのように姿を変えるその形を正確な言葉で表現するのは難しい。 常人には気付き難く、まるで底の見えない『穴』は確かにそこに開いていた。何一つ無い空間にぽっかりと。何処に開いているかと言えばそれは『世界に開いた穴』としか表現は出来ないだろう。世界の五線を歪め、正しき形を容易に侵すそれは想定外(バグ)。 連綿と続いていくこの世界における見過ごし難い虫食い(バグ)だった。 ぼとり、ぼとりと。 月だけが見守る夜の世界に、穴が何かを産み落とす。 焦る事は無く、しかし一切休む事も無く。 暗黒の落し子を絶え間なく。この世界に注ぎ続けていた―― ●(´・ω・`)無限大 「そういう訳で仕事」 「……どういう訳で仕事かは知らんが、まぁ……大体分かったと言えば分かった」 モニターから視線を切り、切り出した『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)にリベリスタは一つ小さく頷いた。 「話が早くて助かる。某県某市の或るポイントにリンク・チャンネルの発生が観測された。今回の相手はそこから溢れて出たアザーバイドよ」 「まぁ、良くある話と言えば良くある話だな。こっちの仕事はそいつ等を片付けて――穴を処理するまで、でいいのかな?」 リベリスタの問いにイヴは「うん」と頷いた。 「アザーバイドは識別名『(´・ω・`)』形状もそんな感じ。 ……今回の相手は強くない。むしろすごく弱い」 「……なにそれ。余り素直に受け止めるのも微妙そうだが……嫌な予感」 「考え方次第だと思う。すごく弱いけど、数がそれ以上にものすごいから。発生の観測は夜だけど、これから急行してもポイントまでは間に合わない。既にある程度の(´・ω・`)が発生してから相手にする事になるからかなり苦労すると思う」 「……それは……」 「リンク・チャンネルは閉じない限り無数に(´・ω・`)を産み落とすの。しかも出現した(´・ω・`)は分裂する性質を持ってる。直径三十センチ位のそれはプルプル震えてわさわさ動いて、悲しそうに見つめてくる位で殆ど戦闘能力なんて持ってないけど……」 少女の翡翠と紅玉がリベリスタの瞳の奥をじっと覗き込んだ。 「戦争は数だぜ、りべりすた。 大量の(´・ω・`)にもみくちゃに飲み込まれたらやられるかも知れないし……放っておいたらどうなるかは分かるよね」 何処かで聞いたようなフレーズを口走る幼女にリベリスタはごくりと息を飲む。 無害な三十センチ程のぬいぐるみでも百万、一千万、一億と数を増やし続けたならば――街を世界を飲み込みかねないではないか! 大袈裟だけどね。 「自然に閉じるのを待つなんていうのは当然無理。だから皆の出番なの」 「ううむ……」 「後もう一つ。(´・ω・`)は朝になると(`・ω・´)になるから注意ね」 「……どう変わるのさ」 「強くなる。いや、弱いけど数が多いからこうなると厳しいかも」 「うへぇ……」 「大急ぎで行ってきて、(´・ω・`)を蹴散らして……バグホールを何とかして」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年07月31日(日)23:10 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●機動索敵対抗ドリン 「少々、乱暴な夜の空のデートだが、お付き合い頂こう――」 眠りこけた街の空に白い翼がはためいた。 「うむ(´・ω・`)は可愛らしい。 まるでそあらそっくりではないか。彼女の可愛らしさがそのまま文字になったようだな」 「気が抜ける物体だが、駆除させて貰おう。 ……無性に踏みつけたくなるのが困りものだが」 翼を持つ少女が二人、親友の顔を思い浮かべ何処と無く和んだ様子の『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)と頭痛を堪えるかのように言った『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)。その表情は二者二様であるが二人が取っている行動は同じである。 「おお……見晴らしが良いな。否、遊んでる場合じゃない。これは酷い有様だ」 『赤帽子の』マリー・ゴールド(BNE002518)の両手を二人で引き、ぶら下げるように市街の中心部に向けて飛んでいる所。 三人が見下ろす眼窩の街は言うまでもない異変に染まり切っていた。 アスファルト、ビルの上、電柱の下、マンホールの中……市街のいたる所には奇妙な物体が溢れかえっていた。全長は三十センチそこそこ程度の白っぽい生き物。雷音の言う通り見ようによっては愛らしいとも称せそうなそれは……その実、そこまで無害な存在という訳では無い。 「それはそれとして……彼らはこの世界においては招かれざる客だ。 もてなしたいのは山々だが相容れる事が無い以上、残念だが至極丁重に消えて貰おうか」 「うむ。まさに殲滅こそが相応しい」 雷音の言葉にユーヌが是非も無く頷いた。 個々は弱くとも無限の増殖性を持つアザーバイド(´・ω・`)(ドリン)は確かなこの世界の危機だった。 放置しておけば(´・ω・`)は街を飲み込み、望まれぬ神秘の露出と世界の綻びをもたらすだろう。彼女達『空軍』の三人を含むアークのリベリスタ達十四人はこの神秘を破壊するべく今夜この街へとやって来たのだ。 その中でも飛べる二人――雷音とユーヌは諸悪の根源バグホールの探索を買って出た。ぶら下げたマリーは人を超越して良く見える目(イーグル・アイ)と暗視を持っているのだから適材適所という訳だ。 「しかし、恐ろしい数だな……」 ユーヌの呆れたような呟きは誰を対象に取らずに漏れた半ば無意識のモノだった。 空から眺めても敵の数とその規模を正しく見定める事は難しい。今、この瞬間にも問題のバグ・ホールから新手を増やし続け、今この瞬間にも分裂を続ける(´・ω・`)達は文字通り怒涛の如き勢いで日常の光景を侵食し続けていた。 個の優劣が戦術的趨勢を決めるのはある意味当然の話である。 純戦力的に考えた場合、侵し難い一個の戦力は貧弱なる多数の戦力を蹴散らす事は多いだろう。 しかし、戦争の本質とは数である。第二次世界大戦中において「どうせティーゲルには滅多に出会わない」と合理主義に傾いた米軍が個の戦力を捨て工業製品としての価値を重視し量産したM4中戦車――シャーマンがドイツの誇るかの逸品ティーゲルIIを最終的には駆逐したのと同じように。 フレデリック・ランチェスターの述べた数理法則が部分的に支持している点と同じように。 数というものは――時に如何とも覆し難く、戦場に壮絶なその意味を告げる事があるのだ。 「……む……街中はやはり遮蔽が邪魔だな」 マリーの翠玉の瞳が(´・ω・`)の蠢く怪異の街を見回した。 とは言え、探索の結果は彼女の言葉の通りである。或いは全てを見通す千里眼があれば話は違ったのかも知れないが――やはり込み入った街中で小さな目的を見つけるには少なからぬ苦労があるのは言うまでもない。 「……常識は大事だ。これは何とも非常識過ぎる」 何ともコメントの難しい敵、酷いでは言葉が足りない光景にユーヌはそう呟いた。 何より、ざっと見るだけで『現時点で』一万を軽く越えるような数が相手である。 どんな間抜けが相手でも気は否が応に引き締まる。本拠の発見が遅れれば、結末にどんな影響をもたらすか分かったものではないのだから―― ●機動進軍対抗ドリン 同時刻―― 「数は重要なファクターですけれど、数だけでは戦争には勝てませんよ」 「おう! 頼りになるな! 心強いぜ!」 自前のスクーターの後ろに乗せた『錆びない心《ステンレス》』鈴懸 躑躅子(BNE000133)のタイムリーな一言に今宵も今宵とて無駄な位に爽やかな『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)がからから笑う。 戦場に到着し、移動を開始しているのは市街を進軍する地上のリベリスタ達も同じだった。 より厳密に言うならば彼等は唯移動しているだけでは無い。 「悪いが、許してくれよな!」 発光する坊主がスクーターで(´・ω・`)を蹴散らす様は微妙に何ともシュールである。 市内に蔓延る(´・ω・`)の数は凄まじくパーティは早々に遭遇戦を余儀なくされていた。 進軍するパーティの前方には数百体にも及ぼうかというドリンの群れ! 「強力な全体攻撃に、呼吸法による継戦能力、類い稀な直感での索敵能力。 つまり、今夜のアタシに死角なし(`・ω・´)」 表情をドリっと引き締めて得意のドヤ顔を見せながら『ガンスリンガー(`・ω・´)』望月 嵐子(BNE002377)は意気軒昂に得物のショットガンを引き抜いた。 ターゲットはぷるぷる震える(´・ω・`)。 字面は些か冴えなくとも、気力の充実する彼女には関係のない事である。 「嵐子の伝説は、今宵、幕を開ける――!」 まさに錬気法を備える彼女にこの戦場は最も適していると言えた。 火を噴くハニーコムガトリングは消耗をあまり気にする必要の無い彼女が故の派手さで一気に百体を越える(´・ω・`)を木っ端微塵に粉砕した。 「経験したことの無い困難な任務だ。しかも、失敗は許されない」 とは言え、今夜の敵の数は嵐子をスクーターの後ろに乗せた『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)の言う通り規格外の多数である。 「……失敗したときの後始末に掛かる費用はアークの明日を左右するかも。福利厚生予算を守ろう。具体的には八月末!」 快の脳裏には降り注ぐ夏の日差し、熱い砂浜、あられもない水着ではしゃぎまわる美女、美少女の姿が浮かんでいるのだろうか。 やけに具体的な目標と理由を掲げてやる気を見せ――容赦ない一撃を決める守護神(笑)に対して、ざわざわぷるぷるとしながら距離を詰める(´・ω・`)達の顔が心なしか(´・ω;`)に見えるのは気にしない。 「先生とイヴに聞きたいのですが(`・ω・´)もドリンと呼ぶのですか? 川魚みたいに名前が変わるのか気になって……でも夜がきたらまた(´・ω・`)になるから気にしなくていいのか……?」 哲学的難問を心の中に禁じ得ない『銃火隊』桐月院・七海(BNE001250)が手にした重火器を正面に構える。 普段は弓を愛用する彼が特別な得物をしつらえたその理由は―― 「矢が刺さってる姿を思うとシュールすぎる…… 主義替えではありません、回収が面倒くさいだけです(´・ω・`)」 轟音と共に放たれたフレシェット弾が光の尾を引き前列にいたドリンを次々と吹き飛ばす。 「何だか、和んじゃう顔だけど……」 隊列(?)の乱れたドリン目掛けて『スターチスの鉤爪』蘭・羽音(BNE001477)が走り出す。 力強くアスファルトを蹴り上げる少女の脚は二つ名に違わぬ鳥のそれ。 抜群の膂力で踏み込んだ彼女は、 「……そんな顔で、見られても……ダメダメ……」 まさに踊るようにしなやかに、暴風が猛るように荒々しく。 手にした大剣を振り回し、直近の(´・ω・`)達を薙ぎ払う。なます斬る。 リベリスタ達の猛攻は凄まじいものだった。 ……と言うよりは何ぼなんでも相手の方が弱すぎる。 まさに蹴散らすような破竹の勢いで(´・ω・`)を散らす光景を眺め、 「ドリン……珍妙な敵ね。ともかく朝までにどうにかしないと(`・ω・´)」 「……こんなので街がピンチとかかなりシュールだよなー……」 何故か『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)を眺めてから『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)、『テクノパティシエ』如月・達哉(BNE001662)が呟いた。 「こっち見るなです」 雷音(しんゆう)にさえ『そっくり』と称されたそあらの抗議が虚しく響く。 (何だか親近感がわくのですが、あたしにそっくりとかありえないのです。 さおりんも笑ってたのです。ひどいのです) そあらは余りにも切ない一致(アイコン)から蹴散らされるそれに一抹複雑な感情を抱いている。 「可愛いですけれど放っておけばこの世の脅威……ですよね?」 「こっち見るなです(´・ω・`)」 何故か自分を見ながら呟いた躑躅子にそあらは取り敢えず又抗議をする。 それはそれとして――パーティの作戦は基本的にバグホールの破壊を『空軍』に任せ地上軍はバグ・ホールが存在すると思われる市街中央に向けて進軍し、その破壊後に市街に散開し残る(´・ω・`)を殲滅するというものである。状況が空軍の手に負えない場合はバックアップとして地上軍が後詰めを行うという二段構えではあるが、現時点において空軍よりの連絡は無い。 「気をつけて、又来るよ」 「そんな悲しそうな目をしてもダメよ……私達は決して相容れないの」 快の警告を受けるまでもなく、である。 言葉の割に何処と無く複雑な顔をして愛用のマスケットを連射するのは『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)。彼女の正確にして制圧なる蜂起の弾幕は羽音に群がりかけた(´・ω・`)を含め、有効射程に収めたそれらを次々と破壊した。 「そんな顔してもダメって言ったでしょう……って、減ってないわね」 だが、次から次へと分裂し、合流する(´・ω・`)は押し寄せる波のようにその勢いを減らさない。 求められるはかのモーセの如き神代の昔の奇跡だろうか。 否、それは今ここに在るリベリスタ達のその力である! 「とにかく、さっさと終わらせて店の仕込みに行くとしよう」 ここぞと前に出た達哉がその身から衝撃波を迸らせる。 宙を舞う(´・ω・`)。 「行くぞ――!」 破壊の戦気を身に纏い気を吐いた『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)の二刀が手近な的を斬り散らす。 二連。今一度閃いた刃は更に一体を斬り伏せた。 「おいで、ほら、怖くないから――」 口元に手を当ててその形の良い唇を歪ませて、イーゼリットは魔炎喚ぶ魔方陣を闇の中に描き出した。 「――くすくす。嘘、本当は怖いの。燃え尽きなさいっ! あははっ、すごく愉快! すごく愉快だわっ!」 弱いものには強いのよ。イーゼリット△。 ●降下作戦対抗ドリン 「……これは……」 ユーヌの眉がほんの僅かだけ動く。 予想より長い時間を要して空軍はバグホールを発見した。 路地裏の空間を奇妙な形に引き歪めたそこからは間断なく(´・ω・`)が産み落とされていた。 予想以上の(´・ω・`)の密集状態はまさに足の踏み場も無い程だった。 「弱いとは言え量が半端ではない。油断は禁物だな」 雷音の言葉にユーヌとマリーの二人が頷く。 空から見下ろす分には苦労は無いがバグホールを破壊しようにも接近すれば耐え難い危険が伴うのは目に見えている。 「何とかマリーを下ろさねば」 「確かにこの状態では十分では無い」 雷音にユーヌが同意した。距離を保っている限り(´・ω・`)の脅威は限定的だがこの状態ではマリーは万全に動けない。 『降下作戦』とひいてはバグホールの破壊を考えた二人はまずは弾幕とばかりに空中で術式を組み上げる。 ――来々、氷雨―― 二重に降り注ぐのは冷たく凍える陰陽の雨である。 まさに空から俯瞰する二人の術は素晴らしい効率で広域の(´・ω・`)を対象に捉えるそれ。 「藁どころか泡のように溶けていくな」 「……しかし、大群というのはどうしても大変だ」 ユーヌと雷音の視界の中で散らされた(´・ω・`)が穴を塞ぐようにまた沸いて出ていた。 神秘に集るというその性質の通り、ここに在る三人のリベリスタ達に反応しての事なのかも知れない。数からして体力勝負は分が悪い。 ●殲滅制圧対抗ドリン 「……そんな顔をしても駄目です、手加減はしません!(`・ω・´)」 イーゼリットの炎を辛うじて抜けた根性のある(´・ω・`)を躑躅子のアームガトリングが蜂の巣にする。 ――大変申し訳ありません。私達だけでは少々手に余る状況です。 ご足労いただけましたら幸いです。場所は…… 長く続く焦れる進軍の途中。 平素の口調からすれば違和感がある程丁寧な――少女独特のメールを受け取ったのはそあらだった。 「店長、苦戦してるみたいです。あたし達も何とか近付かないとピンチなのです」 スクーターで蹴散らして、ぺしぺしと踏み潰し、共殺しに励むそあらの言葉にパーティの意識がぐっと引き締まる。 計画では地上軍が(´・ω・`)達を引きつけ、空軍が素早くホールを破壊するという手筈になっていたが、少しこれは甘すぎたらしい。 パーティの意識は主にホール破壊後の掃討計画の方に向いていたが、これは若干の油断であると言わざるを得ないだろう。元より(´・ω・`)は強敵でも何でも無いのだからそこまでいけば後は消化試合であると言える。問題はあくまでどうやってそこまで辿り着くかの方である。 「さあさあ寄っといで。良い物あるよ!」 疲労感を振り払うように七海が強く気を吐いた。 声と共に降り注ぐ光の弾幕は一体幾度目か知らず(´・ω・`)達を貫通する。 「これも、三高平を――日本を守る為……ごめんねっ!」 フロントの羽音は刃の風で前を後ろを左右を切り裂く。 (急がないと……焦らず……でも!) (´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`) 「何なの、この数……!」 ギリ、とイーゼリットが歯噛みする。 「私が、こんなのに負けるはずないじゃない!」 余裕の風を吹かせた暫く前とは打って変わって逆境に弱い少女はややヒステリックな声を上げて再び魔炎で(´・ω・`)を焼く。 その魔力、威力の冴えは当初と変わらない。だが徒労にも思える程の敵の数に少女の口元は引き攣った。 「こんなのに負けるとか冗談じゃない」 達哉がなけなしの体力を振り絞って今一度(´・ω・`)の塊の一角を崩した。 倒した数は既に数千にも及ぶ筈。戦いの当初より長い時間が経過した以上、数は元より増えているが……減っていない訳では無い筈。 そう信じてパーティは尚も尽きない(´・ω・`)に挑む。 達哉のみならず体力を減じ始めたパーティは先の見えない戦いに、バグホールへの急行に徐々に焦りを募らせ始めていた。 「伝説が始まった日に――景気の悪いのは勘弁よっ!」 小さな肩を上下させながら、灰色のポニーテールを揺らしながら。嵐子は目の前の(´・ω・`)の壁に激しい弾幕の雨を解き放つ。 快を壁に少しでも効果と範囲を大きくする為の――接近しての徹底射撃はまさに(´・ω・`)の名古屋撃ち。 「もう少し。ここが正念場だ!」 前で暴れ、大量の(´・ω・`)に纏わりつかれながらもその防御力で貧弱なそれを蹴散らす快が怒鳴るように声を上げた。 「しっかり、皆頑張るのです……!」 幾らかの傷を受けた仲間達にそあらが賦活の力を紡ぐ。 (´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)…… しかし、何という恐ろしさであろうか。 倒しても、倒しても、倒しても、倒しても。 この単純でしょうもないアザーバイドは次から次へと現れ続ける。 無為なる戦いは、長く、長く、長く。 リベリスタ達の進軍速度は体力の減少で少しずつ遅くなり、残る時間は減じていく。 そんな攻防が一体どれ位続いた後の事だろうか。 「――見えた!」 「おお、あそこだな!」 ミュゼーヌの支援を受け前の影を切り裂いた拓真が凛と声を張り、式符を片手に彼方の空を見上げたフツが額の汗も拭わずにそれに応える。 二人の視線の先には空より(´・ω・`)を散らす空軍の三人が見えた。敵本拠を攻めるのは簡単な事では無いが、気力を取り戻した面々は猛烈な勢いで目の前の脅威を叩きのめしていく。 (´・ω・`)が吹き飛んだ。 (´・ω・`)が千切れた。 (´・ω・`)が潰された。 (´・ω・`)が切り裂かれた。 (´・ω・`)が木っ端微塵に破壊された。 そあらが(´・ω・`)った。 「さくっといくわよ、さくっと――!」 「負ける訳にはいかないんだ! 八月に、八月に水着がある限り! 社員旅行がある限り――うおおおおおおおお!」 嵐子が面を制圧し、吠えた快は敵の真ん中に飛び込んだ。 リベリスタの戦い振りは壮絶だった。 無数の(´・ω・`)を千切っては投げ、力を結集した彼等は此の世に開いた不運なる穴を消し去った。 しかし、時既に遅く。 遠く稜線から昇る朝日――彼等の戦いは及び切らぬ。 火急の危機は去り、作戦は一定の成果を挙げた。 しかしこの傍迷惑な事件にエンド・マークが刻まれるのは、少なくとも『今夜』では無いらしい。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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