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<クリスマス2013>クラッカーは、愛を以って鳴らせ。


「クリスマス。公認カップルデートデー」
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、優しい。
「ここのところ、海外作戦も増えたし。辛い戦いが目白押し。心の絆がみんなの生存率をあげるなら、積極的にお膳立てする」
 うわぁい、身も蓋もない。
 モニターに映し出される。 
「これ、ライトピラー。とあるビルとビルの間の広場なのだけれど、クリスマスの夜に、人工的にこれを作り出す」
 そもそも空気中を漂う微細な氷の粒に太陽光線が反射して、柱嬢の輝きが見える現象のことだが。
「ミストを散布して、ライト当てるんだって。ベンチも一杯あるし、賛美歌とか流れて。隠れたデートスポット」
 あれ~?
 なんか写ってる人に見覚えがあるんですけど。
「これ、おととしの作戦映像。『テラーナイト・コックローチ』って知ってるでしょ」
 ああ、本人はたいしたことないけど、制作物の蟲が猛威を振るう、逃げ足早くて、ラジオジャックが趣味の非リア充。
「あいつが、ライトピラーの代わりに、刺されると死ぬほど痒い蚊柱立てようとしたのを、銀色の顆粒に加工した殺虫剤を散布することで阻止。一般人に蚊の被害はなく、偽装カップルのいちゃつきっぷりでテラーナイトに精神的ダメージをくれてやり、散布した殺虫剤がたまたまライトを反射して、見事な銀の雪っぽくなったりして、一般客大喜びの見事な結果を生み出したんだけど――」
 確かに映像で見ても、うわあ……と言いたくなるほど美しい。
「――去年から、それを意図的に起こすイベントになってるの。これがなかなか好評」
 はい?
「こんな感じに」
 首都圏タウン誌のデートスポット特集に、見たことある顔が載っている。
「これ、去年の様子」
 写真で見る限り、なかなかきれいだ。
「このスペースで、クラッカーをぽんとやって、光の雪を楽しむイベントが催されるの。クラッカーの中身は殺虫剤じゃないし、散布用の特大じゃなくて可愛い通常サイズ。似たような粒子だけどね。時村関連企業謹製」
 さては、イベントの仕掛けも時村だな。
 せいぜい繁盛して、アークにつぎ込むがいい。
「ホットドリンクの屋台が出てるし。シークレットイベントもあるらしいよ」
 楽しんでくるといいとドリンク引換券を配る女子高生、マジエンジェル。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:田奈アガサ  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年01月07日(火)00:16
田奈ではありません。
 ふと思ったんです。
 あれ、最近、出番なくない? って。
 それじゃ「ハートフル系です(はぁと)」とオフ会で名乗れなくなっちゃうじゃないですか、ヤダー。
 というわけで。
 アガサ(金髪美少女16歳)は、たくさんの砂を吐く覚悟完了ですよ(キリッ)
 田奈や、たながっさー、ましてやアガサタナじゃありませんので、安心してイチャイチャしに来てくださいね?
 ただ、BLとかはがっさーに交代してもらうので、それだけご了承下さい。
 アガサは、未来永劫腐りません。
 はねのはえたくろくてむがいなかわいいねこたんとのお約束です。
(その分、がっさーが腐ります)

 去年の顛末は、拙作「【テラーナイト】クラッカーを打ち鳴らせ! 」 「<クリスマス2012>クラッカーはかわいく鳴らせ。」をご参照ください。
 とはいえ、イチャイチャするのに関して、知らなくても全然支障はありません。
 ただ、余計ニヤニヤできることはうけあいます。

 選択肢
【1】クラッカーを鳴らす。
   銀色の粒子がぽんと可愛らしい音と共に、ふわふわと空にのぼっていきます。
   何個うってもいいですよ。
   音は怖くないです。
   人に向けてはいけません。銀色人間になります。
   拭けば取れますが、ムードは完膚なきまでに壊れちゃいます。
   結果に関して、責任持ちませんよ?
【2】ドリンク交換する。
   お好みのドリンクがあれば、それを。
   お任せならば、数字二桁記入。
   もちろん未成年(市外ですので、外見基準です!)にはアルコールをお渡ししませんよ!
【3】イチャイチャする。
   アガサは恥ずかしがりなので、きゃあっと思ったら、濃厚なのは薄めちゃいます。
   全年齢対象です!
【4】自制する。
   リア充爆発しろ! と、胸に秘めるのを止めはしません。
   ですけど、行動に移しちゃいけません。
   一般の方もたくさんいます。
   あえて、このカップル解放区で自分を試す心意気、アガサは応援したいと思います。

 いずれか一つを選んでね。
  あくまで描写の問題ですので、【1】~【3】の全ての行動を行ったことにしていただいて全然構いません。
 【4】だけは、別です。深くて暗い川がありますよね。 
 複数書いてあったときは、アガサに委任と考えますね。

場所:スクエアスペース
 *注意! 三高平市外!
 *ビルの狭間のオサレスペース。 
 *デートするといいですよ。イルミネーションとかぴかぴかだし。
 *デートしたら唯々と思います。ベンチとかもあるし。
 *皆さんが到着する頃には、ライトピラーが出来ています。

NPC
 *曽田七緒、小館・シモン・四門も参加します。適当にいじってくださって構いません。

 ●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。(このタグでくくっている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCを構いたい場合も同じですが、IDとフルネームは必要ありません。名前でOKです。
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。
参加NPC
曽田 七緒 (nBNE000201)
 
参加NPC
小館・シモン・四門 (nBNE000248)


■メイン参加者 19人■
アウトサイドダークナイト
テテロ ミーノ(BNE000011)
ハーフムーンホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
アウトサイドナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
フライダークホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
アークエンジェインヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
メタルフレームクロスイージス
中村 夢乃(BNE001189)
ハイジーニアスナイトクリーク
神城・涼(BNE001343)
ハイジーニアスデュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
ジーニアスホーリーメイガス
レナーテ・イーゲル・廻間(BNE001523)
アークエンジェホーリーメイガス
翡翠 あひる(BNE002166)
ジーニアスデュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ナイトバロン覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)
ナイトバロンクリミナルスタア
熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)
ハイジーニアススターサジタリー
衣通姫・霧音(BNE004298)
フライエンジェスターサジタリー
我妻 湊(BNE004567)
ジーニアスレイザータクト
鈍石 夕奈(BNE004746)
ジーニアスナイトクリーク
常盤・青(BNE004763)
   


 青は、幸せそうな人ごみの中を歩いている。
(アークで行われる数あるイベントの中でクラッカーを鳴らすだけと言うシンプルなイベントを選んだのはまだ華やかな催しに行けるような心境では無かったから)
 お祭り騒ぎというほど騒々しくもなく、神に祈りを捧げるほど厳粛でもなく。
 そこここにディスプレイされているぽんっと小気味良い音を立ててクラッカーが弾ける。
 笑いさざめく恋人たちは知らない。
 そもそも、楽しいクリスマスを妬んだとあるフィクサードが放った蚊を退治する為の殺虫剤をカモフラージュする為のクラッカー。
 さらに、そのフィクサードへの嫌がらせと牽制のため、恋人達がきゃっきゃうふふするイベントに仕立て上げたのだ。
「へえ……」
舞い飛ぶ銀の粒子は写真で見るよりも数倍綺麗で、青は思わず嘆息してしまう。
(このイベントが生まれた経緯を思い出すと少し笑ってしまうけど、このささやかなイベントが愛されている訳がよく分かった)
 イマイチ、何たるかを想像しきれていなかった人が一人。
「か、カップルしかおらん…何この密度」
 こんなイベント、カップル以外にどれだけの需要があるというのか。
「……ど……どっち向いてもラブラブイチャイチャ……」
 カップルというのは、周りの熱を奪ってアツアツになるのだ。
(さ、寒い……逆ナン所か凍えて死ぬ…何なんよ、何でこんなに心に来るんや…)
 ここに凍えている独り者が。
(…あれ? そういやわたい、今まで保身や実利で付き合った事はあっても、本気の色恋で付き合った事って無……)
 それ、ほにゃらら契約とかいう奴では――。
 やばいぞ。年末にそんなこと思いついたら、暗黒正月を向かえることになっちゃうぞ!
 誰も気がついていないところで、夕奈は果てしない精神的死闘を繰り広げていた。現実世界で3ターン分。
「ふぇ、フェイト復活!」
 死に至る傷をこうむったらしい。細かいところはプライベートなので追求しない。
(あ、危ないうっかり死に至る所やった!? 気を持ち直せ! 寒い現実から全力で目を逸らすんや!)
「やあ、ライトピラーは綺れ……」
「きれいだね」
「そうね、来てよかったわね」
 どう足掻いても視界に入りまくるカップル達。握った拳を解くんだ。一般人はすぐに死ぬ。
「………」
 フェイト復活で回復するHP/EPは、三分の一です。
 復活後は速やかな回復が重傷回避の秘訣です。
 聞こえてますか、夕奈さん。おーい。
 へんじがない。ただのしかばねのようだ。

「こんなときだからこそ! かっぷりんぐかいぎー!」
 どんどんどんぱふぱふぱふ、鳴り物付きでの開幕宣言。
 腐女子は全ての障害を駆逐する。
「ミーノはロイヤルミルクティーで」
「あひるは、あったかいココアで」
「わたしはクリームたっぷりのカフェラテをっ」
 壱也は、一口すすると景気づけにクラッカーを鳴らす。
「「「道行く男の子を無差別掛け算会だよ!」」」
 ああ、なんて恐ろしいクリスマス女子会。
「うっかり男の子同士で、カップルエリアに入り込んじゃって、『と、とりあえず、手でもつなぐ?』 みたいな二人組とか居ないかな……!?」
 あひる、きょろきょろ。
「周りがカップルだらけで妙に意識しちゃったりね! この時期だもん、寒いし距離も近いかもしんないよね
あてられちゃって手とか……! いいねっ!」
 壱也、ふすふす。
 逆にそれまで無邪気につないでた手を意識して放した後、名残惜しそうに互いをちら見はどうでしょう、おふたりさん!?
「壱也、あっちの男の子……多分彼氏待ちだよ、絶対そうだよデートだよね……!」
「あわわ絶対そうだよあれ…ほら、今の走ってきてる子彼氏じゃない!? 違ったら爆発しろっ! パーン!」
 クラッカーで狙撃はやめたまえ。
「ほ、ほわぁ~~~、そんなカップリングもっ!?」
 まだまだ妄想力が足りないミーノ、二人の妄想に驚くたびにクラッカーを鳴らす。
 辺りに、銀色結界が張られた状態だ。毒電波が遮断されていいかも知れない。
「ミーノ、ごらんなさい……あそこの二人組の男の子の方」
 あひるの目が光る。
「ちょっとチャラい感じしてるけど、意外と好きな男の子の前だと素直になっちゃうタイプよ」
 腐女子、見てきたように物を言い。
 高まるテンションに、クラッカーをぱぁんと鳴らす。
「そうそう、ミーノちゃん。チャラいように見えて他とは扱いが全然ちがう、そんなタイプだね。みて、あの柔らかい笑顔は他では絶対見せないんだよ! ね!!」
「ふ、ふむふむ…そーゆーいがいせいが…っ。でもたしかにふだんとちがうところをきゅうにみせられると……あんがいころりと……きゃー!」
 ミーノによる連射、パンパンパン! 拍手のごとく鳴るクラッカー。
「わたしはそのもう片方の硬派っぽいツンデレくんが好み!」
 壱也もさらにぱぱんっとクラッカーを鳴らす。
「つづきはおへやにもどっておこたでっ!」
 ミーノは鼻を押さえつつ、提案。
 万一話が彼らの耳に入って、せっかくのおいしい展開を阻害してはいけない。保護しなくては。
 だが、とりあえず、どっちが左側なのか位は言い置いていってくれまいか。気になる。

 念のために言っておくが、そあらさんにお姉さんはいない。
「これ、おもしろいのです。あたし、おこさまではないのですけれど」
 楽しいことって、大人がやってもやっぱり楽しいのだ。
「はあぁぁぁ、キレイなのです」
 ふわふわと空中でゆっくりと拡散する光の粒を見上げるそあらの目にも銀の星。
「ほら、七緒さんも一緒にやりましょうです。楽しいですよ?」
「え、やだ」
「ひもひっぱるだけなのに面倒っていわないでくださいです。1個やればもっとやってみたくなるですよ?」
 いやいや。と、七緒は言う。
「じゃあキラキラと銀色に輝くあたしを写真にとってもらうっていうのはどうです? 七尾さんなら素敵な写真をとってくれるにちがいないのです」
「仰せのままに。お姫様みたいに撮ってあげるよ」
 何しろ七緒はそあらにはそれは世話になっているのだ。



「去年と同じ場所。去年と同じイルミネーションに。去年と同じく、君がいる。こんなに嬉しいことはない」
「常に危険な依頼へ赴く貴方が無事であった事も」
 快も、レナーテもわかっている。
 それが、どれだけの僥倖かということを。 
 何人もの戦友が、大事な人をおいて帰らぬ人になった。
 だから、生きている者は、彼らの分まで喜びを。生を謳歌せよ。
 笑いさざめく人の波の中、笑顔を保とうとしていた快の顔がゆがむ。
「俺は裏野部一二三を止められなかった……俺は、また守れなかった」
 まもなく来るだろう、崩界の大きな危機。
 その気配が快を責め苛む。
(守護神の「他称」に応えるために、精一杯強がってみせた。自分と仲間のベストを出しきるため、戦いのたびに全力を振り絞って)
『守護神』 に、迷いは許されていない。貪欲であれ。無比であれ。全てに戦士を連れて帰り、我らに勝利をもたらし給え。
 信頼を通り越して、信仰にも近い。 
 しかし祀り上げられるには、彼はまだ若すぎる。まだ四半世紀も生きていない若輩なのだから。
「裏野部の一件は報告書で見たわ……まずはおつかれさま」
(あまり暗い顔をしていてもよろしくないから、出来るだけ笑顔で喋りましょう)
 レナーテの笑みに救われながらも、快の表情は暗い。
「――張り詰めた心と身体が、時折切れそうになる」
 切れたら、立てるだろうか。足の下には何もない虚空。もう戦えなくなるのではないだろうか。
 それは、恐怖だ。そうして、戦場から去っていった仲間も多い。
「諦めてしまえば楽なのだろう。けれど、それは出来ない。俺はこの生き方を選んでしまったから」
 レナーテは、うなずいた。
「だから、少しだけ。今だけは、君に甘えさせてほしい」
 小さな声だったが、それは悲鳴だとレナーテには分かっていた。
「好きなだけどうぞ」
 両手を広げてそう言ってくれるレナーテの肩に顔を伏せる。
 その頭を抱きかかえるようにして、レナーテは銀の光の粒を仰ぐ。
(無理に明るく振る舞う必要はない。楽しい時は楽しそうにしてくれればいい。辛いなら辛いと言ってくれればいい)
「――女々しくて、ごめん」
 自分の言ったことを思い返すと、快は顔から火を噴きそうだ。
「そんなこと思わないわ」
(私はあなたを支えたいと願った。同じ戦場に立つことはなかなかできないけれど、それならば少しでも心の支えになりたいと思うから)
 そういう存在になれている喜びの方が大きかった。

(実はあたしも、成人したんですよね。初お酒!)
 夢乃の選んだ24番のエッグノッグは、シナモンとバニラの香りだった。
 少しだけ切ない香り。
「えへへ……ぼっちです」
 ぱぁん。とクラッカーを鳴らす。
 ふわふわと落ちてくる銀の光を見ながら、エッグノッグをすする。
 甘く、とろける口当たり。
 地面に着く前に消える光。
 再び、ぱぁん。
「……綺麗、ですねぇ」
 なのに、手は程よく温まった首をかいているのだ。
 二年前は、ここで猛烈なかゆみと蚊の大群と戦った。
(何をテンション下がってるんでしょう、あたし。せっかく洋服でおめかししてきたんですから。こうなったらいっそ『ぎゃくなん』でも!)
 キリリ。夢乃、攻めに転じます。
「――てことで、お時間ありますか、小館さん?」
「うわらひひゃ、はいぃっ!」
 定期的にパン、ずずっを繰り返していた夢乃に声をかけていいものかどうか、若干距離鳥気味で様子を見ていた四門、急に振り返られて直立不動。
「ドリンクでも一緒に――未成年ですっけ。あら。あたしの方がお姉さんですね――それなら、ソフトドリンク、貰ってきましょうか」
「あ、ありがとうございますぅっ!」
 四門、割ともみくちゃにはされてるけど、こういうシチュエーションで女性にそういう扱いされるの初めてです。手と足、一緒に出ます。
「ライトピラー、綺麗ですねぇ」
「はい、そうですね」
 でも夢乃さんの方がとか,四門が言う前に。 
「――痒かったけど」
 素直に楽しめない、夢乃のトラウマ・シンス2011、発動。
「お、お疲れ様でした――」
 四門の精一杯。  
 白黒い人と褐色ポニテが視界にin。
 夢乃は遠い目をする。
 どこで差がついたのか。

「今年は、エスニックでかわいいね」
「ありがとうございます」
 去年も見かけたジューススタンドの店長から、カルピスとライチのホットカクテルを受け取ったうさぎは、今日は無表情だ。非常に楽しそうだが。
「何度見ても綺麗ですね。ある意味テラーナイトさんには感謝しませんと」
「今年も恒例のテラーナイト対策か。うさぎとの「演技」もこれで三回目か……」
 口に出してしまうあたりが、ダメダメだ。
 つい先日、うさぎの性別を聞き出した風斗は、べしべしと自分の頬を叩いて活を入れる。
(……落ち着けオレ。やることはこれまでと一緒。これまで出来たことが、今回も出来ないわけがない! さあこい、うさぎ!!)
 しゃらんら。
「な、何か今年はいつにも増して気合入ってないか? 随分と……いやなんでもない」
 昨年までの――変装としての装いではなく、うさぎのうさぎによるうさぎのためのおめかしに気づいた分、風斗にも若干の成長が見受けられる。
「ほら、何ぼさっとしてるんですか。風斗さんもっとくっつきなさいな」
 ナイアガラバックスタブー染みた間合いの詰め方から、
「手が寒いんで手とポケット借りますね」
 問答無用で絡められた指は、風斗のジャンバーにねじ込まれる。
「うわっ!」
 一連の流れるような動きに、風斗の顔から火が吹いた。
 ごひー。
 鼻奥で呼吸がごっと音を立ててつまり、かろうじて外に出るのが許された空気が耳高口高花高から分散されてか細い音を出す。
「ええい、あんまりベタベタするな! こら、くっつきすぎだ離れろ!」
「にしても中々伸びませんねえ髪……ほら、中途半端でしょ?」
 伸ばし変えのテールでは隠しきれないほっそいうなじ、キタコレ。
「ああ、これ怪盗の偽装じゃないです」
「髪? なんだ、伸ばしてるのか」
 ここ二年はウィッグだった。
「だって貴方、好きなんでしょ? ポ・ニ・テ」
 親友のデータバンクをなめてはいけない。
「……オレの好みとか、どうでもいいだろうに」
 ばかめ。お前の好み以外がどうでもいいのだ。
「……何オロオロしてんですか。折角のデートなんですからもうちょっと甲斐性をですね」
「……は? デート?」
 それは、男女間における神聖な儀式ではないのか。
 風斗は混乱している。BSとは違う意味で。
「え、初耳ですって? あれー言いませんでしたっけー?」
 うさぎお得意の棒読みのお手本みたいな発音だが、風斗の耳には届いていない。
「……嫌、ですか?」
 去年より身長差は広がっている。うさぎの時間は13のまま止まっている。
「え? あ? やー……」
 楠神風斗よ、リバーシを見たまえ。
 コマの色が変われば、すべてはひっくり返るのだ。
 心に壁を作ったままでは、君は、早晩、そろそろ出来る清らかな空席に座らせられる羽目に陥る。

 その清らかな椅子にもうちょっと座っていようと思っている男。ある意味、余裕。
(竜一です。ユーヌたんが日に日に可愛く成長しているようで、俺が自制しきれるのかが心配です。全年齢です)
 竜一君、紳士だね。
 横でユーヌたんが、(別に変に自制しなくても良いんだが)とか考えてるとか思いもしない。女の子の方が先に大人になるのだ。
(自制した分は他に行くのだろう? それなら私にぶつけてきた方が余程良いな)
 男と女の間には深くて暗い河がある。
(というわけで、今回はずっとユーヌたんにくっついていようと思います)
 肩を抱き寄せながら、一つのホットドリンクを二人で飲んだり。一つのクラッカーを二人で引いて鳴らしたり。ユーヌのほっぺたをつついたり。寒いからと、ぎゅっと抱きしめたり。
 死ぬまでにやりたいと言ったら死ぬしかない行動をきっちりやってのける。
(はああ~~…ユーヌたんは今日もかわいいなあ)
「ちゅっちゅしてもいいよね? 許される日だよね?」
 とりあえず、鼻息は抑えようか。
「別にキスが許されない日はないと思うが、その言い方ではロマンティックも何も有りはしないな?」
「ロマンティックなキッスを、ぶちゅー!」
 竜一の攻撃! ユーヌは回避に成功した! 
 ユーヌの攻撃。竜一は避けられなかった。竜一のほっぺたにユーヌのほっぺが密着してスリスリする。竜一は魅了された!
「やれやれ、外に出た意味はあるのか疑問だぞ? まぁ、……嬉しくない訳ではないが」
 ユーヌの偉いところは非常に素直なところです。
「幻想的な情景とか、うん、ユーヌたんしか見えないわ」
 竜一の偉いとこをそれを真正面から受け止めるところです。

「うわぁ……!」
 光の柱に、光の雪。素敵な光景に思わず声をあげて、アリステアがその中に変えだしていくのを量はまぶしさと一緒に見ていた。
「クリスマス……かあ」
 とっさに、気のきいた台詞が出てこない。
「この時期はイルミネーションが綺麗で、暗くなるのが楽しみだよねっ」
 クリスマスを共に過ごす相手として選ばれた喜びが、少女の足に翼を生やす。
「聖夜、というけれども、なんだか、そうだな。光の雪が降る、と言うとロマンチックだな」
 手のひらの上の光の粒は、静かに闇に消えていく。
「触れても冷たくない、てのが少し面白いね」
(けれども、寒いのは事実だしな)
 コートの前を開けて、数歩前を歩いていたアリステアをその中に抱きくるんでしまう。
 きょとんとして見上げるアリステア。
「僕は温かいし、アリステアも寒くないだろう?」
 まん丸だった目が柔らかく笑むまで全ての瞬間が輝いて見える。
「ただ温かいだけじゃなくて、キミをぎゅっと抱きしめてると、心も温かくなる気がするね」
 身体の前に回された腕を、アリステアは自分の両手でぎゅっと抱えるように抱きしめる。
 腕に絡む指の先まで喜びと幸せなのに、涼は気がついているだろうか。
「ん……」
 少女の満足げな囁き。
「とても温かいね。寒さなんてどこかに飛んで行くの。今日一緒に過ごせて嬉しい。勿論、これからも。何もない日も一緒にいたいね」
(神様お願い)
(来年も、こうやって)
(この人と幸せな日が)
(なかよくいられればいいな、て思うよ)

 旭は、去年のことを覚えていた。
「ドリンク何番にしよ……んー、じゃあ78番」
去年、霧音に少しだけ、でもよく似たひとが注文した数字。
(何がでてくるかな。去年と違うのかなあ?)
 去年は、柚子茶だった。彼女は旭に一口くれた。
 今年も同じ味。あの日と同じ柚子茶だ。
「私は……16番」
 それは、去年旭が選んだ番号だ。
 旭は、少し目を丸くする。
「……特に意味は無いわ。ただ、なんとなく浮かんだから」
 出て来たのは、ジンジャーメープルミルクティー。当然ホットだ。 
「ん……温かくて美味しい」
 霧音は、じっと見つめてくる旭に瞬きをする。 
「旭のも飲んでみても良い?」
「ん、のんでみる? ひとくち交換こしよー♪」
「ええ、交換しましょ」
 仲のいい女の子同士。
「きりねさんとクリスマス過ごすのははじめてだねぇ。去年までは何してたの?」
「……何もしてなかったわ。クリスマスも、ただの1日でしかなかった」
「なんにも? そんなのもったいないよう……! クリスマスって、すごーくたのしーこといっぱいあるの。もしかしてお正月とかバレンタインも?」
 柚子茶もこぼさんばかりの勢いで詰め寄ってくる旭に、霧音は苦笑してみせる。
 どうやら、旭にとって自分の今までは是正する必要があるようだった。
「え、ええ。正月も……バレンタインも」
 此処に来るまでは一人で、何もしてなかったから。
 「……それなら、わたしが楽しみ方教えてあげる。遊ぶのは得意なんだよう」
 えへんと旨をひぞらせる旭に、霧音は微笑んだ。
「教えてくれるの? ふふ、分かるわ。旭はいつも楽しそうに遊んで笑ってるもの」
「うん……♪ きりねさんにとっても、まいにちが特別になるといーな。だいじょーぶ、きっとなれるよ」
 戦い続けてきたあなたに、安らぎの日々を。
「そんな日々が来たら、きっととても素敵なのでしょうね。貴女となら、そうなれるような気がしてくるわ」
 これからは、たくさんの楽しいことが待っている。
「だから、来年も……これから先も、色んな楽しい事を教えてね」
 それは、年を越えた約束になった。

 旅支度してスーツケースがらごろ転がして。
 青年に見える五十男がスタンドでコーヒーを買う。
 通りかかったというのは、少し嘘だ。ここは市外。わざわざ来なくてはいけない場所だ。
(しばらく遠出する前に立ち寄った)
 それに、嘘はない。
 ミルクと砂糖を断り、ブラックのまま啜る。
 周囲の賑やかな空気に自然と表情が緩んだ。
「中年男が一人で来る所ではないな」
 思ったより、独り言が大きく響く。
 それでも。
「今年も来てしまったな」
(ここのコーヒーは美味かったから……と自分に言い訳するあたり、引き摺り過ぎだ)
 コーヒーは、かすかな酸味を舌に残す。
(僅かな心残りは精算したが、まだ終わってはいない。俺はまだ何も為していない)
『3度目』の光の木を見上げる。
(来年はどんな思いでここに立つのか)
 初めては伊吹ですらなかった。昨年は鎮魂の。今年は何もないところからからの。
(来れればの話だが……いや、止そう。また来れることを信じて)
 これも、約束。来年もここにコーヒーを飲みにこよう。

 湊の心に、ぐうたら女がプリントされてからそろそろ半年が過ぎようとしていた。
「な、七緒さん! お、俺っちとデートしてください!」
「今?」
「今!」
(玉砕するかもしれない。でもこういうときにいわずしてどうするのか!)
 14歳。一回り以上の年差を埋めるには、勢いと根性が必要なのだ。
「事前に日付を決めて会うのが、デートぉ」
 事前に決めて。が、ポイントぉ。と、七緒は、付け加える。
「故にぃ、あんたが今してんのはナンパぁ」
 七緒、誕生日のもらったしまパンを平気ではく程度に無頓着だが、そういうのは気になる質。
「……ベンチにでも座って一緒に居られたらいいかなって――」
 なんとなく指差す先に、定期的にトラウマに苦しめられる夢乃を何とか浮上させようと奮戦している四門の姿。
「まあ、それくらいはいいけどねぇ」
 27歳は、14歳男子をただのがきと侮ってはいけない。
(本当はね、キスとかできたらなとか思うけどね、お付き合いしてるわけじゃないしね……)
 七緒の顔をうっとりと見ている湊がそんなことを考えているとは露知らず、七緒はのんきにカフェモカなんかすすっている。
(俺っち、まだ七緒さんに迷惑かける歳だから……せめて高校生になってからぶつかってみようかなって)
 いや、高校生でも、七緒が捕まる。
(……ほかにいい人が七緒さんにできてそうで怖いけどね?)
  とりあえず、七緒がつかまらないお年頃になるまで、あと四年。
 そのとき、七緒、31歳。

 青は、人の波にまぎれたままだ。
(この景色の中ではボクは、ただの背景の1つなのだろう)
 見たことのある顔もない顔も、青の物語の一つとなる。
(銀の雪が舞う光景とそれを共に眺める誰かとの記憶の中にボクと言う存在は残らない)
 きっと、三高平であっても、どこかで見たっけという印象だけ。
(それでもいいかなと思う。それでいいなと思う。だって、それでもこの光景を作ってるのはボクだから)
 ぽんと音を立てるクラッカー。
 今、青の放った銀の雪が、全ての物語の共通項になる。


 銀色の粉が集まって、光が巨大な十字架を空に映し出し、幻の鐘が揺れ、空に聖歌が流れ出す。
 正なるかな、聖なるかな、生なるかな。
 いきとしいける、いとしき人達よ。
 明日を生きる為に、今日は小さな破裂を。
 世界は、この程度では揺らぎはしないから。
 クラッカーは、愛を以って鳴らせ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 リベリスタの皆さん、楽しんでいただけましたでしょうか。
 銀の雪の思い出が皆さんの生きる助けになりますように。
 次のお仕事、がんばってくださいね。