下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






<アーク傭兵隊>氷海の災厄


 白き氷の大地。
 人の手及ばぬその土地に、ソイツは出現した。
 元より誰よりも巨大だったソイツは革醒め、暴君と化して全てを喰らう。
 海の悪魔とすら恐れられるシャチが、あろう事かテリトリーである海中で貪り食われた。
 体を休めるコウテイペンギンが、天敵の牙の及ばぬ筈の氷の上で丸呑みにされる。

 南の果てに出現したソイツ、氷海の災厄は嘗て、シロナガスクジラと呼ばれる存在だった。


「さて諸君ごきげんよう。寒い日々が続くが、今日はそんな諸君等に今は夏の南半球への招待状を持ってきた」
 集められたリベリスタ達を前に、『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)が珍しく笑顔を向ける。
 嗚呼、つまりはきっと、逆貫がこれから頼んでくるのは実にろくでもない事なのだろう。
「話は変わるが、雑談なのだが、諸君等は南極が何処の国の所有かは知っているだろうか?」
 嬉しそうに問い掛ける逆貫。
 ちなみに南極大陸は南極条約により南緯60度以南の領有権主張は凍結されており、一部の国は領有権の主張を続けているものの、凡その見解で言えば何処の国の、誰の物でも無いのが彼の大陸である。
「そう、彼の地は謂わば人の手の及ばぬ地だ。まあ此処は政治的な話をする場では無いので細かい事は省くが、あの地に発生したエリューションを何処の誰が退治するかと言うのは結構微妙な問題でな」
 もう大体話は掴めたが、凄くその先は聞きたくない気がする。
「何処の組織に任せても微妙なら、近頃親切に世界中で活動をしている『傭兵』にやらせれば良いと言う案がでたのだよ」
 夏の南極と冬の日本、どちらが寒いかと問えばその答えはきっと子供でも間違わない。実に酷い話である。
 だがエリューションがそこに発生したとなれば当然誰かが対処せねばならず、お鉢が回ってきた以上それを断るのも難しい。
「万華鏡は国外には及ばず、先の話の関係から情報の出先もバラバラでな。私も手を尽くして纏めてはみたが、何時もより精度は低い資料しか用意出来ていない。……さて」
 不意に逆貫は笑みを消し、真剣な眼差しでリベリスタ達を見詰める。
「それでも私は諸君なら任務達成に問題は生じないと信じている。どうか引き受けて貰えないだろうか?」


 資料

 エネミー:氷海の災厄
 シロナガスクジラのE・ビースト。
 体長は30mを越え、物質透過に近しい力で氷中や地中も海と同じ様に泳ぐ。
 強力な冷気を噴出孔から噴出す攻撃(詳細は後述)や巨体での押し潰し、飲み込み(肉の圧力や消化液によるダメージを受ける)、その他その体躯から考えうる限りの事はして来ると思われる。
 体表が非常に分厚く、また巨体である為、通常通りの戦い方での撃破は困難と推察される。(回避は著しく低いが巨体の為バッドステータスは通り難く、敵からの攻撃も精度が高い訳では無いが範囲が広く回避が困難等)

 ※特に注意すべき事
 噴出孔からの冷気は広範囲(半径100m程)に及び、最低5分は効果を及ぼし続ける。
 冷気の効果範囲内に居る者はターンの最初にWP判定し、失敗した場合は以下。
(1)自付、他付を問わず+効果の付与が掛かっていた場合ブレイクされる。
(2)付与が無ければ凍結状態になる。
(3)既に凍結状態であれば氷結状態になる。
(4)既に氷結状態であれば氷像状態になる。
(5)既に氷像状態であれば無効効果を持っているキャラクターであっても此れを無視して効果を及ぼす。
 WP判定は冷気の効果範囲内に居る時間が長引けばペナルティがかかるようになります。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:らると  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年12月05日(木)23:24
成功条件は氷海の災厄の討伐です。
情報探査の精度が劣る為に何をしてくるかは判りませんが、何をしてきてもやばい(圧し掛かってくるだけで30mくらい届きます)ので色々想像して戦ってください。
バッドステータスの通り辛いと言うのは、複数回HITで通る場合もありますし、非常に高命中なら一度で通ったりもします。
恐らく長期戦になるでしょう。一度潜られると次に出てくるまでには分単位の時間が経過する筈です。
何時も通りの戦いとは大きく異なる戦いになると思われます。

シロナガスクジラって確認されてる個体でも34mとかいるんですね。
流石地球最大生物。
氷海の災厄はとても食欲旺盛です。仮に人が大量に居る地域まで上がって来たら、大惨事は免れないでしょう。
情報探査の精度の問題でピンポイントでターゲットのもとへは辿りつけませんが、彼の地に居れば訪れた珍しい餌を察知して向こうからやってきます。
どのようなシチュエーションで戦うかはある程度選べます。また物品も常識の範囲内でなら持ち込めます。

さて、海外依頼です。
最近毎日寒いので、もっと寒い南極へ。
お気が向かれましたらどうぞ。
参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
フライダークホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
フライダークナイトクリーク
月杜・とら(BNE002285)
ハーフムーンナイトクリーク
荒苦那・まお(BNE003202)
メタルイヴダークナイト
黄桜 魅零(BNE003845)
ハイジーニアス覇界闘士
片霧 焔(BNE004174)


「寒い! さむいよここ!!!」
 カチカチと歯の根の合わぬ『尽きせぬ想い』アリステア・ショーゼット(BNE000313)の半ば悲鳴の様な声が、何処までも広い氷原に吸い込まれていく。
 はい、寒いですよー。
 寧ろ地球上で一番寒いのが多分この場所だ。
「初海外遠征です。南すぎるわ! 極だわ!」
 アリステアに続くは、やけくそ気味の『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)。
 そう、彼の言う通り此処は極なのだ。南の最果て、つまりは南極。
 もっとも極点に立つには未だ更に南に行かねばなら無いが、其処は如何にリベリスタといえども軽装備で気軽に辿り着ける場所でもない。
 南半球での仕事と聞いて、冬の日本を脱出して暖かな南の国で水着の女の子達を眺めれる優雅な任務を妄想していた夏栖斗の期待は粉々だ。ざまあみろ。
「畜生! 逆貫! 覚えてろ!」
 泳ぎたいなら泳ぐと良い。リベリスタならば氷海でも多少ならば泳げるかも知れないし。
 罵声が南極の風に吸い込まれていく。
「……へっくちゅん!!」
 可愛らしいクシャミを一つ、肩を震わせて自分の体を抱いて少しでも熱を逃がすまいと試みるは『骸』黄桜 魅零(BNE003845)だ。
 普段は際どい格好の多い彼女も、今日は防寒着をがっちりと着込んでいた。だってとにかく寒いのだ。
 寒さとは、ある一定までは寒さを不快に感じ、その一定を超えると痛みを覚えてしまう。そして更にそのラインも超えてしまうと、ただ只管に辛く、命の危機を感じ続けるのだ。
 リベリスタである彼女達なら命の危機を感じる程には至らぬが、それでも南極の寒さは充分以上に痛かった。
 尻尾を冷気が撫でて行き、ゾクリとした寒気が彼女の背を走る。
「帰ったら、あったかいお風呂に入りたい……」
 アリステアの呟きは皆の気持ちの代弁でもある。
 ただし例え任務を素早く終わらせようとも風呂を用意出来る日本に帰れるには多大な時間を必要とするのだ。
 既に若干めげぎみの仲間達の姿に『炎髪灼眼』片霧 焔(BNE004174)が苦笑する。
 確かにこの地の寒さは過酷だけど、炎の様なこの少女、焔の在り方を変えるには程遠い。
 闘士としての鍛錬と燃え上がる魂が、この状況を碌でも無いとは思いつつも、まあ良いかと受け入れさせたのだ。
「ペンギンさんとくじら様はどっちが美味しいのですか……?」
 何やらずいぶんと恐ろしい事を考えてる『もそもぞ』荒苦那・まお(BNE003202)。この子も随分と余裕である。
 ちなみに南極条約で南極の生物の捕獲狩猟は禁止されてるのでペンギン食べたらダメですよ。大昔は食用として狩られる事があったそうなので、まあ食べれる味なのだとは思います。


 不意に、寒さに少し元気の無かったアリステアの表情に緊張が走る。
 其れを知らせたのは単純に、極限まで研ぎ澄まされたESP、予知にすら近しい勘だった。
「皆っ!」
 鋭く飛んだ警告の声に仲間達の表情に理解が宿る。
「皆、逃っげろ~☆」
 明るく響いた『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)の声に、リベリスタ達が一斉に準備していたスノーモービルのスロットルを捻る。
 とは言え状況はとらの声音程に好ましくは無い。何故なら、彼等の足元には巨大な穴の様な口を大きく開いた氷海の災厄、巨大なシロナガスクジラが迫って来ていたのだから。
 氷をすり抜けた馬鹿でかい巨体が宙を踊る。細かな氷の粒を撒き散らしながら身を捻るシロナガスクジラの姿は、既にエリューションと化していると判っていてもその雄大さに思わず目を奪われる。
 仮に接近に気付くのがあと少し遅れていたなら、或いは備えが足りていなければ、その飲み込みから逃れる事は叶わなかっただろう。
 それほどまでに彼我のサイズには差がありすぎる。
 落下を始めた氷海の災厄は、今度は氷のすり抜けを行なわず、その巨体が地を揺らす。
 罅割れ、砕け、氷に亀裂が走る。氷の裂け目からリベリスタを救ったのは、またもスノーモービルだった。
 氷雪に足を捕らわれぬ乗り物のお陰で難を逃れたリベリスタ達。けれど振動や亀裂に荒れた氷上でこれ以上の走行は難しい。
 逃げるだけなら兎も角、あの巨体に立ち向わねばならぬ以上は己の手足が頼りとなる。
 だが一つ幸いだったのは、氷海の災厄の動きが巨体故に遅い事だ。
 大きな体では攻撃に移る前の予備動作、例えば反動一つつけるだけでも大きく、次に何をしてくるかを察するのは非常に容易い。
 全身の力で巨体を持ち上げ、迫るリベリスタ達に対して圧し掛かりを試みるも、常日頃素早い敵との戦いに慣れた彼等がのんびりと潰されるのを待つ筈がなかった。
 巨大な質量が氷を叩き、再び地揺れを発生させる。しかしそんな中で氷海の災厄の体に取り付いたのが、ハイバランサーで揺れに対応して軽やかに駆け抜けた魅零と、彼女とは逆に足場に対して面接着でピタリと吸い付き揺れを堪え、揺れが静まるや否や間髪を入れずに今度は敵の体に張り付いたまお、そしてそのハイバランサーと面接着の両方を備えた夏栖斗の3人だ。
 小山の様なシロナガスクジラとて、流石に3人もの人間が自らの身体を登り始めればそれに気付く。
 けれど体を震わせ払い落とそうと、或いはごろりと転がり巻き込み潰そうと言う思考に氷海の災厄がいたる直前、その鼻面をかまいたちが、焔の蹴撃より飛んだ斬風脚が叩く。
 ダメージではなく、体験した事の無い衝撃に驚いた怪物がビクリと体を震わせる。地震の如きその震えにも取り付いた3人は動じる事無く、そして更に彼等の援護にとらの全身から放たれた気糸、デッドリー・ギャロップが前肢、胸ビレに対して幾重にも絡み付く。
 如何に革醒者の技と言えどこの巨体の全てに巻き付く事は難しい。だが其れでもとらの気糸は氷海の災厄の行動に僅かばかりの枷となる。
 そして突き刺さるアリステアの羽ばたきが巻き起こした魔力の風渦、エアリアルフェザード。体表の分厚い氷海の災厄にとって、一度や二度のそれでは決して大きなダメージとはなり得なかったけれど、けれど十二分に注意は逸れた。
 

 広がる視界に、それどころでは無いと判っていても魅零は思わず息を飲む。
 何処までも続く氷の大地は、冷えて澄んだ空気故にその地平線がはっきりと見えた。
 思わず大声を出したくなる衝動を抑え、手に持つ大業物に呪いを籠める。
 奈落剣・終、呪いの反動に大業物を振り翳した腕が裂けて血が流れ行く。けれどそれには委細構わず、刃を突き刺し呪いを注ぐ。
 一方逆から登ったまおもまた、シロナガスクジラの頭部に目掛けて破壊のオーラをぶつけ続ける。
 通常ならばこの巨大な相手に対して近接攻撃を繰り出すのは非常に危険だ。ただの壁を殴るのとは訳が違い、攻撃に対した一寸した身じろぎですらがそのまま反撃となって返って来るから。
 しかし此処まで上って来てしまえば、多少の動きはただの足場の揺れに過ぎない。面接着を持つまおにとって、それは然程の問題にはならぬ。
 黙々と、黙々と、彼女のオーラが氷海の災厄を削っていく。
 昇り切った巨体の背を蹴り、宙を舞った夏栖斗が繰り出すは仇花。中空で繰り出された武技は、衝撃となってクジラの硬い体表を貫いて、肉体の奥へと浸透した。
 巨怪の背はステージの様に広く、夏栖斗が飛び跳ねるには充分だ。卓越したバランスと足場を逃さぬその力が生み出す曲芸。
 多様な攻撃の積み重なりに、流石の氷海の災厄にもダメージと呼ぶべきものが少しずつ蓄積される。

 だが氷海の災厄とて黙ってやられてくれはしない。
 寧ろダメージらしき物を受けたからこそ、その防御本能が活発に働き、体内に溜まった異能の力、神秘を含んだ冷気を噴出孔から噴出した。
 あたり一面が一瞬にして白い靄に包まれる。通常のクジラの潮吹きとは桁違いの、正に理不尽としか呼びようのない圧倒的な冷気。
 冷気の噴出を察した3人のリベリスタはすぐさま飛び降り、仲間達と合流して駆け出したが、広がる其れは瞬く間に彼等を多い飲み込んでしまう。
 動き回った熱を体内に蓄えど、分厚い防寒着を身に纏えど、冷気は些細な抵抗を意に介せず身体の奥に染み込んで来た。
 リベリスタ達の体表が薄っすらと氷に包まれ始める。もし彼等が焦りに捕らわれ、或いは無策にバラバラに逃げていたなら、冷気に凍らされたリベリスタの数名は氷海の災厄に押し潰されるか飲み込まれるかのいずれかの運命を辿っただろう。
 けれど彼等は冷静だった。それは憎らしい程に。
 彼等が噴き出した冷気から逃れ得た理由は2つ。1つはバラバラに逃げずに全員が一塊となって同じ方向に逃げた事。そしてもう1つは、自身は冷気の影響を受けず、更に氷に捕らわれた仲間を解放する術、ブレイクフィアーを持つアリステアの存在だ。
 冷気の中で延々と耐え続けるなら兎も角、範囲外に逃げ出す足を止められぬ為にブレイクフィアーを使うなら消耗は最小限で済む。
 そして例え長期戦にもつれ込み、冷気の噴出が繰り返されようと精神の消耗を癒す手立て、とらのインスタントチャージをリベリスタ側が有する以上は回復が途切れて彼等が氷漬けに成る事も起こり得ない。
 敵が氷下に逃げれば休み、迫り上がってくれば走って突き上げや飲み込みを避け、動きを止めれば集中攻撃を加える。
 戦いは非常に安定して進み、それは最早狩りと呼ぶべきが相応しい様相を呈してきていた。


 とは言え不測の事態は常に起こりうるのだ。
 リベリスタ側に油断がなく、得た情報に対しての対処も怠りなくとも、巨体は時に想像しなかった動きを取る。
 恐らくは身にしがみ付いた夏栖斗、魅零、まおの3人を潰す為だったのだろう。何かに張り付かれた動物が恐らくそうする様に、不意にごろりと転がって身を地でこすったのだ。
 潰される前にと咄嗟に飛び降りた3人……、まおはバランスを崩し落下点の氷で身を少し打ったけど、にはもう一度昇る手間はあれど、然程大きな災いとはならなかったその行為。
 そして離れた場所から風を、エアリアルフェザードを撃ち込んでいたアリステアにも、迫る巨体に驚きこそすれ、咄嗟に離れれば特に問題とはならない。
 けれどデッドリー・ギャロップで巨体を少しずつ縛っていたとら、炎を宿した腕を振るい、点では無く面での攻撃を繰り返していた焔、この2人、近接攻撃を行っていた2人に関しては話が変わる。
 要するに、距離が近すぎて不意の転がりに巻き込まれてしまったのだ。
 迫る巨大なローラーと化した氷海の災厄に、焔は咄嗟に防御姿勢をとり、とらはギャグ漫画で偶に見られる表現のペラペラの紙人間になった自分を思わず想像する。
 まあ実際は通常の人間が巨大なローラーに轢かれたら単なる赤い染みになるのだけれど、けれど今ローラーに巻き込まれたのは通常の人間では決してなく、そして此処はギャグ漫画の世界でもないのだ。
 仮に下が氷でなくもっと別の何かだったら、結果はまるで違ったかもしれない。
 エリューションの巨体とリベリスタの質量差は言うまでもないが、しかしリベリスタの身体は地である氷よりもずっと頑丈だったのだ。
 焔ととら、2人のリベリスタは運命を対価に押し潰される事を拒否しながら、氷の大地に打ち込まれた釘の様に突き刺さる。
 アクシデントは其ればかりでは無く、更には振るわれた尾びれに巻き込まれた夏栖斗が吹き飛んだ。
 けれどそれでもリベリスタ達の優位は揺るがない。氷に覆われようとも、傷を負っても、アリステアの癒しが治す。
 とらのインスタントチャージの存在がリベリスタ達に息切れを起こさせない。
 そしてついには、背の上で氷海の災厄に呪いを注ぎ込んでいた魅零が、冷気の噴出孔の石化に成功した。
 焔の、夏栖斗の、敵を貫通する武技が奥深くへと突き刺さり、巨大なエリューションの体力を抉り取っていく。
 単調な作業になりつつあっても、まおは只管集中力を切らさずに張り付き、クジラの不吉を予告する。

 戦闘の時間は非常に長時間に及んだが、だが其れでもゆっくりと体力を削り切られたシロナガスクジラが、ついには動きを止め、ただ僅かにのたうつばかりとなる。
 そしてトドメの一撃に、この世界で尤も寒い氷の大陸に、大きな咆哮が轟いた。


 迎えの船に乗り込めば、人の作り出した温かさが彼等を包む。
 とらは鯨肉でベーコンを作って持ち帰ることを望んだが、いやあんな大きいの切り分けても到底船や飛行機に積めないから。
 それに例え持ち運べたとしても、割りと世間的な問題も立ちはだかる。
 少量だけをこっそり持ち帰ろうにも、分厚い脂肪を切り裂いて食せる肉に辿り着くには多大な労力が必要となってしまう。
 このレベルの巨大な肉の塊に歯が立ちそうな刃物は、恐らく魅零の大業物くらいだろう。
 そして割りと切実な願いだが、寒いから一刻も早く帰りたいのだ。
 無理にリベリスタ達が処理せずとも、それには専門の人員が派遣される。
 
 故に土産は忘れた頃に。 
 日本に帰り、次の任務に勤しむか、或いはつかの間の休日を楽しむ彼等其々に、切り分けられた鯨の肉が届けられるだろう。
 調査が終わり、処理が終わり、残された肉の更に一部が、誰もが顔を顰める極地で戦ってくれたリベリスタ達への、ほんの僅かばかりの心遣いとして。
 例え冬が寒くても、日本のそれは極地に比べれば大分マシで、熱い風呂があり、コンビニでは暖かな肉まんも売っている。そして他人を思いやる優しさと余裕が存在するから。
 海外へと離れてみれば思い知る。彼等の守るこの国は、とても素敵な地であると。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様です。
 僕は南極には行った事はないですし、絶対行きたくないですが、きっとすげえ寒いんだろうと思います。
 皆さん物好きですよね。
 お疲れ様でした。南極に比べたらマシでしょうけど、日本も正直クソ寒いよ。
 風邪とかお召しになりませんよう。
 では、ありがとうございました。