●『リベリスタ』 剣を持て、槍を持て、銃を持て、杖を持て。 腕を振れ、神秘を振れ。 仇名す者を捕えろ。刃向う者の息の根を止めろ。 正義の鉄槌を下せ。 奴らは『敵』だ。 奴らは『悪』だ。 ●ブリーフィング 「フィクサードが集団で生活している『拠点』を見つけた」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の報告がリベリスタ達に告げられた。 「元々一般市民が生活していた山間の村を襲って乗っ取り、そこで自給自足にも近い形で生活しているようね。中には女性、子供のフィクサードまで居るようだから、かなりの規模みたい」 「ちょっと待った」 リベリスタが声を上げる。イヴは無言でそれを促した。 「女子供って、それは、家族みたいなもんが存在しているってことか? それとも、拉致されてフィクサードを強要されているのか?」 「少なくとも前者は一定数存在しているようね。後者は正直なところ良く分かっていない」 イヴの返答は質問者の望ましくない答えだった。リベリスタは顔を顰める。 「捕縛しろってことか」 「可能ならば、ね」 否定的なイヴの目が、リベリスタには気になった。 「この集団性のフィクサードを結びつけているのは信仰。彼らは一つの神秘を信奉するフィクサード集団という特異性を有している。勿論、こちらの力を見せつけることで捕縛に応じる者も僅かに居るでしょうけど、殆どのフィクサードはそれに応じないでしょう。そういう『信仰』よ」 自分たちの生活の為には村民への虐殺をも厭わない信仰。 不信仰には死を。 「けど、それって」 「最後まで抵抗する者は殺すしかないし、動けなくなるまでの重傷を負わすしかない。相手が女性であろうと、子供であろうと」 いや、むしろ、女性や子供のフィクサードこそ気を付けるべきなのだ。敵はそこに勝機を見出す。村を乗っ取った時と同じように。 「逃走を許せば彼らの復讐心に火をつける。誰一人逃してはならない」 そのイヴの言葉に、けれど、リベリスタは否定的な意見をあげる。 「だからと言って、子供まで手に掛けるというのは受け入れられない」 「あのね」 諭すような言葉。思い出させるような言葉。 「貴方達だって、同じだったでしょう? 家族を殺されて、愛する者を殺されて、そうして『リベリスタ』になったのでしょう? そうして『運命』と『力』を得た者が少なからぬ数で存在するでしょう?」 思い出せ。 「その逆の事が起きることを、貴方達は忘れこもうとしている。それだけの想いで、強力な『フィクサード』となる者たちの事に、蓋をしようとしている」 目の前で恋人を斬られてリベリスタになる者が居るのなら。 目の前で親を焼かれてフィクサードになる者が居てもおかしくない。 「私の目の前に居る貴方達『リベリスタ』はきっと正義を貫くでしょう。立派だわ。でもそれは『きっと別の正義を貫くフィクサードの存在』を逆説的に肯定するでしょう。そのことから目を背けないで欲しい」 「……」 「私には、分かる。このフィクサード達の中から、強力なフィクサードが誕生する。視えないけれど、分かる」 リベリスタには今すぐ出来得る論理的反論を持ち合わせていなかった。胸の奥が燻るけれど、それを理性的に説明することは出来なかった。 「貫くことが出来た時、それが正義となる。正義は相対的存在では無く、絶対的存在だから」 貫けなければそれは。 「貴方達は『リベリスタ』よ」 ―――人は異郷に生れ落ちる。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:いかるが | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年11月28日(木)23:15 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●始まり。 ぼうと炎が上がった。蛍のように舞った火の粉が昏い空を彩った。 少年はその様子を見て、美しい、と感じた。ひっそりと生きてきたこの狭い世界の中で、花が咲いた様だった。 そこあるのは二人と二体。 横には腹部に大きな穴を空けた父親と、首の飛んだ母親が転がっている。これで二体。 少年と、もう一人。 にいと歪んだ唇が妖しく浮かんだ。 よくできました。 鋏のようにその二つの刀身が心地よい抵抗を感じて、また一輪の花が咲いた。 そこにあるのは一人と三体。 嗤っているのは、正しくリベリスタ。 ● リベリスタ達の遊撃が始まってすぐに、村の各地で声が上がった。それは雄たけびであり、罵りであり、悲鳴であった。 丁度直径を成す円周上の二点。ぐるりと時計回りにその集落を覆っていく六名のリベリスタ。 『リコール』ヘルマン・バルシュミーデ(BNE000166)、『断罪狂』宵咲 灯璃(BNE004317)、『ナハトリッター』閑古鳥 黒羽(BNE004518)の班、そして『告死の蝶』斬風 糾華(BNE000390)、『生還者』酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)、『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)の班がその遊撃を担当している。裏側にある山へと続いた獣道には、『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)が罠を張って、目を凝らしていた。 それは全て計画された襲撃だった。綿密な連携の元の計算された狩りの時間。 雷慈慟がその運搬車を一軒家に突っ込ませ、燃料部を正確に打ち抜いた時、轟音が轟いた。次いで、大きな火柱があがった。 周囲二、三軒の家々から、動転した様子の男性が現れ、リベリスタ達の姿を見た。異様な出で立ちは一瞬の内に彼らが『異郷』の者であることを、フィクサードに理解させた。 幼子を抱いた女の前に男が立ったのは、フィクサードとしてというよりは父親としての本能であったのだろう、彼の咄嗟の動きは、結果として何の意味も持たなかった。 連続的な機械的リズムが乾いて響き、次には、全員が地面にのた打ち回った。 『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)による正門への集中攻撃。それがこの作戦の開始合図だった。 呻き声をあげる彼らの前に、無表情なメイドが立った。 「貴方方を気の毒に思う気持ちはあるのですがね」 少なくとも『私は』投降を受け付けますよ。 モニカの言葉を受けて、男の眼が憎しみを語り、女の眼が絶望を語る。幼子の眼は、訪れ得ぬ未来を幻視した。 「そうですか」 一体何が貴方達を駆り立てるのか、知ったこっちゃありませんが、それならば仕方ないですね。 がちゃりとその火器が再び構えられた。 「良くも悪くも、私は……ただの『メイド』ですよ」 仕え、依存し、仕事をする。ただそれだけだった。 三名の体がそうしてただの三体の体になると、周囲からフィクサードが集まってきた。 「こちらも命懸けの仕事ですから」 その白銀の眼が無意識のうちに妖しく光った。 「終わるまで意地でも動きませんよ」 時刻はまだ明け方。本来ならまだ帳の中にあるその集落は、けれど良好な見渡し。 小さな悲鳴がまるでδ関数のように刹那的な発散を見せ、すぐに消えた。 鮮やかに舞うその蝶のモチーフが若い男の首を刈り取った。 男のその最後を認めてもなお、二人のフィクサードが彼女に刃向った。それが無謀なことだと彼らが理解できていたのか。きっとそんな正常な思考は、この異常な状況ではむしろ異端であろう。 咆哮しながら剣を振るい、予定調和な結末を、だけれどその調和の外に生贄するため、糾華を襲った。 稚拙な攻撃だった。一般人相手ならきっとそれで満足だっただろう。曲りなりにも運命に愛されたその力は、そんな相手となら大いに蹂躙を見せただろう。 気づけば二人は鮮血をあげて地面に沈んでいた。その死に顔はいっそ美しい。苦しみとは無縁の表情。 糾華がふと視線を上げると若い娘が居た。その手に包丁を握っているが、震えている。涙を流し、こちらを見ていた。 「……」 糾華は無言のまま彼女に近づいて行った。誰かに助けを請う悲鳴が聞こえた。その男の名。 若い娘だろうと、彼女と先ほど倒れた男がどういう関係だろうとも、こいつらは村を乗っ取ったフィクサード集団。無害の人々を殺戮した、その張本人。 「覚悟しなさい」 娘が振るった包丁はいとも簡単に弾かれた。悲鳴の音階が一際高くなった。 「貴方達に齎される救いなんて、最早存在しない」 娘が力なく倒れた。今度は汚い死に顔だった。最後まで恐怖に打ちひしがれた凶相だった 糾華は静かに周囲を見渡した。他のリベリスタの攻撃も始まっている。 「これで良いのよね」 正しいことをしている筈なのに。 「……痛いわ」 刃から血が滴った。 これだけ見たら、自分達こそ……。 続きは考えなかった。そこには何の意味も持ち得なかったから。 雷慈慟が放つ思考の奔流が、質量を持ってその家屋を爆破した。そうして次々と現存する家屋に火を放つ。 中から少年が飛び出してきた。年の頃で言えば中学生から高校生。大人に成りきれていないその顔が悲愴な表情で一杯だった。 「おい」 雷慈慟の声にびくっと肩を震わせた少年は、すぐに構えた。 「抵抗の意志がなければ、投降してくれ」 少年の肩はずっと揺れていた。しかし、その構えが解かれることは無かった。 (―――もし、幼き我が手を引いた相手が) 「この狭い集落で、何を見、何を聞き、何を学んだかは知らない」 これは猶予だ。自分が話し終えた時、それでもこの少年が己を縛る信仰から脱却出来ないのであれば。 「狭い世界の中で、今我々を『フィクサード』と呼ぶのならば、まあそれも良いだろう」 選んで良い。その機会を与えられるのは、今、この時だけ。 「二度までなら騙されても構わない」 そうしたら、自分は。 「……三度目は、無い」 この少年を、殺さなければならない。 (果たして、どう成っていたかな―――) 覚悟はしていた筈だった。 「全て斃せばそれで終いだ」 黒羽から伸びる鋼糸が人々を貫いていく。 「……後顧の憂いなど、潰しておくに越したことはない」 一人、二人。 やっていることは通常業務と何ら差異は無い。対象が人の形をして、人の声を発しているだけで、彼らは虐殺を平気で行った残忍なフィクサードであり、あるいは、エリューションビーストを破壊するという行為とも、違いは無い。本質的な部分は何時だって一緒で、だから、その痛みは『今回』だから、ということではなくて、本来『常に』感じていけないといけない痛みの筈だった。黒羽にとっては、そのことに今まで気づいていない、あるいは、気づかぬ振りをしてきた自分を認めた。 (これは誰かがやらなくてはいけない事だ) 三人、四人。 黒羽の視界に、飛行し逃走しようとしている女の姿が入った。 投降と逃走は、全く異なる意味合いを孕む。 それが紛れも無く逃走であるのなら。 黒羽が駆ける。その背に、一言だけ掛ける。 「投降か?」 女は答えなかった。 ただ一人も逃さないように。 ―――五人。 「私は……」 正しいことを、しているんだよな? ● 男が一人、盛大に顔から地面へと突っ込んだ。 何が起きているのかを理解するのに時間が掛かった。 「よお」 倒れた男の頭の上に、ブレスが立った。 「まあ、俺らにしては珍しく汚れたオーダーなんだが……」 男の足は絡まったワイヤーが邪魔をして自由に動かない。しかし、その腕を腰にやると、その拳銃を取り出して、銃口をブレスへと向けた。 「……ま、非武装の奴等を殲滅ってのよりかはましか」 禍々しいその銃剣が吠えた。拳銃を吹き飛ばし、男の頭を正確に打ち抜いた。 周囲の木々の中、様々な種類の叫び声がこだました。次第に遊撃班の攻撃を逃れたフィクサード達が、この森へと逃げ込んできていた。我先にと先を急ぐ彼らには、ブレスの設置した巧妙な仕掛けを見抜く余裕は無かった。 数多の戦場で生きてきた彼らしい戦い振りだった。そこには綺麗も汚いも無かった。殲滅作戦を全うするための最善の術策。だからきっと、フィクサード達に仮に余裕があったとしても、その罠を見破ることは容易ではなかっただろう。 俺も、生粋の『リベリスタ』とは違うもんでな。 争いの中に身を置いてきた彼は多くのモノを失って、代償に多くのモノを得た。 彼方に見える集落からは、赤々と明るい光が漏れていた。 ● それは異質な炎だった。 火をつけたことに由来するものとは全く性質を異にするその業火。 流麗に振るわれた細く、しなやかな腕に従うように、残像だった。軌跡を描いて、蠢く。 煌めいたその姿は晦冥に佇む美しき鬼の様だった。 抵抗する者は、悉くその炎の波に絡め取られていった。例外なく。 投降する意志のある者は―――。 悲鳴が残響する。焼かれる最後は、この上ない苦痛だ。 「それでもなお、信仰に固執するの?」 一歩進んで、ごうとその火の粉が散っていく。 一歩進んで、ごうとその家が焼けていく。 (私は別に言い訳はしないよ) 旭はその顔を見た。 ……略奪された村人達の為にだなんて欺瞞も言わないよ。 殺すことも。 殺されることも。 ―――一瞬、フラッシュバックして。 全て受け入れているから。 一歩進んで、悲鳴が上がっていく。 一歩進んで、夜は明けていく。 絶対に、大切なことを間違えたくないから。 「……悪魔め!」 突然老人が叫んだ。今際の叫びだった。もうそれが彼なのか彼女なのか、性別は分からなかった。 嗄れた薄気味悪いその声はすぐに消えた。憎しみは振動となり、その振動も焼却された。 だから、鬼でも悪魔でも、構わない。 大きな破砕音が響いて、その扉が吹き飛んだ。 「……誰もいない」 人の気配が無い。既に逃げてしまっているのか。 そうであるのなら火をつけよう。彼らが動揺し、逃げ場を失うように。 次の家。また扉が吹き飛ぶ。 いた。 かつかつと廊下を進んでいく。リビング。再度蹴り。 抱き合うようにして震える二人の少年少女。兄妹なのかな。 かつかつとリビングを進んでいく。キッチン。悲鳴をあげた兄妹。 「おとうさんとおかあさんは?」 ヘルマンが優しい声で訊ねた。けれど兄妹の顔は変わらなかった。悲哀と憎悪が同居したその眼。 「死んだ」 男の子が答えた。外を指差す。 咄嗟に、女の子の体が駆けた。ヘルマンに向かって。手には刃物。 長いリーチを有するヘルマンの蹴りの前に、女の子の体躯は呆気なく宙に舞い上がった。彼に触れることも叶わずに。 「本当に『死んだ』のですか?」 ヘルマンの声色は変わらない。横で苦しげに倒れている妹を見て、男の子はがくがくと首を縦に振った。 この兄妹は正しくフィクサードだった。勇敢と言って良いだろう。最後まで、リベリスタと戦った。 しかし、その想いが彼らを殺す。 「わかりました」 今度は違った。蹴りの威力も、速度も、部位も……、兄妹はそのまま息絶えた。 「あなたたちだけ残してしまったら、ほかにわたくしに殺されたひとたちに、不公平でしょう」 ヘルマンはそのままその家を出た。 次の家。再度、扉が吹き飛ぶ。 ……きもちわるい。 込み上げる嘔吐感を無理やり飲みこんだ。きっとそこに吐くべきものなど何もない。 ……こわい。 涙は出なかった。顔の筋肉が、妙に硬直する感じがした。 自分は今、どんな顔をしているのだろう? 「わたくしは、リベリスタ」 最後まで悪役じゃなきゃ、いけない。 キミ達がフィクサードだから。 そうじゃなかったら、別の選択肢もきっとあった。 広場を逃げ惑う全てのフィクサードを切り刻んだ。 投降もせず、集落の外へ逃げようとするその背中を、灯璃は切り刻んだ。 それは形をしているだけだ。躊躇いは無かった。 フィクサードである以上。 何を請おうと、差し出そうと、斬られても文句は言えない。 まるで天使のように生えた純白の翼が、舞った。 ● 雷慈慟がその家を見つけた。 集落の中は、すでに混乱のピークを過ぎている。多くのフィクサードが投降を許されず、リベリスタに抵抗し、悉く散っていった。 正門、そして裏道へと逃げた者も同様の結末を辿った。封鎖され、モニカの凶弾が舞う正門からフィクサード達が引き上げるのは早く、裏道へと、生き残った少ない者たちが逃げ込み、ブレスの手に掛かった。 奇妙な気配とは、言い得て妙で、むしろその家は落ち着きすぎていた。 雷慈慟が扉を破壊しその家に侵入すると、和室で一人の男が座っていた。一目見て、彼はこれが里崎だと悟った。 「何の真似だね」 雷慈慟のその問いに里崎は頷いた。 里崎は白髪が多く、きっと実際の年齢と見た目の年齢に大きな誤差があった。 何の真似だね、とは、何故このようなことをしたのか、という意味に近かった。 「尤もな質問だ」 思っていたよりも冷静な声色だった。 「一向一揆というのはね。昔から嫌われていたんだ、武士にはね」 「何の話だ?」 里崎は答えなかった。 「戦う相手は訓練もされていない、錆びついた鍬を手にした死人だったからだ。死人というのは、死んで救われたいという人間だ」 そこで雷慈慟にも里崎の言いたいことが理解できた。 「君達にも嫌な殺しをさせてしまったね」 「全くだ」 間髪入れずに返した。 「傷付いた人間が大勢居る」 そろそろ潮時だった、と里崎は呟いた。 「お前一人の所為では無いだろうが、お前の先導した行いで、自分達はこの村を壊滅させなければならなくなった」 「丁度私たちが村を乗っ取った時と同じように、かね」 二人の視線が交差する。 「いや、やめよう」 里崎は視線を逸らした。 「山を登ったというだけなんだ」 「山?」 「山を登る、という言葉には、必然的に、山を降りる、という行為も含まれているんだ」 私たちは降りねばならなかったんだ。 「君達もいずれ思うだろう」 里崎が立ち上がった。 「運命に愛されて得たこの力。それを振るって、どこに行くのかと。……何を成さんとするのか、と」 彼は完全な死人だった。彼の顔に、恐怖は無い。 「どんな事情があろうと」 その書が揺れた。 「お前は殺さねばならない」 ● 「仕事というのは」 不意にモニカが呟いた。 「基本的に嫌なものです。楽しい仕事だなんていうのは幻想であって、期待するだけ無駄です」 モニカの目の前には、捕縛したフィクサードが集められている。 戦いの収束自体は呆気なかった。フィクサード達に統率は無く、戦略も無かった。一方的な戦いだった。リベリスタ側は軽傷を帯びた者が居る程度。話にならなかった。 円状に形成された集落の内部は、その殆どがリベリスタらによって調べ尽くされた。もっとも、家屋の類は炎上し、残っていなかったのだから、辺りを眺めれば、それが全てだった。 八体百という数の問題で、しかし、全てのフィクサードを防ぐというのは難しかった。周辺の森に逃げ込み、罠を逃れたフィクサードも何名か居た。灯璃と糾華はブレスの潜んでいた森にまで遊撃の手を広め、今でもその森の中からたまに声が響いてきた。 「でもまあ、期待してしまいたくなるのが人間ってやつでもあるんですがね」 ● 死体の数を数えていった。 嫌な作業だった。 投降し、捕縛したフィクサードの数、五名。 死体の数、凡そ九十体。 ●終わり。 各々が残った道具を使って、火をつけていった。 周囲を歩くように、旭がさらに強い炎で火柱を立てていった。 火は清浄なるモノの化身とも言う。確かにその炎は、全てを焼き尽くして行った。 男も、女も、子供も、老人も、かつてそうであったその体を。 リベリスタ達はそれを眺めていた。 その紅蓮が小さくなっていって、全てが灰になるまで眺めていた。 「結局すべては単なる『有機物』なんだな」 黒羽が呟いた。誰も答えなかった。 灯璃だけが満足そうに空を眺めた。 やがて全ての火が消えた。 森からは鳥の鳴き声が聞こえてきた。 その全てが、闇に葬られた。 「心が」 体が、色んな所が痛い。 「……馬鹿ね」 灯璃が見つめる先を糾華も視た。 一瞬眩しくて目を瞑る。 美しく輝く陽の光が、山の上から昇ってきていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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