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ヒーローには『おやくそく』がある

●ヒーローごっこあるある
 放課後の公園に、宿題を早々に済ませた小学生達が集まった。
「あつまったな。何して遊ぶ?」
 蓮の一言に真っ先に翔太が手を挙げた。
「よーし、ヒーローごっこやろうぜ! 俺レッドな!」
「うし、じゃー俺ブルゥ~」
 蓮が続く。
「あっ、俺、グリーンな!」
 と陸が言い、
「僕はブラック」
 翼がしれっと最後の男性枠を取る。
「ピンク余ったから、健人ピンクな!」
 ちょっとトロくて、発言が遅れ、一人残ってしまった健人は、翔太の言葉に必死で首を横に振った。
「やっやだよ。僕、女の子じゃないもん」
「ピンク嫌ならお前、敵な! ハイパーキーック! ドゴオッ」
「くらえ、スーパーパンチ! デュクシッ」
 蓮に蹴られ、陸に殴られ、健人は泣きそうな声をあげる。
「いたっいたいっ、やだ、敵やだよー。僕、皆に殴られるじゃんか……」
「ピンクも嫌で、敵も嫌ならやる役ねーじゃん」
「わがまま言うなよ。さめるだろ」
 泣きそうな健人は、他の面々に次々と非難され、とうとう泣いてしまった。
「うわーーん」
「あーあー、泣いちゃったよ……」
「お前がさっさと役決めないのがいけないんだろうが」
「だってぇええ……うえええん」
 泣きじゃくる健人を囲んで、一同が白けていると、不意に男の笑い声が聞こえた。
 ハッハッハ、ハッハッハッハッハ……!!
「なっ、なんだよ!?」
 声の主は、ジャングルジムの頂点に立っていた。
「昨今、公園に集っても携帯ゲーム機やカードゲームをする子が多い中、ヒーローごっことは感心だな」
 黒いマントに黒いシルクハット、燕尾服姿の男は、金属質の骸骨が頭だった。
 骸骨顔の男は、紅玉がついたステッキを握っている。
「誰だよ、オッサン!!」
 気丈に翔太が問うと、男はバサッとマントを翻して笑った。なお、マントの裏地は真紅である。
「ヌハハハ、私の名前はミスター……ワルリック!! 悪の幹部だ」
「悪の幹部?」
「悪役に困っているなら、私がなってやろう! ソレッ」
 地面に転がっていた、誰かの忘れ物であろうサイのソフビ人形に、ミスター・ワルリックはベルトのバックルから光を浴びせる。
 するとソフビ人形はムクムク大きくなり、大人の男くらいの大きさになると、小学生を襲いだした!
「さあ、行け! 怪人サイノス! ほれ、まだまだ行くぞー、それっ」
 ベルトのバックルから、ゾロゾロと人間サイズの雑魚戦闘員が現れる。
「イェーッ!」
「イェーッ!」
 ヒーローでもなんでもない小学生達は、逃げ惑う間もなく怪人サイノスに殺されてしまうのであった。

●ヒーローは大人にまかせとけ
「変身ヒーローものは、男児向けは大人が変身するが、女児向けは子供が変身することが多いのは何故だろうな」
 まぁそんなことはおいといて、と『黄昏識る咎人』瀬良 闇璃(nBNE000242)は、悪の幹部と名乗るエリューションが巻き起こす騒動について上記のように説明した。
「ミスター・ワルリックと名乗る奴は、特撮や戦闘少女モノを好む人々の、ヒーローに対する悪の幹部という『概念』だ。つまり、E・フォースなわけだな。そしてセオリー通り、公園に落ちていた人形を怪人化するだけでなく、戦闘員イェーッを召喚する」
 怪人はE・ゴーレム、イェーッはE・フォースだ。『おやくそく』通り、イェーッは数が多いが非常に弱い。いわゆる『やられ役』である。
「なお、怪人を倒した後も油断するな。怪人は巨大化するぞ」
 これもおやくそくだが、怪人が倒されると、怪人は死力を振り絞って巨大化する。
「あいにく、こっちには巨大合体ロボットはいないんだが……、まぁ何とかなるだろう。的がデカいから良く当たるし、怪人が巨大化するとイェーッは消滅する」
 つまり怪人を倒せば、イェーッは消えるのだ。
「悪の幹部の概念だけあって、いわゆる『おやくそく』には忠実みたいだな。奴が現れたタイミングで、こちらもヒーローらしく乱入すれば、小学生には手を出さないだろう」
 どんなヒーローにするかはお前たちの自由だ、と闇璃は言い残し、出て行った。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:あき缶  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年11月10日(日)22:24
 お世話になっております。あき缶でございます。
 嗚呼、日曜の朝。そんな感じの依頼です。

●成功条件:小学生の無事とエリューションを倒す

●敵
 怪人サイノス:ソフビ人形のE・ゴーレム。二足歩行のサイ。
  体当たり  物近貫 追:ノックバック
  メイス攻撃 物近単 異:圧倒

 巨大怪人サイノス(3mくらい):倒れたら巨大化するのは『おやくそく』
  フットプレス物近範 異:崩壊
  メイス攻撃 物遠範 異:圧倒・ショック

 イェーッ:雑魚戦闘員のE・フォース30体。サイノスが巨大化すると消滅
  徒手空拳  物近単 追:連

 ミスター・ワルリック:メタルフレームのマグメイガス(「面接着」持ち)のようなE・フォース
  『悪の幹部』らしく悪の組織の『おやくそく』にこだわる

●場所:公園
 団地についているような小さな公園
 遊具は公園を囲むように並んでいます
  スプリング遊具(うま・ばいく・きょうりゅう)
  ジャングルジム
  滑り台
  ブランコ

●小学生
 7歳の5人グループ(翔太、蓮、陸、健人、翼)

 それでは思いっきりヒーローごっこしてください(戦隊物でなくて良し)。
 ヒーローとはいかなるものか……その答えは君の心の中にある!
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
マグメイガス
雲野 杏(BNE000582)
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
クリミナルスタア
禍原 福松(BNE003517)
覇界闘士
コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)
ソードミラージュ
中山 真咲(BNE004687)
ダークナイト
シャルン・S・ホルスト(BNE004798)
インヤンマスター
明覚 すず(BNE004811)

●『おやくそく1』名乗りを上げている時は攻撃しない
 ハッハッハ、ハッハッハッハッハ……!
 夜より黒いシルクハット、真っ赤な血潮の色を秘めた闇のマントを翻し、髑髏の男ミスター・ワルリックが公園に現れた。
「なっ、なんだよ!?」
 少年たちが驚き、うろたえる中、ジャングルジムの頂点で、夜色の燕尾服の悪は言う。
「昨今、公園に集っても携帯ゲーム機やカードゲームをする子が多い中、ヒーローごっことは感心だな」
 少年の誰何に、ワルリックが名乗る。
「ヌハハハ、私の名前はミスター……ワルリック!! 悪の幹部だ」
「悪の幹部?」
「悪役に困っているなら、私がなってやろう! ソレッ」
 ワルリックのベルトから光がほとばしり、ソフビ人形がムクムクと怪人へ変身する。
「さあ、行け!」
 とワルリックが怪人サイノスをけしかけようとした。その瞬間であった。
「そこまでだ! 怪人共!」
 凛とした青年の声が公園に響く。
「ぬ、何奴?!」
 ブルルルンッ。唸るは排気量900ccのエンジン。大型バイク『アースチェイサーDPC』がサイノスと小学生の間に割り込む。
 バイクを駆るは『仮面サイガー』祭雅・疾風(BNE001656)。もともと特撮ヒーロー番組のスーツアクターとして働いているため、タイミングはバッチリである。
 次いで洗われるは黒。鋼鉄の黒だ。
 マフラー靡かせ、滑り台を背景に、『きょうけん』コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)は尖った歯をむき出してニヤリと笑う。
「弱者を穿つ鋼鉄の牙、リベレンジャーブラック! 敵は殺す! 強い敵はブチ殺すッ!」
 コヨーテの横へとタタタタッと走り寄るは、愛らしい少年? 少女? まぁどっちでもいいや、カワイイから。『アクスミラージュ』中山 真咲(BNE004687)である。
「桃色に輝く正義の刃、リベレンジャーピンク!」
 そして、二つにくくった長い金髪を風になびかせて、『野良リスタ』シャルン・S・ホルスト(BNE004798)が滑り台のてっぺんに立った。
「闇に光るは正義の炎、リベンジャーレッド!」
 たぁっとばかりに、滑り台の上から飛び降りる。
「わあっ!」
 思わず小学生たちが声を上げるも、シャルンは一回転して、身軽に着地した。
 幻視で隠した彼の翼により、まるで猫のように音のない着地を叶えている。
「強くて優しくて、何より不屈! それが俺たち革醒戦隊リベレン……」
 とシャルンがまとめようとした時、
「おいおい、俺をぬかすんじゃねえや……」
 かっこいい感じで声がした。
「その声は!」
 とシャルンが声の方へと向き直る。
 白いスーツの少年が、白いハットのつばからギラリと三白眼を光らせて、公園の入口にある柵に寄りかかっていた。
 咥えていたキャンディーを口から離し、『ラック・アンラック』禍原 福松(BNE003517)は笑う。
「俺にも啖呵くらい切らせろや」
 言うなり、背を預けていた柵から身を離し、つかつかとシャルンたちの横へと歩み寄る。
 どこからともなく渋さが感じられる西部劇っぽい音楽が聞こえてきた。
 音楽は次第に盛り上がり、熱さを帯びてくる。
 そして最高潮に達した時、シュバッ。キレのいい動きで福松は腕を伸ばした。
「白き闇が悪を裂く、リベレンジャー……ホワイト!!」
「革醒戦隊リベレンジャー!」
 四人の名乗りが見事にハモった。くぅーっとコヨーテが嬉しそうに震えている。
「見せてやるぜ、強くてカッコよくて絶対負けねェ、ヒーローってヤツをなッ! ブラックメタルアーム!」
 幻視で隠していたコヨーテの機械部分たる両腕が顕になる。
「すげー! ライダーと戦隊だぜ!
 盛り上がる少年たち。いつの間にやら公園の外の柵から観戦中。
「今日はそれだけやないで!」
 という女性の声が。
「闇すら希望に変える正義の黒戦士! アーキュアブラック!」
「アーキュアグリーン……。ダブルプリティーよ」
 ひらひらな黒と緑という、地味な、もとい大人な色の女性が二人現れる。露出が少ないのが救いである。
 なお、アーキュアグリーンこと『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)はつい先程まで、小学生を避難誘導していた。
「あ、避難させたおばちゃんも戦うんだ……。おばちゃんたちもがんばれー」
 小学生は、あの魔女っ娘は大人すぎてきっついなぁと思っているが、さすがに後が怖くて口には出さない。
「お、おばちゃん……?!」
 小学生のとんでもない呼称に『』明覚 すず(御年八十一)は目を剥く。すずは、後期高齢者と呼ばれる年齢だが、見た目は二十代でスタイル抜群♪ 美人でカワイイドジっ子なんだぞ☆
 そんな彼女にとって『年を考えろよ』に準ずる発言は、処刑対象だが、小学生を害すると依頼失敗なので、必死に我慢する。だって、大人だもん。
 だが仕方ない。小学生にとって二十歳以上はババアである。まれにJKだってオバサン扱いされる。容赦無い現実である。
「あ、じゃあ、おじさんも……」
 と、健人は自分たちを超高速で公園の外部、杏が守っていた場所へと届けた青毛の青年を、涙の残る目で見上げた。
 二十六歳だ。立派におじさんであろう。そこに突っ込むと話がこじれるので華麗にスルーし、『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)は、彼の頭を優しく撫でると頷いた。
「ああ。ヒーローは、任せろ」
 鷲祐は、悠然と公園内部へ歩いていく。白いコートがたなびく。
 彼は、竜を模した黄金の鎧を纏う騎士。しかし今は諸事情により変身できない。
 だが、変身できないから何だというのだ。そんなことで彼の心に燃え盛る正義の炎は、アクを打ち倒すという意思は、消えやしない。
 生身でも格闘の術は熟知している。だから、鷲祐は進むのだ。だから、鷲祐は悪と戦うのだ。彼の歩みを止める者などいやしない……。
 ドドーン。
 見える人には見える。歩いていく彼のバックから『牙龍――GA RO N――』というタイトルがせり上がっていくのが。
「もう逃さんぞ、ミスター・ワルリック!」
 ギンッと眼鏡の奥から銀の目で睨みつけ、鷲祐はトリの見栄を切った。
「ふははははは、面白い! やはり悪にはヒーローがつきものだ。宿敵あってこその悪! 来るがいい、正義とやらを見せてみよ!」
 ミスター・ワルリックが笑う。
「望む……ところだ」
 眼鏡のブリッジを押し上げ、鷲祐は不敵に笑う。
「恐怖の闇を切り裂く一陣の風、仮面サイガー、変身ッ!」
 疾風がアクセスファンタズムからヒーロースーツを一瞬にして身にまとう。
 歓声が小学生からあがった。
「いくぞっ」
 そして戦闘員イェーッとリベリスタが激突する――。

●『おやくそく2』戦闘員はやられ役
 三十人もいるイェーッは、八人程度のリベリスタに殺到する。
 拳を振り上げ徒手空拳。
 それをさばき、倍以上の手数で鷲祐が手刀と蹴撃を返す。
「力いっぱい、楽しんでいくよ!」
 真咲は嬉しげに気合を入れ、斧を構えると敵陣へ飛び込んだ。
「力なき子供達を襲おうとするその所業、断じて許せない! お前達の悪、天に代わって成敗するよ!」
 イェーッを斧でメッタ斬り。華麗な剣戟に魅了され、同士討ちも始まる。
 並走するコヨーテは、炎の拳で戦闘員をぶっ飛ばす。
「へへッ、来いよォ、喰らい尽くしてやるッ!」
「バウンティショット……スーパースペシャル!!」
 福松の弾丸が戦闘員たちを次々ほふる。
 シャルンの槍がうなる。ドイツの騎士の末裔としての槍さばきは見事なものだ。
「悪を穿つ恵みの雨!」
 すずの氷雨が敵を打つ。
 眩しい電気で象られた激しく羽ばたく杏の翼が、竜巻をイェーッに下す。
「正義の雷を思い知れ!」
 疾風の電撃を纏う体術がイェーッ共を粉砕する。
 数は多いが、所詮は雑魚。怪人を倒せば消えるというのに、リベリスタは律儀に戦闘員を殲滅した。
 流石に三十人倒せば、少しは疲弊するが、
「平和の為にも負ける訳にいかない!」
 と叫ぶ疾風はじめ、全員まだまだやる気である。
 ミスター・ワルリックは歯噛みし、そして叫んだ。
「ぬぐぐ……敵ながらあっぱれ! ゆけ、サイノス! 奴等を蹴散らすのだ!」
 ブモーッと鳴いてサイ人形だった怪人がリベリスタへ向かう。
 突進したサイノスが、シャルンたちリベレンジャーにぶち当たる。
「げほっ」
「うわあっ」
「きゃあっ」
「くっ」
 とぶっ飛ぶ四人のリベレンジャーだが、彼らはアークの戦闘員。これしきでは倒れない。受け身をとって、すばやく体勢を整える。
「まだまだ負けねー!」
 口から血を流しながらもシャルンが叫ぶ。彼の体から漆黒の闇が吹き出して、彼を守るように包み込む。
「だよね、ヒーローだもん!」
 真咲も笑顔だ。大きな斧でサイノスに斬りかかる。
 燃え盛る機械の腕をサイノスのマッチョな胸板にぶち当て、コヨーテも笑う。
「死んでも負けねェ! さっきまで歯ごたえなくってつまんなかったんだよォ! これっくらいでちょうどいいぜェエ!!」
 くるくるとトリガーガードを指に通し、銃を回すと福松はキャンディーを咥え直した。
「やってくれるじゃねえか……」
 タァンッと撃ちぬくサイの腕。
「べ、別に助けたわけやないん! ちょっと敵を倒し足りなかったから貰っただけやん!」
 と言い訳しつつ、すずは符術でシャルンを癒やす。
 杏は呪いの黒い鎌でサイノスを脳天から裂く。
 そしてサイノスの顔面にめり込む、疾風の闘気のこもった渾身の一撃。
 ぶもーっと悲鳴を上げ、サイノスは倒れた。
「やった!」
 真咲が歓声を上げるが、もちろんこれで終わりではないことは、フォーチュナから知らされている。
「油断するな! 怪人は巨大化するぞ!」
 疾風が構えを解かず、サイノスを注視していると、イエーッの死骸を全て吸い込んで、サイノスは三メートルの巨体へと変化した。
「でっけー」
 コヨーテが呟くのを聞いて、満足気な悪の幹部だったが、
「うぬぬ!?」
 と、いきなり素っ頓狂な声を上げた。
 彼の眼前には、鷲祐。
「き、きさま、いつの間に?!」
 金の龍頭を象った手甲をはめ、目を閉じ静かに語る。
「さあな。俺は神速。お前ごときに捉えられるもんじゃない……。俺は、生命が万人のモノたるがために闘う。貴様に、希望の芽を摘み取らせはしないッ!」
 カッと目を見開き、鷲祐は叫びとともに見得を切った。
「さあ、しばらく俺と遊んでもらおうか……」
「言ってくれる!!」
 ワルリックは紅玉光る杖を構えた。虚無の光が鷲祐の心身を蝕む。
「ま、サイノスが死ぬまで逃げやしねえとは思うが、押さえは頼んだぜ、司馬……」
 福松はそれを目の端で捕らえ、口端を上げると、鷲祐には聞こえない音量で呟いた。

●『おやくそく3』怪人を倒したら爆散する
「むしろこれただの大きな的になってるんじゃないの!?」
 すずが印を結んで展開した守護結界をまとった杏は、余裕の笑みを浮かべながら、呪いの鎌を振るい続ける。ずっと飛んでいる杏にとって、巨大化しても三メートルなサイノスは、足の下の存在だ。
「絶対に倒す! 正義は必ず勝つ!」
 黒い瘴気に変えた生命力で敵を呪うことに成功したシャルンが言う。
 しかし、言われるまでもない。
 リベレンジャーをはじめとするリベリスタは、己よりも巨大な敵へと果敢に向かう。
「それじゃあ、ボク達も本気を出していこうか!」
 サイノスより高々と飛び上がり、真咲の斧がギロチンのごとく振り下ろされる。
「暴れてやンよッ!」
 燃える拳と正義の心、コヨーテはどこまでも楽しそうだ。
 サイノスの大きな足が、リベリスタを踏みつける。
 全力で防御し、
「なんのこれしき!」
 と疾風は耐え切る。
 スッと避けた福松は、引き金を引いたまま銃口をサイノスの目に向けた。
「フッ……真っ向から向かうだけが戦いじゃないんだぜ。見ておけよガキ共」
 そして素早く銃を持たぬ方の手で撃鉄を起こした。
 目にも留まらぬあおり撃ち。
 命中力よりも速射性を重視したファニングショットは、数発外れたが、サイノスの目元を貫いた。
 苦鳴をあげ、サイノスがのたうちまわる。
「おぉー、カッケー!」
 蓮や翔太が目を輝かせたのを見て、福松は満足そうに頷いた。
 疾風の弱点を押さえた体術にふらつき、ダブルプリティーのマジカルな攻撃で凍りつき、出血するボロボロのサイノス。
 これはチャンス!
 リベレンジャーは互いに目配せしあうと、まずは福松が撃つ。
「これがボク達リベレンジャーの、正義の一撃だ!」
 真咲の急襲に混乱するサイノスへ、コヨーテの豪腕が唸る。
 ドガアッ。
 三メートルの巨体を震わせる渾身の業炎撃。
 怯むサイノスを見て、コヨーテは叫ぶ。
「今だっッ!」
 頷くはリベレンジャーレッドもといシャルン。
「トドメだぁーっ」
 槍に宿す暗黒の魔が、サイノスを貫いた。
 ドッカーーーン!!!!
 爆散するサイノスをバックに、リベレンジャーは揃ってポーズを決めた。

●『おやくそく4』ヒーローは立つ鳥跡を濁さず
「フッ……ヒーローがおやくそく通り悪に打ち勝ったようだな。お前も同じ道を歩め」
 爆散するサイノスを認め、鷲祐は笑った。
「ほぉ? 為す術なくやられっぱなしの癖に大きな口をたたくものだな……」
 ワルリックが言うのも無理は無い。一人で悪の幹部を相手にしていた鷲祐は、かなり疲弊していた。
 ワルリックの呪いの黒鎖に捕らえられ、流血し、毒が体を巡り、攻撃すらままならない状態だ。
 四連続の激しい魔術に、まるでサンドバックのようにされながらも、鷲祐の目の光は失われない。
「ふっ……なぜ俺達が八人いるか分かるか? それはな、互いに互いを助け合うためだよ……!」
「ええい、うるさい。さっさと死ぬがいい!」
 トドメの毒魔弾が鷲祐に迫った瞬間。
「お待たせしましたね、司馬さん!」
 間に飛び込み、鷲祐を庇う仮面サイガー。
「遅いぞ」
 ふっと笑って鷲祐は、ふらつく。倒れそうな体をコヨーテが支えた。
「まだ立ってろ! 終わってねえぞォ!」
「もち、ろんだ……竜鱗細工を叩きこめ無かったのが、残念だな……」
 すずの符が鷲祐を回復させるが、呪縛状態を解除する力はない。
「やってくれたわね、幹部。幹部がそうホイホイと現場で力を見せ付けるのはお約束と違うから、出直してこいって言うつもりだったけど……。こんなことされて、逃がす訳にはいかないわね」
 杏が鋭くワルリックを睨めつけた。
「ヒーローだから格好いいんじゃなくて、格好いい奴がヒーローなんだ。しゅーすけにーにゃんはヒーローだよ。俺も、負けねー!」
 シャルンが槍を構え、気合を入れる。幻視を解除、彼の翼が衆目にさらされた。
 小学生達が呟く。
「パワーアップフォーム……」
「さあ、本番だ。正々堂々やろうぜ、悪の幹部サンよぉ!」
 福松が黄金の銃口を突きつけて、そしてリベリスタは悪の幹部を取り囲んでフルボッコ。
 七対一だ。鷲祐一人になら、圧倒できたワルリックも、流石に分が悪かった。
「ぐ、ぐうぅう……」
 痛みに呻くエリューションは、逃げようと周囲を見回すも。
「逃しはしない!」
 疾風の腕に装着されたダマスカス鋼製の刀がワルリックを両断する。
「ぎ、ぎやああああー……!」
 断末魔を上げて、消滅する悪の幹部を見届けて、疾風は安堵に息を漏らす。
「……子供の夢は護れましたね」
 アームオフ! と叫んで、コヨーテは幻視を発動させ、生身の人間らしく振る舞う。
 ようやく呪縛状態から自力で逃れた鷲祐は、息を呑んでこちらを見ている少年たちを見つめ、フッと笑った。
「……優しさと意思。……友達を大切にな」
 そして、掻き消えた。
 彼は目にも留まらぬ速度で立ち去っただけだが、一般人の動体視力では消えたようにしか見えなかった。
 小学生たちの間を縫う時、鷲祐は言いおいていく。
「健人。お前は嫌だといった。その気持ちは、とても素晴らしいものだ」
「そして、翔太、蓮、陸、翼。選んだ気持ちの先に、優しさを抱えて歩め」
 と。
 すずや杏はそっと身を隠す。魔法少女は戦闘が終われば、何も言わずに去るものだ。
 疾風は子どもたちに告げる。
「強いからヒーローなんじゃない。誰かの為に起ちあがれるから強くなれるんだ。相手の事を思いやれる心も無ければいけないな」
 そして再びバイクにまたがると、夕日に向かって走り去っていった。
 福松は、ニッと笑いかけ、何も言わず去っていく。白スーツの背に当たる夕日が眩しい。
「んじゃァな、お前ェらも強くなれよッ」
 好物のブラックペッパーを口に放り込み、サムズアップを残してコヨーテも福松の後を追う。
 タタッと彼に走り寄った真咲とシャルンは、コヨーテがブラックペッパーの包装をポケットに入れているのを見て、微笑んだ。
「よい子だねっ」
「ヘッ、よい子が見てッからなッ」 

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お世話になっております、あき缶でございます。
ヒーロー、お疲れ様でした。
仮面ヒーローあり、深夜ヒーローあり、戦隊あり、戦闘魔法少女あり
盛りだくさんなヒーローショーになったと思います。
またのご参加、お待ち申し上げております。