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Erinnerung

●『オモイデ』
 想い出を喰らう魔物が居るらしい。
 その魔物を飼う魔女が居るらしい。

 そんなお伽噺の様なものがこの世界に存在して居るかだなんて生憎分からない。
 魔術を覗く瞳を持たなければ、神秘の世界は遙かに広い。
 神秘追求が趣味かと問われれば無論、それは正解だった。
 人殺しもまさしく神秘だ。生き血を被り、啜り、骨の髄まで愛して病まない。
 病的なまでのその行為だってまさしく『神秘』の追求に他ならないのだから。
「一つ、人間が生きている事はまさしく神秘ではありませんこと?
 二つ、わたくし達がこうして神秘(ちから)を得たことは神秘ではありませんこと?
 三つ、生きる神秘がわたくしに殺される――それって、さらに神秘的ではございませんこと?」
 紡ぎながら女は少女の瞳を覗きこんだ。
 美しく光る切っ先は研ぎ澄まされたナイフだ。余りに手に馴染まない女の武器は少女の首筋をなぞりながら楽しげに微笑んでいる。
「わたくし、『殺人クラブ』のユーリカと申しますわ。如何よしなに。
 ……あら、わたくしが『生きる神秘(あなた)』を殺す時間はどうやら無いようですわね」
 ゆっくりと立ち上がり、女は振り仰ぐ。
 暗い路地裏を照らす街灯が点滅し続ける。明るくなるたびに、異様なまでに赤いルージュが浮かび上がって居た。

 神秘は彼女を狂わせる。
 彼女にとって魔法も魔術も何もない。
 神が与えた『魔法』だというならば、神など殺して見せようと女は微笑んでいる。
 ――これは『魔女狩り』だ。魔女の瞳は神秘を映した事があるだろう。
 神秘など、仮初の正義と平和など、この世界には要らぬ物なのだから――殺しませう?

 妙な色香を纏わせた女が首を傾げて「御機嫌よう」と小さく囁き、リベリスタを見据えている。
 神秘世界では良く聞くアークのリベリスタという名前。
 ユーリカにとっては何とも『不要』な要素で仕方がない。
 ああ、殺さなくっちゃ。神が遣わした正義の使者。殺さなくては、神の望みどおりになってしまうわ。

「ご機嫌よう、皆さま。わたくし、思いますの。生命活動とは何と神秘的か、と。
 生きる事こそが神秘の塊。神様の与えたお許しでしてよ? 素敵、そしてその命を潰す事こそが神への冒涜へ繋がるならばなんと素敵なのでしょう。
 皆さま、わたくしはユーリカ。想い出を下さらない? その素敵な眼、わたくしに下さらないこと?」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:椿しいな  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年10月27日(日)00:42
こんにちは、椿です。

●成功条件
 ユーリカの撃退及び敵性エリューションの討伐

●場所情報
 暗い路地裏であり、点滅し続けるランプが存在して居ます。
 幅は横に4人並べる程度。奥行きがあり、路地裏には幾つもの小さな路地が存在して居ます。
 ユーリカの前には一般人の少女が座り込んでおり、何処かぼんやりとユーリカを見詰めている様です。

●『神秘殺神者』ユーリカ
 フライエンジェ×プロアデプト。やけに赤いルージュの女であり纏うのは喪服の様なドレスです。
 『殺人クラブ』と呼ばれるグループの一員だと言う事のみ判明して居ます。
 何故か神を厭い、神を冒涜し、神秘存在を認めない、断罪するための使徒だと自身を思いこみ、『生きることが神秘』だと定義したうえで殺人を行っています。また、個人的な趣味で殺した人間の瞳を集め、想い出を集積したと考え、その思い出を集め続けて居ます。
 人を殺す為にナイフを持っており『殺害用ナイフ』と名付けられたもので魔的な能力は持っておらず、戦闘にも使用しません。

・アーティファクト『存在価値』:片手銃。翼の紋章が入ったものであり、通常攻撃にノックBを付与します。
・EX:殺人作法B(神遠範/魅了)
・魔術知識、闇の世界所有 ・暗視ゴーグルを装着して居ます

●エリューション・フォース『殺害対象』×6
ユーリカの所有する『殺人クラブ』の一員の証――『殺害用ナイフ』がエリューションを操る能力を与えています。
フェーズ2が2体とフェーズ1が4体の構成で前衛を務めます。
フェーズ1の個体は防御に優れませんが攻撃に長けております(フェーズ進行に寄り防御が其れなりに整えられます)
ユーリカを援護するほか、何れかの1体が増殖性革醒現象を所有しています。
3T経過するごとに周囲存在の生命反応(ユーリカ及びリベリスタ等)に反応し、エリューション・フォースが生み出されます(この増加は増殖性革醒現象を所有するエリューションを撃破することでなくなります)

●『殺人クラブ』
(拙作『brillante』にも登場。シナリオ内に関連はございません)
 その存在は明らかにはなっていませんが、ユーリカが所属しているフィクサード一派です。

どうぞ、よろしくお願いします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
クロスイージス
大御堂 彩花(BNE000609)
プロアデプト
オーウェン・ロザイク(BNE000638)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
ソードミラージュ
カルラ・シュトロゼック(BNE003655)
ソードミラージュ
紅涙・いりす(BNE004136)
マグメイガス
蔵守 さざみ(BNE004240)
マグメイガス
ルクレツィア・クリベリ(BNE004744)


 ついて、消えて。蛍光灯の命はそれほど長くないのだろうか。ルクレツィア・クリベリ(BNE004744)の鮮やかな赤い瞳がゆっくりと細められる。蛍光灯の下であれど、白と黒と赤で構成された女の『色彩』は余り変わらない。
「生命は神秘。素敵ね」
 囁く様に告げられる言葉。艶やかな黒髪に、陶器の様な白い肌。一つの芸術作品が如き女の言葉に『神秘殺神者』ユーリカはルクレツィアを構成する一色――紅色の瞳を歪めて、殺人者とは思えないほどに優しげな笑みを浮かべて居る。
「ええ、素敵でしょう? お分かりになる? 生命の奇跡と神秘を」
「君の言う通り命っていうのは奇跡みたいなものだと思うよ。『奇跡』だからこそ奪う事は許されない」
 君も、自分も。そう告げる『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)が白銀の篭手を付けた両掌に力を込める。『Brave』と『Borderline』と刻みこんだ両の掌を見詰めて、ユーリカは「素敵ですこと」と囁いた。
「残念ですわ。わたくしが『生きる神秘(あなた)』を殺す時間を頂けないだなんて」
 ゆっくりと近くに存在する少女へと手を掛けようとするユーリカの眼前に風の様に迫った『Type:Fafnir』紅涙・いりす(BNE004136)は欲に濁る灰色の瞳を歪めて無銘の太刀を振るった。
「殺しは神の冒涜って奴かい? 神への冒涜なんてモノは、どうしようもなく神への信仰に他ならないとそう小生は考える」
 尤も――と続ける言葉はいりすが風を切る音に掻き消される。鼻を鳴らすいりすは竜眼を通してユーリカの瞳を覗きこんだ。獣の顔をして、いりすが求めた獲物は咄嗟に銃で無銘の太刀を受け止める。だが、避けるのは難しいのだろう、女の軟肌に赤い一筋の傷が走る。
「――ええ、神様を信じて居るからこそ、その存在を否定したい。わたくし、神様が居ると知っているからこそ、神秘を信じ、それをなくそうとしているのですわ」
「狂人は良く吼えるし、下らねぇ理屈を捏ねる。理解を試し見るにも値しない」
 吐き捨てる様に告げる『赤き雷光』カルラ・シュトロゼック(BNE003655)が一気に走り寄る。壁を蹴り、ユーリカの隣にぼんやりと座り込む少女の体を抱え上げた。
 華奢な少女の体は軽い。ゴーグルを併用したカルラは周囲のエリューションを避け、少女を抱え上げ、ユーリカから離れる。ちらり、と目を向ければルクレツィアが妖しく微笑んでいる。
「流石は正義の使者で御座います事ね。お好きなの? 誰かを救われるのが」
「道徳に反する脳の作りの方が気にはなるがね。生命を神秘と定義し、その神秘を嫌うが故に殺す。実に結構なことだ。……だが、そこで些か問題になるものはないかね?」
 Owl Visionを指先で、くい、と弄り『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)が興味深そうにユーリカを伺っている。捻じ曲がった理論は研究者であるオーウェンには理解できない。
『理論』(ロジック)を解き明かさんとするのは、目の前の『カラクリ』にもだろう。オーウェンの勘と悠里の観察眼を駆使して確認するエリューションの『カラクリ』はどれが増殖革醒化現象(スイッチ)であるのかを確りと顕して居る。
「能力を持つのは一体のみ。ならば、砂の中で光る金の如く、目立つ筈である」
 ――研究者曰く、答えというのは簡単に見つかるものだ。
 魔法陣を周囲に展開し、爆発的な魔力を得た蔵守 さざみ(BNE004240)は身体を捻りエリューションの攻撃を避ける。魔術師然とした戦闘スタイルからは想像がつかない前のめりな姿勢に興味を持ったのかユーリカが唇を歪めた。
「わたくし、貴女の事好きですわよ。神が遣わせた正義の使者は面白い事……」
「神が遣わした正義の使者。嗤えるわね。まあ、そう思いたいなら思ってればいいんじゃないかしら」
 前線に立ったさざみが冷たく伝えれば、ユーリカがより笑みを深くする。文字通り『正義の使者』である『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)が炎牙を握りしめ、紅桜花を構えたまま女へと優しく笑う。
 獣を思わせる金色の瞳が興味深そうに――それで居て、人好きする笑みを浮かべて夏栖斗は両足を広げどっしりと構える。
「ご機嫌麗しゅう。ラッヘン・フラウちゃんは元気? この前は遅れを取ったけど、今回はそうはいかないよ」
「ご機嫌麗しゅう――それって、どういう意味、かしら?」
 緩く笑みを浮かべた女の眼前に飛び込んだ『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)が長い黒髪を揺らして小さく微笑んだ。
「貴女に興味がないと言う事ですよ。神秘界隈に掃いて捨てる程良くいる殺人狂の一種ですよね?
 貴女に対しての感想なんて其れ位ですね。……アドバイスもありますけど、お聞きになりますか?」
 淡々と告げる彩花の動きは落ち着いている。バリアントコートを揺らし、彩花が告げる言葉に優しく微笑んだユーリカは「結構よ」と囁いた。


 少女の体を抱えたカルラがルクレツィアの元へと駆けよっていく。魔力を強化したルクレツィアが小さく微笑んでいる。
「この方、魅了されているの? それとも――」
 殺されても良いと思える程に忘れたい『想い出』があったの、と囁くルクレツィアに預けられる華奢な少女の体。ぼんやりとした彼女を惜しいと言う様に目を向けるユーリカへと一気に近寄った彩花は彼女の往く手を遮りながら、少女の『魅了』を解かんと加護を与えた。
「ああ、腹が減った。信仰なんぞより、余程リアルで良いだろう? どうせ喰うなら美味い方がいい」
「勿論。わたくしだって――『美しい』もののほうが好きですもの」
 あなたの瞳下さる? とユーリカは微笑みながら気糸を放つ。受け止め、避ける様に身体を捻るいりすの切っ先がオーウェンと悠里が予測した『方程式の解』へと攻撃を繰り出した。
 数を増やすと言うエリューションへと尤も早い対処を行ういりすではあるが、彼等は全員何かに操られる様に夏栖斗へと敵意を向けて居る。
 誘う様にエリューションを呼び集める夏栖斗へ向けて放たれる神秘の攻撃。その下をすり抜けて、カルラがユーリカへ向けて走り込む。
「目玉抉りが趣味の殺人者なんざ興味がねぇんだよ。神だ魔法だつっても結局飾りだろ?」
 吐き捨てるカルラの信念は変わらない。彼を『正義の使者』だと告げられる人間はどこにも居ないだろう。フィクサードへの恨みが自身を突き動かして居た感情だった。自分自身を見直す様にカルラは想いを力にする。
「飾る事は大事ですわ。あなたの想いだってあなたを飾るアクセサリーの一種」
「アクセサリー? ンなもんで飾りたてねぇよ。俺は飾らない。ただのフィクサード狩りだ」
 多角的に攻撃を行うべくカルラが身体を逸らせる。ユーリカの頭上から襲い掛かる強襲攻撃。噴射を行う事が出来るウルトラウィングは或る意味で翼の様にも見える。
 彼の隣、何処か呆れを孕んだ瞳を向けながらさざみは『拳』に4つの色を乗せた。喜怒哀楽を表現するでは無い。魔力を乗せたソレは何かを奏でる様に貫き飛ばす。
「死んでいただけるかしら? 私、アナタのこと、嫌いみたいなの」
 拳に魔術を乗せる。神秘による身体能力の向上は魔術師の術を使うさざみの独特なスタイルだ。つきとめた存在を倒すべく最高級の精度を誇る魔性が意識を絡め取る。
「自分に素直であれば、研究するまでもない。だが、お前さんの『脳』は実に奇っ怪だとは思わないか?
 自身を殺さずにして、『神秘』を嫌っている。殺すべきは自分自身ではないのかね?」
 淡々と告げるオーウェンの炸裂脚甲「LaplaseRage」のブースターが火を噴いた。興味深そうにユーリカを見詰めるオーウェンの瞳に女は唇を歪めて微笑んでいる。
 続く悠里は雷撃を纏った拳を真っ直ぐに振り翳し、周囲を巻き込んでいく。夏栖斗が集めた対象を含めた攻撃は効率的にエリューションを攻撃していけるのだろう。
「邪魔、しないでくれないか?」
 呟かれる言葉はユーリカと交戦する彩花が無事に至近距離での攻撃を使えるようにする為であろう。呼び寄せる夏栖斗が注意を引く様に「ユーリカちゃん」と呼んだ。
「ルージュ、綺麗だね。まるで血の色でも写してるみたいだね」
「あら、それはとても素敵ですわ。……それじゃあ、貴方の血をわたくしのルージュに致しましょう?」
 お断りだとで言う様に紅桜花を振るった夏栖斗が咲かせる鮮血の花。
 切り裂く様にエリューションの身体を分断すれば、『増殖』(ふ)える切欠となり得るエリューションが持たないとでも言う様に近くに居る悠里へと攻撃を仕掛けていく。
 ユーリカは『神の使者』達がその個体を狙っていると気付いたのだろう、思考の濁流で彩花の身体を一気に押し返す。
「その攻撃の意味は『世の中への不満』ですか? 矢張り、有益なアドバイスを一つ差し上げましょう」
 Noir nobleに包まれた足に力を込めて彩花は体勢を立て直す。彩花の為に拵えられた雷牙にくるまれた掌に力を込める。自身へと与えられる魔性の一撃をも避けて彩花は唇を歪めて頭を下げた。
「それほど『世の中への不満』があるなら、無意味な不平を垂れる前に死ねば楽になれますよ?」
 ひゅ、と彼女の頭上を通り過ぎたのはカルラの攻撃。真っ直ぐにユーリカに放たれる其れが女の顔に傷つける。
 オーウェンがエリューションを魅了し、陣形を崩していく。徹底的な攻勢は安定した回復手が居ない事を示して居たのだろう。攻める姿勢を崩さないいりすが光の飛沫をあげて振るうリッパーズエッジがエリューションを亡きものにしていく。
「そうだ、ユーリカ、君が死ぬんならその破界器、小生にくれよ」
 ついでだが、と濁った瞳に乗せた欲望に口先だけで嗤ったユーリカを見据え、さざみがいりすの攻撃し続けて居たエリューションを全力で殴りつけた。
 四色の光の魔力を纏ったそれはエリューションのうごきをとめる。長い緑の髪を払い呆れたように赤い瞳を細めた。
「誰をどう断罪しよいと貴女の勝手だけれど、神嫌いな貴女は一体何の名の下に『神秘』を断罪するつもりなのかしら」
 囁くさざみの声を聞き、女が小さく笑う。攻める姿勢のまま、夏栖斗の作り出した紅花の上を走る悠里がエリューションを殴りつけ、じ、と女の瞳を覗きこんだ。
「神様の許しが出る訳がない。命を奪う事なんて、誰にも許される事じゃないんだ」
『境界線』を護るため。世界を護るために沢山の命を奪ってきた悠里の言葉にユーリカが首を傾げて「可笑しいわ」と囁いた。許されない行為だと善悪を決めつけ、自己嫌悪するだけで救われるのか。女にとっては『自分』と『彼』は何ら変わりがない。
「わたくし、神様を殺す為に生きてるって言ったらどうかしら?」
「……いえ、なんということはないわ。貴女が自身の意思以外の何かに依って行動して居るなら、貴女の嫌いな神を信仰する連中と『何ら』変わりないって思っただけだから、気にしないで」
 淡々と続けるさざみの上から降り続ける雷撃。ルクレツィアは「不思議ね」と緩やかに嗤う。
 素敵なものをみてたいだけ。悠里の様な正義感も、夏栖斗の様な使命感も、さざみやオーウェンの様な興味もなければ、カルラの様な復讐心やいりすや彩花の様な生まれ持った素質もない。
 正義に満ち溢れた言葉を発する悠里に対して、ユーリカが告げるであろう言葉をルクレツィアはゆっくりと囁いた。

 ――ねえ、魔女狩りを始めましょう?

「魔女狩りなんて時代錯誤だね。その女の子は何? 囮? 僕等を誘き出す為の舞台装置?」
「あら、この子はわたくしに殺されても幸せでございましょう?」
 夏栖斗の言葉に反応して、小さく笑ったユーリカの視線がルクレツィアへと向けられる。鮮やかなルージュの引かれた唇が「ねえ」と三色の女へと囁けば、こてん、と首を傾げる。
「ええ、わたくしも知りたいわ。少し気になったの。あなたの殺害対象はランダムなのか……それとも」
 ルクレツィアの疑問は尤もだろう。ユーリカは『想い出』は素敵な方がいいと告げていた。
 ならば、の少女が選ばれた理由があったのだろか。


 目玉コレクターなんていう性質は夏栖斗には理解できなかった。想い出を集めたいと言う『悪趣味』に付きあってやる気もない。
 翼を使って逃げようとするのならば身体を張ってでも止めて見せると夏栖斗は決めて居た。
 夏栖斗の牙、ユーリカの翼。そのどちらもが『神秘(かみさま)』のものなのだとすれば――
「僕達は人間じゃない、って事かな。確かにね、僕達は誰かを殺してきた。それは君と同じだよ。
 でも、子の心だけはずっと人間でいたいんだ……!」
「僕だって、どれだけこの手を血で汚したって魂だけは汚さずにいたい。ヒーローに、なりたかったんだ」
 その手が汚れることだって知っていた。夏栖斗が「悠里!」と名を呼べば、一歩進んだ悠里がユーリカへ対して氷の拳を向ける。
 体勢を整えた彩花が仲間を支援する様にそっと、力を与え、前進すれば、オーウェンの気糸がユーリカの動きを阻害する様に伸びあがる。
「さて、捻じ曲がった理論を整えてやろうか」
 眼鏡を直したオーウェンの言葉に反発する様にユーリカが『煙幕』を張り巡らせるが、張りつく様に近寄っていた彩花が小さく笑った。
「逃がしませんよ?」
 彼女は暗闇を見通す術を持ってはいない。だが、翼があり、その存在を吹き飛ばす力を持つ。その隙を縫って逃げる為の力だったのだろう。
 だが、近付き手首を掴んだ彩花が居てはそれも叶わない。
「貴女――強引ですのね?」
「面倒なだけですよ。逃げられて仕事を増やされるのも面倒……」
 呆れ囁く様に呟く彩花からそれでも逃げようと身体を捻るユーリカをカルラは挟撃の姿勢で捉えている。
 お嬢さん、と彩花を呼べば、彼女は唇を歪めた。前線で戦っている彩花にいりす。その二人の動きをカルラはしっかりと観察していた。崩れそうになる体勢を持ち前のバランス感覚を発揮して居たいりすが『張りつく』様に壁を蹴り、ユーリカの隣へと飛び込んでいく。
「逃げたいなら逃げれば良い。此方を撃破するなら、それもいいし、逃げるなら、それも面白い。
 だが、ただで逃がす訳もない。さて、どうなるか。どうでるか。どう転んだところで、楽しみはできるが」
 どうだい、と囁くいりすの声にユーリカが飛び退かんとするが、彼女を貫いたのは眉をしかめたさざみの四色の魔弾。呆れかえったさざみが『殴りつける』距離に居られない事を悔むのか、やけに不機嫌そうな表情をする事にぐずぐずと動かない一般人を背に隠していたルクレツィアが楽しげに笑う。
「ねえ、神秘と厭って神秘を狩る……。
 それって神秘の存在を認めてる事にはならないかしら? 貴女の想いって、愛憎のようね……」
 愛憎の様。歪み切った感情は果たしてオーウェンの研究分野に当てはまるのだろうか。
 感情が人を付き動かす事を何よりも知っていたカルラは小さな舌打ちを漏らし、煩わしいとでも言う様に手を伸ばした。
「こんな事をする連中は、根絶やしにしなけりゃ被害者が何人居ても足りねーっての! だから、お前――逃がさねぇぜ」
 告げる言葉にユーリカがそれでも抵抗する様に放つ魔性。苛みからの解放を直ぐ様に行う彩花の両の手は離さないままだ。
 ユーリカを逃がさないようにと布陣するリベリスタの中で、彼女が自傷行為に出る事がない様にと観察する悠里の瞳は何処か複雑そうだ。
 殺人鬼――殺『神』鬼と変わりない行いだと言われればきっとそうなのだろう。
 だが、そこに罪悪感があるか、それともないかの違いは大きい。人としてどの様に考えていくかがそのキーとなるのだろう。
 動きを阻害し捉えられることとなったユーリカを囲う形でリベリスタ達は存在している。傷を負った女はソレにしてやけに饒舌に「わたくし、捕えられるのも悪くありませんわ」などと軽口を叩いている。
 殺人クラブと名を付けられた集団は思い思いに人を殺して居るのだろうだ。勿論、集団と言うからには誰かがその行為を容認し組織付けているのだろうが事実を語ろうとしないユーリカは嗤うのみだ。
 ルクレツィアの背中に隠されていた少女の瞳は茫とした色を灯して居る。
 彼女には何か忘れたい過去があり、『死にたい』と考えて居たのかもしれない。
 断罪されるのであれば――想い出を取られるのであればそれでいいとでも考えて居たのか。感傷的な少女の気持ちはルクレツィアには分からない。
「貴女に今日の事は忘れて頂くわ。
 そして、……わたくしは貴女から対価をもらわなければならないの」
 望むと言うならば、それを叶えるまでだ。紅色の女はゆっくりと囁いて少女の顎を持ちあげた。

「わたくしが望む対価は1つ――生きて」
 忘れたいと望むならば、忘れさせてあげると、魔的に光る赤い瞳が少女と合わされる。
 唇がそっと、告げた言葉に少女は茫、とルクレツィアの瞳を覗きこみ、ゆっくりと立ち上がる。
 点滅し続ける電灯の下、暗闇を『煙幕』の様に使おうとした女の腕を掴んだままの彩花はぐ、と力を込める。
「……ユーリカちゃん、このナイフ見せて貰うよ?」
「差し上げますわ。あなた、わたくしより『殺人クラブ』にご興味あられるんでしょう」
 あなた、お好きになさって?
 そう囁いて、渡された『殺害用ナイフ』は人を殺す為に使ったにしては刃先は欠けず新品の様に美しいままだった――

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様でした。
 無事に一般人の女の子が助けられるとは思いませんでした。

 お一つ、気になりましたので。
 スキルは活性化して居ないと使えません。
 折角のお力ですし、プレイングを其れに裂かれている分、しっかりと確認して頂く事を推奨致します。

 ご参加有難うございました。また別のお話しでお会いできます事をお祈りして。