●趣味享楽のデッドスペース人生 猛反発枕に関しての報告書。 前回の提出物より幾許かの変更点が発生したため、これを提出する。 まず、某日の会議で問題になった殺傷性であるが、これは被弾時に前方・衝撃時に後方へと空間的エアバッグを発生させることで解決した。よって以後、これによるダメージは純粋な投擲力のみであり、これによる加算は一切行われない。 また、同時開発されていた反物質枕であるが、個人委員会による「面白みに欠ける」という同意により否決されたためプロジェクトは断念されている。それに関し、当室室長より抗議の文が作成されたが、室員一同目を通す価値はないと判断することを末文以後の署名とともに表明しておく。 余談より戻り、寄ってこれは枕としては極々一般的な、しかし正式な使用目的とは異なった使用法のみに需要を考えられるものである。 その為、別紙に記載された概要に沿ったイベントを執り行う事を提案する。進行役として当室室長を推すものであり、その方が彼女の気も紛れることであろう。 それ以前にかねてより希望している当職員の他部署異動願いに関しては(以下目を通さなかったために割愛) ●実験動物のライブアライブ解脱 「よし、枕投げニャ」 何がよしなのかだなんて、もうこの猫には突っ込むまい。ともかく、ちょっと久々な気もするこの猫が、今回も今回で何かのたまったのだ。 「んむ、その諦めた視線、イイヨイイヨ。えとニャ、冥時牛乳がニャ」 それにももう、何も言うまい。突拍子もない話が浮かんだ時点で、ある程度は予測してのけたことだ。で、今回は何作ったのあっこ。 「枕だニャ。流行りにしてもちょっと過ぎた感のあるアレに対抗したのか、猛反発枕いうらしいニャ」 猫曰く、猛反発枕はある程度以上の衝撃をそれに与えると、触れているものに数倍加した衝撃を跳ね返すアーティファクトなのだとか。ただし安全設計であるらしく、特殊な衝撃緩和も発生させるため、吹き飛ばす以外の効力を持っていないらしい。 何に使うんだそんなもんという考えは結局、最もメジャーな遊び方になるわけで。 「枕投げニャ。例によって枕投げ大会。案の定優勝賞品がアーティファクトだからそれの回収がお仕事ニャ。つまり、枕投げして、勝ってきてニャ」 そういうことらしい。 りべりすたのこんかいのおしごと。枕を投げること。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月27日(日)00:28 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●日進月歩のエンターテイメント科学 無傷で、後腐れなく、狙った相手を吹っ飛ばしたい時って、ありますよね。 祝日。昼間の学校。運動場。10月とは体育祭の季節であるものの、下旬ともなれば肌寒い。動きやすい格好は昼間でも少々辛いものがある。打ち上げられる無色の花火。どこか洋然としたイベント風景。しかしここで行われるのは、古く日本で親しまれてきたルール皆無の大勝負であった。 「ねえ、いつもみたいに、二人でみんなやっつけちゃおうよ? それじゃ、ダメ……なの?」 「私はきっとこの日の為に生きてきたのです」 「そう……シエルさんは覚悟を決めたんですね」 『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が己の腕を指で突いた。それは自傷行為。片腕を麻痺させる禁断の秘孔(当シナリオのみの限定ルールです)。そして、眼病ひとつ無い目に眼帯をつける。これで同じ。『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)と条件は同じだった。 「その腕と眼帯は、何のつもりですか、シエルさん? 憐れみ、ですか……『戦姫』を舐めるな! シエル・ハルモニア・若月!!」 「勘違いしないで下さいましね? これはハンデではありません……未熟な私の心を落ち着かせ、最大の力もて枕フェザード(エアリアルフェザードの意)を使う為!」 「ならば、是非も無い。許容もなく慈悲もなく、戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫、推して参る!!」 仲いいなお前ら。 「枕投げとは、また懐かしい遊びですな。昔を思い出します」 えっと、何百年前の昔ですかね、それ。とも言いたくなる外見をした『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)。現在進行形で周囲の一般客を怯えさせている。無理もない。フィクサードと戦うビジュアルなど、たまにどちらが敵だったか忘れてしまう程だ。大丈夫、慣れると剽軽なナイスガイだぞ。 「そうですのう、たまには童心に帰るのも悪くないですな」 えっと、何百年前の童心d(ry。 「猛反発枕ねー高反発枕が斜め上に進化したのかなー。Bボタン押し忘れるなよー」 国民的電子ゲームに例えて物言う『ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)。あれって何時押していいかわかんねえから常に連打だよな。 「まー馬鹿兄ィとかNO反発枕とか、言い出したことあったからそれよりゃましかー」 それ、シーツとどう違うのだろう。 「さっくし終わらせくっからちょっと待ってろよなー、アンタレス!」 「全く、またあの乳業か! 次から次へと妙な物を開発しおって……困ったモンだ」 憤慨する『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)。まあ毎度のことであるし、その気持ちも分からなくはない。 「それにしても暑い。喉渇いたなー。おっ丁度いい所にジュースがあったぞ。さすが製造元、ギルティライチを無料で飲めるとは……」 ごっきゅごっきゅ。喉を鳴らして嚥下する。ようこそ闇の世界へ。 『健全ロリ』キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)はこの季節にまだ夏服である。というかこれ、夏服と言っていいのかどうか甚だ疑問ではあるが、えっと、なんだ。スタッフ捕まえて以下の様なことを言っていた。 「人民は豊胸牛乳を待ち望んでいるんだ! と伝えて下さいだそーです。伝えないと切ない思いがYANDEREてきんばれいがぐしゃぁだそーなのです……」 そういやあれやったの何年前だっけ。ここにきて天丼すべきなのだろうか。 「世はまさに、弱肉強食。大人も子供も関係なし。最後まで立っていた者が勝者だって聞いたよ。僕の知ってる枕投げと、なんか違う気がするけれど、まあいっか!」 『チャージ』篠塚 華乃(BNE004643)は気にしない。え、枕投げって全滅が勝利条件じゃないの? やったこと無いから知らないんだよ。いや、マジで。 「今日は枕を投げても、埃が舞うからやめなさいって、怒られることもないみたいだし思いっ切り遊んじゃおう!」 「低反発、じゃなくて猛反発枕? 低反発だとふかふかでもふもふで気持ちいい。だったら、猛反発なら……えぇと、その反対? よくわかんないけど、気持ちよく眠るのはちょっとむずかしそうな……」 『アクスミラージュ』中山 真咲(BNE004687)が頭に疑問符を浮かべている。まあ、寝ることも抱くこともできない故にこんな使われ方をするわけで。 「おとなってよくわかんない、なんでそんなの作ろうと思ったのかな?」 たぶん、ロマン。 ●優柔不断のストレートボール豪速球 そんな時にはこれ、反物質枕。これがあれば相手に怪我を負わせることなくふっ飛ばすことが可能です。 やたらハイテンションで、司会進行役のスタッフが事前説明を捲し立てている。やれ、枕の仕様はどうだとか。やれ、ゲーム開始まで投げないようにだとか。やれ、試験的な運用であるので万一の際には責任を負わないだとか、そんな話だ。 話を聞かず、試し投げしてふっとぶ一部参加者がいるなど。アクシデントはあったものの、概ねプログラム通りにことは進む。 それぞれがそれぞれを視線で追う。この瞬間、この刹那、これより、彼らは敵対し、修羅に落ちる。 ゲーム開始のピストルを、審判が天に掲げた。 此処から先、君の顔面に全力投球して許されるTPO。 ●混沌根源のヒステリック山田 でも、お高いんでしょう。 開始の空砲。それと同時、岬は一般群衆の中に踊り込んでいた。 立ち止まればたちまち顔から地に滑らざるをえないような前傾姿勢。只々前方に向かい駆け抜ける岬は、それら有象無象とすれ違いざま、背より振り下ろした枕で彼らを吹き飛ばしていた。 無論、そんなことをすれば普通は使い手も吹き飛ばされてしまうのがオチだ。しかし彼女は、インパクトの瞬間のみ枕から手を離すことで自分に来るはずの衝撃を見失わせていた。用は手が離れていればいい。これはあくまで投擲なのだ。 集団を抜き去ると、大地に向けて枕を投げる。発動する衝撃と、怪我を回避するための空間エアバッグ。その刹那を見切り、自らを飛び込ませることで反作用を獲得。反転。また集団へと駆け抜けた。 「斬れ! 刺れ! 潰れ! 殺れ!壊っちまえ―! 愛? 空気? 牛乳? そんなもの……クソ喰らえだー! そんなものはー見えやしねぇ! 『ANTARES』の目にうつるものはただ一つ!! デストロ―――イ!!!」 ドッジボールしかり、ヒトに直接得物を投げ当てる競技はいくつか存在するが、そのどれもに共通して有効的だが行ってはならない外道行為が存在する。他人を盾にすることだ。 真咲は小柄な身体を敏捷性を活かし、一般集団の中に入り込むと彼らはおろか味方からの投球をも防ぐ要塞の代わりとしていた。 当然、気づかれにくいのをいいことに背後からの強襲も行っている。 「あはは、ごめんねー」 しかし、問題はここからであった。 一般客などリベリスタの身体性能があれば圧倒できる。しかし、その上で自分よりも熟練のリベリスタをも相手取らなければならないのが今回の依頼である。 まともにやったところで勝ち目はないだろう。動きを止めないよう走り回り、時には同じ相手を狙う仲間のアシストに回る。 「ひとりなら届かない、けど力をあわせれば!」 なんとそこには元気にスキルぶっぱする先輩方の姿が! 「ちょっと先輩本気過ぎないかなそれ!?」 ふっとばされても笑顔であった。 最早立っているのはリベリスタと一部のフィクサードだけになってしまった会場で、敵味方問わず得物を構える怪人がひとり。 「あなた方と戦うことになるとは。運命とは分からないものですな。まあ、最早言葉は不要。言いたいことが有れば、これで語るのみです!」 なんかいつもよりハイテンションの九十九さん。もちろんこれとは枕です。 「くっくっく、この時の為に密かに編み出して来た技をついに見せる時が来ましたな。この枕ガトリング(ハニーコムガトリングの枕ばーじょん)さえ有れば、相手が何人居ようと一撃で吹き飛ばすことが可能ですぞ」 指の間に枕を挟んでおります。結構シュール。 しかし、相手も革醒者。そう簡単にあたってはくれないもの。ならば奥の手を発動するのみよ。 「女神の加護を受けし私の一撃には、光が宿るのです。つまりはシャイニング枕シュート! 枕が光るとかおかしい? 細かいことは良いんですよ!」 ひかるまくら、かっこいい。 そこには歴戦の兵士(脳内)がいた。 「良し。では、征こうか。我らアークの者だけ、その中で最後まで立っていた者こそが最強……シンプルで分かり易いでは無いか。それに何より、普段はフレンドリーファイアを危惧して、なかなか投げられないシャイニングウィザード!」 活性化一覧にございません。 ベルカが先刻口にしたジュース―――ギルティライチは、その者の妄想を大きくし意識表現の面まで押し上げるものである。有り体に言うと厨二病になるのだが。彼女の場合、割といつも通りのような気がしてならない。 「こいつを投げ放題と言うのが悪くない! 密かに掌に生成し、この猛反発枕と一緒に敵中央へ投げ込むのだ! うおおおっ、ファイアインザホール! アールピージー!」 活性化一覧にございません。あと、流石に枕にかこつけてもいないスキルはちょっと。 「わ、私は……私は悪くねぇ! だって同志キャドラが枕を投げろって言うから!」 あとで覚えとけニャ。 「枕食べ……リベリスタにしかできないお仕事ですね!」 何か勘違いしている幼女がいた。キンバレイである。食うだけの仕事をしたのは結構前だったはずなのだが。 周りを無視して枕を口にする少女。その度に口の中を衝撃が駆け抜けているはずなのだが大丈夫だろうか。 「うーまーいーぞー!」 確かにR・ストマックはなんでも栄養にできるというサバイバル特化スキルではあるが、この枕のどこを栄養にしているのだろう。そばがらだろうか。 そして自慢の舌で味わった猛反発枕の成分を口にしようとする彼女だが、そこでピタリと止まる。どうやら、専門的すぎて理解できないものがあったらしい。区分けできても、知識として持たなければ公開はできないのである。 気を取り直してもうひと口。また発動する衝撃。衝撃。衝撃。何度目かの後、キンバレイは手にした枕をぽろりと落とすと、そのまま大地に倒れ伏した。 どうやら食らってはいたらしい。二重の意味で。 「仲間こそが本当の敵だったなんて! でも、今更立ち止まる訳にはいかないよ! たくさんの屍を乗り越えてここまで来たんだから!」 この戦い、華乃には激闘と友情で綴られた忘れられない思い出があったのである(断言)。 強敵(トモと読もう)達のことを思い出しながら、自分の限界を振り切った。作戦など無い。ただ仲間であった、今は打ち倒すべき彼らに向けてまっすぐに突撃するだけだ。 愚直なまでの前進。避けようともしない。何度も何度もその身に衝撃を受けている。それでも止まらない。外さない距離。自分の間合い。 「くらえ! 枕クラーッシュ!!(メガクラッシュ)」 打ち抜け、振り回せ。そして前進のオーラを枕に込めろ。喰らえ、 「今、必殺の…………!」 ぷしゅー。 なんか気の抜けた音と共に、華乃が脱力した。どうやら気力切れらしい。 「なんだか遊び疲れちゃった! 丁度、手元に枕もあるし、おやすみなさーい」 寝た。枕が発動した。吹っ飛んだ! 「あうっ! かはっ!! ひぎぃ!!!」 徐々に悲鳴がエロくなりながらも、シエルは舞姫の攻撃を避けようとはしなかった。 「何故……何故、手を出してこない!」 その問いに、シエルは答えない。 「シエル! (シエルさん……)」 着弾。衝撃。 「シエル! (もう……)」 舞姫の投げる枕を、シエルはその身に受け続ける。 「シエルーッ!! (やめてえええっ!!)」 心が啼く。もう見ていられない。 「これで、終わらせる!」 大振りの構え。だがそれは、シエルにとって絶好の瞬間。 「まだ、シエルの目が死んでいない!?」 全てはこのための布石だった。避けていないように見せかけて、ぎりぎりのところで急所への被弾は避けている。相手は『戦姫』。まともに打ち合って勝てるだなんて思ってはいない。だからこれが、最初で最後のチャンス。 「舞姫様……いきますよ? 魔風よ、在れ! 枕フェザード!」 飛来する無数の枕。全てが猛反発。点ではなく、面での攻撃。なれば被弾は必死。 「くっ……こんなカードを隠し持っていただと? この弾幕は、避けきれない……ならば、刺し違えるのみ!」 舞姫は残す全ての気力を枕に込めた。勝負を見誤ったのは自分の方。だが、だからと諦められる相手ではなかった。 「マクラ・シャンパーニュ!!」 交差するふたり。舞い上がる砂煙。そして、 「……なんてね」 膝をついたのはシエルの方だった。 「え、これは……枕フェザードじゃない!? シエルさんが投げたのは、普通の枕?」 急ぎ、シエルを抱き起こす舞姫。 「シエルさん! どうして? 最初から、このつもりで……?」 「枕フェザードは撃ちません。だって舞姫様に初めから魅せられていたのですから」 「シエルさん……」 「せめて、その胸の中で……」 舞姫に支えられながらも、息を引き取るシエル(誇張表現)。 「こんなに、こんなに悲しいなら、愛なんていらない。ここにいる貴様たち全てを倒して、何もかも終わらせる……!」 そして、舞姫は最後の戦場へと…………最後、配役違くね? ●最終定理のリターンマッチ機能 なお、当社はこれにより起きた一切の問題に関し責任を負いません。 本当に、長く苦しい戦いだった。 誰もが傷つき、無事であった者などいない。 足を引きずり、仲間を肩で支え帰路につくリベリスタ達。 その手に持つのは、奇妙な形をした石造りのアイテム。アーティファクト。やっとの思いで頂点に立ち、勝ち得たものだった。 依頼達成。だが、その為に失ったものは大きい。それぞれの思いを胸に、星の瞬く空を見上げる。 そこに、手からこぼれ落ちたものが昇って行く気がしたのだ。 よし、なんかいい感じで〆たので今回はこのへんで! 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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