●名画か? 取り壊しの決まった古びた映画館に人気は無い。 とうの昔に採算が取れず、店じまいをして等しいから当然だ。 かつては華やかな銀幕の世界を映し出した昭和の遺物はもう誰に見向きをされる事も無く、唯最後の時間を待つばかりだった。 そう、本来はそう在るべきだったのだ。 人間もモノも何れは老いて朽ち果てる。 役割を終えた存在は何れは舞台を降りるものだから。 何事も無かったならば、それで終焉の筈だったのだ。 人々に多くの思い出を残した名画座は人々に少しの喪失感を与え、人々に少しは惜しまれて――ファッションビルに姿を変える。 それが時代の流れで、正当な運命だった。スクリーンから登場人物が現れる等という、荒唐無稽な奇跡が起きなかったとしたならば――それで何の問題も無かったのに。 ●12(Twelve) 「……天才の仕事は、何時の時代にもあるものですね」 ブリーフィング・ルームに集まったリベリスタに『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はアンニュイな溜息にも似た言葉の響きでそう漏らした。 「かのアントニ・ガウディがその生涯をかけてサグラダ・ファミリアの完成を目指したように。ニコラ・テスラが果て無き挑戦を続け、ライト兄弟が大空に見果てぬ夢を見たのと同じように」 「何がなんだか」 「ゴッホだってシューベルトだって同じです。一枚に何億の値がつく画家だって、歌曲の王と呼ばれた程の方だって必ずしも生きている間に最高の成功を果たした訳ではなかったのですから」 「……おいこら」 一向に的を射ない――やたら熱っぽい和泉の台詞にリベリスタは苦笑いを浮かべた。 「天才の仕事が今回の仕事と何の関係がある」 モニターの中に映るのは古びた名画座。スクリーンから登場人物が出現する……等という異常事態はアーティファクトの効果に違いない。 「え、分かりませんか?」 和泉は全く訳が分からない、と言わんばかりにそう言った。 「今回の事件のハイライトはまさに天才の仕事に関わりがあるんです」 「……どういう風に」 「モニターの中の登場人物を御覧になれば分かるかと」 「……えーと……」 リベリスタは未来予知なるモニターの中の映像を半眼で眺めた。 そこには筋肉と、筋肉と、筋肉が居る。 「えーと?」 「つまり、そういう事です。可能な限り少ない予算! 明らかにキー局に劣る電波範囲! この国の首都を、視聴率を意味する関東ローカルを主体としていながら、常に特殊な存在に扱われ! それに拗ねる事も、めげる事も無く独自路線を突き進む!」 和泉は拳を握って演説した。 「果敢な、果敢なる! 現代マスメディアのジャンヌ=ダルクとも言うべき彼等は、まさにこの錆び付いた渇きの時代に天才の仕事を樹立したと言えるでしょう! 彼等が作ったヨゼフ・ゲッベルズにも比肩しようかという完全無比な宣伝は! 一つの奇跡と言っても過言では無いでしょう!」 「……………えーと……」 完全にリベリスタを置き去りにする和泉は咳払いを一つして、彼等に向き直った。 「つまり、皆さんの今回の仕事はアーティファクトと化した映写機と三本のフィルムを処理する事です。素敵な番宣キャッチコピーのつく系統の映画です」 「……言いたい事が分かったような分からないような……道具を処理すればいいのか?」 「彼等は銀幕のヒーローですから。そういう趣の無い手段は通用しないようです。プロセスとして『スクリーンの中に入って』ヒーローを倒さないといけないようですね」 「そうしないと駄目なの?」 「はい。そうしないと映写機もフィルムも処理出来ない……というか現れません。そういう能力があるようです」 ご都合主義だし、出てくるなら入れるのも道理という事か。 「うっわ、嫌な予感」 「相当大変だと思います。頑張って下さい!」 和泉は何故か力一杯笑顔で言った。 「何せ相手は、孤高のトゥエルヴのお送りする親父祭りです。 それも三本ちゃんぽんの豪華版ですから。……ええと、死なないで下さいね?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年07月25日(月)23:40 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●銀幕スタア 多くの人間はその胸に特別な誰かの幻想(かげ)を抱く。 幼き日に見た特撮ヒーロー、夢中になったアニメの主人公、銀幕で悪人を蹴散らすスタア。 子供心に鮮烈な印象を残した――或いは大人であっても「彼等のように在れたら良いのに」。 そんな夢想に浸らせてくれる誰かは確かに特別な誰かだった。 それは―― 「昔、そんな映画を見て子供心にわくわくしたもんだ……」 ――今現在、まさに神秘世界に身を浸し。誰かのヒーローとして日夜戦いを続けるリベリスタ、『捜翼の蜥蜴』司馬 鷲祐(BNE000288)にとっても変わらない。 「映画の世界じゃ! にゃはははは! ついに妾も銀幕デビューとはのぅ!」 「ムービーの中に入り、偉大なムービーヒーロー達と戦う。実にエキサイティング、そしてスリリングじゃないか」 今日、十二人のリベリスタ達が閉館して久しい――古い名画座を訪れた理由はまさに楽しそうに笑い声を上げる『緋月の幻影』瀬伊庭 玲(BNE000094)と『地球・ビューティフル』キャプテン・ガガーリン(BNE002315)が口にした通りだった。アーティファクト『男祭りシリーズ』は古い映写機と三本のフィルムのセットである。あろう事かスクリーンの中の登場人物をこの世界に呼び込んでしまうという能力を備えたそれの傍迷惑過ぎるロードショーを食い止めるべく彼等はここへやって来たのだ。フォーチュナの言う所による「出てこれるなら入れます」に従って……スクリーンに飛び込んだ彼等を待っていたのは戦艦の中の厨房、そんな嫌な予感のする名シーンであった。 「渋いおじさま……うーむ、妾の好みやのぅ……」 「一剣士として、彼らと直に戦える事を、誇りに思う事にします」 何処か現実感の無い光景の中。鈍感なのか大物なのか超然とはしゃいだままの玲の一方で、『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)はそこに『居る』三人のスタアを見やる。 正眼にバスタードソードを構える少女の居住まいに隙は無く。涼やかなる美貌は強敵を前にしても怯まな…… 「……でも、厨房でコックだけはダメ、絶対」 ……三人の内の一人、特徴的なオールバックの巨漢。両手を前に出し「シュバババババ」と謎の構えを繰り出すコックを見る彼女の瞳は確かな恐怖に揺れていた。並大抵の覚悟では太刀打ちさえ難しいであろう男。並大抵の覚悟とか以前に無茶言うなふざけんなと言いたくなるような相手である。それも戦場は厨房で……彼が頑張ろうとしたテロリストをかすり傷すら受けずにフルボッコにして痛そうに殺戮した記憶はうわあああああ! 「男祭りとか暑苦しいわ。 玉のような私がこんな人達相手にするな……んて……ごめんなさい怖い怖い怖いこわいコワイ……」 登場はホラー映画か何かだろうか。何故か頭からすっぽりと紙袋を被った『ヴァルプルギスの魔女』桐生 千歳(BNE000090)がガクガクブルブルと震え出す。未知なる超科学で武装した強靭なるエイリアンですら死んだのだ。ホッケーマスクの怪人だろうと何だろうとこんな奴等に勝てる気はしないとか、そりゃもうマジで思うってモンである。 「オレはデジカメでこの一大スペクタクルを全員の勇姿を。アークリベリスタの雄姿を。後進のために記録するのだ」 我関せず、如何にも全部他人事……と言わんばかりの『記録班』宮部乃宮 火車(BNE001845)がポップコーンを片手にカメラを回す。 「あなたが戦うべきは人じゃなくて食材よ! お願い目を覚まして!」 大きな瞳をうるうると潤ませた『鉄壁の艶乙女』大石・きなこ(BNE001812)がヒロインばりに声を張るが…… 「……うわぁ……」 すっかり殺る気満々のコックにとって敵は殺すものである。そう言えば彼が人以外を料理しているシーンは余り知らない。 「歴戦の猛者と相まみえるなんて夢のようだが、その戦闘力もまた夢の如し。 これはアーク最速(笑)の俺としたって、少し分が悪いか……」 意匠のナイフを片手にすかさずカッコつけるSiba(23)。 ナイフアクションと言えば思い起こされるのは可哀想なテロリスト達の死に様ばかり。 「なぁーんて言ってる場合じゃないぜぇー!? なんでいきなり厨房から始まるんだよぉ! 戦うにしたって一対一じゃ分が悪すぎやしないか!? これじゃー巨大マフィアのほうがまだ優しいって! だからって逃げるだけじゃあカッコ悪いしね! 華麗なカンフーアクションで決めてやるよー!?」←錯乱中。 駆け抜けた青春時代を思い出す程に。 何時かテレビで見たあのシーンを思い出す程に。 誰の身にも武者震いとかそういう次元では無い嫌な震えが広がった。 首筋を流れ落ちる汗は嫌味な程に冷たく、渋いニヒルな笑みを浮かべる暑苦しい男達の威圧感は否が応にも高まって感じられた。 そんな中。 一本芯の通った――退けぬ男が一人居た。 「ヤンキーどもの銀幕俳優共に遅れをとったなどいうことがあれば閣下に何を言われることやら」 その精悍な顔付きは苦み走る男の美学。 厳粛にして厳格なる威厳を湛えたその目は髭は、口元は。 銀幕のスタア達にも引けを取らぬ確かな存在感をスクリーンの『中』に示していた。 男の名は『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)。 如何にもソビエトなその面構えからは、数十年という映画史の中で常にメリケン共に敵視され、世界中から何かよう分からんが悪で敵として扱われ続けたヒッデェUSA主義(りふじん)に立ち向かわんとせん確かな軍人のプライドが滲み出していた。 「つまりは、この戦いは古軍人(ロートル)にも――いや、古軍人(ロートル)だからこそ退けぬ場所という訳だ」 「そうだ! こうなったら僕もヒーローになるしかない!」 今度こそ怯まない男――ウラミジールの気迫に励まされてか、ヤケクソ気味に『仮面ファイター ヴァンプ』設楽 悠里(BNE001610)が声を張り上げた。 「そう、今の僕は『仮面ファイター ヴァンプ』だ!」 何が何やら。和洋折衷、ホラーにアクション特撮か。 「これ以上お前たちの好きにはさせない! 変身!」 ポーズを取り、アクセス・ファンタズムをフル利用して蝙蝠を模した仮面を召喚。 「俺は満月の使者! 仮面ファイター ヴァンプ! アールエッチプラス!」 血液型かよ。何処かで聞いたようなちゃんぽんでヒーローを気取る彼にコマンドーがぽつりと言った。 「面白いヤツだな。殺すのは最後にしてや――」 「――いやああああああああああああああ――」 一言はフラグである。これ以上無い濃厚なフラグで……誰かの絶叫が厨房の中に響き渡った。 ●厨房(しち)からの脱出、そして…… ウラミジール・ヴォロシロフはかく語りき。 ――厨房より生まれ出で、三大英雄に翻弄される若者たち。 舞台はやがて厨房を越え宇宙(そら)へと向かい、そして繰り広げられる戦いよ。 辿りつく英雄越えの試練。太陽へ突き進む宇宙船(ふね)の中、やがて出される答えとは? ――と、いう事は全然無かったのだが。 ともあれ、『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)は走っていた。そりゃもう全力で走っていた。 「最悪の状況じゃない……!」 面々と別れた彼女が目指すのはこの戦艦のエンジンルーム。 (燃料に引火して大爆発でも起こせばコマンドー以外は何とかなるでしょ? 残るのがコマンドーぐらいなら皆で力を合わせれば何とかなるって信じてるわ。 もし、コレで倒せなかった場合は……どうしましょうかしらね) 女の口元に自嘲気味の笑みが浮かぶ。 この戦いは死地なのだ。話は何人生き残れるか――そんな次元である。 ――厨房でコックと戦えば待つのは死のみ―― リベリスタ界隈では小学生でも知っている事実である。←誇張 余りにも絶望的なその局面を打開しようと立ち上がったのは他ならぬキャプテン・ガガーリンその人だった。 「ガガーリン殿も英雄であった……」とはウラミジールの言。 ――仲間達を移動させるためにワタシは壁となろう。 そう、今からワタシはムービーヒーローであり、地球を守る為のヒーロー、キャプテン・ガガーリンだ。 いつも通りで構わないな、元々それがワタシだ。 嘯いた彼の不敵な笑顔が走るリベリスタ達の脳裏に浮かぶ。サムズアップして浮かび上がる。 去り際に振り返ってしまった脳裏に焼きついた痛々しい映像が続いて脳裏に再生される。「彼らの特性は会話シーンだ。会話を行う限りは足止めが出来る筈」そう言ったガガーリンの読みは確かにある種の正解だったのだろうが―― ――光栄だ、ヒーロー達。偉大なユー達と合間見えることを光栄に思う。 どうやらここで巡り合ってしまったのはある種の不幸であるようだ。お互いに守るべきものがあり、戦う理由がぶっ……! 映画には尺というものがある。 映画には尺というものがあるのだ。 コマンドーvs肉肉弾弾vsコックvs宇宙飛行士。 最早訳の分からないある種狂気の産物である。 本来の映画ならばたっぷりの二時間の中でキャプテンの見せ場になったであろうシーンも、三人ものヒーローがちゃんぽんに共存する困った映画の中では十分な存在感を示す事は出来ない。だって、尺が足りないから。 かくして彼は合気道と何かが混ざったコックの拳に目潰しを受け、肉肉弾弾の波動に吹き飛ばされた後、コマンドーに爆破された。 空に在る星がきらりと煌いて流れ落ちたならば、それはきっとさよならのサインだった。 彼の尊い犠牲を受けて、リベリスタ達は、杏は厨房を脱出した。 「あった……!」 ライフルで扉を破壊し、蹴り破る。 エンジンルームに踏み込んだ杏はアクセスファンタズムで他の面々に連絡を取る。 「もしもし? アタシよアタシ! え? 詐欺じゃないわよ! エンジンルームに到着したわ。これから持てる力のすべてを出し切ってこの部屋を攻撃して船を沈めます。 各自、脱出経路の確保に気を配ってね!」 ●支離滅裂。 「妾は面倒なので書類上はBランクじゃが本当はSSS+ランk……」 何やら訥々と未だに我が身の設定(ちゅうにびょう)を語り続ける玲はこっちに置いといて。 「水着にバスタードソードで、アマゾネスに変身! っていつもの格好ですが。 ……冷静に考えると、めっさ低予算っぽいコスですね、これ」 甲板で敵に追いつかれた『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)がしみじみとそんな風に呟いた。 黙っていれば美少女さん、口を開けば面白さん。 「何者であろうと、我が前に立ち塞がるならば……、ひぁぁぁぁー!」 武士なのかアマゾネスなのかハッキリしない金髪少女が肉肉弾弾の対空技(→↓→+P)にぺちーんとばかりに弾き飛ばされ、海の中へとダイヴした。 「くっ、何とか連携を……!」 怒涛のように押し寄せる運命に抗わんとリセリアが気を張った。 広い場所で迎撃に出られたのは彼女の想定通り。 一人を仕留めんと攻撃を束ねる考えも彼女の想定通り。 しかし、虚構の英雄のその力は彼女の想定をも大きく上回る。 「何とかここで……刺し違えてでも……!」 気を吐く彼女は凛として、何処までも気高い。 一方で駄目な奴はとことん駄目なのも世の常だ。 「こっち、こっち来るなです……!」 きゃいきゃいと騒がしい『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)が船の先端にしがみつき涙目で首をぶんぶんと振っている。 つい先程までは「折角なので女優になりきるです。あたしの配役は愛しい人を待つ歌姫なのです」等と素敵に妄言を飛ばしていた彼女であるが、そんな余裕も今は昔。減ってきた仲間とじりじり接近する男祭りの存在感にその顔は完全な恐怖に歪んでいた。 「ごつい男とかむさい男とかごめんなのです こっちくんなです。あたしはさおりんみたいなスタイリッシュな男の人が好きなのです。 むしろさおりんじゃないとダメなのです。あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」 一人でこっそり両手を広げて沈んだ客船ごっことか興じていた彼女の運命は水の底。当然、誰も助けに来やしねぇ(笑) ――戦いは熾烈を極め、早速クライマックスを迎えていた。 「新ヒーローは自分たちよ! 古株はさっさと消え失せなさいな!」 この期に及べば流石に覚悟も決まるのか、千歳が鋭く気を吐いた。 彼女の紡ぎ出すは三千世界に類稀なる魔術の力。遥かな奇跡を、幻想を具現せしその力。 四の魔曲がそれぞれに奏で造り出す魔性なる煌きは、ファンタジーめいた銀幕スタア達にも未知なる筈。 「絶対負けないんだから! 勝つまでは!」 幼い――支離滅裂なる理屈。ヒロインの叫びは神秘を得手としない最強の男、コックを撃ち抜いた! しかし。 「……あ……れ……?」 凍り付く千歳。彼女の視線の先には全然応えた様子の無いコックが居る。 そう言えばデータにはこうあった。「呪いや神秘の類には稀に苦戦します。苦戦するだけですが」。 「いいいいいいやぁあああああ死にたくなあああああいいいいい!?」 酷い有様である。 「『機関』の人間以外に負けるわけにはいかぬ!」 それでも何とか気を吐いて――玲はコマンドーを迎撃せんと前へ出た。 本来の二丁拳銃、得物をぽいと投げ捨てて何か素手で挑みかかる。コックに手首を捻られた。 「いたたたたたた……! な、ならばこれじゃ……!」 ブラックジャックで中二的にアクション。コックに軽く捻られた。 「……し、静まれ……邪眼よ……怒りを静めろ!」 玲さん、只今充填中ー。 「おー、盛り上がってきたなー」 杏からの連絡を受けた火車がカメラを回しながら完全に他人事で呟いた。 きなこが何故かフライパンを片手に声援を送っている。←諦めた 「ファイター! キィック!」 悠里が叫ぶ。鮮やかなる蹴撃を繰り出して敵を討つ。ぺちんと討たれる。 「ヌゥア! 俺には満月の祝福がある! 仮面ファイターは人々がいる限り決して負けないのだ!」 月なんざ出てねぇが彼は何とか起き上がる。 「ヌゥア!」 以下略削除な展開で起き上がりこぼしのようにぶっ飛ばされる。 ほら、最後とか嘘だった。 「成功を約束された物語と違い。現実ではいくら失敗する。 だが失敗があるからこそ人間だという意味を――今日、ここで教えてやろう!」 一人だけ空気が違う。何か映画の世界にどっぷりとハマルのはウラミジール。彼の決死の支援を背に、一人スタイリッシュこと司馬鷲祐が間合いを駆けた。 「俺はお前達を潰しに来たんじゃない。この世界を救いに来た……! 俺は救世主。救世主と書いてメシアと読む。 この閉ざされた世界を、革命する――現世より堕ちた運命の堕天使・Siba(23)!」 「鷲祐ー! 後ろ! 後ろぉー!」 「ガイアッ!」←断末魔 いや、余りにアレな台詞につい…… 最早何が何だかわからねぇ酷い戦いは何かしんねーけど、もう最終局面を迎えていた。 「あー、お前等」 盛り上がる(?)面々に火車が申し訳なさそうに声を掛ける。 「杏から連絡があったんだけどさ。この船、そろそろ爆裂するって――」 ずどおおおおおおん、と。 轟音と業火が甲板を揺らす。 足の先から頭の天辺までもを貫くような衝撃が誰の体をもぶっ飛ばした。 「いい爆発じゃのう。余裕の迫力じゃ、火薬が違うのじゃ。うにゃー! 大惨事世界なんちゃらじゃー!」 ぶっ飛んで――逆さに落下しながら何故か嬉しそうに玲が笑っていた。 「にゃはははははははははははは!」 何が何だか分からない。戦いの決着は有耶無耶に―― ――アーティファクトの回収? そんなん出来なかった事だけは伝えておきましょう。 それでも、何でも。十二の悪夢は二度と現れない。地デジの準備はお早めに。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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