●からあげがすごい勢いで飛んでくる依頼 「唐揚げ歴六十五年。今日も頑張ります!」 なんか仙人みたいな髭をはやしたハゲのじいさんがバルカン砲を抱えて立っていた。 え、なに、よく分からないだって? つまりバルカン砲とはZ社製重機関銃M61Vulcanをさす商品名で、ローマ神話の火神バルカンに由来するように毎分六千発の弾を吐き出すという高火力で湾岸戦争やベトナム戦争を戦い抜いたアメリカ合衆国軍搭載兵器として知られていたんだ。形状は2m近いパイプを六本束ねたような形状で、映画などで見るやつはこれを小型化したM134(通称ミニガン)というやつなんだ。だからおじいさんが巨大な重機関銃を普通に持っているって時点でこの人がタダ者じゃ無いってことがわかるよね! ちなみに日本ではバルカンのことをガトリングガンの代名詞みたいに使うケースが存在していて、これはいわゆる海外における『ガン何=ロボット』の認識と同じようなものなのさ。本場の人に言ったら失笑されちゃうよね! あ、それとGAU-8アヴェンジャーと比較されることもあるけどこれはGAU-8開発当初に戦闘ヘリへの搭載ができずしょうがないからM61バルカンを積んでいたっていう経緯からなんだ。でも今はそんなカスタマイズの不具合はなくって、逆に広い汎用性と信頼性を持った兵器になったんだ。具体的には現在海保で正式使用されているJM61-RFSっていう遠隔操作式艦上機銃や、各国戦場でおなじみのミニガンがあるよね! え、なに? 状況を説明しろって? 現在はM社製F-1支援戦闘機をはじめ対ミサイル防衛兵器ファランクス、世界最大の巡視船こと「しきしま」にも搭載されているんだ。ミニガンも含めれば陸海空で現役運用されているってことだよね。 え、なに? そういうのはいいから今の理由を言え? 恐らくあの細長くてシンプルな形状が図面に組み込みやすかったんじゃないかという直観性もあるけど、電気動力式の重機関銃というものがバッテリーの効率化・大容量化に伴う現代兵器の電子化と相性が良かったからじゃないかな。遠隔操作する機銃というコンセプトにもマッチするものだしね。あと外野からぱっと観察した限り世にものすごく沢山売り出されている製品だから皆すぱっと使いやすかったということなんだと思うよ。集団対集団の兵器に求められるのはやっぱり汎用性だからね。その辺にあって、代わりが沢山あって、誰でも知っている。これが一番なんじゃないかな。 え、なに? 依頼? ああ、うん……。 おじいさんがバルカン砲に似てるアーティファクトを持ってたんだ。おいしいアツアツの唐揚げがすごく沢山飛び出すんだって。 実在兵器との共通点? ああ、うん。見た目だけだね。うん。 ●だからからあげがすごい勢いでたくさん飛んでくる依頼なんだってば フォーチュナさんは言いました。 「からあげがすごい勢いでたくさん飛んでくるアーティファクトを持って粗ぶってるボケ老人がいるので適当にやっつけて適当にやってください! よろしくお願いします!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月07日(月)22:48 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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●唐揚げは噛み心地と衣の味のバランスがものを言うんですよっておじいちゃん言ってた 唐草揚平さん(92)の居間にて。 『愛しておりました……』犬吠埼 守(BNE003268)はずずーっとお茶をすすった。 「俺ねぇ、気になることがあるんですよ。ロボットアニメの宇宙戦闘シーンで、よく『ブウィーンキュピキュピ』って効果音入るじゃないですか。前半は何かのエンジン音だってわかるんですけど、後半はなんなんですかね」 「キャタピラが巻き込む音じゃないですか? その応用でガトリングのエンジン音と弾帯を巻き込む音に利用してるとか」 「でも宇宙って音伝わらないですよね」 「コックピットから聞いてる音なんですよ、きっと」 「なぁるほろ」 黒糖饅頭を頬張りつつ頷く守さん(28)。 するとちゃぶ台の下から全裸一歩手前の『違法ロリ』キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)が生えてきた。 「ミリオタってダサイですよねー」 21キンバレイは目をカッと開くとそういう形のスピーカーなのかなってくらい流ちょうに喋り始めた。 「ミリオタが許されるのは幼稚園児までですよねーキャハハハ艦これが流行ったからって山城轟沈映像を米艦轟沈シーンだと偽って放送した話とかをその辺の子にしてどん引きされたりストパンに乗じて零戦の木葉落としについて熱弁して引かれたりガルパンに乗じて肉壁戦車について熱弁して聞き流されたりしたんでしょうきっと大体がろ6ミリバルカンつけた失笑ロボットになるに決まってるのにマジキモーイ!」 「25キンバレイ……そのくらいにしておいてやれ。守とあと知らない人が心から沈んでる」 『立ち塞がる学徒』白崎・晃(BNE003937)は片耳を押さえて唸った。 「知ってるぞ、この雰囲気。ここんところずっと簡単なお仕事だのなんだので真面目な依頼ばかりこなしてたからな……ことさらに懐かしい」 ちょっぴりオリーブオイルまみれになっていた頃の自分を思い出す晃。 一方で『まごころ宅急便』安西 郷(BNE002360)は若干慣れた顔でいた。 「そうか? 俺は最近強化週間中だから、この手の依頼慣れっこだぜ。そんなことより早くおっさんたち回復させてからあげの話しようぜ」 そう言って郷は近くで直立不動を貫いていた子を手招きした。 っていうか『アンデファインド』街野・イド(BNE003880)である。 「頼む、そこの二人に兵器系の話を」 「I、私は今から30分に渡ってCIWSについての持論を述べることができます。実行しますか?」 「機械の英文翻訳みたいな話し方をするな。早くやってくれ」 「了解」 イドはちゃぶ台の上(上!)に正座すると、灯台のように首をぐるぐる回しながら語り始めた。 「I、私が最も好むガトリング派生兵器はファランクスをはじめとするCIWSです。自動化され一斉に目標を狙う砲塔回転、無慈悲な発砲。対神秘戦闘兵器として学ぶところの多いシステムです」 ぱぁっと顔色が回復していくおっさんたち。 そんな彼らの横にすとんと膝を下ろし、『永御前』一条・永(BNE000821)は肩にかかった髪を払った。 「昔話ではございますが……息子たちが小さい頃には夕飯にザンギ(唐揚げの一種)をだすと喜んでくれたもので、唐揚げと言いますものは私としても思い入れ深い料理でございます」 あえて一段増しで丁寧に語り口を開くと、『そう申しますのは』と本題を切り出した。 「食べ物で遊ぶなと自然薯の際にも申しましたね? 食事というものは天から降るものではございません。農家が丹精込めて育て上げ、卓に登りますまでに幾人もの手が入って成り立つものでございます。おわかり頂けましょうか。今もなお飛んでいるザンギのひとつひとつが命をいただいたものなのです。生きるための糧なのです。よろしいでしょうか。禅堂に曹源一滴水という言葉がございまして、水を捨てることは――」 「そんなこと言われてもうち知らない人やし……」 「あ、だめだ。おばあちゃんが説教モードに入ってる」 郷と晃は同時に額を叩くと、暫く無視しておじいちゃん対策に勤しみますかなと振り向いた。 『被虐思考』フェリシー・フールドラン(BNE004701)がスマホ片手にカタカタ震えていた。 「お、おそろしい事実を知ってしまいました……」 嫌な予感がするなと思いつつ『なんだいお嬢ちゃん』ってな調子で聞いている男たち。 「私、『ばるかん』も『からあげ』も知らないのでウィキってみたのですが、どうやらバルカン半島という民族紛争の多い地域があるそうで、唐揚げというのも衣をつけた食材を油で揚げる方法と分かりました。つまり、つまりですよ? これは人を服を着せたまま煮えたぎる油に落としあまつさえ食べてしまうという、そういう隠語なのでは!? 日本の老人こわいですぅー!」 頭を抱えて『私を食べてもおいしくないですよぉー』と震えるフェリシー。 それを見て、晃アンド郷は庭に見ゆる空を眺めた。 「こういうのって、フュリエの特権だと思ってたけど」 「案外身近にいるもんだぜ……」 まあ仕方あるまいよと玄関先へ出て行くと、『現に煮えたぎる油に服を着たまま飛び込んだ人』が立っていた。 いや、立っていたっていうか、膝を突いて震えていた。 『デイブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)だった。 ここから先の展開はこの子が予約に入ってた時から分かっていたことなので、二人は目を瞑って口出しを控えるのだった。 ここからは秒間30くらいの作画枚数でご想像頂きたい。 「う、ううううわああああああああああ!」 両手(手羽先)で乱雑に顔を覆ったヒヨコさんは小刻みに震えながら涙をあふれさせた。 「おまっ、おまえ! おまえええ! とり、とりのからっ、からあげをおおおお!」 爪で頬や頭をかきむしり、血と涙の混ざった滴を垂らしながらアスファルトの地面をずりずりと這いすすむ。 「それっ、食べ物! とりっ、がああ! いっぱい……う、ふうううううっ、うえええええ!」 嗚咽を漏らしながらも首を振り、ガタガタと震える片手を伸ばすヒヨコさん。 「とりはっ、とりはなあ! 檻からっ、ずっと……あああっ!」 目の前に落ちた唐揚げを手に掴み、口をあわあわとさせつつも目を大きく見開く。 「人間がっ! そうやって! だめだろおお! やめろって、いって、だあああああああ!」 すぐそばのコンクリート壁にぶつかって落ちる唐揚げを振り返って絶叫するヒヨコ。目からはついに血の涙が流れ、唾液が散るのも構わず四つん這いのまま老人にすがりつく。 「うつのっ、うつのをやめろおおおおおうああああああああああああああ!!!!」 以上。もしこのお話がアニメ化された際に動きの無いアニメだって言われないよう用意したシーンでした。 暗い自動車倉庫内、『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)は懐から一膳の箸を抜いた。 「What a Friend we have in Jesus, All our sins and griefs to bear――」 ゆっくりと顔の前に唐揚げを。箸を上へを向ける。 「What a previlege to carry Everything to God in Prayer――」 くちづけをするように、ゆっくりと唐揚に息を吹きかけると、脳内安全装置をとても緩慢な動きで外していく。 「O what peace we often forfeit, O what needless pain we bear――」 それまで閉じていた目を薄く開け、リリはまっすぐに倉庫の扉を見つめた。 「All because we do not carry, Everything to God in Prayer――」 入り込む光を、網膜に焼き付ける。 「amen」 車庫のシャッターを開いた郷は、とても穏やかな表情で言った。 「一年越しのセルフオマージュって……いいよな」 ●年をとると油ものが欲しくなくなるんだよねと話しながら唐揚げをがつがつ食う大人って……。 たいして想像力を必要としないシーンである。 なのでリラックスして、ポテチでも食べながらご覧頂きたい。 「唐揚げ歴65年のそのちから、見せてください!」 リリはアルコール消毒された網(ラーメンをサッサッて湯切りするやつのでっかい板)を手に唐揚げの雨へと飛び込んでいった。 乱射される唐揚げを身をひねって受け止める。束ねた髪が尾を引き、たまに熱々の油が滴となって散った。 受けきれない分を歯でくわえ込み、そのまま噛み千切る。 最初は衣の堅さにかみ切るのは難しいかと思わせておいて、実際顎に力を入れるとすぐに表面が砕け、柔らかくつけ込んだ肉へと歯が至った。まるで綿でも噛んでいるのかと錯覚するが、それは衣と肉のメリハリによるものである。 それでいて歯ごたえ自体はしっかりと残っており、肉の内側は繊維が引き締まり、最後まで噛み千切ろうとするならもうひと力必要になる。つまり最初のエネルギーが無駄にならない程度に受け止めてくれると言うことだ。 当然揚げたての状態なので歯の先端に熱さを感じるが、既に肉汁で熱さに慣れた口内には丁度良い刺激だと言えるだろう。 そうした絶妙な食感に酔いしれようと思った矢先、熱さに慣れた舌がようやく衣の微妙な塩加減をとらえてくれる。恐らく柑橘系の果物と醤油そしてみりんを配合して煮込んだソースを乾燥させ、粉末状にして衣に混ぜ込んでいるのだろう。まるで専用のソースが表面に薄く塗られたような味わいが広がり、それでいて油のもったりした重さを一切感じさせない。うっかり飲み込んだことに後悔するも、鼻から抜ける鶏肉と醤油の香りに慰められる。 なるほどこれが65年の力か。 リリはがくりと膝を突いた。 「あのおじいさん……ただ者ではありません」 「それは革醒的な意味でか? それとも唐揚げ的な意味か?」 鉄扇で唐揚げを払っていた晃だが、彼の脳内でイドが語りかけてきた。 『スキャン完了。一般人と判定。アーティファクトの影響下にあり、肉体が保護されています。通常戦闘による非殺傷鎮圧が可能です。不殺スキルを利用すればより安全に鎮圧できるでしょう』 電子的に籠もった調子に加工されていて、なんか昔ロボ系のアクションゲームでこういうのあったなあと晃は思った。 あと自分に飛んできた唐揚げを鉄扇で落としたら、ヒヨコさんが足にすがりついて『とりっ、とりが! あああっ! それ! ころしたような、もっ、あああああ!』と血の涙を吹き出しながら絶叫したのでやめた。うしろめたいったら。 「……じゃあ、飛んでくる唐揚げをどうにかできないか」 『逆ベクトルのエネルギーを加えての無力化を提案します』 「やってくれ」 『了解(ラージャ)』 イドは胸元にはめ込んだ鉄塊を奇妙に発光させると、両腕を架空の機関銃へと仮想変換。前方へと乱射した。 するとどうしたことか! からあげが! 粉々になったではないか! 「うあああああああああああああ! おまっ、おまえ! もう! やめ……うぁっぐ、んぐ……ぐ……お、おいしいだろ! こん、こんなおい、おいしいから! う、う゛ず゛な゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 壁に飛び散った肉塊を必死に舐めとりながらヒヨコさんが絶叫した。 イドは世にも申し訳なさそうな空気(あくまで空気)をして腕を下ろした。 ちなみに郷は。 「唐揚げを足でトラップして俺のお口にシューット! 超エキサイティン!」 「食べ物を足蹴にするというのは、些か乱暴が過ぎましょう」 と、後ろから永に肩ポンされて硬直していた。 「ほ、他の方法試してみようぜ。32キンバレイちゃんいけるー?」 振り返る郷。 全裸一歩手前で路上に転がる38キンバレイ。 「この痛みと熱さが、むちとろーそくに似てます。おとーさんも緊縛大好きで、よく寝る前にはきんばれいをきんばくれいして野戦にとつにゅうします」 「…………」 「はふ、でも唐揚げも、あはぁん、すご、すごいですぅ。おとーさんに夜――」 「はいアウトオオオオオオオ!」 その辺のシーツでばさーっとキンバレイを覆い隠す郷。 「ふう、危なかった。もう少しの所だったぜ」 「俺には既にアウトを通り越してるように聞こえたんだがな。まあいいか……他に誰か」 振り向く晃。 フェリシーが鍋を頭に被ってぷるぷるしていた。 「やめてください! いぢめないで! 日本人大好きです! お寿司食べます! 私食べても美味しくないですよー!」 そう言いながら壁の向こうへとずずずーっと入っていった。 こいつはダメか。そう思って逆方向を振り向くと。妙にいかつい顔をした守(28)がいた。 「フォーチュナの野郎いい加減なこと抜かしやがって。一発狙う間に百発撃ってくるじゃねえかい!」 「黙ってろ太田吠埼」 「スパロボ出演おめでとうございまグワー!」 「太田吠埼ィィィィィィ!!」 唐揚げを網で受け止めてれば安心ですよみたいなこと言っていたからか、守(28歳アニメダイレクト世代)は吹っ飛んでいった。唐揚げがあたってなぜ吹っ飛ぶのかなんて、考えちゃいけないよ。 「こうなったらおじいさんから道具を取り上げるしかねえ!」 郷はリリたちが唐揚げ受けて(喰って)くれてる間に後ろから回り込み、おじいさんを羽交い締めにした。暴れるおじいさん。 「ええいっ、道具から手をはなしやがれ!」 「ワシを戦線から外すな! 死ぬまで戦わせろい!」 「ああ龍田つながりで?」 「でもそれ姉のほうですよね」 「お前ら和んでないで手伝え! 一条さんっ、道具! 道具落として! あと晃ジャスキャ!」 おじいさんに頭でごっつんごっつんやられる郷をよそに、永は間隙をつくように急接近した。 「お仕事ご苦労様です。65年培われた職人技、どうか粗末に扱われませぬよう」 薙刀を返すと、鐺でもってからあげばるかんをたたき落とす。 更に、晃ががら空きになったおじいさんの胸にありったけのジャスティスキャノンを叩き込んだ。 ほげーとか言いながら崩れ落ちるおじいさん。 そしてたたき落とされたからあげばるかんは……。 「唐揚げの味がするかもしれません。そしてそんなばるかんを食べたきんばれいをお父さんに食べてもら――」 「アウトオオオオオオオ!!」 発キンバレイにばりばり喰われたのだった。 ●多分これは武器ドロップしたらいけないものなんだろうってベニーはベニーは自粛してみたり。 あとに残ったものはなんだったのか。 『だいじょうぶ。とりだから。だいじょうぶだから』と言いながら地に散った肉片をぺろぺろ舐めるヒヨコさん。 鍋にしこたま溜めて置いた唐揚げをどこかほくほくした顔でタッパーへ移す永。 『アヴェンジャー大好きなんでしょ? ね?』とちゃぶ台挟んで他人と茶を飲む守 『勘違いしないでよね。ミリオタを釣るために兵器ネタを使ってるだけなんだからね』と言って茶をのむ知らない人。 帰ったらこの唐揚げでおとーさんとうふふみたいなことを喋るアグネホイホイ。 『いやですしにたくないですわたし揚げてもおいしくないです』と言って車庫の隅で震えるフェリシー。 そして骨と皮だけになったおじいさんがプルプルしながら『からあげーからあげー』と呻いていた。 「お、おい、このじいさんヤバいんじゃないのか?」 「老人の痴呆は打ち込むものを失ってから加速するって言うしな……一応被害者の一般人だし、助けてやれないもんか」 おじいさんを抱え起こす郷と晃。 二人はそろって頼りの仲間へ振り向いた。 「どうにかできないかイドえもん!」 「………………」 イドはキンバレイに完食されたからあげばるかんの破片を見つめてじっとしていた。 「唐揚げが無限にと言いますが、果たしてそうでしょうか。これはもしや老人の抗生物質を変換しているのやもしれません。つまり我々が食べた唐揚げは鶏ではなく……」 「おいイキナリ恐いこというな」 「では試験的にそこの閑古鳥様を揚げてみるのはどうでしょう。『とりの無念を晴らす』と言って自らの唐揚げ粉をまぶしているようですし」 「今すぐやめさせろおおおおおお!」 おじいさんを放り出してヒヨコさんへと全力疾走する男たち。 そんな彼らを背に、リリは懐(どこだろう)から紙袋を取り出した。 「今の私が出せる全力の唐揚げを、どうぞ」 「か、からあげぇ……」 八段階にまでレベルをあげ今や4800GPすると言われる唐揚げを、リリはおじいさんの口へと入れてやった。 「ふはっ!」 すると、老人はバネでも仕込んでんのかってくらいの勢いで起き上がり、目をかっぴらいて言った。 「控えめな表面構造の中に過剰なまでの刺激を詰め込むこの姿勢。現代の若者向けに試行錯誤を重ねたと見える! 名付けるならばそう……『脱いだらすごいからあげ』!」 おじいさんはよっこいしょと言って立ち上がると、メモ帳になにやら走り書きをし始めた。 「いいアイデアが浮かんだわい。明日から開発に入らねばならんな。お嬢さん、名は」 無駄にキリッとしたおじいさんの視線を受けて、彼女は青い目で言った。 「リリ・シュヴァイヤー」 これから数日後、日本唐揚協会に新たな旋風が巻き起こった。 話の収集? 知らないねそんなものは。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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