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Fancy may kill or cure. (病は気から)

●Fancy may kill or cure.
(病は気から)
 ――英語のことわざ
 
●ファイアスターター・ウィッシュズ・ハー・バウンスバック

 2013年 9月某日 某所
 
「やっと見つけた――ぜ」

 とある建物の一室。
 その中で一人の青年が数枚のメモを手に呟く。
 呟く声は重く、万感の思いがこもっているのが感じられる。
 表情もいつものように不敵な笑みではなく、厳かな面持ちだ。
 
 白い燕尾のドレスシャツ。
 対照的に黒いジーンズ。
 そして、シャギーの入った顎までの髪。
 
 彼は三宅令児。
 種々雑多なアーティファクトの蒐集を目的とし、構成員としてフィクサードを擁する組織。
 ――キュレーターズ・ギルド。
 その一員である異能者だ。
 
 椅子やソファの類があるも、令児はそうしたものには目もくれず立っている。
 そして、彼が立つすぐ傍にはベッドが一つ。
 ベッドには、長い黒髪が目を引く、十代と思しき少女が横たえられている。
 
「静、待っててくれよ――な」
 ベッドの少女に向けてそう呟くと、令児は部屋を後にする。
 廊下に出た令児。
 すかさず彼に、誰かが声をかけた。
 
「――見つかったのかい? 『トールツィア』が」
 かけられた声は中性的なもの。
 令児は声の主が誰だかわかっているのか、振り返って確かめもせずに答える。

「ああ。ようやく見つけた」
 それだけ言うと、令児は部屋の外へと出ていこうとする。
 
「僕も行くよ」
 令児が横を通り過ぎる瞬間、先程の人物がもう一度声をかける。
 ほっそりした体躯に、肩まで露出した上衣。
 顎までの髪と、可愛らしい顔立ち。
 ――三鷹来人。
 彼も令児と同じく組織の構成員にして異能者だ。
 
「いや、コイツぁ俺の戦いだ。俺一人でやらせてもらう」
 助力の申し出にも、令児は即答する。
「どうしてだい? 言ってみれば、同じ組織のよしみじゃないかい?」
 なおも言う来人。
 だがそれでも、令児の意思は変わらないようだった。
 令児はそのままドアノブに手をかけようとする。
「あの子の為なんだろう? だったら――」
 問いかける来人。
 令児はゆっくりと振り返る。
 
「同じ組織のよしみだから、な。正直、神秘の世界のコトに首ィ突っ込む以上、何が起こるかわらかねェ。だから、お前まで一緒に首ィ突っ込んで、何かあったらどうするよ? それこそ組織にとっちゃ損失ってコトになる」
 一人で行くという確固たる意志を感じさせる令児の声。
 しかし、その声音には拒絶や隔意の感情は感じられない。
 
「テメェ勝手な目的で入ったようなもんだけどよ。それなりに長くいれば、やっぱしそれなりに情もわくんだよ――組織にも、お前みたいな仲間にも……な」
「令児……」
 
 それきり無言になる来人。
 そして、令児はドアを開け、部屋の外へと踏み出して行った――。
 
●デモリションマシン・サーチス・アーティファクツ

 2013年 9月某日 アーク ブリーフィングルーム
 
「集まってくれてありがとう」
 リベリスタ達を迎えるイヴ。
 既に彼等も依頼内容を聴く体勢だ。
「今回の依頼はとあるアザーバイドの討伐。まずはこれを見て」
 それだけ告げると、イヴは端末を操作する。
 すぐにモニターに一枚の画像が映し出される。
 
 映し出された画像を見たリベリスタ達は一様にあるものを連想した。
 腕と脚はそれぞれ二本。
 胴部の上には頭部があり、形だけなら人間と似ていなくもない。
 
 だが、その全身は鋼鉄の装甲に覆われている。
 加えて頭部にはセンサーと思しきものが一つだけ。
 それ以外の器官は見当たらず、まるで単眼の様相を呈している。
 
 ――ロボット。
 今、リベリスタ達が見ているのは、典型的なロボットのイメージの一つだ。

「これが今回の標的。『破界器を砕く機人ズィオーネ』」
 リベリスタ達の視線が画像に集中したのを見て取り、イヴは説明を続けた。
 
「誰かが作った機械なのか、それとも、メタルフレームのような機械生命体なのか――それはわからない。わかっているのは『彼等』が異世界から来たということと、なぜかは不明だけどアーティファクトを破壊しようとする習性があるということ」
 そこで間を置くイヴ。
 ほどなくして、イヴはモニターの画像を見ながら再び口を開いた。
「とはいえ、アーティファクトの存在を感知する為のセンサー精度はそれほど高くはないみたい。でもね、その破壊達成率は決して低くはないみたいなの」
 
 リベリスタ達の表情に疑問の色がさす。
 それを見越していたかのように、イヴは告げた。
 
「『彼等』はね。アーティファクトがありそうな所に現れると、後は破壊を達成するまでひたすらに周囲もろとも壊し続けるの。そうしているうちにいずれはアーティファクトが破壊される。破壊するまで止めないんだから当然ね。わかると思うけど、『彼等』は思考も単純だから」
 
 喋りながらイヴは端末を操作する。
 すると画像が切り替わり、破壊されて廃墟のようになった風景が映し出される。
 
「『彼等』に危険なアーティファクトを排除させる……なんてことを考えさせる人もいそうなものだけど、これを見る限りでは止めておいた方が良いに決まってる。だって、結果的にはこっちの方が被害が大きいもの」
 
 イヴの説明に合わせて画像が次々に切り替わる。
 まず映し出されたのは、ズィオーネが単眼のセンサーからビームを撃っている画像。
 次いで出た画像の中は、『彼等』が手首から伸びた光刃を振るっている。
 
「『彼等』の目的が目的なだけあって、神秘に関連する対策もなされてる。それ抜きにしても、戦闘ロボットとしてそこそこ強いから気を付けて。今回、現れるのは八体。それと――」
 
 先程同じく、説明の途中であえて間を置くイヴ。
 そして彼女は画面を切り替えた。
 新たな画像にリベリスタ達の視線が集中する。
 
 映っているのは、細い紐が結ばれた小さな石だった。
 その石は『石』というよりは水晶に近く、透き通っている。
 更に特徴的なのは、ほのかな光を放っているということだろう。
 ほのかな光は、やはりほのかな暖かみを感じさせる。
 画像として見ているにも関わらず、リベリスタ達にはまるでそこに実物があるかのように、その暖かみが感じられていた。
 
「そしてこれが、ズィオーネが標的にしているアーティファクト……『トールツィア』」
 イヴが名前を告げると同時、画像がズームする。
「昔から存在していたアーティファクトで、様々な形でその存在は語り継がれている。名前もいくつもあって、『トールツィア』というのもその一つ。まるで流浪するように何人もの持ち主を転々としてきたアーティファクトでもあるの」

 リベリスタ達の視線が集まった所で、イヴは二の句を継ぐ。
 
「持っていると、勇気がわいてくる。絶望の中に希望を見いだせる――そんな気持ちになる。言ってみれば、気持ちが明るくなるラッキーアイテムね。大規模な破壊を起こしたり、世界規模で影響を与えたりするようなアーティファクトでもないし、有害なものでもない。あくまで無害なアーティファクト。噂や伝説としては、『勝負事の前にこれを手に入れられればきっと良い結果が待ってる』……そんなラッキーアイテムとして語り継がれてる」
 
 イヴの話しにリベリスタ達も興味を惹かれたようだ。
 それを察し、イヴは更に説明を続けた。
 
「そして、この石には本当にその力がある。ほんのひと押し。人の心を操るほどじゃない。でも確かに、このアーティファクトには、人の心に力を与える力があるんだよ」
 
 そこまで語り終えると、イヴは画像をズィオーネへと戻す。
 
「まあでも、今回はズィオーネの撃破に集中して。もし戦闘のゴタゴタでトールツィアが行方不明になったとしても、有害でもなければ、悪用できるものでもないし。元来、流れていくものだから。別に追跡や確保は後回しでもいい。今回はそれよりも撃破が優先」

 そう語ると、イヴは更に付け加えた。
「『彼等』が出現するのは、都内の骨董品屋の倉庫。つい先日から、『トールツィア』がここに置かれているみたい。『彼等』との遭遇時刻は夜遅く。人通りがないのが幸い」
 説明しながらイヴは地図を画像として出す。
 やがて、リベリスタ達全員が画像を見終えたのを見計らうイヴ。
 そして、イヴはリベリスタたち一人一人の目をしっかりと見据え、言った。
「危険なアザーバイドを放っておくのも、罪の無い人がそれに巻き込まれるのもあってはならないこと。何としても防がないといけない。だから、その為にも――みんなの、力を貸して」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:常盤イツキ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2013年10月06日(日)22:52
●情報まとめ
 舞台は都内某所の倉庫。
 敵はアザーバイドが8体。
 そして第三勢力としてフィクサードが1人。
 
 敵のスペックとスキルは以下の通り。

・スペック

『破界器を砕く機人ズィオーネ』
 そこそこの強さを持つアザーバイドです。
 各種武装に加え、強固な装甲に覆われています。
 
・スキル

『アンチエリューションビーム』
 神遠単
 頭部のセンサーからビームを発射します。
 
『アンチエリューションセイバー』
 神遠範
 手首からビーム刃を形成し、薙ぎ払います。
 薙ぎ払う軌道の為、『範囲』に攻撃が可能です。

『ショルダーマシンガン』
 物遠単
 肩部に搭載された機銃を発射します。
 
『格闘』
 物近範
 装甲に覆われた腕を振り回します。
 ラリアットのように振るうので、『範囲』を攻撃可能です。
 
『アンチエリューションバリア』
 任意発動(A)自
 神秘攻撃に対する防御力を得ます。
 
『強化複合装甲』
 常時発動(P)自
 物理攻撃に対する防御力を得ます。

・スペック
 
『三宅令児』
 そこそこの強さを持つフィクサードです。
 異世界の一つである『喧乱業火なる炎界フィアンマ』からの影響に由来する異能を持ち、炎を操ります。
 今回は第三勢力としての登場であり、上手く利用すれば『ズィオーネ』を攻撃させられます。
 また、今回は彼を無理に倒す必要はありません。

・スキル

『火山砲(ヴォルカノン)』
 神遠単
 拳で地面を殴ることにより、異能の力を地中に伝導させ、標的の足元で爆発させる技です。
 爆発地点からは火柱が立ち上り、標的を燃焼させます。
 一定確率で【業炎】のバッドステータスが発生します。
 
『火速するぜ猛牛のごとく(ブレイジングブル)』
 物近単
 炎を背後に向けて噴射することにより、ジェット噴射の原理で推力を得て加速し、その勢いを乗せて繰り出すダッシュストレートです。
 肘からも炎を噴射しているので、パンチのスピードも加速しています。

『火を点けるぜ、騎士の魂に(イグナイト)』
 付近複
 異能の炎を拳や武器に纏わせる技です。
 炎を纏わせることで攻撃力の上昇及び、一定確率で【業炎】のバッドステータスが発生する効果が付与されます。
 効果は一定時間持続します。
 また、効果は令児の任意で解除が可能です。

『????』
 神近単
 三宅令児の切り札にあたる技で、滅多に見せることはありません。
 どうしても追い詰められた時にはじめて使う可能性が出てきます。
(逆に言えば、一度も使用せずにシナリオが終了する可能性もあります)
 攻撃の種別は『神秘属性の近距離単体攻撃』。
 一定確率で【業炎】のバッドステータスが発生します。
 どんな技かの詳細は現時点では不明です。
 
●シナリオ解説
 今回の任務はズィオーネの討伐が目的です。
 令児はそこそこの強さを持つフィクサードですが、とある条件を満たすと戦闘を中止して撤退していきます。
 また、彼と戦闘する場合でも、別に殺傷せずとも、ある程度までダメージを与えれば撤退していきますので、シナリオは成功となります。
 今回のシナリオも、クリア条件を満たす方法は一つではありません。
 リプレイを面白くしてくれるアイディアは大歓迎ですので、積極的に採用する方針ですから、ここで提示した方法以外にも何か良いアイディアがあれば、積極的に出してください。一緒にリプレイを面白くしましょう!
 今回も厄介な相手が出てくる依頼ですが、ガンバってみてください。
 皆様に楽しんでいただけるよう、私も力一杯頑張りますので、よろしくお願いします。

 常盤イツキ
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
インヤンマスター
四条・理央(BNE000319)
クリミナルスタア
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
ナイトクリーク
リル・リトル・リトル(BNE001146)
覇界闘士
★MVP
設楽 悠里(BNE001610)
ホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
クリミナルスタア
晦 烏(BNE002858)
■サポート参加者 4人■
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
クロスイージス
日野原 M 祥子(BNE003389)
ダークナイト
黄桜 魅零(BNE003845)


「……ッ! コイツぁ、厄介なコトになったぜ……!」
 とある倉庫の前。
 機人――ズィオーネ達の猛攻をなんとかしのぎながら三宅令児は物陰へと退避する。
 所々に傷を負い、苦しげに息を吐いた瞬間。
 彼のポケットで携帯電話が振動する。
 
「キョーコ……!?」
 着信画面に表示された名前は久しく見ていない名前だ。
 そのせいか、令児は戦闘中にも関わらず咄嗟に電話に出ていた。
『――今から10秒後。そこから通りを一つ隔てた右隣の路地まで来てください。機人は私達でかく乱します』

 令児は腹を決めると、指定された場所へと駆け込む。
 そこで令児は因縁のある人物を目の当たりにした。
「舞姫……!」
 見覚えのある携帯電話を手にして立つ少女――戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)。
 そして、彼女とともにいるのは十一人ものリベリスタ達。
 舞姫の持つ携帯電話は、かつてアークに捕縛された令児の仲間である金意キョーコから借り受けたものだ。
 
「何のつもりだ?」
「あのアザーバイドはトールツィアを狙っている。ここで倒しておかないと困るのは、お互い様ですよね? だから、あなたに共闘を申し込みます。もちろん、タダとは言いません。私達アークはあなたがトールツィアを持ち帰ることに関知しませんし、もし、私達が先に手に入れた場合はあなたに譲渡します」
 迷いなく言い切る舞姫。
 まだ警戒しているのか、令児は返事をせずにただ沈黙するのみ。
 
「よう、三宅令児さんだな? ……リィスさんは元気かい?」
『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)も令児に話しかけた。
 場をほぐすように話しかける彼は、柔らかな笑顔を浮かべている。
 共通の知人の名前が出たからだろうか。
 警戒心に満ちた令児の雰囲気が僅かに和らぐ。
「リィスなら元気にしてるぜ。アークにやられてから、フィクサード稼業からはめっきり足を洗ったみたいだしなァ」
 
 僅かにほぐれかけた空気をぶち壊すように、重厚な足音がやかましく響く。
 先程かく乱した機人の群が、令児を追って現れたのだ。
 間髪入れず肩部の機銃を乱射してくる機人。
 令児を狙った銃弾が肉迫する中、『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)が間へと飛び込んだ。
 ガントレットに鎧われた両腕をクロスさせ、悠里は機銃弾から令児を庇う。
「僕達はズィオーネの討伐に来たんだ。トールツィアは譲るよ。助けたい人がいるんでしょ? なら僕は君を助けたい。コイツらはトールツィアを破壊しにきたんだ。倒すのに協力してくれないかな?」
 
 悠里は令児を庇ったまま、あえて無防備な背中を向けたままで令児に語りかけた。
「信用していないのに信用してくれなんて言えない。だから僕は君に無防備な背中を向ける。もし攻撃されても絶対に反撃しない。大切な人を助けたいという君の気持ちを信じるよ」
 
 令児は予想外の行動に唖然となる。
 そんな彼に晦 烏(BNE002858)が声をかける。
「うちらは機人の殲滅が仕事でね、『トールツィア』は譲るぜ」
 敵意など感じさせない様子で烏は続ける。
「三宅君な、今回は共闘と行こうじゃねぇか。それに、妹さんの為って言うならば尚更だ。普通に考えりゃ胡散臭いもんだが、アークは敵対者にも甘いのよ。信じ難いと思うがね、その好機には甘んじときな。そちらにとっちゃ好機だ、おじさん達を利用したと思えばいいさ」
 
 困惑の色を見せる令児。
 どこか彼を諭すように、『』四条・理央(BNE000319)も言葉をかけた。
「皆も言っての通り、ボク達は令児君と敵対するつもりはない。むしろ――」
 続く言葉を強調するように、理央はあえて間を置く。
「――敵対しない限りは『味方』としてこちらの行動を選択するつもりだよ」
 
 理央に続いて口を開いたのは『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)だ。
「正直、験を担ぐというのがよく判らないのよね。パンは常にバターを塗った側を下にして落ちるわ。でも判らないからと否定するわけでもないのだわ。そもそも世の殆どの事は判らないのだから」
 令児に向け、エナーシアは頷いてみせる。
「お互い冷静に参りませう。戦争は外交の最後の手段なのだわ。最初からそれしか無い機人の方々とは違うのよね?」
 
 エナーシア達の言葉に揺らぐ令児。
 それを後押しするように言ったのは『小さな侵食者』リル・リトル・リトル(BNE001146)。
「誰のためか知らないッスけど、大事な人なんスよね。だったら、うだうだしてないでさっさと届けろッス。何の憂いもなくなったら、改めて喧嘩を申し込むッスからね」
 そう言って拳を構えるリル。
 
 まるで彼女の言葉を強調するように、『さいきょー(略)さぽーたー』テテロ ミーノ(BNE000011)、『友の血に濡れて』霧島 俊介(BNE000082)、『蜜月』日野原 M 祥子(BNE003389)、そして『骸』黄桜 魅零(BNE003845)の四人も令児を庇うように前へと出る。
「フィクサードは嫌い。でも令児さんの事情は心が打たれた」
 そう呟く魅零。
「あたしの直感でトールツィアの位置がわかればすぐに教えるわ」
 祥子は力強く頷いてみせる。
「ミーノは……みんなをかいふくすることで、みんなといっしょにたたかうのっ! それにはれーじもはいってるんだよっ!」
 その言葉に違わず、ミーノは詠唱で清らかなる存在に呼びかける。
 そして、やはり言葉に違わず、その癒しは令児にも及んでいた。
 彼に向けて、俊介も言う。
「おい令児、静ちゃんが笑ってくれるといいな。だから死ぬ気でトールツィア持ってけ」
 
 まさか本当に傷を治療してもらえるとは思わず、令児はまだ驚いたままだ。
 その横を通り際、『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)が声をかけた。
「ご機嫌麗しゅう、三宅君。僕らのオーダーはアザーバイドの討伐。だから今回はアーティファクトは譲るよ。誰かを救うために使うんなら、止める必要はないからさ。心を救うなんてそう簡単にできることじゃあないからね。今回は貸し一つってことで持って行きなよ。貸しが嫌ならこのアザーバイド倒すの手伝ってよ。それでトントン。悪い取引じゃないだろ?」
 彼もまた、無防備な背中を晒す。
 そのまま振り返らず、夏栖斗は令児に言った。
「――そのかわり、絶対に救えよ」
 
 遂に令児は呆れたような顔になる。
「ッたく、どこまでもオメデタくてお人よしな連中だぜ……けどよ、嫌いじゃあねェぜッ!」
 リベリスタ達に向け、令児は笑みとともに言い放つ。
「上等だッ! 共闘でも何でもしてやらァな!」
 一斉に頷く十二人のリベリスタ。
 これを合図としたように、十二人プラス一人は一斉に動き出した――。
 

 舞姫は機人達をあえて自分に引き付け、その攻撃を一手に引き受けていた。
 鍛え上げられたスピード、そしてミーノからのバックアップのおかげで何とか持っているものの、楽観視してもいられない状況だ。
 だから祥子は身を挺し、舞姫を庇う。
「舞姫さん!」
 間一髪で舞姫の危機を救った祥子。
 だが、それも束の間。
 機人の一体がビームの狙いを、被弾したばかりの祥子へとつける。
 ビームが放たれるまさにその瞬間。
 まるで砲声のような銃声が響き渡った。
 
 銃声とともに放たれたのは大口径のライフル弾。
 火炎を纏った銃弾はl射線上にあったコンクリートブロック塀を易々と貫通し大穴を穿つ。
 銃弾はそのままビーム発射準備に入っていた機人の頭部に命中。
 狙い過たず頭部に炸裂したのは確かだが、それでもセンサーの完全破壊には至らない。
 
 破損寸前なのも構わず機人はビームの発射態勢に入る。
 焦る祥子。
 それとは裏腹に、落ち着き払った声が言った。
「やはり機人の方々は壊す事しか頭にないのだわ。どうみても本命の一撃が実は布石だったなんて思いもせずに。まあ、そう思い至るだけの頭があれば、もっとスマートに破壊ができるのでしょうけど。烏さん――」
「はいな」
 エナーシアが合図した直後、先程のよりかは控えめな銃声が鳴り渡る。
 通り一つ隔てた所から放たれた銃弾はやはり炎を纏っていた。
 まるで針の穴を通すように、銃弾はブロック塀の穴をくぐり、機人のセンサーを撃ち抜く。
 そのまま機人は機能停止し、立ったまま動かなくなる。
 
「地権者には悪いがね。ちょうどそのブロック塀が邪魔だったんだよ」
 次弾を装填しながら言う烏。
「強化複合装甲とやらがどの程度か判らんがね。隙間をぶち抜いちまえば強固な装甲も役には立つまいさ」
 体勢を立て直し、祥子は烏に向き直る。
「助かったわ。それと、その銃弾……」
「いいってことよ。ああ、これね。『彼に点けてもらった』んだ」


「いくよっ!」
「応よッ!」
 阿吽の呼吸で疾駆する悠里と夏栖斗。
 悠里は左から、夏栖斗は右から機人の一体へと肉迫する。
 夏栖斗の拳が炸裂すると同時に叩き込まれる凄まじい『気』。
 機人がそれに怯んだ瞬間、狙い澄ましたように雷撃を纏った悠里の拳も叩き込まれる。
 完璧な連携によるクリーンヒット。
 だが、機人は衝撃にかろうじて耐える。
 更には、反撃とばかりに機人はビーム刃で二人を薙ぎ払いにかかった。

「大丈夫か!」
 ビーム刃を受けた二人の為に、エルヴィンはすぐに高位存在の力の一端を詠唱で具現化して傷を癒す。
「ありがとな、エルヴィン」
「ああ。助かったよ」
「無事で何よりだ。さて、こっちも反撃といこうぜ?」

 回復した悠里と夏栖斗は再び拳を構える。
「けど、どうする……?」
「ああも硬いと、厄介だな」
 機人を前に様子を窺う二人。
 そんな彼等に水を向けたのは令児だった。
 
「確かに、硬ェけど……よ。決してブッ壊せないわけじゃねェ。なら、もっと強い力をブチ込んでやりゃアいいだけの話だ」
 そう語ると、令児は炎を灯した手を小さく一振りする。
「「……!」」
 悠里と夏栖斗は同時に驚いていた。
 令児の使う異能の炎。
 それが自分達の拳に灯されているのだ。
 しかも、自分達の拳は何一つ焼かれていない。
 
「もう一度。今度はその状態でブン殴ってみな。次ァ、ブッ壊せる筈だぜ」
 令児に向けて頷く悠里と夏栖斗。
 直後、二人は機人へと一気に肉迫する。
 
 一方、機人も黙ってはいない。
 出したままのビーム刃を振るって迎撃にかかる。
「悠里!」
「夏栖斗くん!」
 合図はたったそれだけで十分だ。
 二人は同時にビーム刃を避ける。
 その上、機人が刃を振るった勢いを利用し、クロスカウンターで拳を同時に叩き込む。
 衝撃と『気』あるいは『雷撃』、更に今度は異能の炎が重なり、凄まじいエネルギーが機人の体内へと叩き込まれる。 
 それほどのエネルギーに耐えきれる筈もなく、機人は内部から爆発するようにして大破したのだった。
 

「成程。名前に違わず、対・神秘用の装備というわけだね」
 自分が放った魔力での砲撃。
 それが機人のバリアに防がれたのを冷静に観察しながら、理央は一人呟く。
 そんな理央に令児が問いかけた。
「一つ、聞いていいか?」
「何かな?」
「その魔力砲。バリアさえなけりゃあ、何発であのロボをブッ倒せる?」

 数秒の後、理央は淀みなく答えた。
「そうだね。二発、いや――バリアがなければ一発かな」
「上等だ」
 令児は握った拳を地面に叩き付けた。
 直後、機人の足元から火柱が立つ。
 しかしそれにも機人は何一つ混乱せずにバリアを展開し、火柱を防ぎきる。

「やっちまいなァ! みつ編みの姉ちゃんよ!」
 令児が合図すると同時、理央による魔力の砲撃が放たれる。
 砲撃は、火柱とぶつかり合ってほぼ相殺されかけていたバリアを軽々と吹き飛ばし、その向こうにいる機人を直撃する。
 バリアに頼り、無防備だった所に炸裂した一撃を受けて機人は大破。
 理央の言葉通り、一撃のもとに機能を停止する。

「やるじゃねェか。みつ編みの姉ちゃん」
「うん。魔力砲と火山砲。合わせて使ってみるのも悪くはない――それと」
 小さく笑みを浮かべて頷いた後、理央は付け足した。
「ボクの名前は理央。四条理央だ。みつ編みの姉ちゃんではないよ」


「完全攻撃の妙技、見せてやるッス!」
 電柱を足場に跳び上がったリル。
 一瞬前まで彼女がいた場所をビームが通り過ぎていく。
 
 ビームを避けたリルはそのまま機人の肩へと着地。
 そこを足場として再び跳躍に入る。
 
 先程からリルは絶妙な空中舞踏を演じていた。
 その身軽さを活かし、機人を翻弄するリル。
 既に機人の身体にはダメージが積み重ねられ、装甲も所々が破損している。
 リルはその武術の技量をもって、機人を圧倒していた。

「そろそろ決めにするッス――」
 リルがとどめの準備に入るのを待ち、令児が話しかける。
「なァ、ネズミっ娘。前にやり合った時に言ってたよなァ――「炎は好きッスよ」って」
「言ったッスよ。それは今も同じッス!」
 空中を跳びながら言葉を返すリル。
 会話しながらリルは質量を持った分身を空中で生成する。
「なら、せっかくだ。貸してやらァな。仕損じるなよ?」
 分身が生成されると同時。
 リル本人と分身両方の脚に炎が灯る。
 
 機人が状況を理解するよりも早く。
 リルと分身は炎を纏った飛び蹴りを一斉に機人へと叩き込む。
 攻撃の後、分身を消して着地するリル。
 その背後では、機人が爆散するのだった。
 

「壊させないわ。それで人が一人助かるっていうなら譲らない。壊すだけの機械に人の気持ちなんか解るもんか!」
 魅零は機人を黒い霧に巻き、黒い箱に閉じ込める。
「楽しい裁きの時間だぜ。ボトムに来ていきなり破壊活動とかダイナミックな挨拶どうもサンキューでーす。1000倍返しだ、覚悟しろ」
 黒い箱に閉じ込められた直後、俊介の放った裁きの光が機人を貫いた。
 やがて晴れていく霧と消えていく箱。
 その後に残ったのは、既に残骸と化した機人だった。
 

 リベリスタ達の活躍によって一体、また一体と数を減らしていく機人。
 ここにきて、ようやく機人は事態の重大さを理解した。
 急にリベリスタを無視すると、機人達は最も重要な目的へ向けて動き出す。
 とはいえ、歴戦のリベリスタ達によってブロックされた彼等は倉庫に近付けない。
 
 結果、彼等が下した結論は可能な限りの火力を一斉発射することだった。
 ブロックしきれなかったビームや銃弾が倉庫へと襲いかかる。
「やせるかよッ!」
 令児はその前に身を晒すと、流れ弾のすべてを身体で受け止める。
 そんな彼に、一体だけブロックを突破できた機人が襲いかかる。
 振り下ろされるビーム刃。
 その時、超高速でその間に舞姫が踊り出た。
 
 反射的に炎を舞姫の愛刀――黒曜に灯す令児。
 舞姫は炎を纏う刃でビーム刃のついた腕を溶断する。
 直後、令児は機人に拳を叩き込んだ。
 いつもは地面に伝導させる神秘の力。
 だが、今回は拳を通しての直接伝導。
 力は機人の体内へと浸透し、その身体を内部から爆破炎上させて巨大な火柱を立てる。
 舞姫と令児による、目配せ一つない見事な連携だ。
 
「零距離火山砲……ってな。『ギルド』の連中にも殆ど見せちゃいねェ、とっておきだぜ。お前だけだぜ? アークで見れ……」
 不敵に笑ってみせようとする令児。
 だが、既に深手を負っていた彼はその場に倒れ込んだ。


 激闘の末、機人はすべて破壊され、戦いはリベリスタ達の勝利に終わった。

「よぉ、生きてるみたいで良かったぜ」
 気絶していた令児を助け起こしたのはエルヴィンだ。
 既に彼によって令児の傷は治療されている。
 
 ややあって戦いが既に終わったことを理解した令児。
 彼に向け、舞姫は細い紐が結ばれた小さな石を差し出した。
「トールツィア……」
 令児が石をそっと握り締めるのを待ち、舞姫はまくし立てた。
「神秘の世界は、何が起こるかわからない。あなたも身に染みているはず……。そんな石コロ一つのために、運命を削り尽くしたらどうするんです。静さんに必要なのは、あなたでしょう? 大切な人のためだからって、簡単に命を投げ出すなんて欺瞞です。残された者の気持ちも考えずに、勝手に死なないで!」
「すまねェ。だが、よ。その石コロ一つで救える大事なモンもある……。それと、さっきは助かったぜ」
 礼を言って石を大事にしまい込む令児に、舞姫はかつて預かった写真を差し出した。
「あなたのためじゃない、静さんのためです」
 
 二人の会話が終わると、今度はエルヴィンが気楽な態度で、踏み込み過ぎない程度に言う。
「そうそう、アンタさ。もしどうしても叶えたい願いがあって、それが犠牲を生み出さないものなら。俺達に助けを求めてもいいんだぜ? フィクサードやリベリスタなんて分類、正直どうでもいいしな。ほら、とりあえず俺個人でいいからさ、番号交換しねぇ?」
 しばし逡巡した後、番号の交換に応じる令児。
「ああ、そういや。リィスがアンタに会いたがってたぜ。とびきりクールでクレバーな男だとかで、な」
 
 それだけ言うと、令児は踵を返して去っていく。
「妹さんお大事にだな、次はまたアーティファクト絡みでドンパチだろうがね。真摯に快癒を祈らせて貰うぜ。おじさん、請け負う仕事とは別の話だしな」
 令児の背に向けて言う烏。
 令児はただ、ひらひらと手を振るだけで応えると、そのまま歩いていく。
 
 こうして奇妙な呉越同舟は終わり、この一件は落着したのだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
参加者各位

 この度はご参加ありがとうございました。STの常盤イツキです。
 
 今回のMVPですが、『彼に無防備な背中を向ける、もし攻撃されても絶対に反撃しない。という説得方法のプレイングで令児との共闘実現に大きく貢献した』設楽 悠里さんに決定致します。
 そしてご参加頂きましたリベリスタの皆様、今回も本当にお疲れ様でした。
 どうぞごゆっくりお休みください。

 それでは、次の依頼でお会いしましょう。

常盤イツキ