● 私に触らないで下さい。 私に興味を持たないで下さい。 私を愛さないで下さい。 いつか、誰かが愛されたいなら愛するのだと言っていた。反吐が出る。 私が愛したのは一人だけ。私を愛して良いのも一人だけ。もう何も要りません。 道端で躓いた私。支えてくれた誰か。 「大丈夫ですか?」 なんて言ってくれて。優しい人なのでしょう、そう、素敵な人なのでしょう。 「ええ、えぇ、大丈夫? うん、うん、そうですね―――――」 ――――な、訳無いじゃない。 「え?」 「あぁ、あぁぁぁ! 気持ち悪い!! 私の事可哀想と思ったんでしょ! 私の事変な奴って思ったんでしょ!! そうよそのまま私の事なんか見ないで、見たら殺すわよ、ああ!! ほら見てるじゃない!! 気持ち悪い、好かれたくない、好かれたくない、独りでいい、独りが良い、独りでいさせて頂戴よ、ぁぁぁあああ!! 静かに暮らしていたいだけなのに、なんにもせず彼と一緒にいいいい!!!」 ビンいっぱいの精神薬を飲んでも治らない病気。赤色と白色のカプセルをがぶ飲みしながら彼女は笑いながら泣いた。 殺しましょう、殺しましょう。私に触れた誰かが紅く染まった。 私に興味を持った全てを。私に触れた誰かが動かなくなった。 私を見ないで、こんなに汚い私を見ないで。私は誰かの死体を運ぶ。 いけない、いけない。大切な水(血液)が渇いてしまう前に飲ませて撒かなければ、墓が荒らされてしまう。 死体は全部、地獄花のために埋めましょう。 埋めて、埋めて、沢山埋めて。血を撒いて。 貴方が眠っている土の中を荒らされないために。 ● 「皆さんこんにちは、今日も依頼をお願いします」 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達にそう告げた。 「今回は黄泉ヶ辻のフィクサードを討伐して欲しいのです。簡単に話せば道で目があっただけでも殺しに来る狂暴なフィクサードなので……できるだけ早急に処理したいのです」 フィクサードの名前は愛西・圓。幼くして親を亡くした彼女は、親戚を盥回しにされ、悲惨な生活を送っていた様だ。しかし、根性ある彼女は国立の大学まで這い上がっては心優しい男性に出会って幸せな生活を送っていた。 というハッピーライフは此処まで。 「神秘事件ですね。フェーズ2のノーフェイスに襲われた二人。一方は死に、一方は革醒しました。そこで彼女は悟るのです」 ――ああ、私が好きになった人は全て死ぬのだと。 彼女の優しさは歪んで狂い、もう戻れない。 「精神崩壊している彼女に言葉は通じません。更生はできないでしょう、此処で終わらせます」 舞台は彼岸花の咲き誇るフィールド。彼女の唯一の帰る場所であり、彼女の大好きな彼が眠る場所だ。彼岸花には毒があるため、彼岸花の下に死体を埋めれば動物等に掘り返される心配は無いのだ。 「彼岸花はおそらくエリューションかと。彼女が持つ如雨露は神秘的物質で、血を吸い、その血を飲んだ植物は神秘的影響を受けます。如雨露で全てを操っているのだとしたら、如雨露を壊さないと終わりは見えないものと思います。 敵の巣に飛び込む事は危険ですが……滅多に彼女は其処から出歩きませんし、出歩かれると無差別に人を殺すので、此処で叩きます。それでは宜しくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月05日(土)23:11 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 晴天が見守る下は、一面真紅の絨毯。 土を撫で、その下に居るであろう彼に話しかけるのは美女であった。 「ふふ、今日はとても良い天気なの………え? ふふ、そうね、そうだね……」 愛西・圓は彼女にしか聞こえない声と会話する。幻想世界に己を投じ、しかしそれが彼女の現実世界である。リベリスタ達に見えたのは、そんな圓の異様な後姿であった。 「ねえ、お客さんの相手はしない私なの。するならそうね、餌とかかなぁ」 「気配感知とは、案外鋭いな」 『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)から見える彼女はがゆっくり動いたと思えば、指先を影継の足下へ向けた。其処には踏まれた彼岸花が一つ折れていて。 影継が言葉を発する前に『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)がその状況を見て言う。 「おや、すまない。これだけ咲いていれば踏み所が無くてな。しかし随分素敵な花畑だが血の色は薄汚いな、そうは思わないか?」 「……」 会話を聞きながら『大雪崩霧姫』鈴宮・慧架(BNE000666)は、「本当に綺麗なんですけどねぇ」と呟いた。慧架自身、この赤く燃えているような花は嫌いでは無い、むしろ逆であり。 「恋人がいる場所は其処ですか? あぁ、何と報われない……愚かで哀れなフィクサードちゃん」 『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)は言葉とは裏腹に肩が面白いと上下に震えた。 再び圓の指は動いた。次に指先を向けたのはユーヌだ。 「ユーヌ・プロメースだね。そっかぁ、遂に私のところにもアークっていうのが来たんだね」 「そうだ。暗い土の底、彼氏の元に返してやろう。一つになって花を咲かせてろ」 「ウフ……うふふ、うふふふふふふふ!!!」 「どうした? 頭もおかしくなったか。いや、元々から理解はできんがな」 「――――いいよぉ!! 殺されて死ねェ!! この餌共がァッ!!!」 「会話、如きもできないのか」 ● 救いは無い。襲ってくるのは、目下彼岸花の群。 「ぉまぇらなんかぁ花々の養分になって一緒に彼と彼と彼とぉぉ!!」 説得もできない。圓が持っている如雨露が淡い光を放ち、それは彼女の怒りにも見える。圓は走り出し、おそらくナイトクリークの十八番であるダンシングリッパーを叩きこみに来るのであろう。出血を促すその技は、如雨露と彼岸花にとって相性がいい。 「やれやれ」 もしかしたら未来のリベリスタの姿かもしれない。けれど、殺せというなら殺すしかない。 『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)は利き手を擦らせてパチンと音を出した。その瞬間、一面の赤さえ見えなくなる程に眩い光が放たれたのだ。 「道を作ります、行ってください!」 「あいさ」 レイチェルの攻撃に怯んだ花々の間を通り抜け、『Type:Fafnir』紅涙・いりす(BNE004136)が狙うのは圓本人。 「彼岸花の花言葉は情熱」 「あっはァ! ご名答、情熱的に殺されたァい?!」 いりすは太刀を振り落すが、その腕に巻き付いて来たのは彼岸花たちであった。されどいりすの力は、彼岸花を強引に千切って刃を進ませようとする。そして、その剣が切ったのは彼岸花で。 「花だらけよな」 「イーーーーヒャハハハ!!!」 花の間から見えた圓の顔は、崩れてしまうんじゃないかと思える程に歪んでいた。 直後、二人の頭上から大量の水が襲い掛かった。それはユーヌの攻撃であったが、彼女より圧倒的に速度が速かったいりすが圓の抑えを行ったがために一緒に波の下敷きになってしまった。 後で謝るかと頭を掻いたユーヌはクールそのもので、その隣に居た『尽きせぬ想い』アリステア・ショーゼット(BNE000313)が直後神秘を繕うのだ。与えるものは翼であり、それが仲間を護る様にと祈りを込めて。そして歪んで笑う彼女へ―― 「大好きだったんだよね、その人のことが」 小さく笑い、それでも瞳の紫は悲しいと叫んでいた。そう、ただ大好きだった、ただそれだけだったのに。 高笑いが響いた直後、烏頭森は漆黒のカードを投げ、投げ、投げては花を狩り始めた。その手際の良さと言えば、なかなかのものであったのだが、どうにも数が多い。 「ま、いいですよ。沢山狩れるのは楽しいですし……そういう壁頼りの戦法が崩れた時の彼女の顔が楽しみでっすし!」 やる気に満ち満ちした烏頭森。そのまま止まる事を知らぬという様に、カードは空中を走って行った。貫き、穿て、不吉を彩る我が武器よ―――その先にあるものが、己の心を満たすと信じて。 リベリスタの攻撃は続いた。元々力量差が圧倒的にリベリスタの方にあったのだ、しかし揃えられた彼岸花と犠牲者という盾も終わる事を知らず。 「これはちょっと邪魔ですねぇ……」 慧架の鉄扇が、圓を穿つ前に死体を一つ穿ったのであった。刹那、その死体は燃え上がり、セルフ火葬しながら地面に崩れていく。この人も人であっただろうに、と慧架は一度だけ手を合わせてまた違う敵へと飛びつくのだ。 「キリが無いですよぉ」 と、唇を尖らせた慧架だが、正反対に 「見渡す限り、一面全部敵か。こいつは攻撃のし甲斐があるぜ」 と笑ったのは影継であった。影継の背こそ高いものだが、それ以上に大きい斧を彼は持ち上げた。 呪いの通さない神秘を纏い、そして彼は背中に添えられた翼で花と死体の上を飛んだ。狙う、圓が影継を見上げていた――しかし彼岸花が彼女を護る様に壁を作っていく。まだ、声をかけられそうにないかと些か落胆しつつ、 「雑魚は気にすんな! 斜堂流、緋華散(ひばなちらし)!」 振り上げた斧を、土を抉るように右から左へと流していく。ぶん、と風を切った音は轟音でもあり――根から断たれた花たちが舞った。直後。『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)は動き出したのだ。 「今からそっちに行くよ☆」 圓には聞こえなかっただろう、その宣言を落とし。葬識は鋏を開いて、土を蹴り、空中を駆ける。 此方の世界ではよくある不幸なのだ。よくあるからこそ、乗り越えられた者と乗り越えられなかった者で、その後の人生を大きく揺さぶる。圓―――乗り越えられなかった彼女こそ、ココロが彼岸へ向いてしまった悲しい存在の象徴とも言えるだろう。 なら、身体だけ此処に在る彼女をどうすればいいか。それくらい殺人鬼だって弁えている。 「向うに、送ってあげるよ☆ 俺様ちゃんが愛するんじゃなくて、愛西ちゃんが殺されたいから殺すんだ」 葬識の、ダークナイトの最大の凶業である奈落剣は―――しかし、死体が彼女への引導を阻むのであった。 「ふむ、花が邪魔だな」 十秒かかって、再びユーヌは動き出した。次は水攻めでは無く、言葉による暴力。 「さて遊ぼうか? 鬼さんこちら手の鳴る方へ」 その言葉は神秘のベールに包まれ、刃は敵の怒りを買う。なに、少しの間集中攻撃を受けるくらいの事はユーヌ慣れっこである。 「さぁ、ここからは死へ一直線だぞ。足掻いてもいいが、無駄と思え」 そのままユーヌは彼岸花の花の中へと消えていった。しかし、一番ダメージを負う彼女を、アリステアが放っておくはずは無いのである。 更に、敵が集まっているとここぞとばかりにレイチェルは動いた。神気閃光でも、ピンポイントスペシャリティでもお好きなメニューを選べばいいと、彼女の褐色の指先がユーヌを囲むそれへと向いた。 「あんまり手こずらせないで下さい」 撃ち抜く――光り輝く気糸を出した指先には最大限の力と思いが籠っていた。 ● 「あら、顔が可愛いですよ? どうしたのでしょうねぇ?」 烏頭森が、圓へ言った。その言葉の理由は彼女には十分に解っていた―――時間にしてみれば、たったの二十秒で圓の顔が見るからに青ざめているのがよく解った。 リベリスタの力量は確かに上である事、特にレイチェルの全体攻撃の精密さに、その威力。最初は圓こそ、ホリメであるアリステアから除外しようと考えていたものの、脅威は回復だけでは無いと知れる。 「あ……ぁ」 レイチェルは、彼女の顔から彼女が何を感じているのかを容易く想像できているであろう。だが、あえて聞いてみるのだ。時間ごとに、死が近づいている事を知らしめるために。もはや、救える手段は無いのだから。 神秘の閃光が花と死体を貫いて、更にレイチェルはそのまま気糸を多重に紡いで放つ。予想外の短時間での殲滅作業に、圓の如雨露を持つ手が更に強くなった。 「なぁぁああによ!! リベリスタが! 私を殺しに来た!! 私の殺しとやっていることが、何と違うっていうの!!」 追い込まれているからか。圓は言いたい事を言い始めた事に、眉をしかめたレイチェル。その瞳の中では、圓に辿り着いたいりすが今まさに攻撃を放つ直前であった。 どういう訳か、自分が愛した人は全て死んでいくのだと優しく囁いたいりす。呼吸を止められないのと同じように、人を愛する事を止めないいりすは言葉を続けた。 「やっと遮る壁が消えたよな。さぁ、ヤろうぜ。小生は、君の事が、結構好きになりそうだ」 「や、やめ、やめてぇっ!!」 振り回された如雨露の先端――されどいりすにその攻撃は止まって見える程度に容易いもので。そして圓にとって、『彼だけに愛されていたい。彼だけを愛していたい』その心をいりすの刃が破る。放つのは光の飛沫の麗しい美技。 「それだけは―――ッ!!」 「駄目」 甘い声で囁いた。囁いた声は耳のすぐ傍で発せられたものだから、びくりと震えた圓の身体。 首を振って、涙を散らして避ける体勢の圓。しかしそれは無駄に終わり、いりすに『魅了』してしまう自分をこれ程、呪った事は無かっただろう。 「ヒ、ヒヒッ」 其処からだ、彼女が魅了に酔いしれ死体目掛けて攻撃を放つようになったのは。 「なんだか……やるせない光景ですねぇこれ」 慧架は一度、手を止めて言った。彼女の青と赤の両極端の瞳が見据えるのは、自分で作った庭園(死体や花を含め)を自分で壊していく圓の姿であった。壊れた様に笑っていたのは元々であるものの、これでは完全に荒れ狂った、もはや意志無き存在。 好きな花が、散っていく。慧架はふわりと浮いて、風によって運ばれてきた花を手の平に着地させた。それを握り締め、もう片手の鉄扇に力を込める。 こうなったからこそ、ああなったからこそ、止めなくてはいけない―――止めて、『彼』の下へ送り届けてあげるために。 そう考えていたのはアリステアも同じであり、純粋過ぎた想いの結果と解っていたからこそ、憎めず、汚いと思えず、ただ―――。 「幸せに」 そう、願った。 アリステアは翼を広げる。今こそ、回復の力では無く殺す力を望むのだ。はためかせた羽から飛ばすのは、小さな竜巻に似た、暴風の化身。其れは圓を飲み込んでいった。 「愛した恋人が殺人鬼たぁ、死んだ彼氏も報われないぜ!」 暴風に飛び込んだ影継。狙うのは如雨露だ。巨大な刃に狙われた圓は本能で如雨露を盾にした――それで良かった、そっちの方が狙いやすいと見える。荒れ狂う風が消え、力のコントロールが効きやすくなった瞬間を影継は見逃さなかった。上から下に斧で断ちつつ、飛ばした漆黒は弧を描いてエリューションを巻き込んでいく。 「あんたを愛した男まで、その下らん妄想に巻き込むな!」 「……く、ぐ!!」 それまで一つであった如雨露が、圓の右手と左手に分かれた。その瞬間、淡い光を失くした如雨露は神秘たる力を失くすのだ。つまり、一斉に飛んでいた花や、動いていた死体が、重力に負けて地へと落ちて動かなくなったのだ。 ハッとした圓。それまで心がいりすに向いていた事を恥じる暇も無く、周囲を見回せば味方がひとつも無くなった事に目を見開いたのだ。 「ちぇ……」 烏頭森は真っ二つになった道具を見て、そう吐き出した。そのまま彼女は漆黒のカードをどこからともなく取り出す。 「さあ、終わりが見えてまいりましたわよぉ……って、あ、ちょっ」 そのカードを投げ……ようと思った瞬間に回れ右をした圓が庭園を後にしようとしたのだ。それじゃあ面白くないと烏頭森は瞬時に攻撃を切り替え、土を蹴ったかと思えば圓の後ろ首を掴んで地面に抑え込んだのだった。力を入れる腕は、圓の骨が軋む音が心地よく響く。 服の中から小型のナイフを取り出した圓は、百八十度回転しながら刃を走らせる。しかしその瞬間に烏頭森は離れ、危ない危ないと首を振った。 「よいしょー☆」 「え、何!?」 入れ替わりか、背を着けて倒れている圓の腹部に腰を下ろして開いた鋏を首に噛ませてホールドしたのは葬識であった。 「お話、しようよ☆」 ちょっとだけね。 ● ギチ。鋏は少し締まった。首皮に刃が侵入してくる。 「い、ぃぃいいやあああああああああああああああああああああああ!!!」 締まる鋏の力を両手で抵抗し、そして足は死にたくないと土を蹴ってはバタついたのだ。 「うふふふふ、そう、それが見たかった」 誰にも聞こえない程、小さな声で烏頭森は言った。圓の顔が恐怖に歪めは歪む程、烏頭森が至高と笑うのだ。 ギチ。鋏はまた締まった。もう少しで大事な血管に届くだろう。少しずつ死へと近づけていく葬識は、問う。 「ねぇ、どうして君は、彼が死んだ時に死ななかったの? どうして、此岸に残ったの?」 「いや、いやっいやぁああ、ぁあっ、あっ、あ?」 返答らしい返答は無い。しかし、葬識の体重の下でバタつく足が激しくなれば激しくなる程、解るだろう。その人は……と、レイチェルは言う。 「死ぬのが怖いんですね」 その事を聞いて、アリステアの瞳から涙が溢れだした。どうして、止まらないのだろう。 「死んだら、忘れちゃうから……? 向うの世界で会える確証が無いから……?」 胸を前の服をぎゅっと掴んだアリステア。その拳に涙は落ちて、跳ねた雫は更に彼岸花を濡らした。でも、でも、此処で眠れば、きっとずっと一緒になれるはずだから。 しかし何故だろうか、死にたくないと訴える瞳がアリステアの心を重くしていく。 「や、やぁぁ、ぃゃ……」 助けてください。と目線でいりすに訴えたからといって、助ける事はしないだろう。 「彼岸花の花言葉は「再会」。出会うといいよ。天上でな」 絶句であった。人が絶望こそ感じると泣きもせず、ただ、一点を見つめて圓は微動だにしなくなったのだった。死ぬ覚悟は、まだ、できていない。できていない――その顔をまじまじと見つめた、ユーヌ。倒れている圓の顔の傍に膝を着けて座り、言うのだ。 「無様に転んで。冷たい土が呼んでるぞ?」 ―――嗚呼、埋められるのか。それも悪くない……とも思えるが、やっぱり、やっぱり。 「い、いやだあああああああああああああああああ!!!」 「さっき言い忘れたか、既に言われたかは解りませんが……」 レイチェルは、言う。 「もう絶望に狂う事がないように。貴女を殺します。可愛そうで、可笑しくなってしまった、哀れな貴女を」 葬識は、言う。 「屍人花の花言葉はね「想うはあなた一人」君らしい言葉だよね!」 さあ、彼岸へ送り出す時が来た。締まる鋏に抵抗していた指が千切れた、血管を切った、血が飛んだ、葬識の頬が濡れた、硬い骨に差し掛かった―――声にならない声で死にたくないと言われた気がした。 チョキン。 鋏は完全に、閉まったのであった。 また、いなくなってしまったと。いりすは未だ太陽が覗く庭園を見回した。確か、「いとしいひと」の眠る場所はここら辺だったかと、土を足で抉りながら穴を作る。 それでは「また会う日を楽しみに」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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