下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






不吉の夜は余りに長くて


 13日の金曜日。
 英語圏の国々や、ドイツやフランスなどで不吉な日とされるその日。
 忌み数とされる13と、受難の日である金曜日の組み合わさった日。
 ある聖人の処刑された日が13日の金曜日であったと言う俗説もあるが、それは根拠のない説だという。
 さて、だがしかし、多くの人がこの日を意識する事に変わりはなく、嗚呼、この日を題材にして、この日を有名にした映画すらもが存在する。
 うっすらとした不安が、漠然とした恐怖が、雫となって世界に垂れた。
 真っ黒な、真っ黒な、一滴の雫。


「諸君、今日の任務を説明しよう。予め言っておくが、非常に面倒かつ厄介な案件だ」
 集まったリベリスタ達を見回した『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)は、次に出口へと視線を移す。
 つまりは面倒ごとが嫌なら今の間に出て行くべきだとの意味だろう。
「さて、今日が何の日かは知っているだろうか? まあ祝日でもなんでもないが、13日の金曜日と言えばわかるだろうか」
 言われて見れば思い出す程度であるかも知れないが、嗚呼確かに不吉の日だ。
 月は変われど、グレゴリオ暦では1年に1度以上の13日の金曜日が必ず存在する。
「何やらこの日が題材の映画もあるらしいが、そう言うのは私は好かんのでギロチンにでも聞くと良い。……本題だが、ある場所にこの日に対する漠然とした不安や恐怖を核にしたE・フォースが生まれる」
 つまりは何時ものエリューション退治。
 けれど手渡された資料に書かれていたのは……。



 資料

 E・フォース:13日の金曜日
 身長2mを越える大男の姿をしたE・フォースです。かなり確りと実体化しており、質感も人間と変わりません。
 ホッケーマスクを被り、ナタ、斧、チェーンソーをどこからともなく取り出します。
 ナタや斧に関しては投擲も行なうでしょう。デュランダルやダークナイトの初級に似た技も使用します。
 最大の特徴としては、13日の金曜日は滅ぼす事が出来ません。
 倒したとしても1分後には何事も無かったかのように復活します。
 戦闘中に適応進化します。
 同じバッドステータスを10回受ければ無効を得ます。
 物理攻撃を複数回受ければ物理防御が上昇(受ける攻撃の強さに拠って回数が変化)します。神秘攻撃も同様に神秘防御が上昇します。
 戦闘ターンが経過すると攻撃力や命中が徐々に(ゆっくりですが)上昇します。
 倒されている間は復活まで進化しませんが、倒す度にドラマが上昇するので次第に倒せなくなるでしょう。

 13日の金曜日は、深夜0時から5時までの間存在し、その間に人を殺せなければ消滅します。
 万一殺せてしまえばその時点で一旦消えますが、その脅威は次の日以降も続くでしょう。



「どうだ、面倒臭いだろう?」
 おい。
「幸いにして奴が現れるのはとある廃病院。近隣に民家はあるが、君達がきちんと抑えれば犠牲が出る事は無いだろう。……無論抑え切れればの話だが」
 つまりは、5時間耐久で進化し続ける相手と戦い続けろ。
 逆貫はリベリスタにそう言ってるのだ。
「勿論多少であれば病院内を逃げ回ったりして時間も稼げるだろうが、奴は知能を持つ。眼前の獲物が逃げ回り過ぎたり、狩り難いと感じれば病院外に興味を移す事も充分に考え得るだろう。……すまんな、面倒をかけるが、諸君等の健闘を祈る」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:らると  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年09月27日(金)21:24
 初期の強さは皆さんの平均値かそれよりも少し弱い程度です。最終的にはわかりません。
 成功条件は規定時間まで病院内でエリューションを食い止め、犠牲者を出さない事です。

 冒頭やらで映画に関して触れてますが、特に見る必要はありません。
 そもそも僕がホラー苦手なんで見てませんので!

 5時間凌ぎきって下さい。方法は色々あると思います。
 どこで何を切るか、ペース配分も大事でしょう。集中力が切れる事もあるかもしれません。
 正面から無策で力押しぶつかれば、いずれ破綻すると思われます。

 偶には変わった依頼をと出してみましたが、お気に召しましたらどうぞ。


●Danger!
 このシナリオはフェイト残量によらない死亡判定の可能性があります。
参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
デュランダル
富永・喜平(BNE000939)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ナイトクリーク
月杜・とら(BNE002285)
ソードミラージュ
鷲峰 クロト(BNE004319)
ミステラン
シィン・アーパーウィル(BNE004479)


 日はとうの昔に沈み、リベリスタ達の集った廃病院はタールの様に黒い闇に包まれている。
 唯一つの光源は『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)の携えたマジックカンテラ。
 人は光の世界の生物だ。人は火に拠って、科学に拠って、闇を駆逐して栄えて来た。
 廃病院全体を包む濃い闇に比べれば圧倒的に心細い僅かな光だけれど、その一室だけは確かに人の領域と化している。
 ふと『友の血に濡れて』霧島 俊介(BNE000082)が取り出した携帯の待機画面を確認すれば、時刻は既に23時55分を過ぎている。
 奴の出現予定時刻まで後5分弱。
 夏も終わった筈なのに、今夜はやけに蒸す夜だ。闇の濃さと相俟って、空気がやけに重く体に纏わり付く。
 唯待ってるだけなのに、集中力が、体力が、削られて行くのを確かに感じる。
 廃病院というシチュエーションに、そしてこれから出現する敵に、『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)と鷲峰 クロト(BNE004319)が振り返るは奇しくも同じ嘗ての楽団との戦い。
 とらと馬鹿でかいパイプオルガンを担いだ少年の楽団フィクサード『オルガニスト』との出会いは、その当時は廃墟でこそ無かったものの非常に陰気な、そして死の気配に満ちた病院だった。
 戦いの末にアークに投降して軟禁状態となった彼は、一体今どうしているのだろう。多分きっと、いや間違いなくゲームで夜更かししてるだろうから起きてるとは思うけど、そういう事では無く元気だろうか?
 そしてクロトはその楽団が操った亡者達と、これから戦う敵の『倒せない』と言う特徴を重ね合わせてその拳に力を籠める。
 起き上がる死体、尽きぬ数、撃てど切れど突けど倒れぬ敵。相対する者に絶望を呼ぶその特徴。
 けれどクロトは、仲間達はそれを一度乗り越えた。絶望する事無く、粘り、時に敗北しても死者達以上にしぶとく。
 これより現れる敵は楽団に比べればあまりに小さな敵に過ぎないのだ。例え倒せない敵であろうと、それがクロトの心に恐怖を呼ぶ事は無い。
 残る時間は僅か数十秒。心なしか闇の重さが増して来たような気がする。いや気のせいでは無いようだ。
 時計の秒数が進む度に、いまやはっきりと病院を包む何かの存在感が濃くなりつつあった。
 各々の武器を構えるリベリスタ。ユーヌは耳を澄まし、クロトは目を凝らし、出現するであろう敵を察知する事に備え始める。
 そして時刻は23時59分59秒、12日が終わり、そして遂に0時00分00秒。
 13日の金曜日、長い長い夜の始まりである。


 探そうとするリベリスタ達に対し、奴は明確な意思を持って其処へ出現した。
 即ち、獲物を狩ろうとする意思。人々の思い描いた13日の金曜日への不安をはっきりとした形にする為に。
 不意に背筋に怖気を感じた『ピンクの変獣』シィン・アーパーウィル(BNE004479)が振り返れば、奴は既に其処に居た。
 限られた貴重な狩りの時間を1秒たりとも無駄にはしないと言わんばかりに、彼女の間近で瘴気を纏い、手にした鉈を今にも振り下ろんとしながら。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
 シィンの口から漏れた悲鳴はフュリエとして……、いや人としてもどうかと思われる代物だったが、それでも的確に今の彼女の心境を表現していた。
 即ち恐怖と混乱。
 不意を討たれた事による一瞬の硬直は、それそのまま回避の遅れを意味する。
 ギラリとマジックカンテラからの光を反射して輝いた鉈は、必殺の意思を持ってシィンの頭に振り下ろされた。
 ……けれど響くは肉の裂ける音でなく、血の吹き出る音でなく、頭蓋が割られ脳髄が潰れる音でもなく、金属と金属のぶつかり合う激しい響き。
 13日の金曜日と名付けられたE・フォースの鉈とぶつかり合ったのは、『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)の振るった 打撃系散弾銃「SUICIDAL/echo」。
 重たい巨銃の質量は鉈を弾く。デュランダルたる喜平の一撃の威力がE・フォースの其れを上回っていたのだ。今この段階の話ではであるけれど。
「B級ホラー以下か。コメディの主役をはるつもりか知らないが滑りすぎてお茶の間には向かないな」
 初撃を外したE・フォースに対し、辛辣な言葉をぶつけながら喜平の隣に並ぶユーヌ。
 そして彼女が自分の影に符を貼り付ければ、分かたれた影が持ち上がり、陰陽・影人、従者としてユーヌに並ぶ。
「かかってこい! 都市伝説も今日で脅威は幕引きなんだぜ!」
 苦手なホラー要素満載のE・フォースの姿に嫌気を顔に滲ませながら、それでも戦意に満ちた俊介の宣戦布告。
 いや、寧ろ嫌いであるからこそ駆逐しようと言う気が増すのだろう。それに人であるフィクサードや、人であったノーフェイスを殺すよりはずっと気が楽なのも確かだから。

 落ち着きさえすれば、序盤の13日の金曜日は決して手強い相手では無い。
 何せたった一体なのだ。寧ろ普段リベリスタ達が相手をしている連中に比べれば、確実に楽な相手と言えよう。
 だがその相手の手頃な実力にすら巧妙な悪意が隠れていた。
 重苦しい深夜に敵と遭遇した緊張の糸は、拍子抜けする相手の実力に確実に緩んでしまう。片手間にあしらえる程に弱くは無いが、さりとて危険を覚えるほどでは無い。
 油断無く、集中力を切らさずを心がける者も居たけれど、全てがそうであった訳でもなく、強制的に大きな緩急をつけられてから始まった作業の様な戦闘は彼等の心を蝕んで行く。


「喜平、一旦下がる」
「ああ」
 ユーヌの言葉に頷いた喜平が振るわれるE・フォースの鉈を鮮やかに避け、そのまま彼女と数歩下がる。
 そして空いた空間に滑り込んだのはとらとクロトのペアだ。
 ユーヌと喜平、とらとクロト、前衛が2人ずつのペアを作ってローテーションをまわす事で負担の軽減を図る彼等。
 だが例え万全の防御体制をとったとしても、戦いの場において不運の一撃はどうしても存在してしまう。
 故に響くは歌声。シィンの天使の歌により、リベリスタ達の負った傷もすぐさま塞がる。
 例えシィンが癒し切れなかったとしても、後に控える俊介のデウス・エクス・マキナの強大な回復力を考えればこの面子にダメージを残す事は非常に難しいだろう。
 デウス・エクス・マキナの欠点である大きな消耗も、シィンのエル・リブートやとらのインスタントチャージの存在がカバーしている。
 正に万全の布陣である。
「今更だが男女ペアって危なくないか? ホラー映画的に言えば真っ先に標的になるという……」
 ふと零れた喜平の軽口は、余裕の証左か。
 けれど正にそうである。ホラー映画的に言うのなら、男女がペアである場合はどちらかが先に死んでもう片方も恐怖に震えながら殺される。
「気を抜くなよ」
 俊介がまるで自分に言い聞かせるかの如く呟く。
 嗚呼、まだまだ夜は長いのだ。このままで済む筈がない。
 前衛達は一体幾度攻撃を回避しただろう。既に数え切れぬ程にE・フォースからの攻撃を捌いたけれど、経過した時間は2時間に満たない僅かな物。
 時間は決して歩みを止めないし後ろに戻りもしないけれど、時に意地が悪いほどに遅くなる事がある。
 止まってくれと願えば早く過ぎ、早く過ぎろと願えば遅々と進む天邪鬼。

 だが戦いは徐々に、徐々に熱を帯びて加速を始める。
 4人の前衛の中では一番回避に劣るとらが徐々にE・フォースの攻撃をまともに浴び始めたからだ。
 何時の間にか鉈だった筈のE・フォースの武器は斧へと変わっており、彼女の首を刎ねんとばかりに振り回され、壁や床を砕いて行く。
 とらとペアを組むクロトが出来る限り己が相手の攻撃を引き受けようと動いて見せるが、悪意のE・フォースはその意図を見抜いて殊更に彼女への攻撃を集中させる。
 敵は戦いの最中に適応し、進化していく。シィン、俊介の回復故に眼前のとらが落ちぬのだと悟れば、今度は後衛達をも巻き込んで自らの瘴気を武器として放ち始めた。


 倒れたE・フォースの体に追い討ちを掛けたクロトがフェザーナイフを突き立てる。
 ゆっくりと塵と化して消えて行くE・フォース。……果たしてこの光景も幾度目だろうか。
 通常攻撃を集中し、トドメを必殺効果を付与された武器を持つクロトが刺す。
 繰り返されるパターンだが、次第に倒し切るまでの時間は延びつつあった。
 乱れた息を整え、立ち上がるクロト。これで稼げた時間は僅か一分間。
 ユーヌが新たな影人を追加し、シィンがエル・リブートで、そらがインスタントチャージで、それぞれの精神力を賦活して行く。
 そして身体を癒すは俊介のデウス・エクス・マキナ。
 けれど万全の回復を施されて尚、リベリスタ達の顔に刻まれた濃い疲労の色は消えていない。
 戦い始めて既に4時間は経過しただろうか? 僅かなインターバルを挟みながらとは言え、あまりに長時間に及ぶ戦いは確実に彼等の心を磨耗させている。
 日の出が、闇が去り、人が動き出す時間は少しずつ近付いているけれど、その訪れはまだまだ遠い。
「シュインシュインシュイン……」
 回復を受けながら喜平が口にするのは効果音。
 不毛に長く続く戦いに、娯楽の一つでも無ければやってられないとばかりにおどけて余裕を見せる彼。
 だがそれでも、まだこれまでの戦いはオードブルに過ぎないのだ。
 本当の戦いは、そして地獄は、戦いの時間が四時間半を少し越えた辺りから始まった。

 放たれた暗黒の瘴気にユーヌの生み出した影人達が一瞬で塗り潰される。無論その効果は影人達のみには留まらない。
 影人にその攻撃が命中するという事は、其れを生み出したユーヌに、集った面子の中で最も回避に優れたる彼女にも当たると言う事だ。
 俊介にシィン、2人の後衛の体力が唯の一撃で半分を割り込み、後衛達よりも更に体力に欠けるとらの被害は更に大きい物となっていた。とらと同じく、或いはそれ以上に体力に乏しいユーヌは、それでも自慢の回避能力で受けるダメージを最小限に抑えてはいたが、こちらも何時まで其れが通じるかは判らない。
 とらのインスタントチャージに精神を賦活された俊介のデウス・エクス・マキナが飛び、リベリスタ達の傷を癒すが、だがとらが完全に回復し切れていない。
 俊介に次いだはシィンのエル・リブート。とらの精神力と同時に体力が賦活され、彼女の傷が塞がって行く。
 とらからのインスタントチャージを途切れさせず、また彼女を次の攻撃で落とさせない為のシィンの一手だが、けれどそれはリベリスタ達にはもう余力が無く、体力、精神力共に自転車操業となって居る事を意味している。
 せめて一度倒せてしまえば1分間の時間で建て直しが可能なのだけれど、……E・フォースに向かって放たれたのは喜平のアルティメットキャノン。持てる力を集約して敵対者に破壊力に満ちたエネルギー弾を叩き込むその一撃は、確かにE・フォースに数mの後退を強いたが、しかし倒すには至らず敵は平然と向かい来る。
 スキルを使ってすらこうなのだ。既にパーティの持つ唯一の必殺効果、決して攻撃力自慢である訳では無いクロトのフェザーナイフの一撃では奴に有効なダメージを与える事ができず、つまりはトドメをほぼ刺せなくなっていた。


 多彩なバッドステータス付与手段を持つユーヌを始めとして、グラスフォッグで敵対者を氷の彫像と化すクロトや、とらのデッドリー・ギャロップによる幾重もの気糸の束縛は確実に、値千金の時間を稼ぎ出してはくれたけど、それでも回数を重ねればE・フォースはそのバッドステータスに対する無効化を獲得する進化を遂げる。
 既に切れるカードはほぼ全てを切りつくした。そして遂に訪れるは崩壊。
 真っ先に犠牲となったのは、他のメンバーに比べて覚悟と集中力に劣っていた喜平だった。
 振り下ろされるE・フォースのチェーンソーに、喜平は己の巨銃をぶつける事で防ごうとする。
 奇しくもそれはこの戦闘がはじまったばかりの頃に喜平がシィンを庇って取った防御手段と同じ方法。
 けれども今回の結果はその時の真逆となった。5時間近くの戦闘で強化されたE・フォースの一撃はあまりにあっさり喜平の巨銃を弾き、そのままの勢いで彼の身体を縦に切り裂く。
 高速回転するチェーンソーの刃が、喜平の肉を周囲に散らす。
「逆貫め! めんどくさい依頼を回しやがって!」
 常軌を逸した威力を発揮するE・フォースの攻撃を見、俊介が疲労した精神力を搔き集めながらこの依頼をまわした車椅子のフォーチュナに対しての恨み言を吐く。
 無事に戻れたらあの車椅子を全速力で押してやろうと心に決めて、紡ぎ始める詠唱。
 喜平が受けたのは明らかに致命傷。けれども俊介はまだ回復が間に合う事が判っている。
 フェイトによる踏み止まり。それがリベリスタ達に残された未だ切っていない最後のカード。
 踏み止まってさえくれるなら、自分が傷を癒して見せると。
 しかし、悪意はその計算を超えて暴威を振るう。ごぼりと、俊介の口から零れたのは詠唱でなく真っ赤な鮮血。赤い血は肺へのダメージを意味する。
 ふと自分の胸を見下ろせば、其処には何時の間にやら一本の鉈が生えていた。ダブルアクションによる追加行動で投擲された、E・フォースの鉈が。

 何かから追いかけられる悪夢も、逃げるのをやめて、足を止めて立ち向かえば、心を振るい立てて倒してしまえば、もう追いかけて来なくなると言う話を、とらは不意に思い出す。
 きっとそれは正しいのだろう。けれどそうあれる人はきっと少ない。多くの人は恐怖からは逃げてしまう。
 そして逃げた事を正当化する為に、迫り来る悪夢は立ち向えないほどに強大である事を望むのだ。
 今宵集ったリベリスタ達は立ち向える勇敢な者達ばかりであったけれど、アレを生み出した不安の持ち主達は、アレに誰かが立ち向える事なんて望んでいない。
 だからこそアレはどこまでも進化する悪意なのだ。

 振るわれたチェーンソーに血飛沫が舞う。回避に優れるユーヌやクロトでも避け切れない。
 癒しもとうに追いつかない。一撃で倒されてしまえば癒しようが無いではないか。
 それでも彼等は肉体を盾にして時間を稼ぎ、運命を対価に立ち上がり必死に時間を稼ぐ。
 尚も倒れた者は誰かが抱えて後ろに逃げる。誰か一人でも殺されてしまえばコイツが毎夜出現する事になるのだから、決して死ぬ訳には行かない。
 ユーヌの影人が文字通り紙切れの様に引き裂かれ、そして使役者たる彼女も同じく腹をチェーンソーでかき混ぜられて倒れ伏す。
 ………………が、惨劇は唐突に終わりを迎える。
 次の獲物に向かって血と臓物に塗れたチェーンソーを振り翳すE・フォースが、不意に攻撃を止めたのだ。
 誰からの攻撃を受けたわけでもないけれど、E・フォースが足先からゆっくりと塵に帰って行く。
 己が塵と化す僅かな時間に、E・フォースは自身のマスクを外してその下の形相を眼前のリベリスタに晒し、唇を小さく動かした。
『つづきは…………』と。
 ピピピピピピピピと、設定してあった携帯のタイマーが廃病院に響く。
 時刻は13日の金曜日午前5:00。
 夜は終わり、朝が来る。悪意は過ぎ去り、日常が戻る。
 でも、それでも暫くは、もうその月の13日が何曜日なのかは、出来れば意識したくは無いとリベリスタは思い、疲労にその瞳を閉じた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 長い戦いお疲れ様でした。
 今回の任務に向いたメンバーが揃っていましたが、緩みや抜けがポツポツ見受けられました。
 皆さんはホラーは好きですか?
 僕はとても苦手です。
 脅かされると暴れたくなります。
 でもそれでも夜は来ますし、怖い物を想像してしまいます。
 参加有難うございました。また何れ。