● 知ってる? 呪いのパンツ。 えーと、トランクス? ボクサーショーツ? 男子のパンツのことはよくわかんないんだけど。 魔法使い? の男が作ったんだって。 なんか、「Blow it up!」って書かれてるんだって。 そのパンツは、とあるコインランドリーのとある洗濯機に置き去りにされてるの。 その洗濯機のドアは、非リア充男子でないと開けられないの。 そのパンツはずっとはいてなくても汚れなくて、それどころかはくととても感じのいい人になれて友達出来て就職できて彼女も出来てとても幸せになれるけど、彼女とえっちしようとした途端に爆発するんだって。 こんなんじゃだめだって別のパンツはいた人は、即刻振られて会社もくびになって友達にも絶交されたんだって。 リア充し続けるには、そのパンツはき続けるしかないの。 で、えっちしなくてもいいじゃん。ずっとプラトニックでも。と考えた人は、プロポーズした途端爆発したんだって。 その後散り散りになった呪いのパンツは、元あった洗濯機の中で再生するの。 そんで、次の非リア充を待ってるんだって。 ● 「しゃれにならないことに、ほんとの話」 『擬音電波ローデント』小館・シモン・四門(nBNE000248)の目線が微妙にずれている。 「アーティファクト『リア充パンツ』――ネーミング、俺じゃないから――の、回収もしくは破壊――と言うか、そんな使い古しのパンツもって帰ってこないで欲しいような気もするけど、研究材料的には貴重なものだそうなので」 四門は、消臭・抗菌の密封パウチをくれました。 「ちなみに爆発スイッチは、リア充的目的を達するために体からパンツを離脱させる、もしくは体の一部をパンツから離脱させる。ちなみに玄人さん相手だと発動しない」 風俗・着衣えっち対応。やるな。魔法使い。 「と言う訳だから、我こそは非リア充。と公言できる人、洗濯機という名の宝箱からパンツ回収してきて」 何がひどいって、字面がひでえ。 「で。この非リア充基準結構厳しいんだよね。単に彼氏彼女募集中でーす。くらいじゃ開かないの。そう言う場合、この洗濯機壊して持ってきてもらうことになるんだけど。この洗濯機、結構強い」 はい? 「E・ゴーレム。識別名「ミミック・ランドリー」 エリューションの洗濯機だったからパンツがアーティファクト化したのか、アーティファクトのパンツが入ってたから洗濯機がエリューション化したのか。どっちが先かはパンツを分析してからでもいいかなって。だから、パンツが手に入れば欲張らなくてもいいよ」 つまり、それはどこに出しても恥ずかしくない非リア充であることを露呈しろってことだな? 「それと、入手したばあい、そのパンツはかないでね。すっごい衝動に駆られるから。はこうとしたら、みんなでとめてね。何しろパンツだから。上からはく訳にも行かないでしょ」 話は分かった。みなまで言うな。 つまり、洗濯機破壊ついでにパンツぶっ壊しルートなら激しい戦闘。 パンツだけゲットルートだと、社会的フェイトの危機。下手するとおいなりさんが垣間見えたりするとか言いたいんだな? 「おいなりさんと接触の危険すらはらんでる」 先日、イヴに『全てリベリスタに話すのがフォーチュナの誠意』 との金言をもらった四門の台詞に嘘偽りはない。 「だから、作戦の方針は要相談? 面子が揃ってから決めるといいんじゃないかな?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月27日(火)23:10 |
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■メイン参加者 4人■ | |||||
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● ゲリラ豪雨後の深夜のコインランドリー。 そこは、まるで離島の灯台のようだ。 「日本は古来からの神秘界隈の本場の一つだと訊いていたけれど、確かにコレは本場ならではの業の深さを感じるわ」 『英国淑女』プリムローズ・タイラー・大御堂(BNE004662)は、労働階級の共同有料洗濯場に足を踏み入れた。 「大丈夫よ、この程度知ってたわ。あのド変態のダーリンが育った国ですもの♪」 プリムローズは、若干16歳の幼な妻である。 で、伺いたいのだが旦那様のお年はおいくつなのかね。ハウオールドイズユアハズバンド? というか、旦那様をド変態とか言っていいんですか。そこに愛はあるんですね。夫婦は運命共同体ですよ!? 「僕、非リア充じゃないし、関係ないよね? 洗濯機壊してパンツ取るんだよね!?」 コインランドリーの周囲に強結界を張り巡らせた直後、『ニケー(勝利の翼齎す者)』 内薙・智夫(BNE001581)は、先制の嚆矢を放った。 落ち着いてさえいればクレバーな智夫らしからぬ、とっちらかりっぷりである。 何しろお盆進行だか親衛隊戦疲れか社会的フェイトの尊重からか、今回は圧倒的に人手が足りない。 実行部隊が四人だ。いつもの半分だ。 とてもじゃないが戦闘したら、マジやばい。 一番穏便な方法は、非リア充っぷりをアピールし、洗濯機さんから穏便にパンツをゲットすることだ。 洗濯機さんは後日改めて殴りに来ればいいのだ。そのくらいの時間の余裕は、フォーチュナも保証してくれた。 「非リアの証明――。主食・近くの空き地から持ってきた土じゃ不十分と申すかね」 キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)チャンは、お昼は学校給食として、朝晩アークの職員食堂でご飯食べなさい。ちゃんと食券もらってるでしょ。転売しちゃダメよ。 「あたし! 葉月綾乃29歳! もう年齢偽る気力もありません!」 『BBA』葉月・綾乃(BNE003850)は、どっかの居酒屋で大事な何かをふっきってしまった。 「ちょっと鬱憤溜まってるんですよ、色々と!」 洗濯機の前にがこがこと椅子を引っ張ってきて、どかんと腰を下ろして足を組む。 「この前、タコな編集者にスクープ売りに行ったら、『ああ、そういうのはうち載せないから』 とか言って却下されて――」 いつの間にか手に缶ビールが握られている。大丈夫。ノンアルコール。仕事中だし。 「しかも翌週の紙面に載ってやがったんですよ! そのスクープ! 却下した編集者の名前で!」 飲み終わったスチール缶握りつぶして、ペッシャンコにして、ゴミ箱にシュート!! 「もうドタマかち割って駿河湾に沈めてやろうかと思いましたね。あるいは追跡して同じ電車に乗って、腕掴んで『この人痴漢です!』 って叫んでやろうかとか」 どっちもやるなよ。立派な犯罪行為だぞ。 「まぁ、もういいんです。でも流石に『酒! 飲まずにはいられない!』 だったので、黒木屋行ったんです。1人で」 ああ、何もかも捨てられる居酒屋さんですね。 「そしたら、なんか大学の頃の知り合いが集まってたんですよね。『あ、葉月さん、仕事忙しいって聞いたから誘わなかったんだー』 とか。死ねよ馬鹿」 どす黒いものがたまってるなぁ。さあ、みんな吐いちゃえ、吐いちゃえ。 「どうせあたしが既婚な同級生の男子に「離婚したらあたしのこと貰ってね」とか酔って暴言吐いちゃったのが周知されてるんでしょ! ぐぎゃー!」 仕事と女の知り合いからハミチョされて、男もいない一人暮らし。 ちくしょー! 社会との接点、くもの糸! アークのリベリスタでよかったな! 生死をかけた付き合いはちょっとやそっとじゃ切れねーぜ! で、宝の箱ならぬ洗濯機様のご様子は。 沈黙。 その程度では非リア充とは言えねえな、あははんはん。 「ロック」ランプは煌々と、ともったままだ。 「私の目的は、ズバリ呪いのパンツの入手よ!」 プリムローズ、高らかに宣言。 「でも、この完全無欠のリア充にして人妻美少女プリムちゃんでは、洗濯機が開かないのは自明の理よ」 支配者階級様は、その程度で四の五の言わない。自分で無理なら、他の奴の上前はねればいいじゃない。 「で、あなたは非リア充でないというのね?」 「僕、中学の時は彼女いたし!」 そう、智夫には甘酸っぱい中学時代があったのである。 詳しくは、資料室もしくはWEBで。いや、マジで。 「杉の木の下での告白したら2人とも花粉症で大惨事だったとか。ある日ケーキ屋さんに行こうって誘ってくれた翌日に突然いなくなったとか。よくある事だよね?」 いや、突然いなくなるとか、なんかやばい気配しかしません。 というか、今いないなら、遠い日の花火じゃないか。 「最近になって、突然連絡が取れたら『コスプレイベントに参加して』って。会えずじまいだったけど、参加のお礼にフリーペーパーは貰えたんだよ。普通だよね……?」 ちなみにそれが三高平市内にでかでかとプリントされたのは記憶に新しい。詳しくは資料室もしくはWEBで。 ところで彼女、何で、君がコスプレ始めましたってこと知ってんだろうね。君、アーク発足時はコスチュームとか着てなかったじゃない。今はともかく。 「元カノは今どこに住んでるのかって? メアドとか教えて貰ってないから判らないんだ。写真? 無いよ? 写真撮られるのを嫌がる娘だったし。突然いなくなったから中学の卒アルにも載ってないし……」 なんか、本格的にいやぁな気配しかしない。 何で、その人、君の連絡先知ってるの。 おかしい、二年前の回想は美しい思い出だったはずなのに。 回想とは本人の主観で構成されるものだって偉い人が言ってた! 「それってひょっとして――」 話を聞いていた三人がバ行ウ段から始まって、どっかの二挺拳銃な妹さんのトレードマークみたいな、 とある非戦スキルを指摘しようとするのを遮る智夫。 現実を認識することからの逃走。 「もしかして脳内彼女じゃないかって? 違う。違うよ! 本当にいるんだけど、証拠になるものが出せないだけで……っ」 はっっと、思い出したように胸元を引っ張る。 「そういえばこのコスプレ衣装、彼女が作ってくれたんだよ! サイズもぴったり!」 三人の顔に浮かんだ表情に、智夫は違和感を感じ取る。 三人はそれぞれ、身振り手振りで違和感を智夫に伝える。 「ずっと会ってないのに僕のサイズを知ってるのはおかしいんじゃないか……? 本当なんだって!」 もし、この『彼女』 が、智夫の脳内オンリーの存在なら、後で厚生課にでも引きずって行けばいいだけだが。 もし、本当に実在存在だったら。 自分の元カレに女装コスプレ衣装をせっせと送ってくる元カノ。 それはいいけど、成長期の三年のブランクを経て、智夫のサイズぴったりの衣装を扱えてくる。 智夫は親戚と共に三高平に住んでいるけれど、どうやって所在を知ったものか。 実在であった方が怖い。 「いるんだよぉ……」 それはそうと、その子がいたとして、その子が持ってきたコスチューム着たら革醒したんだよね、「過去に出会ったエリューションが原因」の智夫君。 それって、君の革醒って、偶然じゃなくて、意図的――。 ドラム式洗濯機のふたが、ぱかあっと音もなく開いた。 実在非実在関わらず、うん、かなり非リア充。 ● そのパンツは、女物のMサイズほどで程よくヒップにフィットする、丈は一分丈、ぶっちゃけ見せパン仕様。 限りなくユニセックスというかもはや死後のガーリッシュ。 三高平の名誉女子がはくに相応しい、無駄にキュートなパンツであった。 すくなくとも、「女が男物はいてるぜ、ぷぷぷー!」という事態は起こりえない代物。 ええ、魔法使い(仮称)め、無駄に行き届いてやがる! (ああ、でもあたし) 綾乃には、まだ理性があった。 (やっぱり男物のパンツは、リア充になれるとしても、やっぱり穿けないなーって――) それが、最後のイチジクの葉っぱだ。 [もう居酒屋で唐揚げにレモン汁かけちゃって仲間から「何してんのコイツ」って目で見られてるようなレモンの絞りかすみたいな乙女心ですけど――」 それはもうかすかすのしわしわで、ちょっとやそっとじゃ絞れないかもしれないけど――。 「それでも大切なものは守りたいの!」 絞れる可能性がある限りは! パンツの命運は、二人の少女にゆだねられた。 「ねんがんのぱんつをてにいれたぞ!」 赤コーナー、どこぞのゲームチックな展開を夢見る小学生、キンバレイ。 (パンツを穿きたいが願望なので穿いた瞬間爆発しそうだけれど) 爆発してもいい、パンツはきたい。 そう、キンバレイ、経済的な理由でパンツはいてない。 お父さんも馬鹿だなあ、やっすいパンツ買ってきて、毎日はかせて売り飛ばした方がよっぽど――げふげふげふ。 「ころしてでもうばいとる!」 レベル1でもソミラはソミラ。 プリムローズはタッチの差でパンツを掠め取った。 「っていうかアレだわ! 私に穿いてもらった時点でもうリア充よね!?非リア充としての存在は消失するわ!これで呪いのパンツは解呪されたも同然だわ! 我ながら、戦果と実益の双方を両立した素晴らしい作戦ね!」 青コーナー、パンツなんか毎日取り替えても一生困らないくらいすぐ買えるだろうに、あえてこのパンツを欲しがる幼な妻、プリムローズ。 なんか、経済格差戦争の様相まで呈してきました。 「……というワケで、パンツの呪いが解けたなら私が貰って帰るわ。汚れないパンツ欲しかったの。だって汚れないパンツってすごく便利なんですもの。私のパンツ、ダーリンのせいで毎晩汚されちゃってお洗濯が大変なの」 何で、そんなところでけち臭いんだよ! それが金持ちの秘訣かよ! メイドさんに洗ってもらえばいいじゃないですか! 「あ、大丈夫! デザインは女の子が穿くにはちょっとアレだけれど、ダーリン変態だからこういうギャップ的なアレも余裕で喜ぶわ!」 最愛の男が変態なのは共通してんのに、この差は、何!? すばやい動きで、パンツに足首をとおし、しゅるんと滑らせようとしたそのとき。 「くんかくんかぺろぺろ……なんて甘い事はしないのですよ?」 目が座っている小学生はそう低く呟くと、床すれすれの位置からスタートダッシュをかました。 ソミラといえどもレベル1はレベル1。ホリメといえども35レベルとは地力が違う。 キンバレイ、クリーンヒット。 後のフリーキャスターはこう語った。 「――ええ、パンツ破ってやろうと思ってました。 どーせ、男物のパンツなんてもう縁が無い人生です 彼氏や旦那のパンツ洗えるような立場になりたいとかもういいやーって、ちょっと自暴自棄な気持ちがありました。でも、まさか、あんなことになるなんて。ハルゼーさんが、大御堂さんのひざでと持っていたパンツに突進していったんです。顔から」 「パンツ討伐すればいいんだから……食べちゃえばいいよね? お腹もふくれるしアーティファクトも壊れるし一石二鳥!」 股間でなかったのが不幸中の幸いだった。 がぶがぶもしゃもしゃ……。 「――たべてる――!」 ひじとひざを張ったお段で鳴くヒトモドキ、あるいはアメンボの姿勢で顔だけ突っ込み。ガフガフ口を動かすキンバレイの姿は、直視するなら抵抗ロール振ってって感じだ。 「大丈夫です!」 何がどう大丈夫なのかなんて聞きたくもない。 プリムローズに変態耐性があったのが幸いである。並みの初陣リベリスタだったらこのままカウンセリングルームに産地直送だ。 やがて、ぷはあっ! とばかりに、顔を上げ、口の端から布をぶら下げたキンバレイは厳かに言った。 「パンツより給食の方が良いです……」 うん。そうだね、そうだね、キンバレイちゃん――! おなか壊さないのは分かってるけど、おいしいものを食べて。ね? アークの食堂はいつでも君のために開いているから! ● これが、最後のパンツではない。 呪いのリア充パンツを生む洗濯機は、まだ健在なのだ。 必ず、この悪魔の洗濯機を破壊しに、リベリスタはここに集結する。 今度こそ、フル編成で! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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