下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






リベリスタなら、縛られてても出来る簡単な仕事です。

●誰にでも出来る簡単なお仕事です。
「仕事としては、すごく簡単。だけど、多分すごくつらい」
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、しばらく目を閉じていた。
 これからリベリスタが受ける苦しみを、わずかでもわが身に受けようと天に祈るかのように。
 これからリベリスタを過酷な現場に送り出す自分に罰を請うように。
 やがて、ゆっくり目を開けると、ぺこりと頭を下げた。
「お願い。あなた達にしか頼めない」
 苦しそうに訴える幼女、マジエンジェル。 
 だが、断る。なんて、言える訳がなかった。

●お仕事は星の数を数える仕事です。
「アザーバイド「流れ星」 大気圏ぎりぎりにあるD・ホールから到来し、地上に向けて落下。たいてい燃え尽きるけど、ごく希に地上に激突して大惨事を招く」
 透明なヒトデみたいな形をしている。
「神秘なので、普通の人には見えない。皆には飛びきり空気のきれいな高原から、これらの到来を観察。とある地点を通過しても燃え尽きなかった場合は速やかに本部に連絡してもらう。他の班が狙撃任務に当たる」
 分かりやすい仕事だ。なんか、簡単じゃね?
「飛来予想時間は、午後九時から翌日四時まで。数は――」
 百か? 二百か? まさか。万とか千とか言わないだろうな。
「二十」
 はい?
「二十体」
 七時間で二十体ですか?
「いつ降ってくるかは、向こうの気分しだい。立て続けに落ちてくるかもしれないし、全然降ってこない時間帯も当然ある」
 それはひどく退屈な。
「行っとくけど、見逃さないようにずっと集中しててもらう。一秒でも遅れたら命取り。まず安全だろうけど、万が一のことがあったらしゃれにならない」
 逆に言えば、観察と連絡さえきちんと済ませてしまえば、万事めでたしめでたしなのだ。
「戦闘にはならない。ばかばかしいと思うのもわかる。ストレスがたまると思う。でも大事な仕事」
 イヴは、もう一度頭を下げた。
「お願い」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:田奈アガサ  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2013年08月25日(日)22:44
 田奈です。
 気持ちのいい高原で寝袋に包まれて、満天のお星様を見上げて、ひたすら流れ星を観察するお仕事です。
 なんて素敵なお仕事なのでしょう!
 でも、居眠りとかしたら命取りだから。
 EASYです。つまり「自重しないぜ、ヒャッハー!」です。
『こんな不眠大会はいやだ』祭りで、かつ『もうこんな仕事いやだー! ここから出せー、俺を番号で呼ぶなー!』祭りです。
 リベリスタさんには、眠気をこらえたり、幻覚見たり、虫に刺されたり、励ましあったり、妄言はいたりしていただきたいと思います。  
 もちろん容赦ない眠気や眼球痙攣を「われわれの業界ではご褒美です!」と楽しんでいただいても結構です。
 この高原は人跡未踏なので一般人の目はありません。
 アークの機密漏えいの心配なし。安心ですね。
 寝袋や作業着、麦藁帽子などの装備はアークから支給されています。
 適当にでっち上げてください。
 出来うる限り、拾います。

場所:人跡未踏の高原
 *世界的自然保護区の中に、無理やり入れてもらってます。お料理とかはしないでね。
 *手付かずの自然。蚊取り線香も厳禁。当然、虫はいっぱいいます。殺さないこと。
 *きちんとごみは片付けてくること。植物もむしっちゃいけません。皆さんがいた痕跡を残してはいけないのです。
 *AF回線は使えますが、普通の携帯の電波は無理。
 *要するに、極端に退屈な環境です。

  過酷な状況については、お任せします。
  適当にでっち上げてください。
  可能な限り拾います。
  戦闘? なにそれ。
  皆さんのお仕事は、観察することです。
 最低七人、「観察を完遂する」と書いてくれれば問題なしです。 

 毎度のことですが、
 心を折らないように、方策を相談しておくのがいいです。
 修羅場を体験すると、人間、連帯感を増すといいます。
 チームの皆さんと仲良くして下さいね。

 サポートさんは諸般の事情で途中で挫折したりします。
 適当に理由をでっち上げてください。
 要するに、リタイヤ組の役です。
 印象的に落伍すると、本参加者さんの頑張りが引き立ちます。 
 落伍ッぷりが地味な場合、モブ出演になります。 

 はっちゃけ大歓迎ですが、小さなお友達も読んでいい全年齢対象ゲームですので、田奈の「そういうのいけないと思います」カウンターに抵触した場合、マスタリング対象になります。
 
 それでは、楽しい天体観測を。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
マグメイガス
アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)
スターサジタリー
結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)
ナイトクリーク
月杜・とら(BNE002285)
クロスイージス
白崎・晃(BNE003937)
ナイトクリーク
ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)
クリミナルスタア
アメリア・アルカディア(BNE004168)
ナイトクリーク
浅葱 琥珀(BNE004276)
ミステラン
アルシェイラ・クヴォイトゥル(BNE004365)
■サポート参加者 4人■
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
ホーリーメイガス
宇賀神・遥紀(BNE003750)
クリミナルスタア
熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)


「満天の星空。瑞々しい草原の薫り。爽やかな高原の風。ああ、最高のピクニックです」
『銀の月』アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)、信じられない大荷物。

「満点の星をお兄ちゃんと眺めるなんて最高だねっ」
『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)、愛する兄妹はいつも一緒。

「こっちに来て早半年、わたしにも簡単なお仕事をする機会が回ってきたの。立派なリベリスタになる為にも頑張るの」
『夜明けの光裂く』アルシェイラ・クヴォイトゥル(BNE004365)、立派になれるかは置いておいて、訓練はされる。


「夜空を見飽きる? 私は吸血鬼ですよ? 満月を見上げながら酔いしれるのもお仕事です」
 奥方様はご機嫌だった。足取りが軽い。
「自然は厳しい? 私は山育ちですよ? 野山を歩きながら家事雑用に勤しむのもお仕事です」
 辺境貴族のハイジ様は、まじでハイジなのである。ラクレットうめえ。
「透明なヒトデ、か……何かに似てると思わない、お兄ちゃん?」
 虎美もご機嫌だった。
「そう、海産物だよ。苦労したあの海産物! 最後はお兄ちゃんの懐に抱かれて戦ったんだよね」
 正確に言うと、虎美が岩に念写した兄の絵姿である。
「ひとまず、滅多にニンゲンの来ない所にお邪魔するので、この辺りの草木に挨拶をしておかないと!」
 アルシェイラが、木立の方に走っていくのが微笑ましい。
 このあたりは、白樺の木立が目立つ。
 ラ・ル・カーナの森に似ているかもしれない。
「芝生を傷めぬように、棺の下にブルーシートを敷きましょう」
 きゃっきゃとはしゃぐ奥方様のAFから出てくるブルーシート。
「頑丈さはファーフナーが乗っても大丈夫。安眠をお約束する特注品ですよ。ドイツの技術力は世界一なのです」
 いそいそとAFから引きずり出されたのは、棺だ。
 繰り返す。棺だ。
  古式床しいヴァンパイアの末裔様はきちんと棺でお眠りあそばすのだ。聞いてるか、その辺の万年床で寝てるヴァンパイア!
「寝心地のよさは勿論、防虫防汚抗菌処理が施され、大きさは身長260cmの殿方と一緒に寝ても大丈夫」
 きゃ。とかおっしゃられると、どうしたらいいものかわからなくなってしまいます。メイド長があんな写真を送ってくるのもむべなるかな。
「満点の星をお兄ちゃんと眺めるなんて最高だねっ」
 そんな奥方様には目もくれず、虎美を自分の世界に没頭させてくれるのがブレイン・イン・ラヴァー。
 女の子は好きな人と一緒の方がずっとがんばれるんだよ、お兄ちゃん。
「覚えてるかなぁ。小学校の時とか授業で星の観察とか宿題で出ると二人で見に行ったよね。星座とか覚えてる? よーし、勝負だお兄ちゃん。まずあれは――」
 
 うん。くさとかきとかおはなししてるほうが、けんこうてきにかんじられるのはなぜだろうなぜかしら。


「あれだ、おまいらヒトデ20体だ! 絶対見逃すなよー、わかったら返事をしろぉ! 返事をする時は、頭にサーをつけろぉ♪」
『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285) 、お約束。ジェンダーフリーだから、サーでいいんだ。

「簡単な仕事なのはいいが、今回はまた別の意味で辛いな」
『立ち塞がる学徒』白崎・晃(BNE003937)、絶対的悲劇まで、2分34秒。


「しかしMHPが20しかなさそーなクリーチャーだけど、撃ち漏らしは大変だし、しっかりめめこ開いてめっけないとねぇ……いや、こっちの話でふ……というわけで、環境を逆に味方につけてだなぁ、敢えて水着で来たよ!」
 ぽんぽん出てるえっちな水着だ。とらさんたら、意味が分からないよ。
「ここがどこだかわからないけどっ!寒いなら寒いで眠くならない……んじゃないかなぁ?」
 というか、凍死の危機だね。高原なめたら死ぬで。
「――で、襲ってくる蚊を気にしたら寝てるどこじゃないじゃん!」
 アブハチブヨ。高原の虫なめたら死ぬで。
「日付代わる頃に寝て朝六時に起きる学生に徹夜しろってのは結構きつ――っ!?」
 晃が急に言葉を詰まらせて、ばたりと倒れこんだ。
 数秒後、あらぬ速さで足首をかきむしり始めた。なんかに刺されたね。
「いたい」と『かゆい』しか言えなくなった彼の手はとりあえず悪化しないように縛っておこう。大丈夫、今回は口と目があれば何とかなる。完遂する意志はあるみたいだし。


「寝ないで一晩中監視をするって結構慣れてたりするのよねー。暗殺者経験がこんなところで生きるなんてねー」
 アメリア・アルカディア(BNE004168)、神秘界隈で、きつくない仕事なんてない。

「世界に保護された、大自然。澄んだ空気、見上げれば満点の星空……君達とこんな夜を過ごせるなんて。忘れられない夜にしような」
『刹那の刻』浅葱 琥珀(BNE004276)、話しかけた相手が虫でなければ最高だ。


「むきー、ぶんぶん虫だらけで都会派の舞ちゃんは激おこぷんぷん丸よ!」
『赤錆皓姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)は、第三段階だった。
 三高平が都会かどうかは審議中。
「虫けらども、覚悟しろ……アッパーユアハートで誘き寄せて一網打尽にしてくれる!」
 舞姫は、虫を怒らせる怪しい身振りをした。
 黒雲が如く集まり出す効果範囲で抵抗に失敗した虫たち。ダメージ0なので、みんな生きてる。
「おーっほっほっほ、一寸の虫にも五分の魂って、ちっちゃな虫にはショボイ魂って意味よねー♪」
 ジェノサイドのお時間です。だが、待って欲しい。本当にそうしていいんだろうか。舞姫は何か大事なことを忘れてはいないだろうか。
「……って、虫を殺しちゃダメだったー!?」
 ここは、自然保護区です。うっかりアリさん踏んじゃったならまだしも、誘引した挙句の殺虫なんて道義上許されませんよ。
 そして、怒りに任せて攻撃してくる虫トルネード。
「うひぃ、うじゃうじゃ集まって……いやぁあああ、服の中でもぞもぞするぅうぅうう!!」
 脱げばいいんじゃないかな。
「ふふ、みんな楽しそうだね。余りやんちゃ過ぎても駄目だよ、怪我は直せるけれどね」
『祈花の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)、余裕の笑顔。
 というか、怪我する前にたすけてあげなよ。
「あ、AFが鳴ってる」
 なにはさておき、電話に出る。そんな子持ちの習性。
「うん、あ、ごめん忘れていた……!」
 AF越しに聞こえてくる、子供のぎゃん泣き二人分。
「今から帰るよ! 大丈夫!」
 遥紀の手が舞姫もびっくりの速度で動き虎美もびっくりのDA発生率で立ち上がる。
「ごめんよ、娘と息子を明日水族館に連れていく約束をしていたんだった! ペンギンと戯れる2人を思う存分愛でる為にも帰るね!」
 え、それ帰る理由になるの? 育児休暇は即時受理? 子持ちリベリスタに優しいホワイトなアーク。
「大丈夫、皆なら完遂出来るって信じているし」
 笑顔が夜叉に変わる瞬間、あなたは見たことがありますか。
「――邪魔するなら灰にするよ? よ?」
 リベリスタ達は、満場一致で明日の水族館がいいお天気に恵まれることをお祈りさせていただいた。
「ビル街よりは落ち着くけど、一晩中文句を言われると流石に気が滅入るの」
 アルシェイラの顔色が悪い。いや、それ文句と言うか虫の羽音って奴ではないだろうか。若ければ若いほどモスキート音は辛い。
「星を見たらすぐに帰るからね? お願いなので我慢して欲しいの」
 今寝ないと、自分の番が来たときに居眠りしそうだ、ほんとにまずい。しかし、『抗議』 が激しくて眠れない。何でみんな平気な顔してるの? ひょっとして:フュリエにしか聞こえてない。あるいは、アルシェイラにしか聞こえていない。
「じゃーん、歩ける寝袋ー。ちょっと大きいけど気にしたら敗けよね」
 アメリアがちょこちょこ歩いてみせる。
 足先だけが二股に分かれている独特のフォルムは、愛され系である。
 しかし、お手手もないないしているゆえに――。
 ゴロン。
「おあ?」
 一度転ぶと自力で起きるのがとても難しい。でもまあいいか。仮眠のターンだし。
「それにしても星がいっぱいに見えて綺麗だよね」
(基本的に都市部に居るからこんなたくさんの星とか見たことない……あ、流れ星)
 しかし、空の一点でいつまでもくるくる旋回している。
(消えない……あれが目標物なのね。とりあえず連絡、と。) 
 一仕事した満足感と共に、そのままコロンと横になる。やがて睡魔さんが――来ない。
(あ、ヤバい、暗殺者時代思い出して眠くなるどころか気が昂ってきた)
 修学旅行に来ると目が冴えるタイプですね、分かります。
(こう……今なら一キロ先を狙撃出来そう)
 ZONEに入ってます。歩く寝袋の中で。非常に静かな空間の中、五感が冴え渡り、今なら1ターンの中で三回くらい動けそう。今しなくちゃいけないことは、何もしないで心身を休ませることなのに!
(とりあえず落ち着くためにも話をしよう)
 しかし、同じローテーションにいるのは抗議に困っているアルシェイラと、刺された皮膚がかゆい晃なのだ。
「そうそう、息を潜めながら狙撃対象を待ってたときはね、2日程寝なかったんだよ。お陰で次の日爆睡だったけどね?」
 あははははは。
(――って結局暗殺者時代の話になってるよ!?)
 殺伐としない雑談のため、かたぎの経験をどんどん重ねて下さい。
 琥珀はげんなりしていた。
(偶には静かに星座鑑賞も悪くないだろ)
 と思っていたが、天文マニアでもなければ、30分で知ってる星座は探し終わってしまう。
 想像以外の退屈が琥珀を襲う。
(これは仕事だ無駄な時間じゃない、だが……つまんねえ)
 何しろ流れる数が少ない。
 これで、ひっきりなしなら連絡したりとかで暇も潰れるが、さっぱりさっぱりだ。
 空を玩味しながら、片足立ち。更にそのままひざの屈伸。更に沈黙に耐え切れずに指を鳴らし始め、気がつけば草の上でタップダンス。
 ちなみにタップダンスと言うのは乾いた床の上でやるもんである。
 夜露にぬれた草の上でやったりすると。
 ずべ。すてん。ごろん。
 受身も取れずにすっ転ぶことになる。結構痛い。
「星が的に見えてきた」
 ピコピコ動く指は、見えないコントローラーを握っている。
 降るような星が弾幕に見えてきた。
 口がどこかで聞いたことのなるようなBGMを口ずさみ、ビーム発射音を連発するようになってくれば時間も忘れる。
「あ、ボーナスキャラ」
 ぼんやりと呟く。いかにもお星様、きれいだな。
「あれがヒトデだ。狙撃班に連絡ー!!」
 程なく、唐突に光が消えうせる。
 ――また、退屈な時間が始まるお。
 

「最近ちょっと擦り減り気味で……起きて空見てるだけの簡単なお仕事なんだよね? 何たって僕はナイトクリーク(よるがた)、楽勝楽勝」
『ピジョンブラッド』ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)、訓練されていないリベリスタが言いがちな台詞。


 カフェインたっぷりの苦いコーヒーをすすりながら、ロアンは空を見上げる。
「夜型の僕には、簡単過ぎるお仕事だ。静かないい夜だね」
 その割りに渋い顔をしているのは、コーヒーが苦すぎたからだ。
 ヴァンパイアの全てが夜型と言うわけではありません。早寝早起きのヴァンパイアさんをいじめないでね。
「あっ、流れ星!」
「ヒトデかっ!」
 うふふおにいちゃんたらくすぐったいよとか言っていた虎美が手も使わずにがばっと起き上がる。
 何で手を使わないかって? 二丁拳銃だからさ。いや、撃たないけどね。さすがに届かない。
 暗がりに鷹の目が黄色く煌々と二つの光点で怖いです。ふしゅるうううううとか聞こえてきそうです。
 これが、図らずも海産物に鍛えられたアークのスターサジタリーだ。
「あ、ごめん、普通に流れ星……」
 この刹那の空白で幻の銃弾がマガジン一本分消費されました。
「紛らわしかったね、ごめんね」
 謝るロアンに頷いて、虎美が再びおにいちゃんとのきゃっきゃうふふに埋没していく。
(あれがうちの妹だったら――)

 ロアンさんの脳内劇場。
脳内妹「星が綺麗ですね、兄様」
僕「そうだね、何かお願い事でもしてみようか。リリは何をお願いする?」
脳内妹「そうですね、私の願いは……兄様とずっと一緒に居られたら、と……」
僕「……そんなの、願うまでもないよ。僕はずっとリリから離れないよ」
妹「兄様……」
 虚空で腕が虚しく泳ぐ。
 ロアンの口から、自嘲気味な笑いが漏れる。
(何か虚しくなってきた! 実際の妹は、すっかり僕離れしてなかなか構ってくれなくなったし……寂しいね……)
 三十路目前のロアンさんの妹さんも年は離れていますが成人なさってます。兄離れしていて当たり前です。
「あきらめたら、そこで終了だよ?」
 妹様が見てる。
 ブレインインラヴァー持ちとそうでないものの間には、深くて暗い溝が――あんまり変わんないかもしれない。
 いや、その深遠をのぞいちゃいけない。此岸と彼岸。渡ってはいけない河がある。
(星に願いをとは言ったものだし、お願い事をしよう)
 ロアンは気を取り直して空を見上げた。
 さあ、何を願うと言うのかねー。
(……ほもなアザーバイドとかフィクサードとか、そういうのが出てきませんように……)
 大事なことなので、三度念じてみました。
 いかなきゃいいんじゃないかな、アークの依頼は志願制。
「すまない、二日酔いだ」
『無銘』熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)の顔が青い。 
「昨夜急に人手がないとかで連絡が入ってな。その時もう飲み始めててな。久方ぶりに旧友に会ったのでな。抜けるに抜けられずな――」
 酒飲みって、結局言い訳してでも飲むよな。
 で、出発時間まで飲んでた。と。吐くなよ。こんなきれいな高原に焼けないお好み焼きは作るなよ。
「くそ、リベリスタともあろう者が何という失態だ……!」
 リベリスタ以前の問題である。もういいおっさんなんだから、酒量はわきまえようや。娘に嫌われるぞ。
「……あ、でももっと酷いのがいた」
 伊吹さんたら、いい大人なんだから、人を指で差さないの!
 で、刺された人はなんかふにゃらか系笑顔だった。
「大丈夫。今回はちゃんと仕事内容読んできた。夜更かしは得意なんだ、大丈夫」
 大丈夫を一つの台詞で二度以上言う奴は、概ね大丈夫じゃない。
『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)に慢心の報いが訪れていた。
 己の不眠耐性に、アルコール耐性に。しかし、退屈耐性について考えていなかったのだ。
 アークの守護神に学生にアーク事務バイトに酒屋経営にシューカツの四速わらじの大回転働き者だから、普段退屈してる暇はないのだ。
 そんなのが、お星様見ながら黙りこくってスキットルのウィスキーちびちびやってたら、寝るに決まってんだろ。適量のアルコールは睡眠を促します。ナイトキャップ。


「たくさん飲むとトイレ行きたくなっちゃうから、水分を時々ちょっとだけ摂る感じでいいかなーと」
「お花摘みも禁止だよ~」
「冷たいスポーツ飲料をほっぺに食らえ」
「たーまやー!」
「ああ、実家に通信してもよいですか? 少々肌寂しいので」
「本部に連絡だ!」
「あ、ごめんね、植物も夜は寝るよね。三丁目の佐々木さんの話をしてる場合じゃなかったの」
「誰!?」
「どうせ守護神は酔っ払って寝過ごすんでしょ」
「飽きるとか辛いとかではなく、くつろぎすぎて眠くなるなんて……」
「寝てるほうが長いって?」
「寝たらキスしちゃうゾー☆」
「とらさんのキスなら、千年の眠りだって覚めるね。これは役得」
「シュゴシンっ!?」
「むー、おやすみのキスはいっつもおでこだよね」
「すると思った? わき腹コチョコチョだけでしたー☆」
「かゆい……いた……」
「くわれる!?」
「ヒャッハー☆どうせなら、こっちに流れてこぉい!撃ち落としてヤルー」
「殺さないでぇ!」
「びび吃驚した、けどサンキュー目が覚めた!」
「お兄ちゃんとなら高原の夜明けだろうと寒くない」
「ちょ、くすぐった…!あはははは! も、やめ、ギブ! ギブ!」
「あ、専任軍曹は放置で」
「たすけて!?」
「メーテーオ☆ メーテーオ☆」
「たわし?」
「お兄ちゃん大好き、ぎゅーっ!」


 それでも、リベリスタはヒトデを二十数えたのだ。
 さわやかな高原の朝もやの中、リベリスタが最初に行ったのはごみ拾いだった。
 アークは世界を保つのが使命です。あらゆる角度で。
「海産物に似てるから、ずっと見てたけど、別物っぽい?」
 神秘の底を見据えていたとらが言い出した。
「流れ星の着地点に何か封印されていないか確認しましたが、確認されなかったようです」
 アーデルハイトも本部からの情報を開示する。
「倒さなくていいのかちょっと疑問だったけどさ。完遂できてよかった」
 目の下、みんな真っ黒で、あちこち腫れ上がってるけどね!
 さあ、みんなで帰ろう。
「もう、ゴールしても……いいよね……」
 腹筋を酷使しすぎたロアンは息も絶え絶えにそう言い、ばたりと倒れた。
「眠い……けど、帰るところまでしっかりしないと……ねむねむ」
 アルシェイラもゴミ袋片手に座り込む。
 数瞬後、安らかな寝息が聞こえてくる。
 置いてくか? 
 リベリスタの頭にそんな考えがよぎる。
 しかし、置き土産はいけないよね。 
 一拍置いて、生ぬるいスポーツドリンクだの、背中に溶けかけの氷だの、コチョコチョだの、おでこにキッスだのあらん限りの手段が試された。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 リベリスタの皆さん、お疲れ様でした。
 海産物は皆さんのハートにしっかり刻まれているようですね。備えあれば憂いなし。訓練されたリベリスタは美しいですね。
 
 ヒトデさんも無事観測。
 ゆっくり休んで、目の下の熊と虫刺されも治して、次のお仕事がんばって下さいね。