●夏はやっぱり山! それはとある夏の日の午後。アーク待合室、自販機前でのお話。 「どうしてこんなに、ニッポンの夏ってじっとじとしてるアルか……」 ぽつりと漏らしたのは、お財布片手に握りしめた『迂闊な特攻拳士』李 美楼 (nBNE000011) である。 疲労なんて無縁に見える彼女にもこの暑さは堪えるようで、どこかへんにょり項垂れていた。 「贅沢は言わないアル。ちょっと山に籠って滝に打たれる、それだけでワタシ元気になるヨ……」 ぱかりと開いた取り出し口から飲み物を受け取るとぐいっと煽る。そのまますべてを飲み干した美楼はほんの少しだけ、回復したようだ。 「どっかにいい滝知ってるネ? 折角のお盆だし、みんなで行くのもいいと思うアルゥ」 にぱっと笑ってこちらを見た美楼に、ほんの少し首を傾げる。シンキングタイム、数秒。 わざわざ避暑に行って鍛錬は流石にお断りだが、饅頭のひとつで丸め込めるだろう。美楼だし。 「あ、美楼さん。丁度良かった。ちょっと」 こんなに暑いのに涼しい顔で、万華鏡のお姫様降臨。 「そういう話なら時村財閥所有のキャンプ地を使わせて貰える様に申請しておく」 本当ネ!と嬉しそうにぴょこんと跳ねれば、長い髪の毛も一緒に跳ねた。 「あと何か海の幸も採れるよ」 「アイヤー、すごいネ! 一石二鳥アルな!」 美楼は嬉しそうに笑ったが、この場に貴方が居たなら気付いたはずである。嫌な予感しかしない。と。 ●ということで。 「アイヤー?」 海の幸。と言う単語を聞いて人は何を思い浮かべるだろう。 イカにタコ、タイにアジ。夏はやはり、刺身だろうか。炭火で焼いて食べても、絶品である。 まあ、つまりは。誰しもがそういうもの、を思い浮かべるわけだ。 やけに威圧感を放ち自律移動するサザエだとか。大きさもさることながら、バットを持ったカツオとか。 決して、そう言う物では、無い、筈だ。 「すっごいネ! こんなに大きければ腹いっぱいアルなー!」 きらっきらと瞳を輝かせている美楼に何を問い詰めても時間の無駄であることは明白だ。 何故聞かなかったのか。 それが『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の提案であると、何故聞かなかったのか。 優雅に避暑なんて、そんな幻想は崩れ去ったわけで。美楼の幻想纏いがぺかぺか光っていた。 『到着した? うん、……あ。え、いや、違う。それは食べられな…… 誰かに変わって』 貴方は満面の笑みの美楼から幻想纏いを受け取る。というか引っ手繰る。 『異世界から『海の幸(強調)』が大侵攻。キャンプ場を占領中。倒して来て』 どうして美楼なんだ。もうちょっと話が分かるひとに頼めば巻き込まれないで済んだのに。 『あ、あともう1チーム同じ様な事件を解決して貰ってるけど、 今回はそっちと競争。勝った方は福利厚生の一貫として必要経費アーク持ち』 つまり負けたらお休みにお仕事してるのに休日出勤手当ても付かないんだって、がっでむ。 『じゃあバカンス楽しんで来てね』 ぷつんと切れる通信。おかしいな。なんだか頭がくらくらするよ。熱中症かな。 さあ、バカンスだ(脱力) |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:あまのいろは | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月25日(日)22:53 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 深い緑の木々を、風がさわさわと揺らす。きらきら輝く木漏れ日のなか、ほのかに漂う磯のかほり。 磯のかほり。決してリベリスタたちの鼻がおかしくなった訳ではない。 リベリスタたちの前では、大きなサザエが鎮座している上に、やっぱり大きなカツオが浮遊している。 幻想でも、作り話でもない。これが福利厚生(もどき)を与えられたリベリスタたちの現実だった。 アザーバイド、『サザエ閣下』と『カツオ元帥』。異界から迷い込んだ、招かれざる客たち。 「この時期暑いし、自然の中でゆっくりするのもいいかと思ったのに……。何故、サザエとカツオ」 「けっこう楽しみにしてたんですけどね、山で過ごす休日」 「競争のようだけど、早めに退治してのんびりしたいな」 『レーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877) と『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658) の声はどこか力無く、視線はどこか遠くへ。『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062) は、海の幸を見ながらぼんやりと「焼けば食えるんじゃないかな」なんて考えてみたりする。 リベリスタたちが無気力に襲われ、項垂れるのも当然である。 「山行くヨー!」と誘いに乗って来たら山の中でアザーバイドが待っていたのだから。 しかも、もう1チームと競争で負けた方は旅費が自費になるだなんて、聞いてないよ。 普段温厚で人当りの良い光介だって、八つ当たりでもしたくなるというものだ。 そんな彼を気遣うように『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)がそっと光介に寄り添った。 「早く倒してしまって、それから存分に山での休日を過ごしましょう。 美楼様、終わったら滝で沐浴とか如何ですか? 静謐な森での滝修行は心の鍛錬と癒しになるかと♪」 この事件の一端を担った『迂闊な特攻拳士』李 美楼 (nBNE000011)は、シエルの言葉に大きく頷くと海の幸を『食べ物』としてきらきら見つめた。 「向うも『夏はやっぱり山!』と厚生福利にでも来ているのかしら?」 それでも此方は経費が落ちるかが掛かっているのだわ、と『箱舟きょうえい水着部隊!』エナーシア・ガトリング(BNE000422) 。 「危険度としては特別高い訳ではない筈ですが……。 存在が危険だと思うのは、なかなかのレアケースですね。いや、理由は分かりませんけどね!」 『変態紳士-紳士=』廿楽 恭弥(BNE004565)が感じている、よく分からない危機感。同じような危機感は、誰もが感じていた。もし逃そうものなら日曜日が終わる、あの憂鬱に包まれる気がする。 言いたいことも考えたいことも、たくさんたくさんたくさんあるが、とりあえずは、あのアザーバイドを討伐しなければ! リンクチャンネルに向かって真っ先に突っ走っていったのは『むえたいがー(ドヤァ)』滝沢 美虎(BNE003973) 。まんまと近付いてきたカツオ元帥を見て、にひひと笑う。 「いそのー! 喧嘩しようぜー!! そんじゃさっそく、とらエルボー!!!」 ごうと炎に包み込まれた美虎の肘が、カツオ元帥の体にのめり込む。そして、虎のようにしなやかに着地すると、戦士としての対抗意識の込めた視線を美楼へ向ける。ばちり視線があった美楼はぱちぱち瞬いて。 けれどすぐにカツオ元帥へ向かうとそのまま、勢いよく蹴り上げた。地面に叩き付けられるカツオ元帥を見てから、にんまり笑顔を美虎に返した。 「夏の終わりにサザエとカツオを獲る事になるとはな。秋の味覚には少々早いのではないか?」 言葉と共に放たれた真空刃が、カツオ元帥の体を切り裂いていく。『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093) が放った刃で刻まれた傷口からは、だらりと血が流れて止まらない。 胸の前で手を重ねて戦場を見つめていたシエルが、いとしいひと、光介へと視線を移す。光介もシエルのことを見ていたようで、視線が交わった。ふたりが見せあったのは、やわらかい笑顔。 「信頼してますから……、互いの強みを重ねましょう」 「はい、光介様。光介様と息を合わせるのはお手の物です」 戦場や日常を共に過ごし、固い絆で結ばれたふたり。そんなふたりが戦場を見守る姿は心強い。 リベリスタたちの攻撃を食らい続けていたカツオ元帥が遂に動いた。 カツオ元帥を引き付けようとしていた、彩歌の攻撃よりほんのすこしだけ早くに、だ。 カツオ元帥は手にしているバッドを乱暴に、ひどく力任せに振り回す。バッドは美虎と美楼を捉え、彼女たちを襲う。重い衝撃に思わずぐらりと視界が歪んだ気がした。 「あなたが狙うのは私よ、……なます切りにしてやるわ」 ちいさな身体に隠されたいくつもの補助演算機構から、彩歌が気糸を放つ。自身の指を動かすように手繰る気糸は、カツオ元帥の体を寸分逸らさず貫いた。 今も変わらずほのかに漂う磯のかほりに加えて、風に乗って流れてくる鉄のにおいが鼻を衝く。 ● サザエ閣下の射線を常に遮ることが出来るようにとエナーシアが立ち回る。 「それでは場違いな海産物たちは日曜の夕方に戻ること無く、此処で果ててもらいませうか」 のそりと動こうとしたサザエ閣下を横目で見たエナーシアは、サザエ閣下とカツオ元帥に向かって挨拶代りの鉛玉を放つ。 「Present for You!」 笑顔を浮かべた横顔は美しく。けれどそれとは対照的に、降り注ぐ弾丸はあまりにも残酷だった。 そこへ追い打ちをかけるように、杏樹が放った業火を帯びた矢がいくつもいくつも降り注ぐ。 何本かの矢は硬い殻を貫通することなく跳ね返されたが、それでも着実にダメージは受けているサザエ閣下。それでも堂々と鎮座する姿は、流石閣下というべきだろうか。 思わず気負わされそうになる杏樹だったが、ぐっと盾を構えサザエ閣下に向き直る。 「海産物に闘気で負けてられないな。 ――――意地の勝負だ、一歩も退かない」 ぱちり。火の粉が舞った。小さな火の粉は瞬く間に大きな炎へと変化する。それは邪拳「パー」。 周囲の木々をも巻き込んで、ごうと炎が燃え上がる。リベリスタたちの身体も焼かれていく。 エナーシアが、恭弥が、杏樹の視界から消えた。至近距離で攻撃を喰らった杏樹も、足に力を入れて踏ん張る。だが、ず、ずずずと身体が押し退けられているのが分かった。 耐える杏樹だったが、ふわ、と身体が浮いたのは一瞬のことで。サザエ閣下の姿が一気に遠ざかる。 「っぐ、あ!!」 背中に強い衝撃を受けて、杏樹の身体が止まった。幸か不幸か。木に衝突したことにより、余り遠くまでは吹き飛ばされなかった。けれど、身体は素直に痛みを訴えている。 ぐ、と歯を食い縛れば、通常のひとより鋭く尖ったそれがぎらりと光る。口の奥で、鉄の味がした。 同じように吹き飛ばされた恭弥はすぐに体勢を直し、サザエ閣下と仲間たちとの間に割って入る。 恭弥が自身の生命を削り作り出した暗黒の瘴気は、カツオ元帥をゆっくりと包んでいく。不吉の影を落とすことまでは出来なかったが、それでも着実にカツオ元帥の疲労は蓄積されていた。 体は傷だらけだったし、体の光は鈍い。バッドを持つヒレもぼろぼろになっていた。リベリスタたちから連携の取れた攻撃を受け続けているのだから、当然かもしれない。 サザエ閣下がずるりと動く音。カツオ元帥のバッドが振られる音。リベリスタが殴り、蹴り、斬る音。 海の幸の攻撃も、決して軽いものでは無い。そして、厄介なものばかりだ。 それでもリベリスタたちの優勢で戦闘を進めることが出来るのは、リベリスタたちが海の幸をうまく引き離すことが出来ており、海の幸の連携を阻んでいるからに他ならない。 そして、リベリスタたちには心強く、心優しい癒し手がふたりもついている。 「「遍く響け癒しの歌よ……白銀と紫苑の誓約!!」」 清らかな癒しの力が、戦場を駆け抜けていく。シエルと光介は、仕草で目配せひとつで、たとえ声を掛けずともぴったりと息を合わせている。 おかげで身体を苛む痛みからも、精神を掻き乱されても、攻撃に集中することが出来ていた。 狙われた場合にと神秘の力を落としてまで、自身の回避力や体力を高めて戦場に立っていたシエル。 「出来る努力は全てするが私の信条でございます……」 凛とした瞳で戦場を見る姿は、咲き誇る花の如く。風に煽られ紫色の長い髪が、ふわりと舞った。 「どれ、カツオの一本釣りよ! それとも本塁打の方が好みか?」 カツオ元帥へと一点集中。刃紅郎の放った破壊力の塊。アルティメットキャノンがカツオ元帥の体を上へと吹き飛ばした。まるで陸にあがった、―――いや既にあがっているのだけれど。陸にあげられたばかりのカツオのように、カツオ元帥はびちりと空へ。 落ちて地面に衝突したカツオ元帥の体は、ぼん、ぼんと何度か跳ねて転がっていく。 理不尽言えるほどの刃紅郎の力の前に、耐える力はカツオ元帥にはもう残っていなかった。 リベリスタたちは、残るサザエ閣下を取り囲もうと動く。 「お生憎様。残念だが此処を通してやることは出来ないな」 逃げようとしたサザエ閣下を杏樹が遮って。もとより、逃がしてやるつもりなどない。 「あの攻撃法、三種の内どれが来るかとか法則性が見つけられれば楽なんだけど」 「邪拳とは単なる腕試しではなく精神と動作の読み合いなのだわ」 ぽつりと漏らした彩歌の言葉に、エナーシアがふふと笑う。サザエ閣下をよく見ていたエナーシアには、完璧ではないが動きを予測することは出来た。 「残念でしたねサザエさん。どんなに足掻いても、アナタの負けですよ」 恭弥は黒く禍々しく光った双操布で、サザエ閣下を一撃。 完全に退路を断たれたサザエ閣下は必死に足掻くが、リベリスタたちは攻撃の手を緩めない。 「わははー!! わたしの土砕掌の前には硬いカラなんぞ豆腐みたいなもんだー!!」 美虎は硬い殻にも怯むことなく、その手でサザエ閣下に向かって拳を振り上げる。 「喰らえとらあっぷぁー!!」 ぴしりと音がして、硬い殻にヒビが入った。彩歌の澄んだ青い瞳が絶好の狙い目を見逃すことはない。 スーパーピンポイント。細い気糸は殻のヒビに向かって一直線に放たれる。 普通に考えれば大きな体に出来た小さなヒビに命中させるなんて、難しいことかもしれない。 けれど、彩歌の放った気糸が目標を違えることはない。なにせ彼女はプロアデプト。 高い命中力を誇る、完全なる論理戦闘者。気糸は小さなヒビに直撃し、硬い殻をも貫いた。 サザエ閣下の硬い殻は砕け、大きな体はぴくりと動かなくなる。エナーシアはふう、と息を吐いた。 「よし、討伐完了なのだわ。自費はない、………ではなくて慈悲はない。早く連絡してしまいませう」 アザーバイドを討伐する、という勝負の結果は着いた。結果は、堂々の勝利。 それでは、もうひとつの勝負の結果は、果たして―――――? ● イヴに連絡を取る、運命のとき。数回のコールのあと繋がった通信に、終わったことを告げた。 『おつかれさま。………それじゃあ福利厚生、思う存分楽しんで』 短い労いの言葉を残してイヴとの通信はぷつんと切れる。 「それってつまり、競争に勝った、ということですよね?」 「やった。元気一杯遊ぼうとかは考えてないから、BBQくらいはしたいかな」 光介はほっと胸を撫で下ろす。準備に取り掛かろうとした彩歌だったが、ふと思いついて告げた。 「………あっ。海の幸は入れないでね? フリじゃないからね?」 彩歌の言葉に視線を逸らす人、黙り込む人もいた。ええ、もちろん食べる気でした。 「……ふむ。食えるのか? こいつらは」 「カツオのタタキも良さそうだな」 「そうですね、なんとかタタキにできませんかね?」 「壺焼きにタタキに刺身…。何人前出来るネ?」 「……え。何じーっと見てるの美楼? みんなも! ……た、食べれるわけないじゃん、あんなの!!」 サザエ閣下とカツオ元帥をぐるりと取り囲んで、急遽開催ぷち会議。意見はなかなか纏まらない。 どちらも損傷が激しいが、食べられそうな気もする。けれども、所詮異界の生物であるし不安も残る。 「じゃあ、私が確認しよう。味覚は確かだから、齧ってみれば分かる」 「えっ、や、早まらないほうがい――――」 美虎が止めるより早く、杏樹はカツオ元帥をぱくり。 いっかい、ゆっくり噛んでみる。にかい、さんかい、噛んでみる。 「…………うーん……?」 別段美味しい訳でもなさそうだ。心惜しいが、穴に放り込んでブレイクゲートを発動することとなった。 それでも食べることを諦めようとしていない美楼を押さえつける役目は、美虎が引き受ける。 「それにほら、海の幸ばっかじゃ飽きるだろー。お肉も野菜もいっぱい用意したからこっち食べよう!」 美虎がにひひと笑って持ってきた食材をずずいと見せる。刃紅郎がバーベキューセットは借りてきてくれたので、すぐにでも食事が出来そうだった。 けれど、せっかく山に来たのだ。しかも、ここは時村財閥所有のキャンプ場。 川で釣りもできる、水泳も出来る、山に行けば山菜も採れるし、それにまだ、日は暮れていない。 存分に遊ばなければ損である。食事の前に、まずは山での休日を楽しむことにした。 「久しぶりですね、野営。師匠と一緒に居た頃を思い出します」 川の様子はもちろん、キャンプ場もよく見える絶好の場所に腰かけて、釣り糸を垂らしてゆったり流れる時間を楽しむ恭弥。 川辺で手を振る光介と沐浴を楽しんでいるシエルが見える。 「見てください、シエルさん。こんなにたくさん山菜が採れましたよ」 「わあ……。すごいです光介様。きっと美味しい料理が出来ますね♪」 滝行をしながらはしゃいでいる美虎と美楼が見える。 「あででで!? なにこれ痛い! 水が滝で当たって体が痛い!!」 「大丈夫、そのうち慣れるヨ!」 素潜りから呼吸をするため水面から顔を出した杏樹が見える。 「滝浴びついでに素潜りでサッパリも良いものだな。美楼、魚が採れそうだぞ」 楽しそうに遊ぶ仲間たちを見て、恭弥はひとり静かに頷いた。 「やっぱり山ですね、海で水着美女鑑賞も捨てがたいのですが……。 メタルフレームなので余り塩分が得意じゃないですし、それに。着衣で水泳を楽しむ様もなかなか……」 突如響く電子音。心臓が飛び跳ねそうになったものの、表情は崩さない。紳士ですから。 それが、自身のアクセスファンタズムの音だと気付いた恭弥は、通信を繋ぐ。 『誰に連絡してもなかなか繋がらなくてさ。そっちは終わった?』 海に山の幸を討伐に行った仲間からの通信だった。恭弥はゆるく微笑んだ。 「……ええ。ほんのすこし前に。今は釣りを楽しんでいるところです」 ひとことふたこと会話をして、通信を切ったところで背後から声がした。 振り向けば、木の枝を拾いに行った彩歌とエナーシアが立っている。 「魚は釣れた?」 「ええ、大漁ですよ」 「食べ物には困らなそうね。こちらも大収穫なのだわ」 エナーシアの後ろには、鹿を担いだ刃紅郎が立っている。なんとも豪華なバーベキューになりそうだ。 遊んで、食べて、笑って、騒いで。こうして、アークのリベリスタらしい、夏の一日が過ぎていく。 気づけば西の空は、とてもうつくしい黄昏色。今年の夏も、もうすぐ終わる。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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