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夏はやっぱり海!<連動>

●夏はやっぱり海!
 それは暑い夏の日の午後。アーク職員用休憩室でのお話。
「今年の夏はどうかしてると思うんですっ!」
 拳をぎゅっと握って主張を始めたのは今日もにこにこセンタービルの受付を担う、
 『敏腕マスコット』エフィカ・新藤(nBNE000005)である。
「やっぱり夏と言えば海ですよね。こんなに暑いのに泳がない何て勿体無いです!」
 クールビズなる風潮を最大限利用し割と涼しげな格好の彼女ではあるが、
 それはそれ。七月も初旬から延々延々延々と続くこの猛暑に良い加減我慢の限界が来た様だ。
 幾ら温厚なエフィカさんでも言う時は言うのである。
「と言う事で、今度のお盆を利用して皆で海へ遊びにいきませんか?」
 きらきらした眼差しでそんな事を告げられて、果たして誰が断れるだろうか。
 そう。ここがアークでさえ無ければ、話はそれで終わっていたのだ。多分きっと。
「あ、エフィカさん。丁度良かった、ちょっと」
 万華鏡のお姫様降臨。
「そういう話なら時村財閥のプライベートビーチを使わせて貰える様に申請しておく」
 物分りの良過ぎる反応に素直に喜ぶエフィカさん。わあ、とか言っちゃう。
「あと何か山の幸も採れるよ」
「えっ?」
 あ、何かもう嫌な予感しかしない。

●ということで。
「……」
 山の幸。と言う単語を聞いて人は何を思い浮かべるだろう。
 蕨だろうか薇だろうか、或いは茸か筍か。蓬などでも良いだろう。
 要するにとりたてを油でさっと揚げたりすると絶品だったりする物だ。
 その言葉一つから導かれる想像は決して罪の無い物である筈だ。
 全長3mもある自律移動するシメジとか、それを更に上回る巨大タケノコだったりとか。
 決して、そう言う物では、無い、筈だ。
「………………」
 何も言葉にこそしない物の、エフィカさんの手からぽてりと落ちるイルカの浮き輪。
 何故予想しなかったのか。
 何故意気揚々と『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)さんの提案に乗ってしまったのか。
 オフである。お休みである。日々のお仕事から解放されてドアからゴーアウトなのである。
 緊急時に備えて一応携帯しておいた幻想纏いがぺかぺか光る。
“到着した? うん、何かその辺にリンクチャンネルが開いたみたい”
 開いたみたいですね。
“異世界から『山の幸(強調)』が大侵攻。プライベートビーチを占領中。倒して来て”
 どこか遠くを見つめるエフィカさん。海なのに山の幸って時点で嫌な予感はしたんです。
“あ、あともう1チーム同じ様な事件を解決して貰ってるけど、
 今回はそっちと競争。勝った方は福利厚生の一貫として必要経費アーク持ち”
 つまり負けたらお休みにお仕事してるのに休日出勤手当ても付かないんだって、わあ。
“じゃあバカンス楽しんで来てね”

 ぷつんと切れる通信。おかしいな。砂浜が滲んで見えるよ。
 波打ち際から迫る大小様々な茸と筍。落ちたイルカ浮き輪の目が死んでいる。
 さあ、バカンスだ(自棄)




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:弓月 蒼  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年08月25日(日)22:52
 88度目まして、シリアス&ダーク系STを目指してます弓月 蒼です。
 さあ、バカンスだ! 嘘言いましたごめんなさい。純戦です。以下詳細

●注意
 本シナリオは、あまの いろはSTの『夏はやっぱり山!』との連動依頼です。
 本シナリオに参加する場合『夏はやっぱり山!』への参加は出来ませんので、ご注意ください。

●作戦成功条件
 アザーバイド『茸の里』、『筍の山』の討伐
 浜辺のリンクチャンネルの封鎖

●山の幸
・識別名『茸の里』
 全長3mの巨大なキノコ+α。自律移動する。
 親茸と仔茸で構成されており、親茸を倒さない限り際限無く増えていく。
 初期時点で親茸1体、仔茸3体。

・攻撃手段
 茸フエール:特殊。仔茸が1体増える。
 茸ハジケル:物近範。仔茸が1体自爆する。防御無視物理ダメージ+状態異常[致命]
 茸モットフエール※:特殊。仔茸が3体増える。
 親茸の大号令※:物近範。仔茸の約半分が一度に爆発する。防御無視ダメージ+状態異常[致命]×沢山
(※これらの手段が使えるのは親茸の手番のみ)

・識別名『筍の山』
 全長5m位の巨大な筍。剣山の如く沢山生えている。
 単体ながら核である黄金筍を破壊しない限り、際限無く再生する。

・攻撃手段
 筍千本:パッシブ。追加効果[反射]、毎ターンHP大回復
 筍の森:神近全。筍がとても沢山生えて吹き飛ばされる。ダメージ+追加効果[ノックバック]
 筍取り物語:神遠範。金色に発光する筍は何故か神々しい。ダメージ+状態異常[魅了][呪い]

●エフィカさん
 同行しています。指示が無くてもそれなりに。
 指示が有ればそれに沿って攻撃を仕掛けます。容赦無しです。
 能力傾向は命中特化型スターサジタリー。
 バイデン戦で力量不足を実感し、マグメイガスを齧り始めました。
 依頼相談掲示板で【エフィカ】と書かれている一番新しい発言を参照致します。
 何かご指示がありましたらどうぞ。スキルは活性化している範囲で使用可能です。

●戦場予定地点
 時村のプライベートビーチの1つ。一般人の気配は0です。
 浜辺にリンクチャンネルが1つ、見ればすぐ分かる範囲に開いています。
 これを塞ごうとすると、山の幸達は邪魔をして来ます。
 お仕事が終わった後余力が有ればバカンスして構いません。
参加NPC
エフィカ・新藤 (nBNE000005)
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
スターサジタリー
坂東・仁太(BNE002354)
ミステラン
風宮 紫月(BNE003411)
ホーリーメイガス
門倉・鳴未(BNE004188)

●夏だ!海だ!
「夏だ! 海だ! 海のさ……え、山の幸!?」
 門倉・鳴未(BNE004188)が思わず突っ込みを入れたくなる光景が眼前に展開されている。
 波打ち際に増える茸とでかい筍。
 出てくる場所間違えてないスかあんたら!と言う声が余りにも虚しい。
 そんな何時ものアークのお仕事。
「終わったら遊んでいい、と言うのはよくある事ですから……
 エフィカさんはそう気を落とさずに、ですね」
『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)の元気付ける声に、
 視線を戻した『敏腕マスコット』エフィカ・新藤(nBNE000005)が困った様に小さく笑う。
「そうですね、仕方ない……ですよね」
 多少落ち込んでも明るく笑えるのが彼女の取り得だ。
 元気付けられてやる気を取り戻したか、頷きながらイルカの浮き輪を拾い上げる。
「そう! 海だ! 水着だ! エフィカちゃんのスク水だー!」
「えっ」
 しかして当人の意思をまるで無視して酷い傍若無人が行われるin時村財閥プライベートビーチ。
『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)の声に、
 漸くやる気を取り戻しかけたエフィカが困った様な笑顔のまま一歩退く。
「エフィカちゃんがスク水着てくれないと僕戦えない病だから」
 えっ、何それ恐い。
「一応男性陣の希望として「白スク」「紺スク」「ピンクスク」「ワンピ」「ビキニ」
 のどれかから水着を選んでもらいたいとこ……だそうな」
 呆れた様な口調で『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)が呟く。

 流石のエフィカさんもどん引きである。勿論水着は自前で用意して来ている。
 ちゃんと年齢も考えて。今年で19歳なのだ。大学生なのだ。見えないとか言われても。
 スク水は無い。流石に、無いと思いたい。
「エフィカたんが何を選ぶかなー何を選ぶにしてもきっとかわいいだろうなーうーふーふー」
 『三高平最響』結城“Dragon”竜一(BNE000210)の言に思わず身を竦ませるエフィカ。
 一体何でどうしてこうなってしまうのか。色々釈然としない体でスポーツバッグをぎゅっと握る。
「待った!」
 しかし、其処に掛かる制止の声。
「確かにエフィカはスク水ニーソが似合うと思う!
 でも海で遊ぶのを楽しみに来た彼女にそれを強要するのは如何なものだろうか?」
 ツァイン・ウォーレス(BNE001520)が流れを断切るように熱弁をふるう。
 気の所為かエフィカさんもその陰でこくこく頷いている。そうそうと言わんばかりだ。
「いいじゃないかワンピでもビキニでも可愛いに決まっているんだから!」
 と、ここまで続けて聞いて頷きが止まる。数度瞬く。
 ツァインには見えない位置で頬を抑える。あわわわと慌てる。白い肌に朱が滲む。
「ピンクのワンピとかきっと似合う。最近キャミワンピっぽい水着とかあるよね。
 青のネックホルダーキャミワンピに麦わら帽子とか……」
 でも何事にもやり過ぎって、あるよね?
 あ、何時も通りだ。と安心した様な落胆した様な、そっと小さく嘆息。
「大丈夫……変なの、が回ってきそうなら……私が代わりに着る」
 とは言え『無軌道の戦姫(ゼログラヴィティ)』星川・天乃(BNE000016)の自己犠牲発言に
 それじゃあお願いしますと言える様な性格ならきっと苦労はしないのだ。
「だ、駄目ですよそんなのっ! それ位なら私が! ……あっ」
 ――――あっ。 

「海はええよな、男も女も脱いで眼福ぜよ。
 けどタダ働きは勘弁や、ちゃっちゃと片付けてバカンスを楽しむで」
 『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)が潔くも清々しく状況を無視して茸と筍を眼下に納める。
 偉大なる賭博師(グランドギャンブラー)である所の彼にとって、
 この仕事は競争の要素も含めてギャンブルにも等しい。
 狩猟者にも近しい瞳を爛々と輝かせるその――傍ら。
 紺スク水を着せられたエフィカと白スク水を着た天乃が並んでいるがとりあえず置いておく。
 と言うかエフィカの胸元と天乃のそれを交互に見て一言。
「大丈夫! 希少価値あるよ!」
「もげろ」
 そんなデリカシー0の高校生吸血鬼の所為で受付天使の精神力も既に0である。
「ま、まあ……勝てば良いのですから、前向きに行きましょう」
「とっとと倒して片付けて、遊ぶとしようぜ」
 気遣う紫月と遊ぶ事には割とやる気を見せる翔太。
 2人の言葉にそれでもなけなしの元気を振り絞ってエフィカが弓を握る。
「さあ気合入れて行くッスよ!」
「飛んだり跳ねたりぽよんぽよんしたり! その為に、全力で茸筍を駆逐する!」
 とは言えその脱力感半端じゃない掛け声に気合など入る筈も無い訳で――
 何だかなあなあの内に、かくして戦いは始まった。

●激闘!茸筍元気の子!
「山組には負けないよ!」
 精神を揺さぶる夏栖斗の声に、先ず矛先を向けたのは茸の群。
 わらわらと集まってくる3匹の仔茸はともかく迫る親茸は不気味の一言である。
「たまにはバカンス、も悪くない……から」
 その最中に跳び込むや、天乃の手刀が瞬きの間に仔茸を切り刻む。
 神速の戦舞は鮮血の代わりに胞子を飛び散らせ、そこに後方より世界樹の加護が降り注ぐ。
「茸相手には、これが有利な筈」
 紫月の呟きは正鵠を射ている。茸達には物理的攻撃手段しかない。
 ぼーん、と1体の茸が玉砕を仕掛けるも、天乃はまるで無傷。
「けほ……あの、僕には?」
「アークの精鋭なんですからまだまだ元気でしょう」
 にっこり微笑む紫月の眼が何故か笑っていない気がする件について。
 とは言え、強固な対策を用意された仔茸達は止む無しに増える。ぽこぽこ増える。
「チョコだと俺は断然茸派だけどね」
「俺は断然タケノコ派だな! キノコは柄のクッキーがパサパサしてるし!」
「いや、筍はチョコがなさすぎるだろ!」
「――――!?」
 あと関係無さそうな所で仲間割れも発生している。何故人は分かりあう事が出来ないのか。
「剥けてる茸もええけど、剥けてない筍もええよな。え、何の話って?」
 ナニの――と言いそうになった仁太へ黄金筍の神々しい懲罰的制裁。
「ぎゃー」 
 筍派一名様ご案内。

「しまった、争っている場合じゃない。女性陣の水着姿でパワーUPだ!」
「そう、俺達を魅了できると思うのはナンセンスだ!
 なぜならここには、エフィカたんの水着姿があるのだから!」
 熱く語るツァインと竜一には本当に効いて居ない辺りが世の無常である。
 水着を連呼される事で段々居た堪れなくなって来てるエフィカさんの精神状態はともかく、
 リベリスタらの戦術は非常に卒無く纏まっていた。
「あ、魅了は優先して癒してくッスよー。よ、余所見なんてしてないッスからね!」
 どちらかと言えば年上の趣味の鳴未ではあるがそれはそれ。
 女の子ときゃっきゃうふふしたい欲求は別腹か、良くも悪くも発揮される水着効果。
 何で戦う前に着替えさせようとか思ったのか。一拍遅れ放たれる息吹が戦況を磐石に整える。
「よし、男共は退け! しづっきーとあまのん、エフィカたんは目線こっちで!」
「巻き込まれるなよ……」
 こうなってしまえば、後は消耗戦だ。
 竜一が茸の群に突っ込むや、閃く宝刀が烈風を巻き起こす。
 切り刻まれる仔茸親茸。弱った仔茸を更に追撃する翔太の凍て付く斬撃が氷像に変える。
「さあ速攻撃破ぜよ!」
「はいっ! 頑張ります!」
 仁太の抜き打ち二連はその獲物の超火力も有ってか。
 暴君の銘に相応しいだけの痛烈な傷跡を親茸へ残し、そこに巡り回る魔陣。
 エフィカの手より放たれた破壊の光条が氷像も親茸も纏めて呑み込んだ。

「生憎と、負ける心算は御座いません」
 そこへ駄目押しにと満ち満ちる輝く冷気。紫月の声に導かれ舞い踊る氷霊。
「ちょ、僕味方だからね!? フリーズしないでね!?」
「丁度夏ですし、涼しいでしょう?」
 そんな大攻勢に巻き込まれ間一髪、髪一房が凍り付くだけで済んだ夏栖斗。
「あ……魅了、された」
「嘘だッッッ!?」
 黄金筍の方など一瞥すらしていないのに神速の斬撃に巻き込まれる竜一。
 それにしても何故彼らは主に味方同士で足を引っ張り合うのだろうか。
 異世界の住人である菌糸類やイネ科植物にはそんな事知る由も無いのであった。
 と言う事でそんなリベリスタ達を余所にぴかぴか光る筍。自爆を始める仔茸達。
「まずい、庇いに入る! 門倉、支援頼んだ!」
「あ、男勢全滅したらパラダイスとか、俺にはそんなやましい考えなんて無いッスからホント」
「魅了されてるー!?」
 あとセイクリッドアローとハニーコムガトリングが1回ずつ味方に降り注ぎました。
「いっけ――これで、止め!!」
「早々にこの世から消え去りなさい!」
 さりとて地力の差を覆すには到底及ばず、何より相性の良さも有り。
 紫月の一撃で凍り付いた親茸に刻み込まれる仇花。片面が動きを止めれば後は輝く筍のみ。
「如何に金色に輝こうと、エフィカたんの輝きにかなうものじゃあない!
 タケノコよ! 貴様らに足りないのは誰かのためという崇高なる意思だ!」
「場違いな物体は、消し飛ばしてやるぜよ!」
 時間差で放たれた二刀による圧倒的な破壊力が無数の筍を伐採し、
 そこを暴君戦車の主砲で穿たれたとしたなら、これを――如何なる猛者が耐え切れるだろう。

「すうこうなるいし……」
「……元気、出す」
 何故か凄く凄く釈然としないマスコットの呟きに、天乃がぽんと肩に手を置いた。

●戦い終わって
“うん、そう。御疲れ様……お休み楽しんで来てね”
 数度の呼び出しの後淡々と響いたイヴの声に、何と無く嫌な予感がしたと仁太は語る。
「あ、そっちは終わった? そう、ちょっと前に。ああ――そっかぁ……」
 山へ行ったリベリスタ達を連絡を取っていた夏栖斗が肩を落とす。
 山の幸の駆除には成功した。しかし、競争には勝てなかった。
 実力で劣っていた訳でなく、戦力バランスでも優れていた。では何故か。
「……ですよね」
 仲間内で足を引っ張りまくったのと序盤水着に目を取られて動きが鈍ったからです万歳。
 水平線を見つめるエフィカの視線は今日もどこまでも遠いのでした。
「よし、気分を切り替えて遊ぼう! 存分に! 水着で!」
「おぅ、海が俺達を呼んでるぜー!」
 テンション振り切って突っ走る竜一、傷も少なく元気なツァインが水着に着替え拳を挙げる。
「そう言えば結局エフィカさんは何着るんスかね。や、流石にスク水は辛そうな」
「偶には休みの一つや二つ、エフィカさんにプレゼントしてあげたかったんですが……」
 きょろきょろ鳴未が視線を巡らせる頃には、既に女性陣は更衣室に撤収している。
 この辺りの素早さは流石訓練されたアークのリベリスタと言うべきか。
「って、紫月さん水着は!?」
「私今回、エフィカさんと遊びに来ただけなので」
「海に来て水着着ないとか……」
 さらりと流す紫月に対して全身で不満を表明する夏栖斗と竜一。
 弱冷気魔法のお陰で夏に和服でも暑くないのである。ありがとう僕らの魔神王。
「これ、今年の水着……どう、かな」
「すっごく可愛いと思います! アシンメトリーでお洒落です」
 そんな波打ち際の事情はさておきガールズトークに花を咲かせるエフィカと天乃。
 紫のスカート付きビキニを纏った天乃と並び、
 エフィカも胸元にフリルをあしらったセパレート水着に身を包む。
 彼女なりに精一杯背伸びしてきた物の、恥ずかしく無いと言えば嘘になる。
「あー……」
 水着の裾を抑える様に更衣室を出たエフィカに、声がかかったのはそんな折。

「っ!」
 吃驚して隠れようとするエフィカに、差し出されたのは紙袋。
 通るのを待っていたのか、茸と筍の残骸を集めていた翔太である。
「え、これ……」
「露出度減るし、水に入ってない時はあると良いと思うぜ」
 紙袋を探れば出て来たパレオに、目を丸くしたエフィカへと続く言葉。
 身構える天乃が警戒を解くと萎れた花が陽を浴びる様に、光を取り戻した瞳に笑顔が咲く。
「はいっ、ありがとうございますっ」
 素直なのがエフィカだから。気遣いには全力で好意を返してしまう。
 子供っぽいと言われる事があっても、嬉しければ元気が出てしまう。
 だってそれはきっと、そう言う物だから。
「無事に仕事も終わったんだ。後で遊ぼうぜ」
 ひらひらと手を振る翔太を追う様に、2人が浜辺へと駆けていく。
「っっっ、っきゃ――っ!?」
 そして全力で上がる、悲鳴。
「あぁん? きわどい? それがええんやろうが」
 浜辺に姿を現した仁太の水着はムタンガ。要すれば股間から肩までをV字に繋ぐ紐である。
 御年頃の娘さんにとってはきわどいではなく完璧にアウトだ。セーフの要素が欠片も無い。
「少し大人しくなって貰いましょうか」
「……糸で根元、を縛っておくと……自然に落ちる、らしい」
 仕事の相談段階で既に飛び交っていた去勢、と言う単語が如実に現実味を帯びてくる。
 何でこのバカンス茸筍戦より遥かに殺伐しているのか。
「ところでエフィカさん、浮き輪持ってたけど……もしかして」
「あ、いえあんまり得意では無いと言いますか、羽根が……」
 でもそんな事関係無い!とばかりに鳴未が声を掛けたのは、ある意味見事なタイミング。
 エル・フリーズが飛び交う状況に慌てたエフィカも律儀に返す。
 そう、問題は羽根。エフィカの資質か才能か、泳ごうとすると羽根でバランスを崩すと、
 困った顔で小首を傾げる。勿論その視界外では去勢執行が粛々と。
「よし、此処は泳ぎを教えましょう!」
 イルカの浮き輪を抱えたエフィカの手を取って、海辺に駆け出す鳴未。
「あ、逃げた」
「ふふ、逃がしません」
 手段と目的が入れ替わっている気がしなくも無い女性陣がこれを追う。

「夏はやっぱり海ですなぁー」
 冷やした西瓜を持ち出して来たツァインが瞳を細めれば、まだ太陽は昇っている。
 赤に染まりつつある陽射しを浴びて、傍らで氷付けにされている面々に苦笑い。
「くそ、こうなったらこのキノコもタケノコでBBQをしてやるぜ!
 これでお腹が減ったエフィカたんもあまのんもノックアウトだ!」
「一応集めてきたけどさ、この茸と筍って食えんの?」
 翔太の問いかけに答えは無く、問答無用で串に刺し出す竜一を止める者も既に無い。
「エフィカちゃん遊ぼー!」
 懲りずに駆け出す夏栖斗の胸中を、ほんの少しの痛みが抜けていくも。
 けれど噛み締める様に、呑み込む様に、零れ落ちる様に、小さく漏れる呟きは。
「こういう平和な時間ってさ、やっぱり大事だよ」
 それがどれほど尊い物かを知った、掛け替えの無い夏の日。
 想いは、遠く。けれど思い出は永遠に。
「へー、エフィカ泳げないのか」
「って言いながら浮き輪引っ繰り返すの止めてくれませんかーっ!?」
 ばしゃーんと言う大きな音が、波打ち際に響き渡った。
 気づけば西の空は、とてもうつくしい黄昏色。今年の夏も、もうすぐ終わる。

「あ、パンツもってくるの忘れた」
 ……合掌。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
参加者の皆様、お待たせ致しました。
ノーマルシナリオ『夏はやっぱり海!<連動>』をお届け致します。
この様な結末に到りましたが、如何でしたでしょうか。

これはどうしようもない。
と言う位に隙無く整った戦闘プレ、御見事です。
お陰様で遊ぶパートが大幅増、エフィカさんのメンタルダメージも大幅増。
とは言えちゃんとバカンスは楽しめた様です。給料は無いですが。

……無いですが。

この度は御参加ありがとうございました、またの機会にお逢い致しましょう。