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FFF ~Five Fight Fraulein~

●ESCAPISM
 深夜の予備校の寮。
 浪人生冴島爽は、大好きな深夜アニメをリアルタイムで見ることも返上して、模擬試験に向けて、一夜漬けと言う名前の猛勉強をしていた。
「あぁーやばい……マジでやばい……。ここではないどこかに行きてぇー……。異次元の姫に呼ばれて勇者になりてー……」
 ペラペラ単語帳を捲りながら、冴島は呟き、とうとうシャーペンを机に放り投げた。
「ちょっと休憩!」
 と手を伸ばすのは、大学ノート。表紙には『倫理』と書いているが、中にはへたくそな美少女絵と、細かい設定の文字。いわゆる黒歴史ノートである。
「この五戦姫と主人公がこう、かっこよく戦ってだな。紆余曲折の果てにハーレムルートが……。この戦いでフラグが立って……。しかしここに新たな……」
 ぶつぶつ言いながら、ノートの書き込みを増やしていく冴島。追い詰められている時ほどいい妄想が出来るらしく、必死の形相でノートを埋めている。
 そんな彼の頭から、隣の廃墟ビルへと、怪しいオーブが五つ飛んで行った……。

●Hellraiser FFF
 上記の光景が、万華鏡がとらえたE・フォース発生の瞬間である。
 と、『黄昏識る咎人』瀬良 闇璃(nBNE000242)が告げた。
「五体のE・フォースが、予備校寮横の廃墟ビルに居る。近日中に、ビルに解体業者が入る予定なので、早急に駆除が必要だろうな」
 冴島の妄想から生まれたエリューションは、全て女性の形をとっている。容姿や設定は、生み出した冴島の黒歴史ノートの通りだそうだ。
「五戦姫と設定されている彼女達は、一人ずつビルのフロアにボス気取りで陣取っている。上級リベリスタなら一人で勝てるかどうかはかなり厳しい、四人程度で対等な戦いが出来る強さだから、手分けしてくれてもいい。もちろん全員で袋叩きにしながら上を目指してもいい。お前らがどうするかは自由だ」
 が、多分袋叩きは楽勝過ぎてつまらんぞ、と言い添え、闇璃は続ける。
「奴らは自分が担当するフロアからは出ない。フロアは遮蔽物もなく戦闘するにはいい場所だ。特に小細工や細かい作戦も必要ないだろう。夜中の廃墟だが、こちらで電気を通しておくから、灯りの心配は要らない」
 つまりは単純戦闘。相手は死体も残らぬE・フォース。
 何の気兼ねもなしに、戦いだけを追求できる依頼だといえよう。
「お前らには朝飯前だな」
 闇璃はニヤと口端をあげた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:あき缶  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年08月24日(土)23:32
 お世話になっております。
 受験の時、心から異次元を救いたい気持ちでいっぱいでしたあき缶です。
 今回は、純粋戦闘依頼です。

●成功条件:エリューション全滅

●五戦姫 E・フォース 5体
 浪人生冴島の中二妄想から生まれてしまったエリューション
 数字が小さくなるほど立場が上の設定
 思考能力は普通の人間並みで人語を解する
 それぞれ強さは上級リベリスタ4人で対等に相手できる程度

 一刀のソーニャ 六階担当 
 :青髪ショート、23歳の冷徹スレンダー美女
  日本刀(追加バッドステータス:[凍結])の上級デュランダル

 二扇のバラライカ 五階担当
 :赤髪ロングウェーブ、25歳の派手グラマー美女
  鉄扇(追加バッドステータス:[火炎])の上級クロスイージス

 三針のクロエ 四階担当
 :黒髪ロングストレート、16歳の陰気なゴス美少女
  暗殺針(追加バッドステータス:[毒])の上級ナイトクリーク

 四砲のマーリア 三階担当
 :緑髪おさげ眼鏡、19歳の物静かなクラシックメイド地味女
  バズーカ(追加バッドステータス:[出血])の上級クリミナルスタア

 五爪のジズ 二階担当
 :桃髪ぼさぼさちょんまげ、10歳のおバカな野生児幼女
  巨大片手爪(追加バッドステータス:[感電])の上級ソードミラージュ

●戦場
 夜中
 六階建ての鉄筋コンクリート廃墟ビル
 一階はエントランスと階段室の入り口あり
 ビルの中はがらんどうで、照明はついている
 真ん中に立てば隅々まで「遠2」の攻撃が届く広さ
 敵は階段室などのフロア外へ逃亡しない

 それでは、がっつり思う存分かっこよく戦ってください。
 考えることがない分、セリフとか演出とかにこだわると吉。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
マグメイガス
綿雪・スピカ(BNE001104)
ソードミラージュ
エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)
クリミナルスタア
禍原 福松(BNE003517)
ホーリーメイガス
海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)
覇界闘士
テュルク・プロメース(BNE004356)
ダークナイト
廿楽 恭弥(BNE004565)

●廃墟ビル2F
「それじゃ、れっつぱーれむぱーてぃ★」
 扉を開けて、『運び屋わたこ』綿雪・スピカ(BNE001104)の一言こそが幕開けの合図。
 フロアの真ん中には、ざんばら髪の幼女が両膝を立てて座っていた。
 格好はボロボロの布、右手にはおぞましいほど巨大な鋭い銀の爪。五爪のジズと名付けられたE・フォースは、ニパッと笑ってリベリスタを認めた。
「やっはぁ、遊んでくれるのぉ?」
 いうなり、ジズは床を蹴り、斜め前へと弾丸の如く跳躍する。
 ガッチィイイーーン……。
「おぉおーすごーい」
「……神速を舐めるな」
 ハーフムーンの超反応で、爪をナイフで受け止めた『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)は、ギリギリと得物を押し合いながら、彼女を至近距離で睨みつけた。
 破壊神の戦気をまとい、『誠の双剣』新城・拓真(BNE000644)は静かにガンブレードと黄金剣を抜く。渾身の一撃を見舞うべく、今は凪――。
「ハ……。実に解りやすい展開だな。面白い」
 奇をてらう展開もなく、複雑な地形もなく、ただあるのは打ち倒すべき対象。『ラック・アンラック』禍原 福松は、口端を上げた。
「お前みたいなお子ちゃまには正面切って戦う度胸も無ぇか? 来いよ、お前が本当に強いならな」
 手に巻き付けた純白のストールを魅せつけるかのように、拳を突き出し、福松はジズを誘う。
「んにゃー!」
 当然のように挑発に乗り、弾丸野生児は福松へと飛びかかる。
 福松はジズを待たない。
 己から迎えるように、まっすぐ彼女へ向かって走り、腕を引き絞って思い切り、叩きつけた。
「ぎゃっ!」
 倒れたジズの視界に、女の足が映る。見上げたジズが視界に捉えたのはシスターだった。
 口元に余裕の笑みを浮かべる『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)は、言う。
「男の子の夢は可愛らしいですね」
 妄想の塊にしては良く出来ている、と海依音は独りごち……、
「Eフォースである貴女たちは灰になるのかしら? それとも塵に帰るのかしら?」
 言うなりジズの真下が燃え上がった。
「ぎゃひっ」
 飛び上がった勢いに乗り、ジズは壁を天井を蹴る。三角飛びで鋭爪が狙うは海依音の首だ。
「攻撃されたら仕返し? 馬鹿な女の子は男にモテるんですよね、意外と」
 と言いつつも、海依音は切り裂かれた頬や肩を撫でる。
「予想通り速いな。精密な一撃が求められる、ということか」
 拓真が呟く。確実な攻撃のために、鷲祐も拓真も手番を集中に裂いた。
「乱暴ね。それに髪の毛もボサボサ……教育が必要ね?」
 と言いながら、スピカは距離を開けた。
 構えるはヴァイオリン。
「うるっさいっ!」
 案の定、飛びかかってきたエリューションを、スピカは微笑とともに迎えた。
 ヴァイオリンの弦が解け、無数の気糸となって飛び込んできたジズを包む。ギリギリと締めあげられ、ジズは身動きを取れなくなる。
「うふふ、素敵なレディへの教育的指導してあげる!」
 そのままスピカは、優雅にヴァイオリンへ弓を当てる。四種の旋律と四色の光が溢れた。
「ギヤアアッ!」
 身を捩る幼女に、
「それじゃあ、灰か塵かそれとも空か、試してみましょうか!」
 海依音の祈りによって噴き上げた聖なる業炎が、ジズを跡形もなく灼き尽くした。

●廃墟ビル3F
 階段室でメンバーを変更するリベリスタ。
「今回は福君に対価を頂いたので、神の愛を惜しみなくお届けしますよ。存分に頑張って下さいね!」
 シスターに見送られ、次なる敵を打ち倒す者は、フロアへと足を踏み入れた。
 居たのは、メイド服の裾をつまみ、優雅な礼をするお下げの眼鏡女。
「四砲のマーリアと申します。以後よろしくお願い致します」
 そして間髪居れずマーリアは立ち上がると、ジャキンッとバズーカを両手に構えた。
「それではいざ、尋常に」
「地味なナリで何てゴツい得物持ってやがる。このギャップが『萌え』ってヤツなのか? よく解らんな!」
 福松が引き抜く銃が、バズーカよりも速く火を噴く。
「いいわね、優雅なメイドさんに大きな武器! 浪漫!」
 狙い撃たれてはならじと、スピカは遠ざかりながらも笑う。
「でも、知性的に不自由な方や露骨に派手な方よりは随分といいです」
 と舞のように斬撃の疾風を飛ばす、『一般的な少年』テュルク・プロメース(BNE004356)は無表情のまま言い放つ。
「最近の若い子って、こういうの好きなの?」
 見た目は十二歳でも実年齢八十二歳の『逆月ギニョール』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)は、マーリアをしげしげ眺め回して、ぽつんと呟く。
「……ま、いいわ。初めて使うから、実験台にしてごめんなさいね」
 と告げるなり、エレオノーラは消える。
 次の瞬間にはマーリアの眼前に立っていたエレオノーラ。愕然と眼鏡の奥の瞳を見開くマーリアに、にっこり微笑んでから、灰色の両刃でマーリアの服を引き裂いた。
「貴方ッ!」
 マーリアの顔が歪み、エレオノーラめがけて銃口が向けられる。
 砲火が噴くと誰もが思った瞬間、マーリアは横からナイフで突かれた。衝撃であらぬ方角を向く砲口が、無闇に天井を焦がす。
 カシャーン。
「チャンス!」
 スピカが、隙だらけのマーリアへ攻撃をと構えるも、落ちた眼鏡へと近づく人物を認め、弓をおろした。
 床に転がる丸眼鏡をそっと骨ばった手で拾い上げ、鷲祐は持ち主へ眼鏡を差し出す。
「眼鏡は大事にしておけ。お前には似合う」
「……もったいないお言葉」
 鷲祐を睨み上げながらも、マーリアは素直に眼鏡を受け取り、元通りにかけ直す。
「おにーさん……」
 スピカは憧れの義兄の格好いいところを見て、ますます憧れを強めたらしい。
 頬に手を当て、ほんわりと義兄を見つめるのであった。
 仕切りなおしになった戦闘は、熾烈を極めた。マーリアのバズーカの狙いは正確で、福松を血まみれにする。
「ちっ」
 棒つきキャンディを咥え直し、福松は失血でぼやける視界の中、マーリアを睨む。
 その時、階段室から、
「福きゅん!」
 と叫び声と共に、神の愛が届けられた。
 急激に回復する自分を見下ろし、福松は苦笑う。
「一万払ったんだ、仕事はきっちりしてもらうぜ神裂」
「よく見て、かわす。狙って、当てる。……誰が相手でも同じこと。僕は、相手に合わせて過ごし方を変えるのが我慢なりませんで」
「貴方、いつの間に!」
 鷲祐やエレオノーラ、福松に翻弄されていたマーリアは、そっと近づいていたテュルクに至近距離でようやく気づいて叫ぶ。
「さぁ、心穏やかに……躍りましょう」
 白濁した冷気まとう拳を、そっと振り上げ、テュルクは囁く。
 ふわりとした動きで、しかししっかりと重みのある一撃がマーリアを凍りつかせる。
「ギャップ萌えも悪くないけど、メイドはもっと奥ゆかしい方が好みよ」
 スピカの弦楽旋律に乗って、鷲祐が走る。
「今時のデキた妹は、可愛くて戦えてフォローもできちゃう妹なのよ?」
「……俺の得手は徒手空拳。ナイフなど所詮、踵牙の代替品に過ぎん」
 踏み切り、鷲祐が振り上げるは己の足。踵に天に向かって生えた突起が、マーリアの胸に刺さる。
 そしてトドメのように、いきなり現れたエレオノーラがマーリアの喉笛を掻っ切った。
「ぐ、がっ」
 苦し紛れに放たれるバズーカの高速四連射が、テュルクの急所を射抜く。
 次の瞬間、マーリアはブロックノイズのように崩れ、消えた。
「嫌なお土産を下さったものですね……」
 フェイトで立ち上がったテュルクだが、苦々しくマーリアが居た場所を見つめるのであった。

●廃墟ビル4F
 屋内だというのに、真っ黒な日傘をさした少女は不機嫌そうにリベリスタを睨め回す。
「使えない妹達……」
 ハァとため息を吐き、目の下に隈のある顔色お悪いゴスロリ女、三針のクロエは己の黒いネイルをいじる。
 と見せかけて、針を飛ばしてきた。
「痛っ」
 毒を流し込まれ、エレオノーラが苦悶する。
「アハハハ。ぼーっとしてるからよ」
 と笑ったクロエだが、次の瞬間、顔をこわばらせる。
 なぜなら。
「クロエさーん! その憂いに満ちた表情を喜びで歪まさせてー!」
 笑顔で両手を広げ、『変態紳士-紳士=』廿楽 恭弥(BNE004565)が抱きつかんと走り寄ってきたからだ。
「ヒィッ、寄るなぁ!」
 バッと身を翻して恭弥を避けたクロエだが、恭弥は全く動じずに肩をすくめた。
「ふっ、やれやれ。シャイなお方だ。そういうレディも大好きですけどね」
「なんなのよ!」
 姫カットの黒髪を振り乱し、目を見開いてクロエが怒鳴る。
「女の子が暗い顔してちゃダメよ……と思ったけれど、意外と表情豊かなのね」
 エレオノーラが瞬間移動の斬撃を、彼女にも与えてやる。
 テュルクや福松もクロエを襲う。
「敵でなければ今晩お食事にでも誘いたかった所ですけど、残念ですね」
 硬質化させた布で命を吸い取りながら、恭弥はクロエの黒曜石の瞳を見つめて微笑む。
 クロエは油断なく周囲を観察していたが、目だけで笑うとテュルクへ走る。
「ふふふ、そろそろ誰か潰れないと面白くないでしょ? 然様なら」
 少しの希望も許さない、とクロエはテュルクを気糸で固く締め上げ、ぐうの音も出ないように。
「!」
 階段室から観戦していた『今日は癒やす系ホリメ』だった海依音は、目の当たりにした光景にショックを受ける。フェイトで復活した時に、神の愛を与えたというのに、クロエの必殺の拘束に、彼女の愛は削りきられてしまったようだ。
「……コレ以上一人たりとて落とさない様にいたします」
 魔力を循環させ、海依音は決心を新たにする。
 一人倒れたことで、リベリスタは本気になった。
 鷲祐はテュルクの体に上着を被せ、クロエの死体蹴りから奪い取る。
「頼んだ」
 と階段室に控える仲間にテュルクを預け、鷲祐はクロエに向き直った。
「……感謝するがいいッ! この俺が、全身全霊で相手をしてやるッ!!」
「やだ、暑苦しい系?」
 ネイルをいじりながらクロエは、怒鳴る鷲祐を嘲笑の瞳で見下す。
 ミラージュエッジを握り直す鷲祐の前に、少年がゆっくり歩み出て、手だけで鷲祐を制止した。
「お前、五連戦だろ。こんなクズに全力やる必要はねえよ」
 清濁併せ呑むキングオブイリーガルは棒付きキャンディを噛み砕きながら、クロエを睨む。
「来いよ」
「お呼びですよ、お嬢さん」
 恭弥が笑顔で真っ赤な布をクロエの背面に突き立てようとし、クロエはそれを避ける勢いで福松へ迫る。
「アンタもさっきのと同じ絞首刑に処してや……」
 ガシッと細い腕が捕らえられた。
「!」
 額に押し付けたリボルバーの引き金に指をかけて、福松は宣告する。
「逃がすかよゴス女。断罪の時間だぜ」
 銃声一発で、掻き消える黒ずくめの美少女。

●廃墟ビル5F
「立派なお胸、やっぱりその辺りは男の子ね」
 海依音が言い、
「み、見事なおっぱい……わたしもアレ位あれば」
 スピカが涙目になるほどの、ナイスバディ。
「こんな所まで来ちゃうなんて」
 二扇のバラライカは、たっぷりとした真っ赤な髪を揺らし、不敵に笑っていた。
 初撃は恭弥だった。
 双操布を両手に持ち、死の戦舞をバラライカに見せつけるも、彼女は巨大な扇でそれを防ぐ。
「お上手ですね……貴方の様なレディと戦える事を光栄に思いますよ」
「貴方もお口がお上手!」
 恭弥の軽口にもバラライカは飄々と返す。
「やはり堅牢……ならば!」
 拓真が裂帛の気合と共に、剣を振り下ろす。
「く、うっ!」
 畳んだ鉄扇で剣を受け止めるも、衝撃までは防ぎきれない。バラライカは高いヒールで己を支えきれずに、よろける。
 それでも負けじと、真紅の美女は扇を思いっきり振り切った。
 腹にいっぱい喰らって恭弥が崩れ落ちる。
「もうさせませんってば!」
 海依音が神の愛を放つ。
「流石、残り二人ともなれば強いな」
 鷲祐は呟き、しかし雷光をまとう彼の戦意は高揚するばかり。
 速度だけを突き詰めた鷲祐の一撃は軽い。だから、手数で攻める。
「一手先んじる!!」
 バラライカの防御の反応よりも速く、超至近距離から蜥蜴の踵が唸る。
 反撃の余地を与えない目まぐるしい刺突に、浄火や、魔術が絡む。
「く、ぅうっ!」
 扇での防御一辺倒にならざるを得ないバラライカ。彼女の攻撃は、鷲祐にとって児戯そのものだ。避けることなど造作もない。
「こ、の……!」
 それでも、蒼き稲妻へと扇を叩きつけようと、バラライカが振りかぶった瞬間。
「背中が、お留守ですよ?」
 イタズラっぽい囁きとともに、真っ赤な布がバラライカの腰を貫いた。
「か、はっ……」
 完全命中。己の髪よりも赤い血を吐いて、バラライカが空中に崩れ溶ける。
「廿楽、でかした」
「ふふ、『あの神速』に褒められるとは。素直に喜んでおきますよ。今宵の夜も、熱いですね」
 そんな意味深な口調に、
「……その言い方はやめないか?」
 冷や汗をかきながら、鷲祐が恭弥に言うと、恭弥は朗らかに笑って鷲祐の肩を叩いた。
「ははは、他意はないですよ。でも、その顔を見るのは楽しいんです」

●廃墟ビル最上階
 ようやく、リベリスタは最後のフロアに辿り着いた。空は白み始めている。
「……すまないな」
 拓真は、階段室に残る仲間へポツリと謝意を述べた。
 目標の効率的達成を考えれば、認められるはずのない、自分勝手な一騎打ちの希望を、仲間は聞き届けてくれた。
「一騎打ちは男の子のロマンらしいのよね。あたしはよく分からないんだけど」
 でも、ロマンなら邪魔はできないわね、とエレオノーラは頷く。
「双剣士新城拓真、その戦いぶりを拝ませていただきましょう」
 恭弥が微笑む。
「お前に任せる。好きにしろ」
 一見投げやりな言葉だが、その中には鷲祐の拓真への絶対的な信頼が滲む。
「ああ。行ってくる」
 とフロアへ踏み出そうとした拓真を、海依音が呼び止める。
「倒れるまで、やってらっしゃい! 悔いは残さないようにね」
 与えるは神の奇跡。戦士を万全の状態で送り出すは、ホーリーメイガスの使命。
 拓真は頷き、今度こそフロアへと足を踏み入れた。

 フロアの真ん中に正座をするは、凛の一文字がふさわしい青髪の女。
 一刀のソーニャの膝前には、一振りの刀が横一文字に寝そべっている。
 短く直線的に切りそろえられた髪を揺らし、ソーニャは青い鋭い目で侵入者を捉える。
「単騎、か」
 拓真はソーニャと間合いを取り、立ち止まる。
「俺には、二つ……己に課す誓いがある」
 ガンブレード『壊れた正義』を抜く。今から彼が語る言葉への、魔女の嘲笑が聞こえた気がした。
「一つは、己が誠を曲げずに貫く事」
 呪われた黄金の剣を抜く。
「もう一つは誰よりも強い剣士になる事」
 両手に握れば、誠に双剣。
 戦気を纏いし拓真は、見上げてくる蒼い瞳に己の黒い瞳をしっかと合わせた。
「リベリスタ、新城拓真。五戦姫が一刀、ソーニャに一騎打ちを申し出る」
 ソーニャは、しばらく拓真と見つめ合っていたが、そっと刀を掴むと立ち上がった。
「……受けて立つ」
 すっくとまっすぐに立ち、ソーニャは刀を立てると騎士のごとく刀身を引き抜く。
 刃を下に向け、あくまで影は一本の棒のようにまっすぐ。
「いつでも」
 俯いたまま、自分の切っ先を見ていた青い目を拓真に流し、ソーニャは促す。
「俺を倒すのは易くないぞ。我が双剣、我が魂……全力で受けよ!」
 拓真が床を蹴る。
 稲妻を這わせたブレードが風切り音を立てて、ソーニャへと迫るも。
 ギィイイイン!
 金属と金属がぶつかり合う悲鳴が建物に響く。
「それが全力か? 失望させるなよ!」
 ソーニャの刀が唸る。雪崩のような連撃が拓真を何重にも苛む。
 双剣で受けられるだけ受けるが、それでも漏らしが拓真の手足胴を切り刻む。
「己が全力を。負けられない理由がある!」
 拓真は、それでも紫電をまとわせる黄金と魔女の剣をソーニャへ向ける。
 ソーニャとて全ては避けれず、彼女の蒼白な肌が朱に染まっていく。
「この双剣で助ける事が出来る人々を、余す事無く助ける為に強くなる」
 所詮、相手はE・フォースだ。語ったところで何にもならない。
 それでも拓真は己の信条を告げる。
 いや、ソーニャを通して自分自身に告げているのだ。
 剣がソーニャの肩に突き立つ。
「綺麗事かもしれない。だが、構わない。それでも……ぐっ」
 ソーニャの白銀の刃が、拓真の右膝を突き砕く。突かれた膝が凍りつく。
 がくんっと態勢を崩しながらも、拓真は諦めずに上へと斬り上げた。
「それでも、この道を最後まで歩いて行くと決めた……!」
 ソーニャの脇腹が裂ける。
 負けじとソーニャの刀が拓真の左腿を貫き、右へと切り払われた。
「ぐ、ああっ」
 立っていられない激痛に、拓真は思わず声をあげながら、倒れこむ。
 一瞬の間。
 だが、拓真には誓いがある。
 ――この道が、間違っていないことを示すためには、刃を振るう以外に無いから。
 拓真は黄金の剣を投げるように、ソーニャの鳩尾へと突き立てた。
「がっ」
 喀血するソーニャを見て、拓真は意地で立ち上がる。右膝を覆っていたはずの氷は消えていた。
「こんな、所で、倒れているわけには、いかない……。俺は『誠の双剣』だ……。約束した!」
 ――己の誠と義の為に!
 残ったガンブレードに、全身全霊をこめて。

 爆裂の一撃を! 薙ぎ払う!

「……御見事」
 上半身と下半身が分かたれたソーニャは、無表情に拓真を称えると、消滅した。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お世話になっております、あき缶でございます。
五人との戦い、お疲れ様でした。
濃厚なバトルでした。
かっこいいプレイングをいただき、こちらも張り切りました。

またのご参加お待ち申し上げております。