●Creeping Terror さて、これを見てくれる皆様に問おう。『「真の恐怖」とはいかなる存在であると思うか?』と。 皆様にとってそれは黒くて早い、宙を舞う彗星の如きアレだろうか。 それとも、一般的に想起されるような幽霊を始めとする、『形あるもの達』だろうか。 ――おそらく、この問いにおいては『正式なる回答』となる言葉はないと思う。 何故ならば、10人に聞けば10人が別の答えを返すであろうことが明白だからだ。 さて、此度に置いて示すは『ひとつの恐怖の形』。 悪夢の申し子にして、全ての者達からも等しく恐怖されるであろう、恐るべき存在である。 この酷暑の夏にある種ちょうどいい怪奇たる異端の話に、お付き合い願おう。 ●Liquid Plus Solid,Equal? ぐぽり、ぷかぷか、じゅっ、どぷん。 ぐにゅり、ごぼごぼ。 ごぼん、どくどく、こぷこぷ、どろり。 ぐにゅぐにゅ、どくん。 それは、ある夜の出来事になるのだろうか。時針は上方30度前後を向いている。 夜の帳が降り、漆黒の闇がすべての物事を覆い隠してしまった後の出来事だ。 三高平市の主要幹線道路から一つ脇に入った先、被害者を除くならば目撃者は月の他にない。 それほどまでに寂れた、路地の中。そこには、一つのうごめく影があった。 距離はかなり遠くのこととなるのは音の反響から知れること。 しかし、それを打ち消しても風に乗る香りの粒子が、明らかなる異常を告げていた。 少し匂いを嗅げば、吐き気がする程に濃厚な酸の匂い。 そして、肉の煮凝りに似たすえた匂いが鼻を突くのがヒトでもわかる。 それは、形などあってなき存在だった。『色』という概念すらも元々存在し得ない。 ただ、ひとつ言える事。それが「明らかなる害悪である」事ただひとつ。 万華の導きに従うように、ゆっくりとズームをかけて形状を特定しにかかれば、それは。 液体と固体を足して二で割ったが如き形状、一切の器官を持たぬ名状しがたき何かであった。 外観を見ればそれは正しく『ゲル状』と呼ぶにふさわしい存在だろう。 ただ、その存在は『ゲル状』と呼ぶにはあまりにも流動的で、あまりにも個体で有り過ぎた。 そこでは、『ヒトであった物』の残骸が浮かんでは溶けて消えていく。 脾臓、心臓、十二指腸、上腕二頭筋、眼球、舌、皮膚。 赤き血はすでに『それ』に取り込まれ、真紅の色を呈していたが今はもう影すらもない。 外部からはもとが誰であったかすらも断定できぬほどに溶かされたそのモノ。 そして、それを生成し続けるある一つのナマモノ。それは。 ただ、消化と吸収のプロセスだけをひたすらに繰り返しながら。 新たなる犠牲者を求めて脈動を続ける、ただひとつの生命体なのであった。 ●Often Break the Rigid Flexibility 「……さすがにモニター越しといえど、ちょっと辛いですね~……。」 ハハハ、と苦い笑いを交えながらこぼれる言葉。流れる一筋の冷や汗。 それは、彼女の心情を示すには十分に過ぎたもの。愛想笑いがどこか痛々しい。 そんなことを言いながらも、的確にカレイドを操作し、未来を投影する一人の娘。 事務用の椅子をくるりと回して向き直り、招集がかけられたリベリスタ達を見据えた上で。 そこで彼女はまた語る。すべては、悪夢の来襲を止めるために。 「さて、今回確認されたのはスライムのアザーバイド、『ソイレントゼリー』。 崩界影響基準のフェイズは2ですが、特に強力で厄介な個体です。 スタンスとしてはある種のバランス型です。 軟体の体が非常に厄介で再生能力も極めて強く、体力としてもかなりタフです。 また、体自体が極めて強い酸で構成されている様子。 近接攻撃は酸によるカウンターダメージを覚悟の上で行うといいでしょうね。 攻撃の面では子実体を生み出してぶつけて来る攻撃などを行う様子で、非常に厄介でしょう。 生半可に挑むと返り討ちもあり得る相手です。 幸運を、お祈りします。」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Draconian | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月09日(火)23:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●Acid Fluid 夜の帳の上に浮かぶ月は往々にして邪な笑いを浮かべている。 そして、月が哂う夜というのは総じて良くないことが起こるのがまた相場。 この度の出来事を語るならばそれはまさに「月が哂った」と表現するのがふさわしいようにも思う。 フェイトを友として戦列を歩むは此度の勇士たち。手に持つ獲物は勇気の化身か。 それともただの蛮勇の塊か。それを知るには此度の異端の幕開けの他に術がない。 お付き合い願おう。異端に抗いし者たちの標に。 ぐばり、ぐにょり。 水のうねる音、香る酸の粒子。ヒトの血の匂い。 それは吐き気を催すには十分を過ぎて余りある。そして、その匂いがあるということは。 語るまでも無き存在たる「それ」があるということに他ならない。 風は正直にそれを運び、また勇士の鼻の先へと運んでいっては告げている。 そこに踏み入る勇士の存在は、もうその存在には知れていた。 「頭上に注意して下さい。くれぐれも」 「了解致しました。 ……しかし、此度の神秘は興味がつきませんな。」 「全くです。 この目でぜひ確かめ、探求せねば。」 戦士たちへと響く柔和な声。そして、それが仮初めのそれであるとは誰が知るだろう。 彼こそ知識の探求者。知恵の実を食すようそそのかす者。 ――『原罪の蛇』イスカリオテ・ディ・カリオストロ(BNE001224)。 その声に返答を返すのは、中年、というよりは渋い壮年の西洋紳士の声。 そして、また彼こそ結社の同胞にして正義の座に冠する者である。 ヒトは彼をこう呼ぶ。『鉄血』ヴァルテッラ・ドニ・ヴォルテール(BNE001139)と。 彼もまた、ビスマルクの血の分流を引く者。その姿に宰相の面影を見る者は少なくはないだろう。 紳士たちの談笑が、どこか平和を感じさせる。 この声に反応したのかはつゆ知らぬ。しかし、路地の先にあったその「モノ」は。 まだ視認すらままならぬ距離の昏き夕闇の中に紛れながら。 ぐばり、どろり、ぐにゅると。人知れず、胎動と増殖を繰り返していたのであった。 装填の機構音のする方を向けば、携帯ランプの朧気な光が人影を浮かばせる。 込められるシェルの種類はエネルギー弾だ。それは彼の大型のショットガンの規格に合わせたそれである。 銃の名は『スーサイダルエコー』。繰り手の名は『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)。 常に影を纏ったままの、『狩り手の者』と呼ぶには少々語弊があるその姿。 表現するならば、漆黒の闇に紛れるようなスーツとクロースに身を包む黒の歌劇者がふさわしい。 彼の瞳は常にスライムの探索を努めて止む事はなし。耳と目は常に澄んで止まない。 未だ気配を気取るには及ばぬ距離で、その先にあるであろう「モノ」を求め。 アスファルトを靴で叩けば、歩みは進む。残響と共に。 希望を求める二河白道を歩む者共の群れは開幕を求む。残響が響くたび、開幕は近づく。 その、残響と雑踏の戦団の中に、どこか恐れに似た感情を抱く一人の乙女がいる。 聖遺物たる剣を抱きし一輪の花。乙女の名は『雪風と共に翔る花』ルア・ホワイト(BNE001372 )。 此度の戦いのハードルの高さは通常依頼の比ではない。己の技が全て効かぬという重圧、如何ばかりか。 その重圧を押し返すため、乙女は守りの加護を求めた。叔父の使っていた形見の剣を持ちだしたのだ。 守りの加護を刷り込んだ鈍き剣は、乙女の心に共鳴し、守りの力を呼び覚ます。 その加護を身に受けながらも、彼女は恐れを心に隠し――祈り、求む。皆を守る盾となるための、力を。 ――ああ、天より下りし天使の中にはアンニュイな感情を孕んで辞めぬ者もある。 虚偽、強欲、怠惰。天使の一柱ならば忌避すべきそれを、彼はまた貪りながらも居た。 そんな、囚人服を纏いし天使の一柱の名は、『偽りの天使』兎登 都斗(BNE001673)。 彼は手にヘビーボウを持った状態で、空路を交えて皮肉交じりの思案を巡らせる。 正義の味方とはなんと面倒で、現実はなんと厄介なものなのだろうか、と。 彼の心情は『本当に、めんどくさい。』この一語に尽きるそれだった。 この世はまるで「だまし絵」のよう。現実と空想の境目はどこに一体あるのだろう。 その境界はあってまるで存在しないかが如くそこにあるだけなのかもしれない。 そう、『Trompe-l'œil』歪 ぐるぐ(BNE000001)はふと思う。 導師服にほっかむりとマントというちょっとアンマッチな泥棒スタイルをしたりしながら。 ちょっとばかしの甘美なアンニュイさと気だるさに合わせて、彼女もまた思うのだ。 此度の神秘はどのような技を返してくれるのだろうか。そして、どのような力を得られるのだろう。 自分は怪盗。自分に盗めないものなんてないのだから。と。 彼女のことを呼ぶならば、『古強者』と呼んではいささか語弊があるのだろうか。 プロテクター付きのバトルスーツに身を包み、酸の対策を揃えた姿で戦列に加わる姿が一人有る。 ――『素兎』天月・光(BNE000490)。彼女は此度、愛用の剣を腰に携えてはいなかった。 此度の得物は腰に結わえたスローイングダガー。本数は7本はあっただろうか。 それは、此度の敵は愛用の刃では相性が悪いとの判断ゆえの事。速度を生かしての中距離戦を挑む。 不利な土俵で戦う理由はさらさらないのだ。求められるのは勝利の一字のみ。 十全の装備を持って挑む、神秘の秘匿と夷狄の排除。彼女は仲間に呼びかける。 「酸に物理に強いのは、厄介だから準備は十全にね。」 その呼びかけに、仲間たちはただ黙って首を縦に振るだけであった。 それは、この先の激戦を悟っての事であったのかも、しれない。 しかし、この重苦しい雰囲気を、切るものがいる。 「でもまぁ、なんとかなんだろ。みんながいるわけだしな。 あと、演奏だけど、某RPGの戦闘音楽で構わないよな?」 楽器を手に戦列に加わる姿の一つ。彼の音は葬送の音か、それとも味方にとっての福音か。 ――『Small discord』神代 楓 (BNE002658)。 駅前ライブの帰りを思わせるラフなファッションに身を包み、手にするサックスで5線紙のビートを刻む者。 中性的なその表情から繰り出される少々アンニュイな反論は、場を和ませるには十分に過ぎた。 一同の表情が、わずかながらにほころべば、皆は首を縦に振る。戦地は、もうすぐだ。 一行の歩みは残響と共に進んでは消え行くのみ。 ただ、此度の戦列の勇士たちが不意打ちに警戒を巡らせる中、狩り手の者のライトが、闇を払った。 その先に、それはあったのだ。此度の排除すべきそれである、液状の恐怖は。 スライムが「テケリ・リ」と叫んだ、などとのたまえば幻聴だと笑われるだろう。 言葉すら介さぬ酸の波が、ぐばりと大きな意思を持って胎動する。 エネミースキャンを走らせる者、マナサイクルを起動する者。走る情報の波。酸の水音。 ぐばりという音と共に酸は波となる。 開幕。それは、いつも突然でありそして、脈動もまた、唐突だった。 ●Corrosion 「おじいちゃん。皆を守る力を貸して。」 乙女は祈りを捧げ、加護の力を身に受けて翔ける。白き光が身を包み、音を超えるための原動力へと変われば、 光の剣となった剣の一撃がスライムを梳るにはわずかの時間しか要しない。 その刹那。神経が悲鳴を上げたのを彼女は聞いた。酸の飛沫が身を灼いたのだ。 身を守るため天月の翻したマントを軽々と貫通し、飛沫の一部が身に振りかかる。 痛みが全身に走り、同時に酸が毒と転じる。走る苦痛と酩酊に近い視界の揺らぎ。 それにただ耐えながら、彼女は戦線を押しとどめる。苦しいのはほかも同じだ、と。 「大丈夫?毒、辛そうだね」 偽りの天使は薄情なる同情の意思を投げる。 その声はどこか空虚で、そして虚ろなもの。内心の同情を感じ取るには少々足りないものだった。 しかし、その奮戦を続ける勇姿に感化される者もまた、少なくない。 「大丈夫かったく……! オラァっ!」 その姿に共鳴するかのように。大口径の暴風はシェルから打ち出され、液状の体を抉る。 狩り手の者が繰るその射撃音は正しく、虐殺者の断末魔であり、残響と呼ぶにふさわしいものだ。 悪魔の咆哮が暗き路地に木霊する。満ち足りることのない悪魔の叫びが。 咆哮の数瞬、入れ替わりに打ち込まれるのは、コンセントレイト、集中からの近接による乱撃の拳。 「ぐるぐさんにおまかせ!」 ノックダウン・コンボ。酸の飛沫が身を焼く中で。精神集中からの乱撃の一撃が再生に楔を打つ。 酸の体の増殖のプロセスが止まり、挙動が不安定なそれへと変わるのが受け取れた。 そしてそれは、ゼリーそのものの存在概念を揺るがすことに繋がる。 液状のそれは、絶え間なき増殖なくして存在を許されることはないのだから。 その隙を逃すことはリベリスタたるもの、有り得ない。後衛に控えていた蛇が動きを見せる。 「お待たせ致しました。それでは、反撃と参りましょう」 乱撃の拳が再生に楔を打つと同時、集中によって練られた魔力の光爆がスライムの身を焼く。 不殺を定められた破滅の光が形なき存在を調伏すべく放たれれば、存在そのものの動きを鈍らせ、 より的確な攻撃を可能にする。しかし、それは破滅へのトリガーへと時として変わるのだ。 ぐばり、ぐぱぁ。 波打ち、脈動する塊が一瞬にして表情を変える。 1つは2つ、2つは4つと分かれ始め、生み出された子実体は一斉に行動を開始。 体からは想像もつかぬ速度で後衛のメンバーへと牙を剥いたのだ。 高速の子実体は自己意思を持ち、自らの身体を以って自殺的な特攻を後衛陣へと繰り出していく。 それはまるで海中に自ら飛び込んで自殺するレミングの群れのように。 「来るぞ! ――ッ!」 ヴァルテッラの警戒を促す声と共に放たれる鉄の暴風を掻い潜った幾つかの存在が。 強酸で構成された子実体の肉体そのものがヴァルテッラの装甲を捉える。 合金で構成された超重装甲服すらも軽々と打ち貫く酸の侵食力たるや凄まじい。 鼻を突く金属の腐食臭の粒子が神経回路を通じて彼の嗅覚として伝わる。 そして、その被害を受けたのは蛇もまた同じであった。愚者の法衣すら軽々とうち貫き、腹部の横に風穴が開く。 酸が表皮を侵食すれば、あとに残るのは溶解し、べろりと剥け落ちる皮膚のみだ。 苦痛と苦悶が精神を支配する。しかし、その精神の侵食すら強靭な意思の前には脆い刃にしかならぬ。 そして、その刃無き刃で傷つけられた傷口を癒し、抑えるために。 苦悶を癒すように吹き込まれる癒し手達の息吹が酸で焼け爛れ、溶け落ちた皮膚を再生させる。 堕ちたる天使の光の息吹と奏で手による希望の音色が。 ――反撃の狼煙は今、上がろうとしていた。 ●Savior of the Nightmare 反撃の牙はこの時を持って剥かれた。牙は研がれ、すでに鋭き光を周囲にもたらしている。 癒し手達の光によって肉体に余裕が出来た勇士たちの反撃の刃が無形なる存在へと牙を剥く。 古強者のスローイングダガーが光と共にそれを櫛れば、祈りの乙女は光の剣でこの存在を打ち払う。 「ク・リトルリトルなんかに負けないぞ♪」 「絶対、負けないんだから!!!」 乙女たちの咆哮が夕闇を払う。そして、その叫びこそが希望へ繋がる階となるとは誰が知り得ただろうか。 少なくとも、この場に居た者たち全てが知り得るはずもまた、無い。 「さぁて……。 もう一丁!」 狩り手の者の繰る得物が哂う。そして、その咆哮が再び液状の肉体を喰らい、破れば。 怪盗の指弾が神秘の光を持ってさらなる一撃を穿つ。そして、この行動を鍵として。 大いなる魔術は姿を表したのだ。 ――我が応召に答えて来たれ。赤熱せし灼熱の砂嵐よ―― 蛇が言葉(スペル)を紡げば魔力は胎動する。紡がれるは魔力の鋼糸。 膨大な空中の魔力は胎動し、彼の意思のままに砂嵐へと形を変え、無形なるその存在へと牙を剥く。 そして、その暴威とも言うべき嵐に子実体も掻き消え、本体たる存在もまた痛打を受ける。 「粘液と熱砂、相性は最悪でしょうね…では、我慢比べです」 蛇が思わず言葉を漏らす。しかし、これは折り込み済みの話だったのだ。好機と捉えずして何になるのだろう。 皆もすでに行動を開始する中。蛇は二発目の砂嵐の詠唱を開始する。 風前の灯となる無形の肉体。しかし、未だに脈動をやめようとすらせぬ生命力は。 苦し紛れに恐るべき行動を以って敵を食い破らんとしていたのだ。 液状の肉体が平たく、螺旋を描くように伸び上がり、一気に平たく平面を形成する。 そして、その行動の刹那――。 無形の「それ」は、全ての存在を食い破らんと、一瞬にして足元へと絡みついたのだ。 「――ッ!!!!」 「グァァァァァァァッ!!!」 誰のものかも分からぬ絶叫が木霊する。足元から頭上へと。ぐばり、ぐにょり、どろりと。 一度絡みついた酸の体は皮膚を食い荒らし、呼吸器の内部にすらも侵入し、溶解。 呼吸器を通じて肉体を破壊し、絶命へと至らしめるまさに致命的なまでの抹殺劇が演じられる。 自由のきかぬ肉体を動かさんと、もがき、動くものも数多い。 「アガ……グボ……カハァッ……」 しかし、その行動すらもあざ笑うように。侵食の速度は上がり、そして溶かし切らんと進む。 数分後の出来事。溶かしきった残骸をスライムが吐き出す。 すでに、外側から見れば物言わぬ骸とほぼ変わらぬ肉体を。 生存はほぼ絶望的かと思われた。その時――。 骸が、起き上がる。運命の力を借りて、肉体を揺り動かして。 「まだ……、負けられない……っ!」 「ここが踏ん張り所っ……!」 「技も盗まず倒れるとかないませんし……!」 「……ぐじゅぐじゅな最後は御免なんだよ。」 「ふふふ……。 流石に堪えましたね……。」 「回復役だからね……こういうときに踏んばらないと」 「死因が「スライム」とか、ぜってーやだかんな!!」 「興味深い……! 今の攻撃は、どうやったのだね?」 不敵な笑みが思わず溢れる。耐え切った。その痛みの先の自信が取らせる、無為の行動。 勇士の溶けきった姿すらも忘れさせるかのように。肉体は天使の息吹の力によってあるべき形を取り戻す。 そして、敵の反撃すらも無に返すかのように。8者8様の鋭き刃が。 無形なる存在の原型すらもうち砕いていった。 ●The Bridge on the Battlefield 肉体と精神が限界を迎える中で。奏で手によって勝利を祝う喜びの福音が奏でられる。 それは、自らの生存を確かめるかの如き福音にすら感じられる物。 此度の神秘に対して議論を交わす探求者達と興味を持って交わる怪盗。 マントを羽織る女性たち、奇跡的に服が無事なものもいくつか見受けられると言う様相の中で。 方舟への戦士たちの帰還は始まった。 戦士たちは思慮を巡らせる。――帰ったら、シャワーを浴びよう。 それが、生きている事を感じさせて、くれるはずだから。と。 Fin |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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