下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






<曲撃のアーク>猟犬吼える森


「特務曹長殿、敵数20が接近中です」
 脳裏に響く『Z』ツェッペリン伍長の声に、『Monster』ラントクロイツァー特務曹長は砲塔の奥の唇に笑みを浮かべる。
 報告を受ける間でも無く、敵の姿は革醒兵器を通して『見えていた』。
 空から見下ろす天の目。索敵能力に優れるツェッペリンは、例え此処が木々多い茂る森の中であろうと空から敵を違わず撃ち抜ける。
 その視界を小隊全員が共有出来ているのだ。
 思考と同時に視界情報をも共有出来る新型通信機の使い心地は此処まで非常に上々である。
「特務曹長殿、何時でもいけます。さあ御指示を」
 次の声は『U』カラッセ伍長。潜り、潜む、深海の暗殺者。
 そして部隊の最大火力にして最硬戦力たるラントクロイツァーが『砲弾を装填』したならば、もう陸海空、全ての戦力が揃うこの小隊に一切の死角は無い。
 生暖かい風が吹く。熱気と、心地良い緊張を孕んだ闘争の風が。
「諸君傾注せよ、闘争の時間である」
 心を、精神を、魂を一つに、一心不乱にそれを成せ。我等こそがそれを成せ。
 ラントクロイツァーは其の身から溢れ出る歓喜の侭に両手を天に翳す。
「愚かにも敵はこの地を取り戻す為に踏み込んで来た。我等猟犬の巣となったこの公園にだ」
 その傲慢さを打ち砕かねばなら無い。その愚かさを教育せねばなら無い。
 彼等に自らの行いが分を過ぎたる物である事を知らしめよ。
「此れはちまちました狩りでは無い。我々の本分たる闘争だ! 我等の戦果はアルトマイヤー少尉の瞳が余さず御覧になっているだろう。さぁ諸君、敵を撃て!」
 是ヨリ戦闘行動ヲ開始スル。


「あぁ、その通りだ。私は先遣隊に犠牲が出る事を承知の上で彼等を先に派遣した」
 隠す素振りすら見せずに『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)は言い放つ。
 けれどその実、拳を己の無力と非情への怒りに震わせながら。
「神秘的特異点である『穴』を利用して革醒新兵器を強化する奴等にこれ以上の時は与えられん。必ず今回で決めねばなら無い。…………手段を選んでいる余裕は我々には無い」
 重要拠点『三ツ池公園』の陥落に対し、アークが立案したのは敗戦の意趣返しであった。
 前回の戦いで『親衛隊』はアークという組織の脆弱性、即ち『エース』に頼りがちな戦力構成という弱点を突いてきた。
 即ちそれは『守るべきものを多く持つ』アーク側の泣き所を狙って来たという事である。
 だが親衛隊が三ツ池公園を陥落せしめたという事は、今度は逆に彼等が守るべきものを抱え込んだと同義と言えよう。
 つまり意趣返しと言うべき此度のアークの作戦は、本拠と公園の同時攻撃だ。
 もう少し具体的に言えば公園奪還の大作戦を陽動に、手薄になった本拠を制圧せんとする狙いである。
「この戦いはアークの浮沈を占うだけではなく、世界平和に影響を及ぼすものにすらなりかねない。……いや、確実になるだろう」
 逆貫がリベリスタ達に依頼したのは、三ツ池公園の北東の森に布陣した敵小隊の排除。
 人数は決して多くないが、強力な火力を保持する厄介な敵を自由にしておけば、彼らに乱入された各戦場への影響は非常に大きな物となるだろう。
 彼の小隊の排除は必須と言えた。
 けれど、夜の森に布陣……、適応し、潜んだ敵小隊からの完全な奇襲を受ければ、アークの精鋭達とてそのまま崩れてしまう危険がある。
「故に諸君等の前に派遣した先遣隊に喰らい付いた敵を、諸君等に排除して貰いたい」
 無論精鋭達の代わりに奇襲を受ける事になった先遣隊がどうなるかは、火を見るよりも明らかだ。
 だがそれでも、この戦いに負ける訳には行かない。
「先遣隊にも全ての説明をし、了承を得た。……私が言って良い言葉では無いのだろうが、彼等の覚悟を無にしないでくれ」


 資料

 親衛隊1:『Monster』ラントクロイツァー特務曹長
 身長3m50cmを越える常軌を逸した巨漢の親衛隊員。今回の親衛隊の部隊を率いるリーダー。
 メタルフレームのスターサジタリーであり、機械化部位は巨大な戦車の砲塔と化した頭部。
 其の外見通り動きは鈍めだが、其の体躯に見合ったタフさと砲撃戦闘能力を誇る。
 所持EXは『zusammenschieβen』(砲撃で破壊する)。ハニーコムガトリングの如く対象全てに対して無数の砲弾を連続して叩き込む凶悪な攻撃力を誇る技。溜1、物遠2全、無力崩壊、追・連。
 その他スキルとして戦闘指揮2lvも所持。
 所持武装は『P1500型装甲』やその他火器群。

 親衛隊2:『U』カラッセ伍長
 ラントクロイツァーには及ばぬ物の、3mは優に越える巨漢の親衛隊員。
 メタルフレームのスターサジタリーであり、機械化部位はUボートと化した頭部。
 見た目に反して意外と素早く、更にスキルを使用した隠密行動を得意とする。矢張り割りとタフめ。
 所持スキルは非戦EX『ultimate stealth weapon』。
 所持武装は『53cm魚雷発射管』(腕に装着する型で魚雷は空中を飛ぶ)を所持。

 親衛隊3:『Z』ツェッペリン伍長
 ラントクロイツァーには及ばぬ物の、3mは優に越える巨漢の親衛隊員。
 メタルフレームのスターサジタリーであり、機械化部位は戦闘型飛行船と化した頭部。
 見た目に反して意外と素早く、更にスキルを使用した飛行戦闘を得意とする。矢張り割りとタフめ。
 所持スキルは簡易飛行と非戦EX『索敵レーダー』。
 所持武装は『Motorkanone』(でっけー機関銃)と投下型爆雷(遠2、範囲、隙)を複数個所持。

 自律型戦闘兵器『Ameise』(黒)×5
 予め組まれたプログラム通りに動く自律式ロボット。高さは1m程度。
 三ツ池公園で解析した神秘データに基づき、性能は向上、外見に変化は無し
『精神無効』『電撃系BS(感電、ショック、雷陣)を持つスキル及び攻撃のダメージ1.5倍』
 毎ターン前方でショットガンを放つ。近複。ブロックも可能。耐久に優れる。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:らると  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年08月08日(木)23:26
 勝利条件は現場からの敵の排除。

 皆さんが現場に到着する頃には、20名居たリベリスタは8名にまで減っています。普通に戦闘不能者も居れば死亡者も居ます。
 彼等は15lv程度の実力です。

 戦場はいつもの北東の休憩所近くの森です。
 敵小隊は革醒兵器で情報共有を行なえるようです。

 彼等が前回に登場したシナリオは <鉄十字猟犬>狩りの夜に になります。
 カラッセとツェッペリンのデータは非戦EXを積む事で変化していますが、基本的な方向は同じです。


●重要な備考
 1、『<亡霊の哭く夜に>』には『<曲撃のアーク>』の冠を持つシナリオに参加しているキャラクターは参加出来ません。参加が行われた場合は、参加を抹消します。この場合、LPの返還は行われませんのでご注意下さい。(同様の冠内部であれば複数参加は自由です。また冠は決戦シナリオも含みます)
 2、『<亡霊の哭く夜に>』、『<曲撃のアーク>』はそれぞれのシナリオの成否(や状況)が総合的な戦況に影響を与えます。
 各シナリオによる『戦略点』が一定以上となった場合、大田重工埼玉工場の陥落に成功します。『戦略点』は『シナリオの難易度』、『シナリオの成否』、『発生状況』、『苦戦度合い』等によって各STの採点とCWの承認で判定されます。(増減共にあります)
 3、『<曲撃のアーク>』のシナリオ状況によって三ツ池公園の『親衛隊』が撤退する可能性があります。又、『<曲撃のアーク>』の戦略点は半分の値(端数切捨て・マイナスの場合も同様)が最終的に『<亡霊の哭く夜に>』に加算されます。
 以上三点を予め御了承の上、御参加下さるようにお願いします。


●Danger!
 このシナリオはフェイト残量によらない亡判定の可能性があります。
 予め御了承下さい。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
デュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
プロアデプト
彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)
プロアデプト
銀咲 嶺(BNE002104)
プロアデプト
ロッテ・バックハウス(BNE002454)
覇界闘士
クルト・ノイン(BNE003299)
クロスイージス
シビリズ・ジークベルト(BNE003364)


「何だ此れは」
 巨漢、凡そ人の枠からは外れてしまったかのような巨体で、矢張り異形の砲塔の頭部を支えるその男は吐き棄てた。
 男の名前は『Monster』ラントクロイツァー。亡国が親衛隊、鉄十字猟犬の特務曹長である。
「何だこの脆さは。何だこの様は。何なのだこの体たらくは!」
 倒れた男の下半身……、上半身は先の砲撃で吹き飛んだ為に下半身しか残っていない其れを見下ろし、失望の言葉を吐く。
 彼が期待し、地の利を活かした奇襲と言う手段までとって臨んだは闘争だ。
 攻め寄せるリベリスタ20名の中には、前回戦った時の様な兵が含まれていると考え、あらゆる手段を躊躇わずに全力を振るったその結果は、けれども余りにも拍子抜けする物だった。
「意気や善し。過半数を倒されど挫けぬ戦意は評価に値しよう。広範囲の攻撃に対して必要以上の被害を避けた上で残すべきを庇った戦術も粗いが悪くは無い」
 けれど。
「けれど君等は敵とするには余りに弱すぎる。君等は兵士になれる資質はあったかも知れないが、今はそれ未満の論外だ」
 向けられる攻撃を避ける素振りも無く弾く化物に、リベリスタ達の表情に動揺が走る。
 通じぬ事は判っていた。だが此れは余りにも絶望的が過ぎると言えよう。
 ラントクロイツァーは失望と共に手持ちの火器を構える。この程度の相手なら、最早砲撃も必要は無い。
 しかしその時だった。
「特務曹長! 新たに真っ直ぐこちらへと急速接近する敵8名、うち2名は前回交戦した連中です!」
 天の高みより彼方を見通す彼等の目の報告に、ラントクロイツァーは眼前の捨て駒達の意味を理解する。
 彼等は楔にして目印なのだと。森に溶け込み待ち伏せしての強襲に、精鋭を晒させない為の先遣隊。
 数ばかりが豪華な餌にまんまと引っ掛かり地の利を失ったは、彼等の手強さへの警戒が過ぎたが故か、それとも彼等の覚悟を見誤ったか。
「成る程、やってくれる。ツェッペリン、私の砲撃から漏れそうな残敵を潰せ。時間はAmeiseが稼ごう。カラッセは何時もの通りに。さあどうやら此処からが本番のようだぞ」
 この状況で投入されるなら、今こちらへ向かう敵は間違いなく本命だ。
 実力者を相手に使えなくなった手札は痛いが、幸い自分達はマシーナリーだ。
 囮との戦闘での消耗は最小限に抑えれている。ならば後は力と力のぶつかり合いになるだろう。
 小細工の余地が無い純粋な闘争に。
「命を捧げよ、我等が理想の為に!」


 Ameise、高さが1m程しかない自律型戦闘兵器。
 アルトマイヤー・ベーレンドルフがラントクロイツァーに与えた数機の玩具は、けれども立派にリベリスタ達を阻む壁として機能する。
 そも戦車の運用には随伴歩兵が必要だ。巨漢のラントクロイツァーとAmeiseならば、確かに戦車と随伴歩兵に見えるだろう。
「よう久しぶりだな。戦車野郎。今宵もドーラ砲に磨きかかってるか?」
 まあ、例えばこれ相手にAmeiseが何時まで持つかは甚だ怪しい所だが。
 Ameiseに阻まれながらも破壊的な闘気、ジャガーノートを身に纏い、ラントクロイツァーへ敵意を向けるは屈強のデュランダルにして猛る虎、『家族想いの破壊者』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)。
「Guten Abend.愚直な敵兵、鬼蔭虎鐵。君は私の砲の調子を知りたくて前に立つのかね? 其れは其れは、極東の戦友は今も変らずVerrücktだ」
 剣に威力はあれどラントクロイツァーにとっては無謀にしか見えぬその行動は、成る程、嘗て同盟者だったこの地の先人が見せた神風特攻を思い起こさせた。
 眼前のAmeiseの機能を掌打より流し込んだ気で狂わせ、その動きを縛った『九番目は風の客人』クルト・ノイン(BNE003299)は忙しなくその頭脳を廻らせる。
 彼が己に任じた役割はラントクロイツァーの抑え。強力な火力と通常の手段では貫けぬであろう装甲を持つ戦車を相手に、縛り封じ、そして倒す事。
 それが困難である事は判っていた。しかしそこに至る手前での足止め、随伴歩兵たるAmeiseの阻害に、クルトはプランの修正を余儀無くされる。

「ヲイ先遣隊!! 回復届くとこまで下がれ!!」
 その叫びは悲鳴にも似た、願いだった。
 先遣隊へと呼びかけた『殴りホリメ』霧島 俊介(BNE000082)とてそれが難しい事は重々承知している。
 覚悟を決めた先遣隊の心情の上でも、そして極単純に難敵がそう易々と彼等を下がらせてくれないと言う意味の上でも。
 だがそれでも救いたい。拾える命を拾いたい。何一つとして指の間から零したくない。何故なら俊介が革醒により得た力は人を癒す為にあるのだから。
 けれど願いは願いに過ぎず、この戦場にて其れが叶う事は無い。
 俊介の声に先遣隊の1人がピクリと反応した、次の瞬間、その頭上に落下するは爆雷。
 半径5mの範囲を纏めて吹き飛ばすその爆発に、宙を舞ったは千切れた腕。身体を失い、命を失い、余りに軽くなってしまったその腕は、大きく吹き飛び俊介の足元に転がり落ちる。
 そしてそれでも絶望は終らない。
 更に仲間を失えど、先遣隊達の心に決めた覚悟はまだ折れぬ。振るう刃を止めもしない。
 その先に待つのが死でしかないと判っていても。救いたいと願う者の気持ちとは裏腹に。
「良かろう。諸君らのその闘争欲。実に宜しい!」
 しかしその姿は『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)の心には火を付けた。
 強き者が強き敵と相対するは容易いとシビリズは思う。実際彼自身も幾度となくそうして来たから。
 けれど自らが足りぬと判って尚、覚悟を持って、心を折らずに挑むのは万の山を越えるよりも難しい。
 容易く死に至る彼等は、勝利を諦めずに精鋭の到着まで敵を引き付け、更に敵の火力を自らの身体を持って分散させている。
「あぁ、共に闘おう! 諸君らの様な者と闘えるなど、名誉極まり無い!」
 シビリズが呼ぶは加護。戦士達に終末の戦いすら戦い抜く力を授けると言う、ラグナロク。
 称えよう。諸君らの雄姿を。意義ある死に向かい行進する雄々しい其の姿を。


「朱鷺島雷音だ。安心するのだ」
 名乗り、鼓舞し、死に行く彼等と共に戦わんとする『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)。
 俊介の聖神の息吹と雷音の天使の歌、其の二つを持ってすれば先遣隊達の体力をほぼ上限までに回復させる事が可能である。
 けれど同時に雷音には判っていた。理解したくはなくとも、彼女の豊富な戦闘経験は否応なしに告げる。例え回復させようと、元より上限が低い彼等の体力では、回避も防御も乏しい彼等では、この戦いが終った後に立って居るのは難しいであろう事を。
 視線の先で『砲弾を装填した』ラントクロイツァーの一撃は、恐らく全てを根こそぎ刈り取るだろうから。
「わたしは白雪姫! 誇り高きプリンセスですぅ! 人をやめた犬共! 猟師に代わり、貴様らの心臓を頂きにきたのですぅ!」
 白雪姫は断じてそんな犬狩りの話では無いけれど、『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)の表情に冗談の色は無い。
 彼女は本気で現状に怒り、勝つ為に此処にいる。奪われた多くの為にも負ける訳には行かない。負ければ失われた全てが無駄だった事になってしまうから。
 そしてロッテの行動に合わせる様に、論理演算機甲χ式「オルガノン Ver2.0」、手甲型の統合型戦術補助デバイスの五指を開くは『レーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)。
 誰も彼もが生き急ぎ、挙句の果てに死に急ぐ。覚悟を決めてしまった彼等に対してかけれる言葉を彩歌は持たないけれど、それでも少しでも自分達の攻撃が苛烈ならば、彼等の負担が下がり生存率が上がると考えて。
 思考を研ぎ澄まし、気を拠り合わせて糸を成す。鋭く鋭く、貫く気糸を。
「鶴の一撃は熊の脳天をも穿ちますけれど、熊のような偉丈夫にも効きますかしら?」
 目を僅かに細め、鋭い瞳を敵に向け、『天の魔女』銀咲 嶺(BNE002104)の唇は囁く。
 大仰に展開されたラントクロイツァーの『P1500型装甲』の隙間を抜け目無く捉えて行く嶺の視線に、ロッテ、彩歌が頷き同調する。
 3人のプロアデプトがほぼ同時に放つ気糸、ピンポイントスペシャリティがラントクロイツァーを、そしてAmeise達を貫いて行く。
 だが彼女達の攻撃は確かに装甲の隙間を貫きラントクロイツァーの身体にダメージを与えたが、真の目的である通信機の破壊には至らず、そして巨体に見合ったタフさを持つ彼を怯ませる事もまた出来ない。

 そして絶望の時はやって来た。命を刈り取る瞬間が訪れた。
 Ameiseを虎鐵の刃、メガクラッシュが弾き飛ばし、更には彩歌が前に出てブロックを変わった事で、フリーになったクルトが虎鐵の抉じ開けた穴を潜って駆ける。
 だがそれでも間に合わない。
 ラントクロイツァーへ駆け寄る事は叶っても、更に攻撃を繰り出すにはもう一呼吸が必要だ。
 放たれるは、放たれてしまうのは、巨大な砲弾群。
『zusammenschieβen』
 砲撃で破壊する。砲撃で蹂躙する。砲撃で殲滅する。これこそが砲戦である。
 無数に放たれた砲弾がリベリスタ達を飲み込んで行く。
 砲撃の暴威に、生き残っていた先遣隊達が悉く命を散らす。そして無論被害を被ったのは先遣隊ばかりでは無い。
 ロッテや彩歌、それに俊介などの回避が決して優れてると言い難い者達は的打を受けて致命的なダメージを被り、更にはその彼等よりも一段耐久度の劣った嶺に到っては唯の一撃で運命を対価にした踏み止まりを余儀無くされた。
 しかも親衛隊の攻撃はそれで終った訳では無い。
 不意にリベリスタ達の中央に、地より浮かび上がるは潜水艦『U』カラッセ伍長だった。
 天に向けられた『53cm魚雷発射管』より放たれるは魚雷。宙を飛ぶ魚雷は空中で炸裂し、地に炎の雨、インドラの矢を降らす。
 だがリベリスタ達とて事前の情報でカラッセの存在を知っており、クルトや彩歌が熱感知で地表近くに浮上した潜水艦の動きを察知して居た為に完全な不意打ちとはならなかった。
 けれど、だ。既にラントクロイツァーの砲撃で大きく傷付いていたロッテに彩歌に俊介の3人には、カラッセの攻撃が駄目押しとなってフェイトを使用せざる得なくなる。
 唯一幸運だったのは、既に後の無かった嶺がギリギリで持ちこたえた事だろう。立ってさえいるならば、まだリカバリーは可能だから。


「ラントクロイツァー! てめぇ、人の命なんだと思ってやがる!!」
 余りにあっさりと掻き消された命達に、俊介が吼える。
 親衛隊が良く口にする劣等だろうが優等だろうが、同じ命に変わりは無い。殺せば等しく人殺しだ。
「ああ。能力に優劣はあれど命に優劣は無い。死ねばそれまで、その通りだ少年よ。だからこそ我々はもう二度と負けぬ為に、故国を蹂躙され思想を失わぬ為に君等を殺すのだ」
 辛酸を舐めた亡国の敗残者の考え方が今更変わる訳は無い。
「俊介!」
「ああ、クソっ。わかってる!」
 そして俊介が今やらねば成らぬ事は死んだ先遣隊を悔やむ事でも、ラントクロイツァーに牙を突き立てる事でもなく、崩れそうな戦線の建て直しだ。
 誰も彼もが大きな傷を負っている。受けた傷に平然としていられるのは唯一シビリズのみ。
 余りに規格外な為に一緒くたには扱えないシビリズを除けば、リベリスタ達は既に後一撃が耐え難い状態にあった。
 雷音の声に頷き、彼女の天使の歌に併せて俊介も聖神の伊吹を放つ。
 先遣隊を失って悔しいのは何も俊介ばかりでは無いのだろう。一番助けたがったのは恐らく彼だけれど、でもだからと言って好んで見捨てたかった訳でもない。
 例えば眼前の、今は気丈に唇を結んでいても本当は心優しい雷音が、目の前で仲間達を失って平気で居られる筈がないではないか。
 だがだからこそ成すべきを成さねばなら無い。そうでなければ、本当に全てが無駄となってしまうから。

 回復はすれど万全には程遠い。その隙を仮にも猟犬を名乗る彼等が見逃す筈は無い。何せ鉄十字猟犬は古参兵の集まりなのだ。
 戦いへの嗅覚は常に研ぎ澄ませて来た。リベリスタに襲い来るであろうは重さよりも速度を重視した、『Z』ツェッペリン伍長までもが加わった追撃の波。
 しかし、である。砲撃には間に合わなかったとは言えクルトは確かにラントクロイツァーの元へ辿り着いていた。
 そして砲撃を耐え抜き、今こそ己に課した役割を果たす時が来たのだ。それは正にこの戦いに於ける一筋の希望。
 分厚い装甲の表面に気を流し込む掌打は、狙い違わず巨大戦車の動きを縛る。

 戦いは激化し、加速する。
 咆哮と共に振るわれた虎鐵の刃がAmeiseを弾き飛ばして砕き散らす。暴虐とすら言える威のその刃は、本来ならば虎鐵はラントクロイツァーに振るいたかったのだろう。
 だが彼と戦車の相性は悪く、虎鐵の攻撃を届かせる鍵となる筈だった雷音も回復に追われている為に、それは諦めざる得なかった。
 何よりラントクロイツァーを縛るクルトがその行動を阻害されたなら、再び戦車の最大火力がリベリスタを襲い、そうなれば今度は脱落者無しにそれを切り抜ける事は出来ないだろう。
 故に虎鐵はクルトを守って刃を振るう。
 彩歌が、嶺が、傷付いた身体を気力で持たせ、気糸を持って着実に戦車の体力を削っていく。
「ジャガイモ野郎、貴様のヴルスト切り落として、アークへの土産にしてやるのですぅ! くたばれクソッタレ!」
 口の悪い白雪姫、ロッテに迫るはカラッセ。
「面白い冗談だな劣等民族。オレのはお前の口には少し余るぜ。どうしてもってなら早く死ねよ。試すだけ試してやるからさ」
 カラッセはUボートと化した頭部の切れ目から、真っ赤な口腔を覗かせて哂う。
 しかしカラッセとロッテの間に入るはシビリズ。集まったメンバーの中で、最もタフさを誇る規格外の男。
「さぁ死合おうか!」
 そしてシビリズの何より最たるは、余りに好戦的な、戦闘狂の顔。カラッセの放つインドラの矢もシビリズを怯ませるには不足だ。
 一方、ツェッペリンの、ラントクロイツァーをも巻き込んでの爆雷投下はクルトに運命を対価にしての踏み留まりを強要する。
 残り僅かとなったAmeiseも、機械であるが故に怯まず只管攻撃を繰り返す。
 親衛隊側に回復が無いとは言え、巨躯の彼等は耐久にも優れ、粘る。雷音と俊介は回復を繰り返し、それでも1人、2人とリベリスタの中から力尽きる者達が出始めた。


 それは正しく死闘であったと言えるだろう。
 ギリギリの戦いは、シビリズですら逆境状態に追い込まれる程で……、だがそれでも遂にクルトの攻撃にラントクロイツァーの巨体が地へと崩れる。
 クルト自身も最早言葉も語れぬ程に疲弊していたけれど、リベリスタ達の勝利が確定した瞬間だった。
 ラントクロイツァーを中心とした鉄十字猟犬機械化小隊は、戦車であり、リーダーであるラントクロイツァーを戦術の核として機能する。
 絶対の防壁にして攻勢の囮であるラントクロイツァーがおらねば、カラッセは潜めず、ツェッペリンも飛行状態の脆さを晒す。
 最も重要なコマであるラントクロイツァー無しでは、傷付いた満身創痍のリベリスタ達を屠り切る事すら彼等には出来ないのだ。
 けれどだからこそ、彼等は引かない。
「聞こえるか、ツェッペリン。君のリーダーは撃破した。退却するなら今をおいてないとは思うのだ」
 雷音の撤退勧告も、彼等の戦意を煽るに終わる。
 ラントクロイツァーを失って、カラッセやツェッペリンに戻る場所など無い。ラントクロイツァー無しに彼等に立てる戦場は無いのだ。
 リーダーであり指針であり、そして居場所であったから。機械と化したこの身に誇りを抱けた何よりの理由を失って、どうして後ろへ退けようか。
 死への行進が再び始まる。だけど今度は、先遣隊のリベリスタで無く親衛隊の伍長達が、勝利の為でなく殉じる為に。

 誰かが小さく呟いた。
 嗚呼、これだから戦争は嫌なんだ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様でした。
 結果はこのような形ですが、プレイングに少し甘い点もちらほら見られた為に被害は少し大きめになっています。
 色物と言われたりもする彼等でしたが、個人的には割りと好きでした。
 まだ戦いの行く末は見えませんが、ひとまずこの戦いはおめでとうございました。