●だから、一般人には無理だってば! 「んー、カット! 駄目駄目、そんなんじゃ。逃げてるだけじゃ絵にならないだろ!」 メガホンから聞こえる、駄目だしの言葉。 北海道の草原に似つかわしくない、屋内再現のセットに多量のカメラ。 そんな撮影セットの中、多量のモンスターに追い立てられる男女10人のグループは、疲弊しきった顔でその場にへたり込んでいた。 「はい、次のシーンいくよ! しっかりと立ち向かって、ほらほら、そんなんじゃ、いい作品にならないから!」 「カントク~、やっぱり無理ですよ。こんな様子じゃ、マトモな絵なんて撮れないです」 「なんだと!? くそう、別世界なら良い絵が取れる、最悪、閃きが出るって聞いたのに、これじゃ何の為に来たのかわからんじゃないか!」 言い争う、カントクとスタッフ。 両者が普通の存在と違う点を上げるなら……カントクはカメラな頭、両肩はフィルム、手はメガホンと一体化とかしちゃってる、なんというか映画撮影機材で構成された怪人風味。 スタッフもスタッフで、モブというのに相応しい、Tシャツにジーパン、ツバを後ろに帽子を被り、顔はのっぺらぼう状態。 その他周辺スタッフも、彼とシャツの色は違えど、見た目はほぼ同一で特徴なんて何もない。 「仕方ない、撮影は休憩だ。別の役者が来るまでカメラは置いといて。あー、スタッフ、モンスターを暴れないように注意しときなさい。あと、道具もきちんと手入れして置くように」 頭(というかカメラヘッド)を振り、カントクが椅子から立ち上がる。 へたり込んだ一般人には目もくれず、そのまま自分も休憩しようと歩を進めるが、異変は直後に発生していた。 「たいへんだー!? モンスターが逃げたぞ!」 「駄目だ、機材に飛びついて……ああ、火が、火が!?」 「カメラがぁ!? セットまで、まとめて壊れたぞ!」 「カントク、駄目です、抑えられません!!」 撮影に使用するモンスター、欲求不満で暴走。 脱走と同時に機材を破壊、火災発生、大惨事。 止めようとスタッフが奮闘するも、脱走したモンスターの数が多すぎて手に負えず。 「ええーい、このままでは機材が全滅ではないか! 仕方ない、全員、撤収だ!」 カントクが踵を返し、頭部カメラのスイッチON! 直後、レンズ部分が光り輝き、地面にゲートを作成、モンスター、撮影機材もろともその中に吸い込まれ強制撤退。 静寂を取り戻した平原には、先ほどまでの痕跡は何も無く。 大きく、すり鉢状に抉られた地面と、10人の男女が行方不明になった、という事実のみが残された…… ●撮影の手伝い、らしい 「何か、妙なアザーバイドがやってきたわ。このままだと、無関係の一般人が捕まって無理矢理役者にされた挙句、事故の後始末で異世界に連れ去られるの」 真白・イヴが額を抑えつつ、集ったリベリスタに説明を開始していた。 今回来訪したアザーバイドは、こちらの世界でいう映画撮影を行う一行、監督とそのスタッフ複数という集団。 どうやら、カントクが映画撮影に行き詰まり、新たな題材を求めてこちらの世界へ来訪、モンスターも纏めて引きつれ、別世界住人を巻き込んで映像を撮影。 可能ならば、そのままドキュメンタリー映画に、無理でも何か、今後の映画題材を決める際のインスピレーションが得れれば、と思ってやってきたのだ。 「このまま放置してたら、男女10人のグループが捕まって撮影、結果的に連れ去れてしまうの。皆が向かえばそれは防げるし、そのグループがやってくるまで時間はあるから、人目を気にする必要は無いわ。 どういうシーンを取りたいか、とかは今のところ、そこまで拘ってないから、皆がこういうシーンが良い、って言えばそのシーンを準備してくれるわ」 各種スタッフがスタンバイ、単にモンスターを前にしての映像だけでなく、推理物の探偵風味や、恋愛昼ドラ、ハーレクイーンだろうとも。 その気になれば、ホテルやお色気シーンだろうが、良い絵が撮れるならば存分に強力してくれるそうである。 「撮影に乗り気なところを見せたら、とっても好意的に接してくるわ。だから、存分に映ってインスピレーションでも閃きでも、思いつかせてあげて。 そしたら、モンスター暴走の事故とかも起こらないし、一般人が連れ去られることもないし、普通に帰っていくはずよ」 少々面倒な事件だが、激しい戦闘をする必要は低い。 また、人目の問題も無く、接触から撮影までもっていければ、事故も発生せず、比較的穏便に元の世界へ戻ってもらえるケースである。 「あ、言い忘れたけど。無理矢理戦って、追い返そうとかはしないほうが良いわね。なんだかんだでアザーバイド、ふざけた見た目だけどかなり強いから、逆に痛い目にあうでしょうし、ね?」 そこまで伝え、彼女は説明を終了。 映画撮影に熱意を燃やす、アザーバイドと彼が引き起こすハプニングを防ぐ為、リベリスタ一行を送り出すのであった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:あき缶 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月17日(土)22:17 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ピコーン! 北海道の草原のど真ん中に、異様な連中が居た。 カメラな頭、両肩はフィルム、手はメガホンと一体化とかしちゃってる、なんというか映画撮影機材で構成された怪人に、のっぺらぼうの無個性集団。周辺には大量の檻があり、中には地球上にはいそうにない変な生き物がぎっしり詰まっている。 どう見てもアザーバイドである。カントクと称される映画怪人へ、リベリスタは走り寄った。 「すみませーん!!」 「ん?」 カメラが振り向く。 「ここで映画撮影をしていると聞いてな。良ければ手伝いたいのだ」 カントクに向かって、『OME(おじさんマジ天使)』アーサー・レオンハート(BNE004077)が口火を切る。 「ほぉ? それはそれは」 絵が決まらなくて悩んでいたカントクなので、突然の申し出にも食いつく。 「おとーさんに相談したら映画のシナリオ書いてくれました!」 と、笑顔で台本らしき冊子を突き出す、『』キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)。 「アークから来ました。今日はよろしくオナシャッス!」 九十度の覚悟で頭を下げる『きょうけん』コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)も、キンバレイの横で負けじとメモを突き出す。なぜかもじもじと照れている。 カントクがメモを受け取ってみると、シナリオらしきものが、それはもう判読が難しい金釘文字で殴り書きされていた。 「一般人とモンスターを使ってドキュメンタリーが取れるわけなかろう。こちら側のエンタメというやつを教えてやろうぞ」 と息巻く『大魔道』シェリー・D・モーガン(BNE003862)をはじめとして、他のメンバーも、遅れを取るまいと、自分のやりたいシーンについてカントクに口々に説明した。 一通り話を聞いて、カントクは顎らしきカメラの底をメガホンで撫で撫で、思考にふけっていたが、パンとメガホンを叩いて、言った。 「よし、わかった! やろうじゃないか!」 「おっ! 話がわかるなカントクさんよ! そうと決まりゃ最高の映画を撮ろうじゃねえか!」 聞くなりカントクの肩をがっしと組み、『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)が笑う。 「映画撮影がんばってください!」 キンバレイが『超監督』というワッペンを付けてあげると、 「うむ!! こちらこそ頼むぞ!! おい、準備だ準備!」 カントクは喜色満面で頷き、スタッフに指示と檄を飛ばし始めた。 ●できましたー リベリスタが要求した内容は、どう考えても北海道で取れる絵ではなかったのだが、そこは映画に命をかけるアザーバイドの必死の努力により、全て叶えることが出来た。 全てのシーンを撮り終え、カントク達はご満悦で撤収を始める。 「いやぁ、君たちのお陰でなかなかおもしろいものがとれたよ」 じゃあねとばかりに帰ろうとするカントクを、必死で引き止める『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)。 「待って、待って! 完成形を見せてちょうだいよ!」 撮影時の女装っぽい姿のまま、『』雪待 辜月(BNE003382)も、恥ずかしそうにレイチェルに賛同する。 「ほ、他の方がどんなのか見たいですし……。異世界で上映されるとはいえ、自分の写りも確かめたいです」 「その様子だと、いいインスピレーションが得られたみたいだし、その成果が知りたいわ。」 舞台女優として『氷の仮面』青島 沙希(BNE004419)は、カントクに一定の評価を与えている。 (商業的に売れるのがどうとか、小難しい思想並べ立ててストーリーが破綻してる映画とかそういうこと言わず、インスピレーション求めて絵を撮るって最近少ないもの) だからこそこの素敵な仕事の成果が見たい。 「あぁ、そうだね。じゃ、ハイこれ」 ポンとカントクは四角い物体を沙希に投げ渡した。 「サンプルだから、一回見たら消えるよ。じゃあね! お疲れ様!」 言うなり、カントクは頭部のスイッチを入れる。 レンズ部分が光り輝くなり、スタッフやモンスター、機材を飲み込み消えてしまった。 後にはリベリスタとサンプル動画だけが残る。ホールも綺麗に消え、特にブレイクゲートの必要は無さそうだ。 「……見てみるか」 ソウルが四角いサンプルのスイッチを入れた。北海道の広い空に、総天然色の動画が投影される――。 ●荒磯に波が弾ける感じのロゴ画面で始まるよ カモメが鳴き交わす、南の島の砂浜。 ここは無人島ではあるが、宿泊するためのバンガローが完備されている観光島である。 漁船やボートが停泊している浜辺は、すぐそこが鬱蒼と茂る森だ。 森の奥にある洞窟には、朽ちかけた看板が立っている。『立入禁止』と書かれているはずの看板だが、赤いペンキは長年の日光により脱色し、判別できなくなっていた。 二人の男女は看板に気づかず、洞窟を進んでいってしまう……。 「こ、こわいです……」 愛らしい格好の半ズボン姿の子供、辜月は、ランタンに照らされる洞窟をおっかなびっくり進んでいた。 隣にはキリリとした男装の麗人、シェリーがいる。 「言い伝えによると、この洞窟は太古の地下遺跡じゃ。男女二人でしか開かない扉の向こうには秘宝が隠されておるという」 シェリーはハキハキと、洞窟について説明した。 「ひ、秘宝、ですか……ひゃっ」 キキッとコウモリが頭上をかすめ、辜月は身をすくめる。 彼の手を握り、シェリーは微笑んだ。 「これでもう怖くなかろ」 「はい。なんだか、安心します。シェリーさんは頼りになりますね」 「妾が進めるのは辜月がいるから……いや、なんでもない。先を急ご……?!」 ゴゴゴゴ……!! 地面が小刻みに揺れ、シェリーと辜月は顔を見合わせた。 「これって……まさか!?」 そのまさかであった。前から、二人を押し潰さんと大岩が転がってくる! 「こっちじゃ!」 シェリーはきつく辜月の手を握ると、わずかな窪みに飛び込む。 道いっぱいの大きさの岩も、窪みまでは押し潰せない。 二人を素通りして、岩は消えていった。 「……ふぅ、なんとか、なりました……」 辜月は大きくため息を吐いてから、状況に気づいて赤面する。 ――きつく抱き合っているなんて! 「なっ、なっ……なにをする!」 ドガアッ。シェリーは真っ赤な顔で辜月を殴り飛ばした。 「は、はやく行くぞ! 扉はもうすぐじゃ!」 とシェリーは居たたまれなさと羞恥で一人扉へと走る。 「あ、ま、まってください!」 追いかけた辜月が、彼女と一緒に扉のノブを掴んで、押し開ける……。 そこには魔法陣らしき模様がひとつ。 「これは……?」 シェリーが模様に触れるなり、陣が輝き、そして。 「シェリーさん!」 辜月が彼女をかばった瞬間、陣から様々な化け物が噴出し、洞窟の天井を突き破って島中に散らばっていった。 「こ。これは……。いや、言っている場合ではないな。こちらも……」 飛び上がれなかった残滓だろうか、ゾンビやスケルトンがうじゃうじゃと二人へ近寄ってくる。 二人は互いの背中を庇うように立ち、構えた。 「こうして九分九厘ダメじゃろうと。死ぬ時は、おぬしと一緒だと思うと、不思議と何も怖くなくなるのじゃ。絶対に生きて帰るぞ辜月!」 「絶対生きて帰れますよ。シェリーさんと二人なら、どんな危機でも乗り越えられる気がしますから!」 ●暗転の後に場面展開するよ 噴出した化け物は、バンガローの周辺に落下した。 ぬめったスライムが、バンガローの床の隙間から中へと侵入する。水場を求め、スライムが音もなく近寄ったのはバスルーム。 シャワーカーテンの奥から湯気と鼻歌がただよい、誰かの影が写っている。 影の形は女性特有の丸みを誇っていた。 ずるり、スライムはカーテンの隙間を通り、彼女へと襲いかかろうと……。 「きゃあー!」 バスローブをひっつかんだ裸体が背を向け、逃げていく。 走る道すがら、ローブを羽織ったのはレイチェルであった。濡れて色濃くなった金髪を靡かせ、あられもない格好のレイチェルは、バンガローを飛び出して、息を飲んだ。 「な、なにこれ……」 うじゃうじゃとモンスターが蠢いている。タコともイカともクラゲともつかぬ、触手生物である。 「イヤー!!」 レイチェルが叫ぶなり、彼女から光がほとばしる。閃光は、彼女を襲おうとしていた触手生物を含む一帯を灼き尽くした。 「島中こんなことになってるのかしら……。逃げなきゃ!」 レイチェルはローブの腰紐をきつく結ぶと、裸足なのも構わず、船のある浜へと走る。 しかし、森からは彼女を追う触手生物が限りなく湧いてくる。 走るレイチェルの傍ら、他のバンガローに宿泊していたらしい沙希が、複数の触手生物に囲まれている。 「い、いや、こないでったら!」 落ちていた枝を振るって、沙希は必死に応戦するが、枝ごときでは触手生物は怯みもしない。 「た。たす、け……」 飲み込まれていく沙希は、触手の間から必死に手を伸ばす。 「ごめんなさい!」 レイチェルは、耳をふさいで沙希から目をそらし、走り去る。 沙希の目から希望が消えかけた、その時。 「きんばれい頑張ります!」 ファンシーな服に、巨大な胸を無理やり押し込め、キンバレイが魔法のステッキ『魔力増幅杖 No.57』を振りかざして、沙希の目の前に舞い降りた。 「マジックアロー!」 ステッキから魔法の力が破片状に展開、沙希を襲っていたモンスターを引き裂く。 「そこっ!」 くるんと回って次々モンスターを退治する度、ぶるんっと乳が揺れ、マジカルな衣装の縫い目が乳圧に負けて、プチプチとちぎれる音がする。 だが、キンバレイ一人ではどうしようもない数の触手生物が、キンバレイと沙希を取り囲む。 ぬるりとした触手に巻かれ、キンバレイは自分の身に起こっている事象に驚愕した。 「ほえ? 服が溶けちゃいますー! って敵が増えてるー!」 「いやぁあーっ」 沙希もキンバレイ同様、再び触手生物の餌食になっている。 ぬるぬるぐちゅぐちゅ……いやらしい音を立てて、触手は女性たちを陵辱する。 「あ、あ……も、だめ……ぇ」 「あぅ……そーいえばいっつも……」 目の光を失った二人はもはや抵抗する力もなく、触手の海に飲み込まれていった。 ごくん。 ごくん。 哀れな二人は、触手生物の餌と化してしまった。 犠牲を目の当たりにし、ますます焦るレイチェルは、人影のある漁船に飛び乗るなり叫ぶ。 「早く、早く出して! きゃあ!」 船は出港しかけていたが、陸上触手生物が追いすがり侵入してきた。 レイチェルは応戦するも、立派な胸やら腹やらに巻きつかれ、顔を赤らめ息を乱す。 だが、海にも触手生物はいた。陸上のものよりも水を吸って質量が増えたのか、巨大だ。 「もうだめ!」 海の状況を見てしまったレイチェルが叫ぶ。すると、彼女の前に、男が仁王立った。 「船を頼むぞ、嬢ちゃん」 船を動かしていたのはアーサーだった。 巨大な出刃包丁を構え、船を転覆させようと足を伸ばしてくるモンスターに飛びかかる。 「うおおおっ」 出刃包丁はスパスパと触手を切り落としていく。 触手八艘飛び! すると、海の主のような巨大な蛸のような触手生物が波間を割って、登場。 「うおおっ!?」 アーサーを足で掴むと、細かい副腕でアーサーの衣服の隙間から、彼を辱める。 「う、あ……だ、だめだ! そこはぁ……はああっ」 かすれた熱い吐息混じりに、アーサーはのけぞり、頭を振る。 「くそっ、負けるか……! 俺の寿司のネタになれぇええ!!」 アーサーは出刃包丁を握り直し、蛸モンスターに飛びかかっていった。 ●一方、都市では 洞窟遺跡から噴出したモンスターのほとんどは、空から対岸の大都市へと次々に落下していた。 巨大な生き物が落下するだけでも、ビルは崩れ、道路は砕け、車や飛行機は燃え上がり、ガソリンスタンドから火柱があがる。 「ったく、平和求めて退役したっつーのによ……」 地獄絵図の摩天楼の下、ソウルはやれやれと首を捻ってゴキゴキ音を立てた。ざけんなっという罵声が、彼の口から放たれた。 「俺は軍人じゃねえ。国なんかどうでもいいが……家族は守るぞ! 男が守るべき最後の一線はなあ!」 パイルバンカーを手に、ソウルは落下してなお活動する触手生物の群れへと突っ込んでいった。 ソウルの真反対側。 眼前一帯を埋め尽くすモンスターを見て、コヨーテは目を輝かせていた。 「へ、へへっ。こいつぁすげえ……殴れるのが山ほどいるじゃねェか……」 彼の格好は薄汚い。 喧嘩屋のストリートチルドレン、コヨーテ。 喧嘩相手を求め続け、とうとうこの街に相手はいなくなってしまった。退屈していた日々に突如現れたモンスターは、彼にとって格好の『喧嘩相手』だ。 「腕がなるねェ……」 ニヤアと笑い、コヨーテはファイティングポーズをとる。 何人もの人々が泣き叫びながら、コヨーテの反対側へ走っていく。つまりモンスターから逃げていく。 逃げる者を追いかけようとする触手生物を、踏み止め、コヨーテは目を閉じ、教え諭す。 「心配すんなよ。俺は逃げたりしねェぜ。男は敵に背を向けたりしねェ」 カッと目を開き、コヨーテは叫ぶ。 「死んでも……負けねえ!!」 触手生物の群れのど真ん中へ、コヨーテは飛び込んだ。 手当たり次第に、当たるを幸い、殴って蹴ってぶん投げる。 「まとめて来なァ!! 一匹残らずぶち殺してやんぜェ! 世界がどうなろうが知ったこっちゃねェ……オレは、負けねェだけよッ!」 コヨーテの燃える拳が触手生物をぶち破っていく。 だが、彼は突如起こった大爆発に吹き飛んだ。 「なんなんだよ!? だけど俺ぁ負けてねェッ! 負けてねェからなあああッッ」 ここで少し場面は巻き戻る。 「クソッ、キリがねえな」 ソウルは、十数匹目のモンスターの死体を見下ろし、悪態をついた。 十数体を倒したが、かなりの損傷を受けた。自分はもうもたない。 「ざけんな! こんなとこで終われるもんかよ……」 と言いつつもソウルは焦燥をにじませつつ周囲を見回した。 歴戦の壮年の顔に笑みが浮かぶ。 「ヘッ……いいもんが転がってんじゃねえか……」 ソウルは工事現場へと滑りこむ。 そして、バラバラとダイナマイトを触手生物の密集地にばらまき、ソウルは落ち着いて葉巻をくわえた。 「そう絡んでくるんじゃねえよ」 襲ってくる触手をいなし、血まみれのソウルは笑う。 「へっ。まったく、最後まで恰好つかねえな」 シュッとマッチを擦って、葉巻に火を。 「だが、まあ、この一服の味、悪くねえ」 スパァと思い切り吸い込んで――葉巻を導火線へと落とした。 辺り一面に広がる閃光。 そして大爆発。 都市は、一人の男の命と引き換えに救われたのであった。 ●というお話だったのさ 北海道の空一面に広がる『FIN』の文字。 「これで、おわり、ですか……なんというか、すごいです……」 辜月が呆然と空のフェードアウトしていく文字を見守る。 サンプルと言われていた四角い物体は、知らぬ間に消え失せている。 「B級パニックホラーアクションって感じかしら、ね……。ハリウッドっぽい感じ」 沙希はそう感想を漏らした。 アーサーは呟く。 「オムニバスじゃなかったのか……」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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