●Your soldier そこは所謂秘密組織のアジトである。外から見れば何の変哲もない古倉庫、けれど中は大量の武器や爆発物などを保有する危険極まりない場所だ。 奥には古い祭壇があり、見たことのないような偶像が崇め祀られている。禍々しいその空気が、とてもまともなものではないと思わせて。 新興宗教の成れの果て。教祖の指揮の下かつて数々のテロ行為を起こし、多くの人々を犠牲にした。信者である、組織の兵隊たちの士気は今なお高く――けれど。 中の男たちは焦り憔悴していた。怒鳴り散らす者、頭を抱える者、泣きながら祈りを捧げる者までいた。 組織が壊滅してすでに数年。組織のNO.2は当時組織を裏切り壊滅に導いた男であり、NO.3は先日アークのリベリスタによって捕縛されてしまった。そして教祖であるNO.1は未だ姿を見せず……どこかに潜伏したままだ。 頭がいないのだ。この場には兵隊ばかり15人。組織への忠誠はあれど何をすればいいのかわからない。戸惑い祈りを捧げても、偶像は何も語らない。 「今すぐNO.3を救出に向かうべきだ!」 「どうやってだ! アークを出し抜けるのか? 誰が救出作戦の陣頭を取れるってんだよ!」 「かつてのようにテロ活動を行おう! 我々の存在に気付けば潜伏するNO.1が迎えに来てくださる!」 「幹部がいないんだぞ? リベリスタの活動も活発になってる。すぐ捕まっちまうよ」 会話は幾度も繰り返される。無意味だ。 彼らは元々、自分の歩む道を誰かにすがった人間だ。人に言われて行うことで、罪悪感も何も感じず行為に及べた。自分がない。今更自分で選択などしたくない。 ……誰でもいい。誰かが命令してくれ。誰でもいい。誰か―― 破壊音。倉庫の扉が吹き飛んだ音だ。 30の瞳に4人の男たちの姿が映る。全員の顔が引き攣った。その4人が余りにも有名な存在であったからだ。 彼らは無遠慮に近づく。15人が一斉に飛び掛かったところで勝てるはずもないと、事実そうなるだろうとわかっていればその気も起こらない。 彼らは眼前で立ち止まる。口だけで笑みを作って―― 「君達、今日から夜渡家の兵隊。断ったら豚――の餌」 「……Yes, boss」 それしか言えなかった。 男たちは満足げに頷き―― 「壁さえ確保すれば、我ら最強の一族が家継如きに遅れは取りますまい」 「姉さんとすだちをこの手に取り返してやろうぜー!」 「戦えるならなんでもいいぞー」 脳筋たちが意気揚々と声を上げ。そんな連中を見やり……待ち望んだ誰かは少なくともこいつらではなかったと、15の諦めた笑みが零れた。 ●I my me mine 「これ完全にアウトだよな。討伐対象でいいよな」 「例の如くダメデース。ほら見ようによってはフィクサードを更生させようとしてる感じデショ」 「お前いい加減にしろよあいつらに金でも貰ってるのか」 「おいばかそういうこと言うな」 リベリスタと『廃テンション↑↑Girl』ロイヤー・東谷山(nBNE000227)の間に入った亀裂はともかく。つまり今回はこういうことだ。 瀬戸家継という男がいる。『堕ちた者の楽園』と呼ばれるフィクサード組織の元NO.2であり、組織を壊滅に導いた人物だ。現在はリベリスタの名門夜渡家の娘瑠香と結婚、息子のすだちも産まれ幸せを満喫しているところである。 が、そんな境遇の為当然彼の命を狙う者たちがいる。一つは組織の残党、そしてもう一つが妻の家族である。 「『である。』っておかしいだろ。妻の家族が命を狙う時点でおかしいだろ」 「モノローグに突っ込むのはよしなさいよリベリスタ」 娘命・孫溺愛の夜渡家にとって、家継は殺害対象であったというお話。 「デ、今までも散々家継の命を狙う夜渡家の連中を撃退してきたワケデースが、今回はなんと数が多い」 指導者を失い宙に浮いた連中。そのままにしていれば確かにいずれ無差別な事件でも起こしたかもしれない……が。 「フィクサード組織の兵隊15人を改心させまして、夜渡家の兵隊として組み込んで進軍中デースよ。家継の元に」 「お前は改心の意味がわかっているのかと。脅して従えてしかも結局家継狙いかよ」 「でもほら見ようによってはフィクサードを更生させようと……」 「うるせぇよ」 はいはいっと資料を手渡し。 「今回の件をMr.家継と話し合いマーシてネ。とりあえず瑠香とすだちにはお出かけしていただきマーシた」 まぁ、そうじゃないと夜渡家死んじゃうしね。 「デ、数も多いし家継もよければ手伝うと言ってマースが、戦う場所と家継を呼ぶかは皆さんの判断にお任せしマースよ」 家継は勿論護衛対象。彼の実力はリベリスタのトップランカー相当の実力を持つ夜渡家と互角に張り合えるほどではあるが、家継がいれば集中攻撃を受けるだろう。どう動かすか、初めから呼ばないかはリベリスタの作戦次第だ。 「家継は当たり前デースが、夜渡家の連中もいつもの通り、気絶で済ませてくだサーイね。脳筋ですので戦って倒せばおとなしくなりマースよ」 兵隊は逃がせば何をするかわからないのでこの機に全員捕縛しちゃってくださいとウィンク。いつも通り頑張ってねヒーローと手を振って。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:BRN-D | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月21日(日)22:39 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●家継と一緒 夏の日差しは裏通りにも容赦なく降り注ぎ。その場にて待つ者たちの額に暑さと緊張が汗を走らす。この場にある誰もが迫る戦いを前に緊張を―― 「家継君も元気そうだな。前に言っていた写真が出来たから渡すよ。暑いが、一家共々体に気をつけてな」 そうでもなかった。『Type:Fafnir』紅涙・いりす(BNE004136)にとっては今日も『いつもの続き』に過ぎない。日常と非日常はすでに溶け込んでその境目も見せ付けない。故にいりすはいつだっていりすのままそこにある。 「ああ……ありがとう」 そのマイペースさに、妻の家族に獲物を向ける緊張と戦っていた家継が深く息を吐き出す。息子の名付け親であるいりすに感謝の気持ちを持つ家継だが、その大物っぷりに尊敬すら抱いて。 「その……頑張りましょう。すだちちゃんの為にも」 命を狙われても家族を大切にしたい家継の気持ちを知ればこそ、『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)は掛ける言葉を吟味して。 マイペースという意味なら彼女も同じ。いつだって護りたいのは誰かの意思、誰かの生き様。子供のためにと、如何にかするためにここに在り。 「家継さんと瑠香さんだけならなんとかなるかもしれませんけど……」 「いっそ思いっきり殴り合っちゃったりした方が仲良くなったりしねぇかな、脳筋流で」 楽天的とも取れる発言はツァイン・ウォーレス(BNE001520)のもの。そのまま「どう思う七さん?」と横に振れば。 「そうですね。初孫とのお遊戯と一家団欒をかけての勝負、悪くないと思います」 至極真面目に受け答え、『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)が家継に向き直った。 「家継さん。よく考えてください。今だって家族の時間を取られているのですよ?」 「そ、そういうものかな」 困ったように笑う家継にずいと詰め寄り。 「そういうものです。頑張れお父さん」 笑いかける。かつてフィクサードの女性を愛した七海は、似た境遇の家継を応援せずにはいられなかった。掴めるものは掴めと願う気持ちは今もなお。 「落ち着いて話してる暇は無いわよ」 瞳に宿した炎は正面を捉え、『炎髪灼眼』片霧 焔(BNE004174)の視界にはいくつもの影。悠然と練り歩くその一団こそ本日の戦うべきお相手、悪名高き夜渡家だ。 ――全く、凄く面倒な家族! 過去の情報を調べれば、出るわ出るわの悪行三昧。 「人の幸せ邪魔する連中こそ纏めて豚の餌にしてもいいんじゃないの?」 冗談めかしてるからきっと冗談。拳を固めた焔は強気に目尻を吊り上げて。 「纏めて殴り飛ばせばイイってだけでしょ!」 「まったく。面倒だが、まぁ、乗りかかった船だ。一つ片付けるとしよう」 焔と共に前に出たいりすが二刀を構え。 「あれが噂の世紀末家族!」 互いを見れば浮かべた自信に満ちた不敵な顔に、『0』氏名 姓(BNE002967)は苦笑い。生気のない表情の兵隊たちとの対比がよりシュール。 「あいつらがリベリスタやっているとこ見た事が無いんだけど、本当にあいつらリベリスタなの?」 目を尖らせて『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)が冷たく「次やらかしたらもうアウトね」と言い放てば。 「逆に考えるんだ! 普段の夜渡家ってどれだけ活躍してんだすげぇ! って考えれば……想像できねぇよ!」 ツァインの言葉に誰一人異論なし。 「まー傍から見てる分にゃ面白いけど、瀬戸ちゃん一家の身にもなれって感じ」 一度大きくタバコを吹かし。嬉々と咆哮上げ動き出した夜渡家に『道化師』斎藤・和人(BNE004070)は無骨なてつのかたまりを向けて。 「ま、ボヤいてもしゃーない。今回もきっちりお仕事しますかね」 鉄の咆哮がゴングを鳴らす。 ●思い出はいつも脳筋 空間が音を鳴らす。強制力を持った結界が周囲を包めば、これで遠慮はいらないとツァインが笑い。 「七さん、目標『フィクサード』19名。や~っておしまい!」 「合点承知!」 応えた七海の握る流形の弓が音を――想いを打ち鳴らし。建物の頭上で曲線を描けば、夏の日差し以上の熱を持って降り注ぐ! 各所で上がる悲鳴はその戦果。しかし夜渡家のそれは聞こえない。 「無駄ぞ! 身を呈す兵隊共のこの献身、その忠誠にわしら感謝でいっぱい。孫をこの手に抱く日も近い!」 「いやーどこからつっこめばいいのか」 本気っぽい礼門の言葉に頭を抱え。「子供は怖い人だと覚えたらしばらくずっと懐きませんよ」と呟き矢をつがえて――横から迫った気糸が巻き起こす風塵に呑みこまれて! 「射撃はもっとも広範囲に影響を与える力。壁を得た私はこの場でもっとも影響力を持つ存在と言えよう」 ドヤ顔でほくそ笑む利史。視界を遮る砂塵が収まれば、先ほどはなかったワゴン車の存在に目を剥いた。 「射撃戦なら遮蔽は付き物だよね」 気糸の斬閃が深く残る遮蔽は七海たち後衛の前に設置されその身を救って。AFからそれを取り出せば、姓はその陰から一気に飛び出す。 もっとも単身ではない。仲間のサポートを得意とする姓は、その長所を生かしてこそ真価を発揮するのだ。 事前に高めた集中力が、視線を巡らせ手に入る情報を即座に展開させて。立ち回り、目線の向き、一挙一動の全てが狙った獲物を引き寄せる意味を成す。 「はーい利史君の壁はボッシュート」 気付けば遊撃兵と共に引っ張り出され、焦る兵隊の眼前に。 「つー訳で家継君、纏めてよろしくね」 ウィンクして横に身をずらせば、家継の実力を最も発揮する場を演出して。 「ええい、壁が勝手に動くな!」 叫び引きとめんとする利史、その首筋に突きつけられた槍の穂先。 「また、ですか? 何度も騒ぎを起こしてはその度に鎮圧されているというのに……懲りませんね、本当に」 静かに、決然と。ユーディスは自身の果たす役目と向き合って。家族のために、暴走する者たちを鎮圧する! 意思は浸透する。宣誓が力となる。利史の指先が気糸を捻りユーディスを貫かんと荒ぶれば――円を描いて気糸を巻き込み、引き千切った渾身の槍がその身を穿つ。 地を強く蹴れば間合いは一瞬。振り回す腕が路地裏の壁に爪痕を残し。乙女の拳が向けられた盾ごと獲物を打つ! 打ち打たれ返し返す連続する波が路地に反響し破砕の音を生み。 ――初めまして。それじゃ、始めましょうか? 立会い前の交差は一瞬。同時に踏み込んだバトルマニアたちはただ一途に燃える激闘を楽しんで。 「面白い! これが! これこそがバトルだよな!」 「やっぱりね。私と貴方なら言葉で話すよりこっちで語ったほうが多く話せると思ったわ」 興奮する玖也に笑いかけて。焔が拳を振るうたびに纏わる炎が爆風となれば、哀れなるは巻き込まれた兵隊たち。 「貴方たちも災難ね」 無理やり連れられ壁にされ。右往左往のうちに巻き込まれるのは勿論哀れ、だけれども。 「だからって私の前に立った以上、遠慮はしないけど。――行くわよ?」 炎纏った拳を向けて、焔が再び大地を蹴り! 巻き起こった旋風が人間を投げ飛ばす。悲鳴を上げて落下した兵隊を前に、おいおいとツァインが表情を引き攣らせ。 「壁を巻き込む勇気って何とも思ってないだけだろ!」 「うるせー! 家継を前にそんなこと知ったことかー!」 思わず真面目に突っ込んだツァインに房雄は二刀を構え、再度吹き荒れる暴風に。 目蓋の裏に光を見る。動きを重ね、意思を重ね、同調する魂と力を重ね! 烈風を物ともせず剣戟を物ともせず、ただそこにあり立ち塞がるその男こそ! 「へっびくともしねぇや。さすが『意思纏う鋼』と呼ばれるだけはあるぜ!」 「待て誰がいつ呼んだ!?」 さあ? ●酷い事件だったね 「未だにフィクサード認定されてないって、あの一家に弱みでも握られてんの?」 フィクサード指揮してリベリスタ襲うリベリスタは世にも珍しいと思われる。正直癒着も疑わしい。ブリーフィングルームで見たロイヤーのいつもの服が良い生地の新品になってた気もする。 でもま、やることは変わらないよねと口にして。家継へと向かう兵隊に立ち塞がれば、和人を突破できる敵などそうはいないだろう。 「瀬戸ちゃん傷付けたかったら俺を倒してみせな! ……あ、前回三男坊は出来なかったよねそういや」 自身の役目を家継のボディガードと定めて、横目に房雄をちらりと見れば顔真っ赤にして雄叫びあげたり。 「俺が相手してるんだから挑発しないでくれよ!? なぁ房雄、これから言う事をよーく考えるんだ」 暴れる房雄の二刀を抑え、ツァインがその目を覗き込み。 「確かに家継さんをぶっ殺せば瑠香さんはお前のところに来るだろう!」 いや来ねぇよと自分で突っ込み。 「それで万事上手く行くのかっ? 他の夜渡家がいる! 心の底ではお前を想っている姉さんも皆に言い寄られ……っ!」 言いながら頭を抱えるツァイン。頭痛に悩まされながらよく頑張った。 「さぁその腐っ……天才的なブレインインラヴァーで最適解を弾き出すんだ房雄ぉ!」 「うるせー!」 「ぶほっ!?」 殴られた。 「家継潰したら次は他の奴らだ! もうバトルロイヤルは始まってんだよぉー!」 完全にフィクサードだこれ。 複数の兵隊が家継に掴みかかる。周囲の敵を薙ぎ払う家継もさすがに疲労の色が見え。姓による癒しの符がそれを助けるも、連続する攻撃に息つく暇もない。 故に間に割って入った和人が傷を引き受ければ、驚き叫ぶ家継に。 「死んだら2人が困るだろ? 俺ん家は仲悪かったから家族の絆にゃちょっと疎いけど、そんぐらいは分かるぜ」 「……家族を持ち出されると弱いな。……頼む!」 和人が守り家継が討つ。怒りの声を上げ突進する兵隊が――身を打つ氷雨に地に伏した。 綺沙羅の支援にウィンクで答え、和人は迫る敵に咆哮を。 「絶対に死なせねーからな!」 生み出した電子の式鬼が狙いを助ければ、綺沙羅の降らす氷雨が敵の足を止め。戦況は各地で独立し個別の戦いが行われている。敵味方の傷は分散し長丁場の色を成し。故に。 遊撃手として綺沙羅や七海の動く影響は大きい。その射撃は多くを削り、その行動は多くの動揺を生み。 「房雄さー子育てって大変らしいよね」 揺さぶりという意味も含めてだ。 「こういう時に頼れる兄弟が側で手伝ってくれたら心強いだろうねー? それに母親に取り入ろうと思ったらまず子供から」 「房雄さん、瑠香さんとすだちちゃんのために一肌脱げないものですか?」 ――基本でしょ? と口にした綺沙羅にユーディスも言葉を重ね。房雄は何か言おうとして。 突如その首が変な方向にごきゅっと曲がれば、さすがの綺沙羅とユーディスも目を丸くして。 激戦は開始早々から始まっていたのだ。 いりすの放つ暗黒の闘気は兵隊を苦しめるも、礼門の影人の半数はそれを避け、かすめた者もそれに耐え。 故に持久戦。超回避を誇り、人の壁を利用して生み出した影を散開させる礼門は強敵と思われていた。 ……が、だ。 地に伏した房雄の背後で良い笑顔の礼門が立っていた。 あげた右手をいりすに向ければいりすもまたそれに答え。 ――夏はイベントが多い。特に三高平は。出会う機会も多いだろう。その時、写真を撮ったら君にやろう。夏祭り。海水浴。浴衣に水着もあるのではなかろうか。 ――小生に強力すれば、暴走する息子の鎮圧を手伝ったと瑠香君に報告すると約束しよう。きっと株が上がるぞ。すだち君に会わせてもらえるかもな。 激戦は開始早々から始まっていたのだ。 いりすはテレパスで礼門へと取引を持ちかけていた。そして、息子に遠慮する父親でもない。酷い事件だった。 ●最終的にはいつもの感じ 「何してんですか父上ー!」 利史の叫びに礼門は仕方なかったと沈痛な表情。いややっぱり笑顔だ。 「目的は瑠香が実家に戻ることでしょう! 家継がいる限りその目的は達成しませんよ!」 「あ……そうじゃん! やっぱダメじゃん!」 気付くの遅いよ。 「ははは、やっぱりアークとのバトルは面白いなー」 1人いつでもマイペースな玖也。いや、この場に置いては恐らく2人。 「さっ、邪魔者はいなくなったわ。ちゃんと相手をしてくれるんでしょ?」 剛剣を拳で捌き、返す掌底が鎧の上から打撃を貫通させ。 焔と玖也、明るく楽しくバトル全開。笑い合い叫び合い殴り合い。 2人はすでに一騎打ちとなっている。 では兵隊は全滅したのかと言えばそうでもない。 仲間割れまで始めては、これ以上巻き込まれるのはごめんだと一目散に逃げ出した面々もいる。その視界が光に覆われて。 「逃げられると思ってんの?」 感情を読み取って逃亡の兆しを感じれば、綺沙羅は即座に閃光を放って対処して。 「逃げたら夜渡家の人がまた追ってくるけど助ける義理はありませんよ?」 七海が暗に大人しくしておけと口にして。放った炎の弓矢に当たってないのに倒れた連中もちらほらいた。 「利史さん、壁を提案するとはちょっとは成長したじゃないですか。ちょっとでしたけど」 「壁がいっぱいいれば自分は安泰だって思った? 思っちゃったか……かーわーいーいーねー?」 七海の言葉に綺沙羅のご褒美――じゃないや、嘲笑も重なって。 メンタル削りに利史が程よくぼろぼろになったところで。 「利史さん。――貴方の盾はもう有りませんが、如何なさいます?」 凛としたユーディスの声音がしみこんだ。 「私達に倒されるか、瑠香さんに消されるか、大人しく諦めて降伏するか。――詰んでいると思いますけれど」 追い詰められれば奇声を上げて飛び掛かる利史に一度目を閉じて。 ――何にしろ、護るために……討つ! 気糸を払い向けた槍に神秘を、意思を重ねれば破邪の光は渾身の一撃となって! 穿つ一撃、響く断末魔。派手に吹き飛び壁にびたんと叩きつけられた利史に。 「勿論、止めはさしませんよ」 風にたなびく髪を払い、柔らかな笑みを魅せつけて。 弓を引く。世界の概念にすら弓引いて。集中を重ね時を捉えた七海が放つ、その炎の矢が全ての影人を薙ぎ払い。 壁のなくなった礼門に挑みかかるのは! 「このまま瀬戸家に特攻してたら瑠香さんにブッ殺だったよね。祖父が孫の父親殺そうとか許されないわ~」 「ここで瀬戸ちゃん死なせたら嫁さんとのハイブリッドなすだちーに将来ヤられるとか……考えねーんだろうな」 「あ、礼門さんっ、俺さっきすだちちゃんと会って、抱っこもしてきた♪」 「おや結局決裂か。では瑠香君の写真も口利きもなしだな」 多いよ。姓の気糸が薙げば和人が大型拳銃に渾身を込めてツァインが満面の笑顔を向ければいりすの最大威力(メンタル)が叩き込まれる。 「礼門、まだ孫見て無いんだ……父親と認識されてるの? その内、孫にもあの人だれとか言われるのかなー?」 「本当は『見せてもらえなかった』のではないですか? 何故見せてもらえないか考えてこれですか。いい加減にしないと――永遠に見れませんよ、すだちちゃんの顔」 綺沙羅の、ユーディスの声が深く響けば、すでに呼吸を止めた男が1人。 そんな凄惨な現場を背景にして―― 「殴り飛ばーす!」 「同じく殴ーる!」 どっかんばっかんと響く爆音笑い声。焔と玖也はまだやっていた。 「すまんおっちゃん……今日はマウスピースの人、来てないんだ……」 沈痛な表情のツァイン、その背後で七海も手を合わせ。 「しかし誰が一番可哀想なのか……」 少なくともこれではない。 「で、誰が蘇生すんのこれ。俺? やだよ」 「小生思うんだよ。殺すぎりぎりまで殺そう。まだぎりぎりまでもう少しある」 和人がタバコを口にしたままひらひら手を振れば、いりすも真顔で答える。結局人工呼吸は苦笑した家継が立候補しました。 「元々NO,2だったんだし乗っ取ってリベリスタ組織にしちゃいなよ」 捕まえた兵隊たちを前に、あっけらかんとした姓の提案。当の家継は唖然としつつ、このままではいけないとは思っているよと口にして。 「俺自身に信仰はないが、同じような境遇で誘拐された子供もいたからな」 信仰に囚われている者をどうにかしてやりたい。そう呟く家継に姓が続けた。 「元フィクサードと名門って間柄に負い目はないの? 対等に立つ為の努力もしてみたら?」 「名門……ああ、うん」 ちらりと名門()一家を見て言葉を濁したり。 「貴方達がそんなだから子供の顔も見せて貰えないのよ! 落ち着きって言葉を覚えなさいよ!」 腕組みした焔(16歳)の前に正座する一団(いい年齢)。涙目。 捕まえた兵隊をしょっ引く綺沙羅、ユーディスを振り返って。 「連中もこれで懲りたら少しは大人しく……ならないんでしょうね」 「ならないね」 「ならないでしょうね」 ハァ。3人の乙女の吐息が重なった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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