● 弟分に、今日発売の少年漫画に出てきた心必殺技のモーションを手取り足取り教わった、とあるフォーチュナはしきりに感心していた。 ふにゃふにゃポーズもだめだしどおりに気をつけると、それなりに格好はつくのだ。 「やっぱり、紙面と実際やって見せられるのとは雲泥の差だなー。あれ。これ、訓練に使えるんじゃね?」 ● それは、割とこっそりと掲示されていた。 「VTSによる研修・スキル編 *依頼ではありません。あくまで希望者のみ参加」 リベリスタに対する依頼一覧から外れるようにして、短い文。 後になって思えば、「希望者」の部分だけ、やけに念入りに太字だった。 なんで、あんなものみつけちゃったんだろう。 ● 「君の得意技、公開プリーズ」 『擬音電波ローデント』小館・シモン・四門(nBNE000248)は、語尾にハートがつきそうなくらい愛想よく言った。 「新しく覚えた戦闘スキルってぶっつけ本番になりがちでしょ。こんな風になるとは思わなかったーとか。という訳で、先達は後進に教えて、後進は先達に教わって下さい。範囲攻撃の間合いとか、貫通の威力とか、実際見て見ないと分からないとかあるじゃない。技術交流って大事だよね~」 と、理系フォーチュナは言う。 「動かない的は各種用意しとくから。特定のアバター欲しい人は申請忘れずに。あ、アークの人のはだめだよ」 俺のとかあったら泣くからね。というのが冗談ではない辺りたちが悪い。 「技を受けるのも可能だけど、今回はダメージやBSは発生しません。その代わり、当たると、こういうのが出るようにしました」 『もうだめだ!』『まだ大丈夫!』『今、なんかした?』と、電子音声。 「受けたりとか、どのくらい強固かの確認とか、組み手してみても面白いかも」 と、ここまで比較的まじめに説明していた四門が、えへへと笑う。 「俺、蒐ちゃんとかと遊んでるとき思ったんだけど、こう、同じ技使うけどちょっとづつみんなのフォーム違うのとか比べると、なんか萌えない?」 四門、俺、見学行くから! と、目をきらきらさせている。 これだから、週間少年漫画誌購読層は。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月16日(火)23:20 |
||
|
||||
|
● 思いのほか、的志願者が多かった。 「へーい、ばっちこーい!」 快がクレバーに全部受け止めてくれるそうですよ? 「攻撃と違って防御に必殺技なんか無いんだよ。レバーを逆に入れるだけの操作で、俺達がどれだけ覚悟を決めてるかシモンには見てもらおうかな」 そんなことさわやかに言われたら、惚れてまうやろ。エロくない意味で。 「『BSは無効化できても攻撃の威力は殺せませんよね?(意訳)』 と言われた私が通ります」 彩歌は、演算しつつバリアシステムで受けてくれるそうです。 「ふふ、アークの皆やトップクラスの人達の力を味わえるなんて早々ないですし。この機会存分に楽しませて頂きます」 亘君は、あえてよけずに全部50%ヒットにしてくれるそうです。 「俺には一撃にかける必殺技とかは無いんだ。満遍なく平均的に底上げ出来たらって考える方だからね。でも、だからこそ避ける役には向いてるんじゃないかな」 与作さんはステップを踏んで軽やかによけてくれるそうです。 「人の技を格好良く魅せる事に全力を注ぐ。何度か斬り合いをして決め技でやられる」 ツァインは、斬られ約50年みたいな感じで受けてくれるそうです。 「一応、俺のタフさはトップクラスのリベリスタの中だと中の上って所だな。つまり、俺に対してしっかり痛打を与えられるってのが、一線級のアタッカーの証って事になる。……どうだ、燃えてきたかい?」 エルヴィン兄さんは、相手をその気にさせるのがお上手です。 「技を受けてみる、という建前で、実戦闘における戦闘限界、所謂ケツのまくり時を測る」 SHOGOは、後一発で倒れるぎりぎりまでがんばってくれるそうですよ。 「皆の練られた技を至近で見られるってサイコーだよな! さー的になるぞ! どんとこーい!」 琥珀は、真っ正直に自分をさらけ出した。 どうぞお好きなタイプのディフェンスを。 アーク・ディフェンスライン・アーカイブ。 ● 竜一は、ワイン片手に姑息だった。 (やすやすと自分の手札を見せる趣味はないんでね! 逆にみんなの技を観察させてもらって俺の技の血肉にしてやるぜ! フゥーハハー!) 括弧書きだが、表情で何考えているかモロバレである。 (俺はこの冷徹な神算と秘匿する策謀をもって歴戦と呼ばれているのさ! さあ、驚嘆せしめてみせよ、勇者たちよー!) 「それで分かるなら、ラーニンガーは苦労いらないですよねー」 四門がおつまみです。と、しょっぱいペッキを竜一に渡した。 虎鐵は、力を肉体の折から解き放った。吹き上がる闘気は虎だ。 「すまないでござるが……制限を外させてもらうでござる!」 ドンと踏み込む足が地面にめり込む。 「……あの七派の首領達は通常のスキルさえもEXっぽく見せれるのでござるか」 (ならば拙者もその領域まで踏み込みたいのでござる。早く強くなるためにも) 「拙者の一撃……受けてみろでござる! この技で……全ての装甲をぶち抜いてやるでござる」 黒刀に光球がたまっていくのだから、メガクラッシュだろうメガクラッシュじゃないかな、なんか光球がテントみたいにおっきいけど、うん多分そう! 「さあ来いよ。俺如きに有効打無しなら、鍛え直してきたほうがいいぜ」 判定。くそ分厚い守護神のクロスアームを貫いた。 「できれば組み手を希望です。反撃付きで」 そんなうさぎにツァインが応じる。 踏み込み『過ぎ』ながら11人の鬼を横薙ぎに大振り。 手堅くよけるツァインに、11人の鬼はそのまま流しつつ抱き付く様に密着。 「ふん、この間合いに入れた時点でお前の負けは確定している!」 今日のツァインの仕事は負け台詞をはくことである。 そのまま組み付いて相手の攻撃のレンジをズラしつつ、「六本目の指」狼爪で刻印を刻む。 メルティーキッス。 「……この距離で俺が負けるとは、お前は……一体……ッ」 「密着すると相手がナイフでも無い限り有利なんですよ」 泥臭くて何一つ必殺技じゃない。うさぎは、悪びれず、そうですねと答える。 が、確実にやれる技が、必殺技なのだ。狸の、否、鵺の所業である。 ● 塔の魔女の手で編まれた技を得た者も、それが体になじむまでは鍛錬あるのみである。 「お前の新技、見せてもらおう。俺は的としては適役だろう」 「……いい機会だ。頼むぞ」 蒼い鷲祐と銀色のゲルトが向き合った。 鷲祐が会得したのは、恐ろしく魔力を食い、恐ろしく当たり難い、暴れ竜のような技だ。 「とても目視出来るスピードではなかったが、入りは浅かった。それでも相当の威力だったのは流石としか言いようがないが」 最初の仕儀の後、ゲルトは忌憚なく感想を述べた。 「俺が反応できたのではなく、その高速度をお前が制御出来ていなかったという風に感じたな」 ゲルトとの指摘に、鷲祐はぐうの音も出ない。 音速の壁を砕くのが精一杯で、その『破片』を目標に当てる域まで達していないのだ。 「そうだな……次は集中を重ねてみてはどうだ?」 仕切りなおし。相応の集中を込めて。 耐え難いほどの圧。実際の戦場でここまでおとなしく集中させてくれる敵などいない。 だから今なのだ。この技が正しく発動したらどうなるか、きちんと把握しておかなくては技を会得したとはいえない。 「見せてみろ。お前の、速さを。求め続けた、今も追い続けるその根源たる究極の一を!――来い、『アークの神速』!」 極限。 「神速斬断ッ! 『竜鱗細工』ッ!!」 「貴方がダンスパートナーね。さぁ、素敵なワルツを舞いましょう」 「お相手します」 ミュゼーヌがにこりと微笑むのに、亘も紳士の笑みで応じた。 (せっかく得た新たな力、存分に披露させてもらいましょう) ミュゼーヌが胸に手を置くと、胸の中央が服の上からでも蒼白に輝きだした。 供給される魔力の奔流が高らかな破裂音を上げながら、右腕、銃身、銃口へと収束していく。 機械の足からも、装甲の隙間から内部が発光。 それでも、蒼白のドレスを纏う姫はどこまでも優雅だ。 駆け寄り、詰められた間合い、発光する銃口から飛び出す弾丸を気にしていた亘のくるぶしをしたたか強打し、すくい上げたのは至高のハイヒールだ。 「囁きは銃声、纏う香は硝煙……燃え尽きそうなこの想い、どうか受け取って頂戴!」 どかんと腹を踏みつけながらひたりと当てられた銃口から、光の奔流が亘の体を貫き、大きくバウンドさせる。 蹴る、踏む、撃つの三拍子。まさしく円舞曲の名にふさわしかった。 「燃え上がれワタシの運命! この拳に集まれ、全てのパワー!」 ドラマをあげて、物理で殴る。 空気が変わる。目に見える程の輝くオーラを纏い、振り上げた右手に収束。大きく振りかぶる。 コンサート終盤、センターのみが発することを許される何万もの人間を熱狂させる輝き。 それは、ドラマ。もしくは、アイドルヂカラ! 輝いている。明奈、今、最高に輝いているよ! ドームもいけるよ! 「いっけえええええええ!! 乾坤一擲、アキナ・ドラマティカぁぁぁぁっ!!!!」 この技の恐ろしいところは、クリティカルがドラマ増し。すなわち、半分以上クリティカル。防護無効で倍増しドン! の所にある! 的役のエルヴィンに向かって思い切りパンチ。当たる瞬間、光が弾けて――ぷすんっと気の抜ける音と共に消える。 「あれ?」 いや、痛かったよ? エルヴィン兄さんにかすり傷は入ってるから普通には殴れてるとは思うんだけど。 「……あ、あれー?」 AFを確認。 (もしかして、EP足りてない? マジで?) 明奈のマックス、705。必要魔力、777。器がたんねーよ。 「うわー恥ずかしい! 今のナシ! ナシで!」 照れ笑いしつつ手をぶんぶんする明奈の頭をくしゃくしゃなでてやるのが、お兄ちゃんという生き物だ。 「……これは実際に受けてたらヤバかったな、良い攻撃だ!」 後は、この技を使うに足る器を鍛えろってことかな! 目指せ、センター! 覚えたからといって、すぐ100%実践で使えるようになる訳じゃありません。練習が必要です。 四門は、メモにそう書いた。 ● 見える限り全ての敵をほふる全体魔法の練習をなさる方々のフィールドは、ちょっと離れていた。 別に、面子が怖かったって事ではないんだからね!? あちこちに、大小さまざまのターゲットが浮遊している。 後で、どの辺りが撃ちもらしたか確認に使ってもらうためだ。 「物理無効と神秘無効のバリアー張ってる的を1個ずつ頼む」 アークの赤い人・ランディは、面倒見がいいのだ。これで。 「そうだな、威力とかを見せるのも嫌いじゃないんだが、折角見学に来てる連中もいるし、戦闘のレクチャーみてぇなモンだな。……ちっと偉そうで何なんだが」 愛用の馬鹿でかい斧を取り回す。 「先ずは……」 強引な踏み込みと脳の芯に響く気合と共に神秘無効の的に上から振り下ろされる一撃に、浮いていた的の軌道が不安定になる。 ランディの方は、そのまま回転を殺さず斧を振り回す。物理無効を巻き込んでの烈風が物理無効の敵も巻き込んで、というよりうっかり範囲に入っていた見学者までも巻き込む。 「――これで物理が効かない敵も砕けるって事よ……こんな感じで敵が小賢しい防御手段を講じようが数を頼りにしても叩く事が出来る」 初級・中級の技でも協力することによって十分に突破口になるのだ。 身をもって知った見学者が頷く中、たまたま有効打を食らわなかった的が一つふよふよと漂ってきた。 強斧一閃。ゴツンと音がして、的が地面に叩きつけられる。 一瞬後、轟音。 烈風陣と同じ熱量をたった一体に叩き込む、究極砲。 「なら梃子摺るのは純粋な強さって事だ、技は便利だが地力を磨く事を忘れんなよ」 赤い人が歯をむき出して笑う。見学者はうなずくしかない。 的は、地面ごと破壊され、痕跡もなくなっていた。 リリは、敬虔なシスターだ。 (腕を十字に交差して、『お祈り』を始めましょう) 天へ向かう祈り、研ぎ澄まされる感覚。 また一歩人から遠ざかり――より神の居られる場所へと近づく喜びと共に、祈りの魔弾は、聖句と共に。 至高の座に仕える者にあるのは、恍惚のみ。 天に向かって撃ち出す蒼弾は、リリの祈り。 祈りに応えて天より降り注ぐは、怒れる天帝の矢。一切の邪悪、世界の歪みを赦さぬ聖なる蒼炎。 ばら撒かれる的を蒸散させる天蓋を包む蒼。 成句を口にする彼女はどこまでも清廉だった。全然えっちじゃなかった。 「実害が出ず、魔術でさえエミュレートして再現してくれるVTSは修練に最適ですね」 悠月の周囲に増幅魔法陣。 編まれるのは雷の鎖。 「遠全射程、参りましょうか」 気負いはない、どこまでも自然体だ。 「Omnes ferrea catena obligo I circuli lined fulminis (全てを縛る鉄鎖よ 連環の環を以て ) Frangere dente dedit tibi penetrandum Probat dignitatem, venetum Tonitrus (其に貫く牙を授け解き放たん 威厳を示せ、蒼き雷)」 銀の車輪を戴いた分厚い魔道書が詠唱に呼応し光を放つ。 魔法陣から引き抜かれた一条の雷が、拡散される号令を待っていた。 「Fulmina catena――『神鳴る縛鎖』」 悠月のみとめたもの全てが貫かれた。 一方、アンナは若干落ち着きを欠いていた。 (本日はまだ珍しいジャッジメントレイを披露しに来ましたー) 声にならないのは、攻撃詠唱をする機会がないからだ。 (ホリメが本気でこれ撃つのは良く無いんだけどね。ま、練習はしとこう。この前役に立ったばっかりだし) 首を鳴らして準備OK。 (さてと。…基本は聖神の発動と一緒) 詠唱が、唱え慣れない部分に差し掛かる。 (……こっからいつもと違って……怒りを乗せる) 「灼け果てろッ!」 慈悲なき陽光が目標に降り注ぐ。標準的な革醒者を想定した的はことごとく燃え尽きていた。 (……あー、便利だけど好きじゃないなコレ。殺せる光はやっぱり何か違う。神気閃光の方が性には合ってるんだけどね……あーあ) 願わくば、戦場でこれを放つ日が来ませんように。 シェリーの足元に、極大魔法陣を地面に展開されていた。 「刮目せよ!我が魔力!?」 なんで、半疑問系なんですか。魔力じゃないナニカですか、その力は。 高揚する精神に身を任せ、暴走する魔力をと・き・は・な・つ。 銀色の魔弾が、ちょっとやそっとじゃ展開できない高位魔法陣からどかんと打ち出される。 効果・人狼が死ぬ。 「魔道の光が迸り、死はその影となる。受け止め方に注意せよ」 適当にぶっ放すシェリーを見かねて、 ――ビスハ及びその深化種で狼関連の方、シルバーバレットは、必殺効果はありますが、即死効果はありません! ただし、うっかりプラシーボ効果で気分が悪くなる可能性がありますので、心配な方はよけるか、射程範囲外に出て下さい! 万一のことがあってはいけないと念を入れた四門のアナウンスがとんだ。 ● 実際に仕儀は市内見学だけのリベリスタも来ている。 「見学、はかどってます?」 恭弥に、四門が声をかけた。 「…流石一線級ですね。目で追うのがやっとで、その魔力の質が違います。それに、それを躱す方も素晴らしい身のこなしです」 「参考になればいいんですけど」 「再生とか魔道具とか、私の能力はそんな感じですので、あのような技とは無縁なんですよね。私自身がそれに満足しているというのもありますけど……」 大きなくくりはあるが、革醒者の能力の現れ方は千差万別だ。 「……あの子を見習わなければいけませんかね」 視線の先では、経矢の式神が、 「ていさつとか!かいものとかせんたくとかおそうじとか! それもいいけど、たたかいもやってみたいよ!」 1m級のアイス棒を持ち、振り回そうとして振り回されていた。 「ぜひ」 ● 相手を指定しての攻防は、信頼のバロメーター。 「ツァイン、手が空いたら受けてもらおうか」 影継が言うのに否という理由はどこにもない。 「行くぜ、新技!」 覚えたばかりのジャガーノートからのデッドオアアライブのバリエーションを試す。 「実戦で使う前の慣らし運転ってトコだな」 最近愛用の斧を構えて、連続技スタート。 「斜堂流崩月斬!」 いきなり目の前で目の前で急停止してフェイントをかけつつ加速と武器の重量と体重を叩きつけてくる影継の斧を、ツァインは盾で受け流す。 「我が装甲、そう易々とは貫けんぞ!」 「斜堂流竜骨断!」 斧を横に構え、そのまま突っ込む突撃技もいなし、ツァインが叫ぶ。 「これで終いか!お前の全てを俺に見せろぉー!」 「斜堂流崩襲烈刃!」 不意打ちの直蹴りで敵の態勢を崩し、全力で最近愛用の斧を一閃させる。 「……この距離で俺が負けるとは、お前は……一体……ッ」 本日二度目の奇襲に、大装甲では分が悪い。 「斜堂流の技は無限だぜ。まあ家系的にはナイトクリークなんだ」 苗字的にも。と、影継はツァインを助け起こしながら小さく付け加えた。 「今回はお互いに余計な怪我を負う事も無い。手加減は当然しないぞ、悠里」 と、拓真は、双剣を構え、口元に笑みを浮かべる。 「はは、お手柔らかに……って感じじゃないよね……。さぁ来い拓真!」 対する悠里も、篭手を打ち合わせて構えを取る。 駆け出しが食らったら一発でノックアウトしそうな剣と拳の応酬も、二人にはウォーミングアップでしかない。 「フッ、流石だな……隙が見られん、防御を抉じ開けるのは骨が折れそうだ」 「そっちこそ、剣戟の鋭さも重さも以前とは比べ物にならなくなったね」 (それに何よりも、気迫だ) と、悠里は考える。 (百虎との戦いは拓真に少なくない影響を与えた) 「目の前の障害を破壊し、突き進むこそがデュランダルの本分だ──我が全力の一撃、躱せるか……!」 「ならどんな状況にも対応して見せるのが覇界闘士だ。耐え切ってみせるよ!」 全身からの闘気の爆発と共に足元を吹き飛ばし、勢いのまま踏み込み、悠里の防御の上から剣戟を重ねる様にして一気に叩き込まれる拓真の斬撃を、悠里は左手の篭手で受け止めるその瞬間に右手で剣の腹を叩いて逸らす! 激しい金属音の余韻が消えるや否や、 「いったああああい!!」 悠里は、力を逸らしきれずズタズタになった左手を抱えてしゃがみ込んだ。 「……痛い、だけで済むのだから大した物だ」 腕を飛ばす心算だったのだが、と、その防御技術に賞賛を送る。 そんなことしても、友達でいられなくなるかもなどと疑いもしない。 仲良しさん。と、四門はメモに書いた。 ● 先日の新鋭対戦で明らかになったとおり、アークのリベリスタの双を厚くするのが今後の課題だ。 この機会に奮起するリベリスタも少なくない。 スピカは、大事な分水嶺にたっていた。 (リベリスタ復帰してから大分日が経ってきたけども、どうしても、無難な戦い方になっちゃう。それじゃあ、いつまで経っても二軍兵だわ……) 蛮勇は愚かだが、限界突破しない限り成長は認めない。 (でも…今日はエース級リベリスタ達の技を一度に見られるいい機会! しっかり見て、しっかり学んで、これからに生かす! 頑張らなきゃ!) と、マナサイクル付与で気合を入れる (対刃物・直接攻撃に弱いのは自身がよく知ってる) だから、的は攻撃してくるタイプを選んだ。 (何度直撃を受けても立ち上がり、線が見えない攻撃でも穴があると信じて、懐に飛び込まれ攻撃が当たるその瞬間――) 一か八かで吹き出す気糸。構える武器がないときにとっさに出せる技だ。 当たったら即座にバイオリン構え、四重奏。 ナイトクリークとマグメイガスの合わせ技。 「…わたしだって、戦える」 愚直なまでに、何度も同じ連続技を繰り返した。 「駆けよ虹彩、音となって……響いて、『コロラトゥーラ・ダンツァ』!」 「並んで戦った事はあるけど、やりあうのは初めてだな。手加減しねえぞ?」 瀬恋と久嶺は、いい感じにぼろぼろになっている。 ギルティドライヴは、断罪の技。まずは、ジャッジしなくてはならない。汝、有罪。 「正直、一緒に戦ってて敵じゃなくてよかった…とか思ってたんだけど」 久嶺は、ライフル。瀬恋はガントレット。 同じクリミナルスタアでも流儀が違う。 距離を取って向き合ってお互いに撃ちあう 「んじゃいくぜぇ……」 腕をぐるぐると回す瀬恋。普段は殴打用に後ろに下げている砲身がガチャリと音を立てて前にせり出してくる。 「それじゃ、いくわよ……」 久嶺も、一瞬の内にスコープ覗いて精密に狙いを定めて引き金を引き絞る。 「ブチ喰らいやがれ!!」 「くたばりなさい!!」 交差する魔弾。 「っ痛ぇ……流石にギルドラ得意にしてるジョーチャンとの勝負じゃあ分が悪かったか。まぁ、狙いを定めてとかそういう細けぇのは苦手でな」 「ひゅーっ…今回はアタシが勝ったけど…すごい気魄ね。でもちょっと大雑把すぎるんじゃないかしら…もっとこう…狙いを定めないと?」 年上・格上の瀬恋から一本取れた久嶺の声は思わず知らず弾んでいる。 その様子に、瀬恋はニヤリと笑った。 「よし、じゃあ次は無頼の拳で殴り合おうぜ」 「え、次は殴り合い? ア、アタシは苦手なんだけど!」 繊細な引き金を操る身としては、拳を痛めたくない。 「いけるいける、VTSだからダメージ残らねえって、な?」 「「始めにも言ったけど貴女の相手はなるべくしたくないって……」 勝ち逃げはかっちょ悪いと言外に忍ばせる瀬恋に、半ば破れかぶれで久嶺は銃を投げ捨て頷いた。 「ああ、もう解ったわよ、やるわよ!」 「そうこなくっちゃあな!」 矜持のためなら愛銃も捨てる。それがクリミナルスタアの流儀だ。 銃と共に生きる者はこうなる。皆中職人の朝は早い。 「見せつけるつもりは無いが、便宜上」 的には、アークで最高回避の者と同等の回避値を有した物――金髪美少女型である。美老人ではない。 フラッシュバンの試験運用にふさわしく、フットワークの軽い金髪美少女が範囲をわらわらしている。壮観だ。あくまで、希望に基づいているだけだ。 閃光弾が発射されるごとに、逃げ惑う金髪美少女。それを確認し、命中の度合いをはじめ、視覚効果や音等、気になる点を手帳に記載する龍冶は、職人のようだ。 射撃に全てを注ぎ込んでいるのだ。それ以外が少し不器用でも許してあげてもいいんじゃないかなという気がしないでもないこともない。 「有意義な時間であった」 (私の最近のお気に入りは絶・対・絞・首♪ スケベな人を吊し上げ☆) エーデルワイスはアシュレイ姉さんに化けていた。 (バチカンで間違われて半殺しにされる程のクオリティ!) 「それでは本番逝ってみよー♪ もっと見てもいいのですよ~」 アシュレイの外見で、あっは~んとお色気ポーズである。アンタッチャブルよ。踊り子さんに触っちゃだめよ。 触らぬ神に祟りなし。お代を命で払うことになる。 「貴方が魅了に堕ちた時……それが執行の瞬間DEATH!!」 うっかり見ちゃったSHOGOは、何とか耐えしのげると判断。ちゃっかり首に隙間作って、吊るされた。 「これぞ必殺! デス・ファシネイション!」 (志の低さならアークのトップランカー、生き汚さでも成長株、それがSHOGO) SHOGOは、生き延びた自分を讃えた。後方で穏やかなパニッシュライフを送るには、推量の腕を磨かなくては。フェイト減らしていられない。 「喰らった人はスケベですね。ふふふふふっ☆」 そのとき、SHOGOの社会的フェイトがはじけて消えた。 ● 技には本人の人となりが透けて見えるものである。 「見せるための攻撃を行うって変な感じね。下手に他人を意識しちゃうと変な動きになってしまいそう」 糾華の足元では、幻影とオーラで構成された黒銀のルーレット。黒と赤のホイールが回り、ボールが跳ね回る。運を乗せて。運命を乗せて。 「さあ、ゲームを始めましょう。今夜今宵限りのノーレート。Betも自由。降りるも自由。……ただし」 ふわりと振るう袖より放たれる彼岸ノ妖翅。境界の蝶。イノチを運ぶ夜に光り舞う告死の使者。 「ただし、無事に帰れるかどうかは貴方の運、ね」 蝶の形をした刃が蜂の巣のごとき凄惨な痕を残す。 こんな蝶の罠にならかかってみたいと思うのは、すでに術中に墜ちているからなのだろうか。 彩香は言った。 「その……付き合って、くれませんか……?」 近接戦闘の訓練に。 なぜ、幸成。他に最適な知り合いがいなかった。 「銃器が主なんですが、元々戦闘は不得意で。さらに近接戦闘が苦手なので、何かしらの基礎を身に付けたい。と……」 「忍びたる者、近接戦闘には多少心得が御座る故、お力になれれば幸いに御座る」 忍者は紳士である。 手取り足取り、型やパターンなどを教えてもらったりする。 人に物を教える楽しみに若干熱も篭りつつ教えていく。 彩香も、密着や視線は不快ではないが愉快でもない、そんなドライな感じ。 「うむ、これだけの動きができれば護身程度は問題なし。筋が良う御座るな、彩香殿」 相手の隙をつき、死角から回る動きのいくつかに及第が出された。 「ありがとうございます」 さすがに胸でも触られたら平手が出そうと思っていた彩香は、思いのほか紳士に礼を言う。 「最後に余興でござる」 言うが早いか、影を纏うと自立型人型的を土蜘蛛のごとき気糸で吊るし上げ、返す刀で切り刻んだ。 「これが今の自分の全力に御座る……」 忍者、いつもそんな感じでいてください。 涼子は、琥珀を相手に練習に励んでいた。 とにかく近くまで突っ込んで、そのまま殴る。あるいは、すぐ前で旋回式の裏拳に切りかえる。 (どうするにしても、このちっぽけな体に速さを足さなくちゃどうにもならない) 琥珀の除けより涼子の拳の方が正確だ。 「え、あの、その、ちょっと……」 (相手の足下にもぐりこみ続けて、うざいぐらいにまとわりついて、相手にまわりを見させないようにする) ちょろちょろ動き回る涼子を見逃さないようにするのに、琥珀は一苦労だ。それでも、 「うっはいい刺激! おかわり!」 そう簡単には倒れない。 (一発で落ちる敵はいない。わたしの一発じゃなおさらだ。なら、せめて、一発でも多く。べつに、それがわたしのものでなくてもかまわない) 涼子が納得するまで、琥珀は練習に付き合い続けた。 「練られた技を至近で見られるってサイコーだよな!」 一休みのとき、琥珀は涼子に話しかけた。 「……じぶんでも、あいかわらずだと思う。きっと、もっとふつうで強いやり方があるんだろうけど」 涼子は、ぽつぽつとしゃべった。 「しかたない。そういうやり方をする気にはならない。この小さな体が、わたしの最高の敵で、最悪の味方だから」 琥珀は、うなづいて、思いっきり両手を突き上げた。 「さー的になるぞ! どんとこーい!」 フランシスカは、研究熱心だった。 適当な的に向かって、黒螺旋どかーん! (最近使用頻度も上がったしね、より効果的に使える当て方とかを研究してみよう) 射撃位置を一歩ずらし、二歩ずらし。 (この辺かな? いや、これぐらいが一番いいかしら) 見切れると効かないので、ポジショニング大事だ。 (試しに至近距離からもドカーンとやってみよう。的になってくれる人がいたらいいけど……) 彩歌さん。 「かまわないけど、バリアシステムで受けるわよ?」 インフォームドコンセント。 夜中に聞こえてきたら、布団をかぶって聞こえないないしたくなる音をさせながら、漆黒に光が渦を巻いて飛んでくる。 「ここで受けると、力場がこうで、ベクトルがああで――」 ぶつぶつ計算する彩歌。 ぱぱぱっと、彩歌の周囲に微かな発光。すごい、バリアってほんとにあるんだ。 「え? あ? 痛い?」 フランシスカは首をひねった。痛んでなんぼのダークナイトだけど、黒螺旋には反動はないはず――。 「バリアに反射がついてます」 跳ね返ったよ、防護無効。 セラフィーナも張り切っていた。 「私だって、多くの実戦を経験してきたんだから。でも、アークの皆と比べた事はあんまりないや」 (姉さんから教わり、私が鍛えた技。どこまで通用するのかな) 電撃戦闘対応した後、地面を蹴って翼でさらに加速。 虹色の飛沫を飛ばしながら、セラフィーナは刺突を放つ。 「見るからにノリノリで気合の入ってる人は真っ向全力っぽいかな。ただ全身全霊で一撃目を回避だね」 見た目を裏切り、軽やかにステップを踏む与作に、セラフィーナは食いついていく。 踊るような二人の攻防は、さながら、「パパとワルツを」な風情があった。 ベルカの趣味は渋かった。 「アブソリュート・ゼロ」! 絶対零度の視線で敵を睨み殺す技だ。冗談ではない。比喩でもない。視線(神秘)だ。邪眼とかガントの友達だと思えばいいんじゃないかなかな。 (故に、特定のフォームは存在しない……が) おもむろに指でピース! ゆっくり顔まで持ち上げて、すかさず目元を横切る&笑顔の八重歯というか犬歯だ。 (「イラッ★」としただろう? 同志白石直伝、本物のアイドル仕込みだぞ。さぞや、無力な犠牲者のハートを凍りつかせた事だろう……) 的にしていた、アバター・リヒャルトは、ぽっかーんと口を開けて、「それ似合うと思ってやってはるの」的虚脱「やってられんわ」的無力「へそで茶がわきますわ」的腹筋崩壊を表していた。 雪佳は、張り切っていた。 (俺の技を見たい……という、応援してくれる子もいるんだ。ならば、今の俺に出来る最高の技を披露してみせる) ひよりだって張り切っていた。 (ゆきよしさんとは同じお仕事に行けることが少なくて、いつもうきゅーってごろもだしてるの。この機会にかっこいいゆきよしさんを余すとこなく見せてもらうの!) 勘を働かせて邪魔にならないところにちょこんと座るひよりの視線を感じ、微笑んで一度視線を送る雪佳。 すぐ相手に凛として向き直った。 雪佳の希望で、実力伯仲のデータが設定されている。 「胸を借りさせてもらう……行くぞ」 相手に向かって仕込み杖を腰だめに構え、静から動へ。 一気に加速して走り出し、神秘の力を纏わせた抜刀術で空間を斬り刻む。 抜き放ったまま相手の周囲を高速で駆け巡り、範囲内を白氷で包む。 「時の欠片よ、敵を屠る刃と化せ……!」 玻璃のごとき氷刃の霧。人型の的は氷像と化した。 「……ふわあ。すごい、すごいのゆきよしさん!」 駆け寄る日和に、雪佳は氷を溶かすような笑みを浮かべた。 霧音の技は神秘である。 「『距離も高度も関係なく断ち切る居合いの極意』 を見せるわ」 静かに息を吐いて集中を高める。 触れた柄、そこから繋がる刃にあらゆるものを断ち斬ると言う『意思』を込める。 武器である刀と、自分の肉体と精神、魂までもがひとつになった瞬間。 「斬――ッ!」 抜き打ち一閃。 あらゆる理屈を超えた斬撃が、理不尽に、問答無用に、刃の届かぬ筈の相手さえも両断する。 意思を以て断ち斬る奥義。 「壱拾参式疾風居合い斬り……とか、呼ばれたり呼ばれなかったり」 №13の存在を知ったとき、なんともいえない気分になったのは秘密だ。 「結構疲れるのだけどね、これ」 必殺技とはそう言うものなのだ。 朔は端的だった。 「鍛錬に来た。誰ぞあいている者がいれば――」 リベリスタの中に、きれいなお姉さんに突き捲られたい剛の者はいませんか。 SHOGO、キタコレ。 電鞘抜刀に葬刀魔喰を納刀し、居合の構えを取る。 いい感じにバチバチ行ってます。 踏み込みと同時に射出される柄を抜き出す、神速の居合。 「疾っ!」 踏み出した右足を軸に半回転。更に身を捻りながら左足で地面を蹴り体を前進させながら刺突を繰り出す。 ざくざくという音が耳に心地いいですね。 「まぁ実践では中々出せぬ動きだな、連撃は。修練を重ねて完成させるしかないか」 一人ごちる朔。SHOGOはここらが限界と逃げをうとうとしている。 「さぁ、もう一度だ。次はもっと斬撃を重ねてみせる」 朔は勤勉だった。 「何、VTSだ。ダメージは残らん。音を上げるのはまだまだ早い」 SHOGOが打たれ強くなることを期待したい。 ● 「シモン君も「俺の考えた最強のスキル」を実は胸に秘めてたりしないのかい?」 いい感じでぼろぼろ演出の琥珀が言う。 「恥を捨てろ! 自分を解き放て! リミット・ブレーイク! ってな訳で今日くらい、技とかあったら撃ってみろよ。受け止めてやるぜ!」 しゃきんと、双鉄扇を構える琥珀に、四門はきらきらと目を輝かせた。 「そ、それじゃお言葉に甘えて――」 すすすっと双鉄扇をあちこちいじり出す四門。手に、スパナ。 次の瞬間ばらばらっと分解する双鉄扇。 「な~んちゃって。『アーティファクト・ブレイク』 Mアタック付き~とか。こはっさん? VTSだから、本物は大丈夫ですよ。しっかりして、こはっさ~ん!」 戦闘訓練、お開き。 どうか、リベリスタの更なる力となるように。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|