● 森の奥の奥に何が在るか知っている居る人はそういない。この森も、世界には自分たちしか存在しないと言っているかの如く、自由に存在している。 そんな森の奥深くに、きっと誰かが狩猟等の拠点にしていたのだろう、木造の小屋があった。もはや朽ち果て、腐りかけている小屋だ。だからこそ、使い捨てで使うに限る。 小屋の周囲には、森の情景には不似合いなスーツを着た男達や、メイド服を身に纏う女達が立っていた。それぞれの手には物騒にも得物を持ち、何かの訪れを警戒しているのだろう。 さて、気になる小屋の中だ。 「この額で如何ですか! 胎児がどおおおおおおおおおおおおおおおおおしても欲しいんですわあ!!」 「ええ……ま、まあ、うん、結構な額だけど……」 「三尋木のルートならできると思ってますのぉぉおお!!!」 「え、そ、そ、そうなの……? お、お父さんに聞いてみるよそれは……」 必死の形相。不死偽・香我美は金髪赤目の少女、朱里へ何やら交渉の最中であった。 というのも先日の出来事をダイジェストで解説すると、かの裏野部の首領、裏野部一二三が「胎児欲しいなーいっぱい欲しいなー」なんて言うものだから、香我美は張り切って裏野部らしく病院を襲撃したが、アークのリベリスタによって阻止され、尚且つアーティファクトまで蹴られて、壊されて散々な結果で終わったのだ。 「それって首領命令ですよね……な、なんか、酷い事でもされたんじゃ……」 恐る恐る朱里は香我美へ問う。すると香我美は瞬間的に顔が真っ青に染まった。やはり裏野部らしく、コロシアムとかで凄い痛い事が……? 「そうなんですぅうおぉおおお!!! あれから私! 無視されてるんですのおおおおお!!! やだああああ構ってくれない一二三様なんて私、私、重様に浮気してしまいそうで嫌ァアアアですのぉおおお!!」 「は? と、とりあえずさ……連絡先と取引場所を教えてよ……あの、あのー?」 朱里、初めて自分より強い革醒者にイラっとした。 涙の海に沈み込み、自分の世界から帰ってこない香我美を、凄く凄くすごーく鬱陶しい目で見据える朱里は、何故だか早くアークでも来いと思ってしまったという。 ● 「皆さんこんにちは、七月入りましたが早速フィクサードです」 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達に切り出した。 「今回は交渉を阻止して欲しいのです。交渉は森奥、小さな小屋の中で行われています……が、アークの襲撃を予想しているのでしょう、フィクサードの配下達が小屋を囲んでいるのです」 小屋の中には裏野部幹部と、三尋木の少女が交渉をしている。成立してしまえば、それの受け渡しを阻止するために錯誤しなくてはならなくなるので、此処で押さえておかなければならないのだ。 交渉が上手く事運んでいないのは裏野部幹部がお喋り過ぎるというのが幸である。というか彼女はアホなのかもしれない。 「ですが、時間はあまり無く。到着してから短時間で小屋を襲撃して、交渉を阻止してください。これまでの動向を見れば、三尋木の女の子は身の危険を感じれば即撤退するはずですので」 早く小屋を取り巻いているフィクサードを退けて、早く交渉を阻止させる。非常に時間との勝負になるだろう。 襲撃した後だが、裏野部は素直に撤退するとは思えない。交渉を阻止した後の対策も考えておくのが吉だ。特に幹部である香我美は相当の実力者だ。警戒をして損は無い。 「それでは、よろしくお願いします」 杏理は深々と頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月18日(木)23:18 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 涙の海に、不死偽香我美は沈んでいた。 だって裏野部一二三に勝手にお目通りしても、無視され、そっぽ向かれ、挙句の果てにはいないものとして処理される。 これなら失敗したけじめとして、コロシアムに立たされ、処刑された方が香我美的には嬉しいのだが、嬉しい=ご褒美に成ってしまうので、あえて彼女に何もしないという選択肢こそ彼女にとっての絞首刑なのだ。一日一回一二三を摂取しないと死ぬ病気なのだ。 そんな再起不能な香我美を、嫌そうな目で見る朱里だが、次の瞬間には壁の外に興味が向いた。 というのも。 「アーク参上!! フィクサード達め、ルメ達が全員ぼっこぼこにしてやるの!」 『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)が小屋周囲のフィクサード達へ中指を突き立てて宣戦布告。 「来いって言われたから来ちゃったけど、わー、ルメ子さん元気だね」 『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)は、微笑ましく彼女を見ていた。 とは言え、会いに来たのはこんなモブ的なフィクサード連中では無く、むしろ小屋の中にアタリが居る訳なのだが……そちらはまた違う班のお仕事。 「頼みました」 小梢はぼそりとAFへと呟けば、奥から「ああ」という声が返って来た。 「おい新人! びびってないで出て来い!」 『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)も同じく、小屋の中の少女へと声をかけてみるが、やはり……反応はいまいち返ってこない。想定の範囲内だが、では言い換えてもう一度。 「朱里ちゃん、遊ーびーまーしょうー?」 うん、やっぱり返事はないか。と、七海は少し残念そうに弓に矢を置くのだった。 しかしだ、七海の問いかけに答えたくとも、そういう訳にはいかず。 「……誰が遊ぶかっての、七海ぃぃ……」 ぽそぽそ呟いた朱里の、七海への小言はすぐに虚空へ消えた。 あっちもこっちも馴れ馴れしくて、どうしようも無い。変なため息を吐く三尋木の少女朱里は、香我美に迫られ冷や汗を流すのだ。 「あらあら朱里様、大人気ですわね。どうやらお邪魔虫は来てしまったようですわぁ、ささ、契約を」 「え……あ、うん」 そんな事を知らない外の人間達は交戦のベルは高らかに鳴るのだった。 どうやら彼方も小屋を護れと言われているのだろうか、それとも邪魔者は排除しろと言われているのかは知らないが、『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)は指揮棒を振り上げ言う。 「任務開始。さぁ、戦場を奏でましょう」 こんな戦闘を強いられる原因は、なんとも馬鹿らしいが放ってはおけず。ミリィの隣、最速で『Type:Fafnir』紅涙・いりす(BNE004136)が太刀を振って漆黒の閃光をフィクサード達へプレゼント。 直後、敵より先に行動したミリィが指揮棒で空をトンと叩けば、今度は神聖たる光の閃光がフィクサード達を襲う。 敵のマグメイガスの葬送曲の鎖が森の中、放射線の様に降り注いでいく。それを避けながら、いりすは細い目で小屋を見た。 「邪魔だ、邪魔だね」 会いたいのはあの中の少女――。 「さて、どれ程で出てきますでしょうかね」 ミリィの閃光が未だに目に残る時だが、七海の弓から真っ赤な光が放たれた。それの数は無数で、此方に向かってくるフィクサードを射抜き、燃やしては絶叫を上げさせる刃だ。まだ、まだ小屋の中は動きは無い。 「破談まで、まだ時間はありますが」 最初から全力で。久しぶりに会ったフィクサードはとても胸糞悪い連中たちだと七海は思う。この矢で射殺したいが……それはまだ先になる話か、それとも近い内の話か。 再び七海は弓に矢をかけた。だが、やはり敵の方が数は上。いりす、ミリィのブロックを乗り越えてくるフィクサードも居る。その連中の多くはルーメリアと、エリスへと向かった。やはりヒーラーだけに、狙われない事は無いという事か。 デュランダルの刃を直撃され、揺らぐエリス・トワイニング(BNE002382)。だが次の手番に詠唱を奏で、上位の神を召喚した。 回復こそ、エリスが誇る、唯一の武器。 エリス自ら、絶対たる信頼を寄せる回復は仲間の傷を癒し、埋めていく。そこに重なるのはルーメリアの光だ。 「わわわわー!! なんだかいっぱい来ちゃったの!!」 「数多し……大変、かと……」 雪崩の様に迫って来る敵前衛。二人にしてみれば怖いものである。 即座に回復詠唱を構成し直したエリス。そしてルーメリアの目線の先には小梢が居た。 小梢が放つ、十字の光。それは敵のホーリーメイガスを狙うものの、やはり庇われてしまっていてそれは叶わない。己もそういう役目をする事がある小梢だ。やっぱりか、と若干小さく肩を落としながらも、横から来たソードミラージュの刃をカレー用の皿で受け止めた。 戦場は既に乱戦と言えるだろう。やはりホーリーメイガスの存在は大きい。 いりすは駆けていく――敵のホリメの居る群がりへと。だがしかし先程の小梢の攻撃もそうであったように、ホリメはイージスに庇われていて、いりすの漆黒はホリメには届かないのだ。 「お任せ下さい」 「うむ」 AFからミリィの声が聞こえ、いりすは地面を蹴って後退。直後、ミリィは敵ホリメの眼前に眩い光を放った。それは神気の光では無く、レイザータクトであるからこその光。 「これでしばらくは回復を抑えられたらいいのですが」 「それは無理だろうね」 二人は同じ方向を見た。朱里のお付きかは知らないが、精鋭レベルの三尋木ホーリーメイガスが聖神を高らかに放ったのだった。 ● 小屋の外でリベリスタがきちんと敵を引き付けているからか、片側に寄ったフィクサード達は片側に待機していたもう一つのリベリスタの班を知らない。 「そろそろ時間か」 「あいおー」 『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)はナイフを振り上げ、『ましゅまろぽっぷこーん』殖 ぐるぐ(BNE004311)は足にグググ……と力を込めた。 そして――。 「話し中に悪いが、少々邪魔をさせてもらう」 「おっじゃまーらのー!!」 バキバキと音をたて、小屋の壁を壊して侵入してきた超過激なアーク。一人はナイフで壁を壊し、一人は突進して壁を壊し。 「あああん!! もう、そんなに激しくされたらイっちゃうんですわぁ!」 玄関から入れないなら、出入り口を作ってしまえとでもいうのか。これでも香我美は精一杯の驚きを見せているのだ。 即座に香我美は応戦しようとするが、ピタリと止まった。そう、既に隣に。 「自分で産めばまるっと解決じゃないれす?」 「そうそう、私も一二三様の子供を……って、あらあらお久しぶり」 ぐるぐが超自然に香我美へと話しかけていたのだ。 「この前ぶりー! と、こちの子は前に会った?」 「え、なにこの微妙な空間」 ぐるぐは香我美の豊満過ぎる胸に飛び込み、谷間に顔をはさんでもふもふぐるぐる。ましゅまろらー!なんて叫びながら……そんな空間に全力で、デッドオアライブで、ツッコミたい朱里の目のハイライトが段々薄くなっていく。 次の瞬間には、香我美の拳がぐるぐの胴を捉えて、腹パンならぬ腹ドゴォ!で引き剥がされるものの、ぐるぐは全身全霊でシリアスブレイクを行ってくる。 「ボク達は遊びに来たのらー」 「遊びで交渉を潰されるこっちの気分にも成って欲しいのですわあ!」 ぐるぐが分身。一人は葉で香我美の背を切り裂き、一人は香我美の頬へキスし、一人は朱里に手を振り……。 ゲルトは小屋を一周見回した後、睨んでくる金髪の少女へと近づいた。 「……ゲルト!!」 轟、と音をたて。圧し折れた校門の一部分がゲルトの頬を掠って壁を破壊しながら飛んでいく。それを放ったのは朱里だ。 「またお前か。よく会うな。この前はお前の父親にも会ったぞ」 「だから何よ! ま、まあよく来てくれた……とでも言っておいてやるわ」 ちらり、朱里が目線を送ったのは裏野部の幹部。三尋木のペーペーである朱里にとっては、できる限り関わり合いになりたくない相手でもある。そして再び、ドゴォ!と轟音を立ててはぐるぐの胴へ、綺麗に拳がめり込んでいる。 そんな風景を他所に、ゲルトは朱里の振り落した校門を掴んで引き寄せ、言うのだ。 「命をかける程の戦いじゃないだろう。父親の邪魔をした相手をある程度痛めつけたのなら面目も立つんじゃないか?」 「そうだよ! 今日という今日は殺すんだから……って言いたいけど」 じりじりと、朱里の身体は出口へと後退していく。逃げる少女を追う程、今回の依頼は優しくは無く。その通りに、次の瞬間にはゲルトと朱里は共に、香我美の地盤沈下に巻き込まれていく。 「今日の所は見逃してあげるんだから!」 「それはこっちのセリフだ」 木屑が肌に切り傷を入れていくその中で、朱里はゲルトから遠退いて行く。 朱里は逃げるようにして小屋から出て来た。しかし、その先を見て瞬間ハッとする。 目の前――いりすが立っていたのだ。目線があってびくりとした朱里。そう、いつだったか彼岸花を通して再開を誓った二人。しかし交戦にならず。 「また! またそうやって、戦わないんだ!!」 朱里は圧し折れた何処かの校門を軽々振り上げてながら威嚇した。だがそれはいりすにとっては恐怖でも無く。 「君の間違いを一つ正しておこう。確かに君は『敵』たりえる。だが、それは赤親父の娘だからではない」 曰く、気に入っているのはCrimson magicianの娘では無い。赤神朱里という人間そのものが好きなのだ。だからこそ、自信を持てと、敵ながらにいりすは言葉を贈るのだ。 そんな事を言われるとは夢にもおもっていなかった朱里だ。目を離して俯いて、真っ赤に色づいた顔を隠すので精一杯だ。そしていりすは手を差し伸べる。何もしない、と言いながら朱里の腕を引き、その金髪を愛で、抱きしめ―――朱里の耳元に口を近づけ言うのだ。 「邪魔するなよ。邪魔するなら……喰い殺す。文字通りに」 「は、は、はひぃ、い!」 おいき、と逃がされた朱里。その後方――すれ違う金髪と金髪。 「はろーはろー、ごめんね、今日も邪魔しに来たの!」 「……う、うん」 ルーメリアはすれ違う朱里に手を振った。まるで友達の様。そう成れたきっと、良いのだが。 「ルメの事、嫌い?」 ルーメリアよりも後ろへと消えていく背中に問いかけた。その背中は一瞬だけ振り返り、遠慮気味に笑う彼女は敵でも嫌われるのは辛いのだと言う。 「……まるで私が悪者扱いだね。べ、別に、嫉妬なんかしてないんだから。だから、嫌いじゃ……無いよ」 刹那、朱里の身体が衝撃によってバランスを崩したようによろける。朱里が睨みつけた先、七海の鋭い瞳が此方を向いていた。 「あの実はイイ土産になりましたかー? しかし変な人とばかり仕事してますねー」 「ノーコメント……。三尋木と裏野部、一緒にされたら困るんだから!」 朱里は七海へあっかんべー、と目の下を指で伸ばしてみせる。再び放つ、七海のインドラの矢。それは紛れもなく朱里も対象に入っており、朱里の撤退のきっかけにするには十分な脅威であり。 ふと、朱里がもう一度振り返ったのはルーメリアの方向。なぁに?とルーメリアは笑って見せた。何故、どうして敵にそんな笑える事ができるのだろう、朱里は疑問を持つ。だが、言いたい事は別で。 「もし、良かったら」 友達に――なんて事は言えない。 「ううん、なんでもない。またね、ルーメリア、ゲルト、七海、いりす……何もしないから睨まないで、小梢」 朱里は後ろめたそうにルーメリアを見ながら、森の奥へと消えていった。 ● 朱里が消えた時点で、この交渉は白紙へと戻った。だがまだ、裏野部に裏野部幹部は残っている。さあ、どうやって逃げようか。 「これで、帰ってくれるなんて事はありませんよね。アリス」 ミリィは小屋から出て来た香我美へ問いかけるが。そんなもの、答えは決まっている。 「うふふ、また潰されちゃいましたのね。どうしてこう、私って駄目なのかしら。これじゃあ……」 チリリ、ミリィといりす、ゲルトの肌に、空気が振動した感触を受ける。何かがヤバイ、何かが。 「これじゃああああああ、また一二三様に無視され続けちゃうじゃあないですんおぉおおおお!!!!」 空気が震え、大地が揺れ、なんとも子供らしい理由で吐いた咆哮は、それだけで獅子の咆哮の威力を持っていた。 だがブレないぐるぐは幻影にて攻撃を放つ。しかしだ、長い間、香我美とまともに交戦していれば精神力が消えるすれすれであり。 「もっともっともっともっと、面白いもの沢山見せてー!」 「いいですわよぉ、はぁぁあいっ」 ぐるぐの葉が香我美の腕に食い込み、もう片方の香我美の腕がぐるぐの小さな頭を鷲掴んで、そのまま地面に叩き落した。しかしぐるぐはケロリと笑いながら、復活。その身に運命を宿しながら、ワンモア!と笑うのだ。 「ゲルト様~でしたっけー?」 香我美はそのままゲルトへ向かった。吸血鬼らしき牙を剥かれ、対抗するゲルトは光る刃を向けた――だが速度が足りない。香我美の強靭な顎がゲルトの首を半分程噛み千切ってはそのままペッと吐いた。 「ゲルトさん大丈夫なの!?」 魅了された彼の刃はいりすへ向く。だが、その手前でルーメリアとエリスの回復が彼等を護った。二人の回復手は非常に優秀で、傷を埋めるにはとても最良だ。しかしだ、ミリィのアッパーだけでは捉えきれなかったフィクサードの攻撃はルーメリアとエリスを傷つけていく。 「浮気はよくない。だが。我慢もよくない」 朱里もいいが、ドMちゃんもいい。香我美へ矛先を変更したいりすはリッパーズエッジを向けた。 「あら! とてもいいナイフ!」 「そっちの破界器も欲しいがね」 交わした言葉は一瞬。いりすのナイフが光をまき散らしながら香我美の首を狙う中で、香我美の腕から爆発的な炎が放たれ、森が真っ赤に燃えていく。 敵、味方、区別されずに香我美は鬼業紅蓮を放ったのだ。潤うは香我美の精神。しかしその炎を突き抜けて、炎の矢が香我美の肩へと突き刺さった。燃えあがる肉体に喘いだ女を、七海は目を細めて気持ち悪いと言う。 「まだ、まだ戦いたりないのですか!?」 「あふぅん、だってこんなにたのちぃんだもぉぉおん」 ミリィの撤退勧告。それに香我美は笑う。もし、彼女を興醒めにして帰らせたいのなら、それなりの材料は必要だ。 頬を伝う汗。ミリィは次の策を練り上げ、魅了から戻ったゲルトは諦めずにナイフを香我美の背中へと突き刺さる――。 「あはっん! ……ま、今日はこんな所でやめておいてあげますわぁ」 だって――こんなに痛くて気持ち良くて、気分が良すぎてこの場の全員壊しちゃいたいくらい。 「ん、ぁふう、きぃもちぃいのですわぁ、でも……一二三様程の絶頂は無いですのぉ」 抜いたナイフ。それはゲルトの方へ投げられ、返された。 「ぁふぅ、濡れちゃって淫らな姿は見せられないですのぉ」 いつも通り、終わりは非常にあっさりしていた。 香我美は機嫌良くばいばーいなんて手を振って、轟轟と燃える森から消えていくのだ――。なんとも言えない物足りなさを残し、この微妙な空気を残しつつ、戦闘は終わりを迎えるのだった。 「な、なんだったんだ?」 誰かがぽつりと呟いた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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