●安心を売るお仕事 星々や宇宙の歴史から見ればちっぽけなもの。なんて言ったって、我々は我々、人類の視点で物事を見れないのですから、人生というやつはとみに長いものでございます。 そんなものですから、何が起きるか分かったもんじゃありません。 喪失の危険というやつはどこにだってつき纏う。それは家であったり車であったり金であったり、生命であったりするものです。 え、火災保険や生命保険には入っている? 嗚呼いえ、私共がご案内したいのは既存の保険プランではございません。 嗚呼でも、自動車保険は近いかもしれません。自賠責保険というやつですな。自分が受けた被害の保障ではなく、加害者側に回った際に守ってくれるもの。と言っても、相手に対して倍賞を支払うものではございませんが。 まあつまるところ、お客様が加害者となってしまわれた際の保険なのでございます。いつ何時、その身に降りかかるかわからない災厄。それは与える側も同じ事なのです。いつ何時、ねえ? 何時、ヒトを殺してしまうかなんて分からないじゃありませんか。 ええ、そうです。殺人。殺人。殺人ですよ。お客様が誤ってヒトを殺した。殺害した。亡き者にしてしまった。その際に、当社が保証致しましょう。 アリバイを作ります。お客様と被害者の関係性を失わせます。高飛びさせます。代わりの犯人を仕立て上げます。なんなら探偵役にしてさし上げてもいい。 そう、殺人保険。 我々は、お客様に振りかかる災難から、お客様の社会性をお守りいたします。ねえ? 「だからって、シリアルキラーを加入させたらダメでしょう」 とあるテナントビルの一室で、呼びつけた部下を前に男はわざとらしくため息をついた。 「通常、加入審査でなんとかできるはずなんですがねえ。よりにもよって革醒者ですか。補足されますよ?」 部下は黙っている。こちらの話を聞いていないのではない。ただ、単に震えているのだ。自分の失態。そこから導き出される暗い暗い未来に絶望しているのだろう。まったく、馬鹿馬鹿しい。 「それで、あなたの処分ですが―――」 「ひっ……ッ」 「怯えなくて結構。前時代じゃあるまいし、粛清なんて真似はしませんよ」 露骨にほっとした顔を見せる。愚かなやつだ。失敗ごときで殺害していたら、すぐに人手不足となってしまうではないか。それに見合うリターンはない以上、行う価値はない。 「かと言って、何もなしとはいきません。担当者として、適用業務にあたりなさい。一度加入させてしまった以上、審査ミスでしたではこちらの信用度に関わる。連続殺人鬼などどうでも良いですが、我々のイメージを崩すわけにはいきませんしね」 この言葉に、部下の顔は再び安堵から絶望へと移る。殺人者と契約期間が終わるまで付き合えと言われているのだから、無理もないかもしれないが。容易く本心を見せるやつだ。商売には向いていない。まあ滞り無く済めば、分家筋に仕事を探してやってもいい。 「まあ、長引くのは我々としても不本意ではあるのですが。さっさと、どこかの正義に味方が影から潰してくれませんか。ねえ?」 ●安息を取り戻す仕事 「オイーッス!」 朝もはよから喧しいことこの上ないが、返さなければ延々と繰り返されるのを知っている。気怠さは凄いが、腹から声を出すことにする。 「ういー、いいねェ。元気イッパイ。オニーサンは元気のある若い子が好きダヨ」 うんうんと頷く男。表情は見えない、だってガスマスクしているし。 そんなやり取りを終えて、ガスマスクでアロハな男は本題に入りだす。 「今朝の新聞見タ? 見てナイ? 駄目だゼ、世間には敏感でナイト。まあイイヤ。殺人事件ダヨ殺人事件。完膚なきまでに完璧で完了された証拠品と共に犯人確保だってサ。凄いヨナ、万華鏡で見えたものとまるで違う事を除けバサ」 一転、不穏な空気が流れる。それは、いったいどういう意味だろうか。 「そうなンダ。おかしいヨネ。予言と、証拠通りの犯人が違うンダ。何で、ダロウネ」 であれば、誤認逮捕。なのだろう。それを早く教え、冤罪の某を救うべきなのでは。 「それがそうもいかないンダヨネ、ちょっと証拠が完璧すぎてサ。ま、それでもオニーサンらのお仕事はかわりまッセーン。フィクサード退治ネ。殺人鬼、とっちめチャッテ」 そう言ってウインクする彼。いや、マスクのせいで見えないけどさ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月18日(木)23:15 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●感情を得るお仕事 さてさて、とてもまずいことになりました。いえ、それを引き起こしたのは私なのですが。嗚呼、どうしましょう。まさかまさか、あろうことか殺人鬼の保険加入を見逃してしまうだなんて。このままではお終いです。社会的にも、生命的にも。ぐっばい出世。あでぃおす寿命。そんなの嫌ぁ。 保険というのは、謂わば責任を代替わりするものである。不慮の事故。絶大な過失。理不尽な不幸。そして死後。それら個人では背負いきれぬ責任を、集団という力に投資することでそれを代替わりしてもらうことである。だが無論、背負ってもらってはいけないものも存在するのだ。それはつまるところ、何者にも払いきれぬ。殺人のような。 「実際の犯人は悠々と闊歩しているわけですか……誤認逮捕する警察も警察ですが、犯罪者が野放しと言うのは頂けませんね」 『白月抱き微睡む白猫』二階堂 杏子(BNE000447)は言うのも尤もだが。この場合、一般の官警を責めてやるのは酷というものだろう。そも、革醒者とは彼らの手に余るのだ。だからこそのリベリスタである。 「まぁ、殺さない程度にぶん殴るとしましょうか」 そら恐ろしいことを、良い笑顔で言うものだ。 「殺人鬼ねぇ。何というか、こう……コレは中途半端でどうも」 『群体筆頭』阿野 弐升(BNE001158)は頭を掻いた。 「ぶっちゃけ、プランBとか何やらかんやらが突き抜けすぎてたと思いますが。保険をかける、なんてヒト臭い。革醒者がヒトを気取るとかお笑い種でしょう」 俗的な殺人鬼、というと意味が通らぬが。つまりはそういうものなのだろう。 「気に入らないんだよねぇ、名無しの殺人鬼。神妙にお縄をちょうだい、ってかあ?」 今回の一件、『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)にはどうにも不可解だ。体験したことのない、それこそ夢にだって見たことのないそれであるはずなのに。何か既視感を感じる。その後ろに居る、発端たる誰かを知っているような気がするのだ。 「……以前も出会った事のある、この違和感」 直感を高速化させた論理思考の飛躍だとするならば、正当として問題はない。 「今度こそ、尻尾をつかんでやる……」 「殺人保険だなんて、シリアルキラーほいほいの良い保険だよねぇ。俺様ちゃんもはいりたい☆」 ヒトを殺すことを前提とした思考。『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)のそれは独自のものだ。危険思想。法制無視。味方だと、信じがたい程の。 「めんどくさいんだよね。人っていう肉の塊は処分が厄介。なんだよねぇ。でもまあ、アークのお陰で随分楽になったし。アークさま様☆」 敵対フィクサードのことだと、思っておこうか。 「さて、と――私、普段はおちゃらけてますけどね。こういう事件はやっぱし見過ごせないんです」 『名状しがたい突撃レポーター』葉月・綾乃(BNE003850)が気合を入れる。殺人事件。解決意欲。倫理性。その裏にある異常の臭い。例え公表できるものでなくとも、エンターテイメント性・センセーショナル性に欠けるとしても、放置して良いものではないのだ。 「私が『ジャーナリスト』を名乗るためにも、ちょっと本腰いれて調べますかね」 「人を殺した罪を人に擦り付け、今も尚、罪を重ねている方がいる……それだけでも許し難い事でございますが、その手助けをしている方々がいるとの事。犯人共々、このままにはしておけません!」 『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)の持つ正義感は輝かしいものだ。悪事を、多面性に囚われず糾弾できる純粋さ。難しい理屈をこねなければ、誰もがモラリストとして在れるのだから。 「少しでも手掛かりを掴まなくては……」 「フリークスの討伐は勿論ですが、冤罪によって罪もないボトムの方が裁かれるというのは見過ごしたくはありません。何とか晴らせないものでしょうか?」 シャルロッテ・プリングスハイム(BNE004341)は思い悩む。確立された司法制度に割って入れるほど、アークは支配的な組織ではない。だが、真犯人を捉えるということは、その救助への多大な貢献となることは間違いあるまい。つまりは、やれることをやるしかないのだ。 「フィクサードの思惑や目的まで理解したいとは思いませんが」 『探求者』シア・スニージー(BNE004369)は言うが、そも知った所で共感などできるはずもないのだとわかっている。万が一有り得てしまえば、それはそれでよくはない。 「私はただ、客観的な事実を知りたいのです。そして世の他の人の認識が間違っているなら、正せる範囲で正したいのです。それがこの世界に来て学んだ、研究という活動の1つの意義ですから」 さて、それでは今回も、殺人鬼のお話である。だが、そうでありながらも物語の中心はそれではない。件において、殺人鬼とは単なるファクターに過ぎず。本案は、狂いもしていない人間のそれである。 ●冷徹に至るお仕事 それもこれも、殺人鬼なんてものがいるからいけないのです。あの日からずっと監視活動を行なっておりますが、嗚呼なんてことでしょう。あの人本当にヒト殺してます。殺人鬼です。見つかったら私もやばいですよこれ。もう、さっさと誰かあれ返り討ちにしてくださいな。 姿形。身なり。風貌。そういった要素を特定できてしまえば、狭い範囲内で対象を探し出すことなど難しくはない。 そも、組織というバックアップがある時点で、それの敵対を予想すらしていない木っ端など、物の数足り得ないのだ。 故に、それは容易く彼らリベリスタの前に姿を現し、簡潔に対峙し、率直に駆け出した。 見るも愚か、無辜を詰むしか脳のない足取りで。 ●血流を分つお仕事 現れましたよ正義の味方。ぐっどたいみんぐ。神は私を見放さなかった。いけいけごーごー。そこのシリアルキラーに死の鉄槌をー。みーたか悪党め。栄えた試しはないのですよ。嗚呼、いつもはあんなにうざったいのに今日は輝いて見えますよ。りべりすたー、あいうぉんちゅー。 「―――さぁ、お仕置きの時間ですね」 杏子の笑みに、殺人鬼が怯む様子はない。嗚呼、これでは語弊がある。違う。違うのだ。怯んでいないのではない。それを殺意なのだと、気づかないほどに愚鈍であるだけなのだ。 それは正しくただの殺人鬼であった。狂信ではなく、天性ではなく、ましてや少女でなどありえない。ただほんの少し、目覚めたがゆえに只人よりも強固である。それだけの、殺人鬼であった。 「あ~……失礼、打ち込むスキルを間違えましたわ」 だからこそ、正面から予告染みて放たれた大技すらまともに避けられない。殺人鬼は黒血の濁流に飲まれ、溺れ、のたうち回らされる。 驚愕と恐怖。嗚呼、ここにきてようやく気づいたのだろう。全くもって、なんとも程度の低いものだ。逃げ遅れた、狩られる獣は誰なのか。 「私、フィクサードって括りに収まっている方々って心底大嫌いなんです」 痛みの得どころを間違えた愚か者に、かける情けは毛頭ない。 殺人鬼。それはひとつのシンボルだ。当事者にとってすれば災害にも等しい最悪でありながら、過去の事件とすれば嫌な魅力すらも感じさせる。殺害を、悪癖として・信仰として・食欲として・天然として・生来として・呼吸として・性欲として、行う者たち。 まあはっきり言って、弐升はそれへの共感性など欠片も持ちあわせてはいなかった。一方的な災厄殺害。そうではないのだ。重要なのは闘争である。剣戟、銃交、狂騒。そう言った死線の果て、上り詰めたハイエンドにこそ得うるものである。 「法外の行いが法に守られるかっての。フィクサードはリベリスタが裁けばいい。リベリスタが正義の味方? ハハッ、抱腹絶倒の洒落だなオイ」 適度に手を抜いた攻撃。殺すつもりはない。だが、情報の収集もまた、彼の仕事ではないのだ。殴りつけるほうが得意だ。適材適所ということ。不得手は犯すものではない。 「つーわけで、殴りに行けそうな相手の特定お願いしますよ?」 「抵抗は無意味です、大人しく降伏してください。してもかまいませんが、こちらとしては情報を得られる状態であれば問題ないので……言ってる意味は、わかりますよね?」 弱いものだ、とレイチェルは素直に思う。自分もかつてはこの程度であったのだろうが、やんちゃをせずにいてよかったものだと、ここに至ってそう思う。 痛くなければ覚えず、理解するのは大きくなってからなのだ。嗚呼、これは子供だ。気をつけてやらねば死んでしまうような、幼い子ども。 足を射抜く。悲鳴が上がる。少なくとも、自分達が大勢で仕留める相手ではない。ならばこそ、と彼女は思う。自分達には、それ以上が求められているのだろうと。 情報を得る、それを強調し、誇張した。 殺人鬼にそれらしい反応はない。これの計画的な何か、という線はないということか。目線はそれから放さない。 だがそれでも、ただそれでも。自分達を眺める、第三者の視線には気づいていた。 「俺様ちゃんも殺人鬼なんだ! 奇遇だね☆」 そんな奇遇があってたまるものかと、胸中で叫んだから。そういうふうに見えたから、なんだ自分とは違ういきものなんだなと、葬識は経験則より察していた。 だから次の質問にも、戦いながら放ったただのおしゃべりにも、大した返答はとうに期待していたなかった。 「ねぇ、殺人鬼ちゃん、君は何をどうして人を殺すの? 人殺しにどんな哲学をもっているの? 殺人鬼と名乗るのなら、生き様を見せてよ。俺様ちゃんの殺しのモチベーションは『愛』だよ。知りたいな、君の『意味』と『無意味』を」 何を言っているのかと、意味がわからないのだと、そんな顔をしていればまだ救いはあったのに。ただそうではない殺人鬼であるのだと受け入れてあげられたのに。 その顔が必死で染まっていたから。全霊を持って死にたくないのだと喚いていたから。嗚呼、自分達がこんなにも懸命に、殺さないよう努めていることすら気づかないのか。 十二分に手加減されたリコルの一撃が、年齢性別主旨趣向すら語る機会を与えられぬ殺人鬼をアスファルトに叩きつけていた。 擦り剥いた顔を上げる殺人鬼。折れ曲がって血を流す鼻先に、自分の得物を突きつけてやった。 怯えの顔。死にたくない、死にたくないと、うわ言のように呟いている。それを言った被害者に、お前が何をしたのかなどと、言ってやる意味はあるまい。正直なところ、改心も悔心もこれには無用だと思えたのだ。心慮るつもりのない相手に、説教をする意味などない。 言い聞かせることと、恨み事は違うものだ。だから、これから行うことは義務感によるものである。 任務の内容には含まれない、個人的にこれへの恨みがあるわけではない。ましてや、改善など欠片も期待はしていない。強いて言えば、恨んでいるのは罪だろうか。 「貴方様には殺人保険についての情報提供、そして過去に行った犯罪についても自供して頂かねばなりません。覚悟なさって下さいませ」 「さて、どうやって警察等を欺けるだけの証拠を用意したのか。証拠の隠滅だけなら兎も角、偽の証拠まで、個人では用意はできないでしょう」 シアの質問に、答える様子はない。この期に及んで、秘匿するだけの気概を持っているとは思えないが。 だから同時に、心を読み取っていた。内側の、奥底に。隠しているものを、赤裸々に。 流れこんでくる心象文列。怖い怖い死にたくない嫌だ嫌だどうしてだどうしてこんなことにただ殺していただけじゃないか楽しんでいたのに楽しかったのにどうしてどうしてこんな目に合わなければこんな目に合わなければ―――思わず、眉を潜めた。 本当に、救いようがない。貧相な優越感。欠けたまま成熟した人間性。嗚呼、本当にどうしようもないものがいるものだ。言い訳のしようもない悪質。それでも根気よく心に潜る。嫌気もさしながら、しかし。 畜生畜生どうなってんだどうなってんだよ助けろよ金払ってんだぞあの保険屋―――見つけた。 「私らの仕事は討伐なんで、アンタがちょっとぐらい死んでも仕事は完遂できるんですよ。でも素直に言えば手心加えてやるって言ってるんです、それくらい理解しなさい」 綾乃の言葉を、半分でも聞き取れる平静は残していそうになかったが。それでも、有無を言わさぬ圧力明けは感じ取れたのだろう。よって彼らは少しばかり時間を送り、この部屋に足を運んでいた。 殺人鬼の、部屋。表札は確認したのだが、今後一切の物語にかかわらぬこれを記憶に止め記録に明刻するつもりなどない。これはただ一連のファクター程度として、名前の無いまま消えていくのだから。 見回して、嫌悪感。極一般的な一人暮らしのアパートである。ただ、様相が想像の何ひとつを裏切らなかった。俗という意味でだが。 使われていない台所、重ねられたインスタントの容器、うそ臭いスナッフビデオ、残虐なだけの切り抜き記事。拷問と殺人鬼関連ばかりの本棚、保険の契約約款。 嗚呼、これか。 がたごとと、音が聞こえた。 知っている。その音を。慌てて逃げ出す音。気づかれまいという直前までの配慮を忘れ、一目散にここから立ち去るための音。 無論、それを逃す彼らではない。殺人鬼を逃さぬ彼らが、それ未満の戦闘力でしかない誰かのそれを、どうして取りこぼそうか。 シャルロッテが走る。外へ飛び出し、アパートの廊下をパンプスで駆けていく後ろ姿に襲いかかった。 軸足を引っ掛け、転ぶ空中でマウントを取り、流れるように腕を固める。リノリウムの床に着地する頃には、身動きのできぬ姿勢が完成していた。 「保険屋さんですか?」 「あ、ええと、ええとですね! 私は、私はその、あの……!!」 「上司とお話がしたいのですが、取り付いで頂けませんか?」 「いや、そんな、わたしは、だからその……ひいっ!!」 抵抗している身体に力がなくなる。諦めたのか、そう思ったが違うらしい。 気絶。そこまで強くした覚えはないが、緊張が極限に達したか。 何はともあれ、一時決着、か。 ●明日を作るお仕事 嗚呼、なむなむ。さよならぐっばい殺人鬼。あでぃおすシリアルキラー。これで私の失敗も帳消し。おかえりなさい出世街道。信じてましたよ明るい未来。それじゃあさっさと撤収を。ん……あれ? あの書類は……あ、やっば。 「え、捕まりました?」 電話口の相手に、男は珍しく呆けた声を出した。 「嗚呼、成る程。そういうことですか。んー……いえ、はい。情報をありがとうございます。こちらもすぐに撤収いたしますよ」 口調はまた元のにこやかなものに戻るが、空いた片手でせわしなく部下へと指示を送っている。内容は要約するに、証拠を残さず速やかに撤収せよ。 「やれやれ、ここのオフィス気に入ってたんですが。また引越しですか……え、口封じ? 嫌だな、そんなの要りませんよ」 からからと、男は笑う。電話相手の提案が、心底意外だったというように。 「我々はただの悪党で、間違っても殺し屋じゃありません。人命は尊いものですよ、債務者以外は。ねえ?」 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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