●ムシムシにイライラした結果 「博士! 遂に完成したのですね!」 「ふふふ……左様! これこそが我輩がここんとこ湿度高すぎて怒髪天になって衝動的に発明してやった除湿器型アーティファクト『ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改』である!」 「凄い! これが、博士が最近の高すぎる湿度にイライラしてカッとなって発明した除湿器型アーティファクト『ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改』!!」 「であーる! この除湿器型アーティファクト『ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改』さえあれば! 世界中の人間がこのムシムシムシムシムシムシしてイライラする不快感から解放されるのだァアーッ!!」 「流石博士ぇ! 『昨日より便利な明日を』ってモットーはダテじゃない! この除湿器型アーティファクト『ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改』さえあれば世界平和ですね!」 「フーハハハ! さぁ行くぞ我が助手こと原本君! 昨日より便利な明日の為に……この除湿器型アーティファクト『ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改』を町中に設置してやろうではないか!!!」 ●何かに全力で生きてる人間って素晴らしいね 「ムシムシと蒸し暑い日々が続きますな皆々様! いつもお疲れ様ですぞ」 事務椅子をくるんと回し振り返った『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)がニコヤカに言った。確かに、日本の夏はどうも湿度が。鬱陶しいものだ。 「いやぁ……そう思っているのはどうも、皆々様だけではないようでして。 フィクサード主流七派の『六道』は御存知ですな? 七派閥の内、研究・鍛錬といった求道系の派閥なのですが。そこに属するフィクサードが……」 湿度にカッとなって人体実験? 「いいえ」 もっと湿度を増やして人々を苦しめてやるわー! とか? 「いいえ」 乾燥材でキマイラを作ってやったわ! とか? 「あ、ちょっと惜しい。うーん厳密に言うと悪事かと言われればちょっと判断が難しいのですが……その六道フィクサードがですね、発明品であるアーティファクトの除湿器を町中のあっちらこっちらに置きまくっているのですよ。 ――はわわ、『なんじゃそら』って目で見られましても視えてしまったのですから! 本当ですぞ! で、その除湿器アーティファクトなんですがね。ぶっちゃけて言ってしまえば無害です。周りのものの革醒を促すとか、近寄ると人が死ぬとか、そう言う事は全く起きません。 でも……ホラ……皆々様、常識的に考えてみて下さいよ……幾ら無害とは言え、『神秘サイドのアーティファクトが一般社会にバラまかれる』って色々マズくないですか?」 神秘は秘匿すべし。それはリベリスタの大きな使命の一つでもある。確かに……神秘の物体が一般人の目につくのは看過できない。ひょんな事から神秘の存在が表世界に知られてしまう訳にはいかないのだ。 「そういう訳でして。皆々様には、このフィクサードが町に設置したアーティファクトを全て回収or破壊して頂きますぞ。 当然ながら除湿器が設置されているのは一般社会の町ですから、行動する際は幻視などの神秘秘匿をお忘れなく! アーティファクトの周りはカラッとしていますので、非戦技能を持っていなくとも発見はそんなに難しくないでしょう」 頑張って下さいね、とメルクリィは一同に街の地図を手渡した。それを眺め、リベリスタは思う。 しっかし、面倒臭い事をやってくれるフィクサードだ……。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月10日(水)23:06 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●dkdkSTにもmykSTにも何か言われたよ 「ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改」 「うむ。ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改なのだ。なんとも天才かっけー名前なのだ」 ポツリと呟いた門倉・鳴未(BNE004188)に、『ジーニアス』神葬 陸駆(BNE004022)は目をキラキラさせながら頷いた。因みに日光で眼鏡も反射な意味で煌めきを放っていた。 「……って無駄に長いんスよ名前!? 字数圧迫すること甚だしい!」 「字数? IQは53万である天才のこの僕の思考演算によればそれは即ちプr――」 「ああメタい! 気にしたら負けッス、多分!」 でも省略したら負けた気がするので一回ぐらい呼んでおこう。 そんなこんなで真夏の町。容赦ない温度、えげつない湿度。除湿器にクーラー。実に偉大な発明だ。 「日本の夏、辛過ぎるよ……! 主に湿気が」 「羽衣も暑いのは嫌い。ふらふらするし、しかもじめじめするし、いきなり夕方に雨が降ってきたりするし!」 故郷ドイツ(ドイツの夏は湿気がなく、30度超えも稀だそうです)が恋しいと『ピジョンブラッド』ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)は汗を拭いつ肩を竦め(っていうか神父服超暑そう)、『帳の夢』匂坂・羽衣(BNE004023)も汗の所為で首にべたつく髪を掻き上げながら「もう」と息を吐く。それから「でも」と続けた。 「夏は悪い事ばっかりじゃないわ。アイスは美味しいし、海もプールも楽しいの」 だから、今日の羽衣のお仕事はそれを教えてあげる事! ニッコリ、笑う。そうだねとロアンが頷いた。六道――気持ちの悪い連中だけど、偶には良い事をするじゃあないか。 (その技術、リベ堕ちさせて有効利用するしか! 殺さないとも、こんな有能な連中だもの!) どっちがフィクサードだ。因みにギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改持って帰ったらホモの刑な。傍らでは「面倒だが放っておく訳もいかないしな」と『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)が生真面目に頷いている。しかし『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)は首を傾げていた。 「フィクサード……なのか? 確かに、我欲に基づき神秘の秩序を省みない……と言う点ではそうなるのか」 今でこそ無害だが、怖いのは本当にマッドな方向へ行ってしまった時。このミサイルで、ヨーロッパの半分を壊滅させるのだ~とか大雑把なこと言い始めたりとか。これから毎日家を燃やしたりとか。 「さておき! さー探すッスよ!」 鳴未の声が響く。そうだ。早くしないと熱中症で死ぬ。 「世界平和を望む天才同士、分かり合えぬことはないだろう。なれば、やつらハカセをリベ堕ちさせるのが、我が目標だ」 応えるように頷いた陸駆が、明日の方向をビッシと指差した。 まっていろ! デゲス漆原、ガンス原本! ●除湿器ハイドアンドシーク 「お友達も一緒で心強いのよ。お仕事だけど、こうやって歩くのは楽しいわね」 もうちょっと涼しかったら完璧なのに、と汗を拭いつ羽衣は陸駆に笑いかけた。うむと陸駆は大好きな友達へ頷いた。 「さ、ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改……ええと、長いからまーくんって呼びましょう! まーくんを探しましょう!」 えいえいおー。 そんなこんなでAB二つの班に分かれ、リベリスタは行動を開始する。 「コンクリート熱ッ!? 神父の丸焼きになりそうだ……」 「まおも暑いと思いました……」 面接着、電柱の上。ロアンと『もそもぞ』荒苦那・まお(BNE003202)は熱気に耐えつつ高い所から除湿器とフィクサードを捜索していた。まおは汗が入る目を擦りながら鷹の目の技能を発揮する。見付けた。「あそこに一つ」と仲間達へ連絡を。『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)が張った強結界のおかげでそこまで人目を気にしなくても良いのが有難い。 「『昨日より便利な明日を』……いいじゃないか。嫌いじゃない」 独り言ちたのはベルカだ。件の除湿機、アーク本部なら設置して貰えるんじゃなかろうか。寧ろ自分が欲しい。ふるもっふロシアっこには厳しい暑さ。にも負けず、ベルカは五感を研ぎ澄ませる―― 鼻でヒンヤリした空気の香りを。 耳で微細な駆動音を。 目で街角の目立たぬ一角を。 味覚で六道研究者としての血と汗と涙を。 触覚で同志ティバストロフの肩のアレの滑らかさを。 最後のあんま関係なくねっていう専門的な事は兎も角、一つとて見逃すものか。序に待ちの皆さんにもそれとなく除湿されっぷりをインタビュー。 「なんかあーじめじめしてたのにいーからっとしててえ~(割愛)Aさん21歳女性」 「(割愛)Bさん43歳男性」 「うむ、成程! 分かったぞ!」 全ての謎は解けた! 「あっちとあっちだ! それから、置かれた場所から鑑みるに……」 フィクサードはあっちの方にいるかもしれない。ベルカは彼方を指で差す。 一方で。 「! 羽衣の髪がぱさぱさするわ! お肌も乾くの! きっとまーくんはこの辺りにある筈よ!」 羽衣の女子力探査。圧倒的女子力。女子力マジ女子力。さっと周りを見、人が居ない事を確認すると羽でぴゅー。あ、あったあった。 「マル、っと」 仲間の技能(女子力とか)を頼りに地道に探していた鳴未は羽衣に呼ばれ、地図に印をつける。 「超必殺、リックンアブソリュートゼロー!」 陸駆はギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改ことまーくんに目からビーム(ではなくアブソリュート・ゼロ)を敢行。しかし中々の強度だ。ふむ。壊れ難いという事は良い事だ。 そんなこんなで、聞き込みや技能や女子力や地道な努力でリベリスタは炎天下の町を熱中症にも負けずに歩き回って―― 「待て、そこの二人組!」 ドルルン、と近未来チック特撮ヒーロー風大型バイクのエンジンを吹かせ、疾風の声が軽トラに駆けられた。視線の先には軽トラと、そこに乗り込んだフィクサード。だが軽トラは窓が閉まっていた。そして目の前に現れた謎のバイクにクラクション。だが退かない疾風。そしたら窓が開いた。 「おにーちゃんそこ退いてくれないかな~」 ガンス原本の困った声。に、疾風は応える。 「アークで研究したらどうだ。神秘界隈限定なら助かる人もいるだろう。それに夏は夏で良い所あるんだぞ。海やプールに行かないか?」 「……アーク?」 やべ。ばれた。 そこからフィクサードの行動は迅速だった。とりあえずアクセル全開。ぱこーんと疾風を撥ね飛ばして逃走開始! だが次の瞬間、『ドガン』という鈍い爆発音と共に軽トラの速度がガクッと落ちる。何故だ。それは、車体にぴょーんとへばりついたまおがハイアンドロウをぶっこみまくっていたからだ。 「ぼーんって撥ねられたらまおは痛いと思いました」 なので壊します。どかんどかん。お気に入りのやもりさん型の影も一緒。 「むぅ! いかん! 原本君!」 「ガッテンです博士ぇー!」 デゲス漆原の指示でガンス原本が飛び出した。こらーっとまおへ呪印封縛を放つ。はわわ。動けないまお。だがガンス原本も動けない。翼を広げたとらが更に気糸で絡め取ったからだ。 「破界器バラ撒くなっ! 夏は暑いのが当たり前なんだよ!! あー、それはさておき。こっちも何でも暴力で片付けるってーのはムシが好かねーんで、さっさと切り上げてプール行かない?」 「いたくてそれどころじゃない」 デッドリーギャロップ痛い。そうしている内に軽トラは機能を停止し、その周囲にはリベリスタ。ぐぬぬっと顔を顰めたデゲス漆原も軽トラより現れる。 そんな彼を指差し、鳴未。 「こらお前達! 勝手に街中に除湿機ばら撒くんじゃないッス! 確かに湿気は取れるけど! 邪魔になるッス!」 「邪魔にならない所にちゃんと置いたぞ!」 「えーっと、とにかく止めるッスよ!」 続けるように、羽衣が「御機嫌よう」と微笑みかける。 「暑いのは嫌ね、でも皆に迷惑かけたら駄目なのよ?」 「湿度が下がったら皆快適になれる筈なのだ!」 「うん……そう言うなら羽衣にも考えがあるわ。悪い事は悪い事よ。分からない悪い子は、お仕置きされても仕方ないわね?」 そんな彼女の手にはいつの間にか除湿機があった。 「喰らうのよ。『ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改インパクト』!」 思いっきり、えい☆ びゅーん。ぐしゃあ。 「ギャアアア」 「原本君ー!」 「大丈夫です、まおはとどめをさしませんから。ただ漆原様達とちゃんとお話したいので一旦静かにして欲しいだけです。いきます、『ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改インパクト』!」 まおも言いながら、除湿機を手に。えい☆ 「グワアアア」 「原本君ー!」 「仕方ない……痛い目見て貰うッスよ、『ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改インパクトォォォォォ!!!』」 鳴未も手にした除湿機で、えい☆ 「ホギャアア」 「原本君ー!」 「デゲス博士、お許しください!! 『ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改インパクト』!」 ベルカも除湿機でドゴォ☆ 「やったなこいつ! オッ チャッ アッー!」 「博士ー! 先に博士を叩いて助手である私の士気を挫く気か!」 「その通りだ!」 「よくもこんな■チ■イ作戦を!」 「とりあえず轢殺!」 暑さでもうどうにでもなーれってなったロアンは横合いからバイクでフィクサードを撥ね飛ばす。マジキチ(マジ鬼畜)。 「僕、今すっごいイライラしててね……さあ、懺悔の時間だよ。『ギガンティックハイパーウルティマエコロジカルスーパーマキシマムテラ超力除湿器さんマークセカンドⅡ改インパクト』!」 徐にバイクから降りつつ手にする除湿機でどごぉどごぉ。八つ当たり。 「「ぐふっ……」」 散々除湿機の角でフルボッコにされ、フィクサードは命乞いしたり靴舐めたりする前に白目を剥いて痙攣していた。そんな彼らを、まおはワイヤーで取り敢えず捕縛。でも暑い。そうだ涼もう。つったかたー。除湿機の傍。除湿器さんいい仕事してます。 「元気が出ました。ありがとうございました」 はいあんどろーう。どかーん。 「ああ……一生懸命作ったのに……」 はらはら涙を流すフィクサード。その傍にしゃがみこみ、とらは態とらしく息を吐く。 「日本人なら四季を楽しむ心の余裕を持て! いいディスか、ロメオ達? まず夏になると、チャンネーが薄着になる、汗で服が張り付いたりする。パッションだと思わんかね!?」 「でもそのチャンネーがそれを嫌だというのなら――」 「うっせぇ☆ 口答えすんな」 「痛い! 殴られた!」 「博士ぇー!」 「おっさん達だって縁側でスイカ食って種飛ばしたり、カブトムシ取ったりした記憶あんだろ? ご近所の子供達だってなぁ、夏の暑さに耐えながら、これからの人生、夏とどう付き合っていくか学んでる途中なんだよ。皆、そういう貴重な体験して大人になっていくんだ。テメーがもう関係ねーからって、勝手な事してんじゃねーゾ!」 とらちゃんですら我慢してんのに。そんな正論に。フィクサードは押し黙る。ので、とらは言葉を続けた。 「変なもん開発してる暇あんなら、プール行こうぜ! あと六道から寝返ってアーク来ねぇ? 綺麗なチャンネーとか、メカメカしいサンオツとか大勢いるしよ。ちょっと考えてみてよ、俺達と来るか、それとも駿河湾の藻屑になるのとどっちがいいか」 「それ脅迫――」 「別にサンオツは要らな――」 「聞こえんなあ!」 マジキチその2。悪魔の笑みにすっかり震え上がってしまったフィクサード。 そんな彼らを宥める様に、今度は羽衣がしゃがみこんで。なでなd……うわ汗ばんでべとべとしてる。羽衣、手が汚れるのは嫌だわ。手を引っ込めた。でもニッコリ。 「とらちゃんの言う通り、夏だって楽しい事沢山あるわ」 「そうそう。プールとかね」 先とは打って変わって優しい声音でロアンが続ける。酷暑にやられた身体に染み渡る、甘い言葉の毒を。 「丁度最近、いいプールもできた事だし。連れて行ってあげてもいいよ。今僕らに下るなら、キンキンに冷やした三高平の地ビールをつけてもいいよ喉越し爽やかだよ美味しいよシンプウソツカナイ」 「だ、だが我らはフィクサード……」 「天才に垣根があるものか」 遮ったのは、むんっと仁王立った陸駆。 「貴様らが、天才か! うむ、その力をフィクサードとして使うのは世界にとっても損失だ! それにアークに来れば研究し放題、福利厚生でプールや海にも行き放題で、アークビルは過ごしやすい気温を保っている。その力、求めていたものだ。天才はそうでないものを護るのがノブリスオブリージュなのだ」 言いながら、彼らの体を縛るワイヤーを解いてよく冷えたスポーツ飲料を手渡した。炎天下の中で、咽が渇いているだろう。そんな言葉。思わず正座したフィクサードは、冷えたそれと陸駆の目をと交互に見遣る。 「うぅ……かたじけない、かたじけない……!」 「リベリスタって……フィクサード見かけたら絶対に殺す暴力集団だと思ってた……!」 涙を零し、飲み物を咽に流し込むフィクサード。冷たいのに、それは彼らの心を温かく満たしてゆく。なんという北風と太陽作戦。 うむ、うむ。満足気に、陸駆は頷いた。その傍らで、ベルカが彼らに聞かせるのは件の『街頭インタビュー』だ。 「ほら、諸君の発明品はこんなにも喜ばれている。だが……好き勝手にやる自由と、感謝される自制。どっちがいい?」 昨日より便利な明日を。その為には、もっともっと良い道がある筈だ――そう、『アークに来る』とか。『リベリスタになる』とか。 8人の期待の眼差し。目を見合わせるフィクサード。 「本当に……我々が行っても良いのだろうか」 たっぷりの間の後に、デゲス漆原は問うた。その答えは、直後。 「ようやく分かってくれたー」 「まおは嬉しいと思いました」 「歓迎するのだ」 「ようこそアークへ!」 とらとまおがにこやかに頷き、陸駆が手を広げ、鳴未が笑いかけた。同様に、ロアンも「さあ」とその肩に手を置いて。 「懺悔して……もっと涼しいのを開発して貰おうか! 僕の為に!」 「あんたフィクサードだろ!!」 「まぁまぁ、細かい事はおいといて」 苦笑するベルカが掌をヒラリ。取り敢えず笑って締めておけばいいってばっちゃがゆってた。ぼくらのー ゆーとぴあー。 ζ そういう訳で、新たな仲間が加わった。仲間ならば、その傷を癒すのは当然の事。羽衣は天使の歌を紡ぎ出し、フィクサードに痛いの痛いの飛んで行け。 「羽衣がしたのはお仕置きだもん。痛い事してごめんなさいね」 「まぁ、終わりよければ全て良しと言うじゃあないか。こちらこそ、暑い中すまなかった」 頭を下げる博士と助手。羽衣は満足気に頷いて。 「さ、帰りましょう!」 じーわじーわ。何処かで、蝉の声が聞こえた様な気がした。 嗚呼、夏は始まったばかり。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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