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<恐山>ベジタブルアリーナ

●収穫は戦いだ
 青い空の下、夏の日差しに照らされたとある畑にて。
「ナァァァァァァス!」
「ニラァァァァァッ!」
 ナスとニラが戦っていた。
 ナスの紫の拳を、ニラがひらりと避けて、逆に斬りつける。
 他にも、ダイコンにアスパラにトウモロコシにジャガイモに……とまぁ、畑のあちこちで、動く野菜達が戦っている。
「うん、中々の豊作だね」
 そんな様子を満足気に眺めるのは、麦わら帽子を被りでっかいネギらしき物を背負った一人の男だった。

●今回は畑仕事です
「ちょっと北海道まで行って野菜を鎮圧して来て」
 集まったリベリスタ達に、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はいきなりそう告げた。
 何故に北海道?
 何故に野菜?
「順を追って説明する。少し前に、市場に革醒した野菜が出回りそうになった事があった」
 流通段階で察知出来たので、店頭に並ぶ前にアークで回収。
 回収した革醒野菜は手空きのリベリスタの胃袋に収めつつ、流通元を調査。
 結果、野菜を作った人物が判明した。
「それが、北海道にいる恐山所属のフィクサード。通称、ネギ使い」
 画面に映るでっかい長ネギ背負った男。あれ、ネギじゃなくて槍なんだって。
「万華鏡で探って見た所、彼の手がけた畑でまた野菜が革醒する事が判明した。しかも、今回は動く」
 手塩にかけて育てた野菜はE・ゴーレムになりました。
「更に、野菜ゴーレム同士は、畑の上で戦いを始める」
 マンドラゴラなんか目じゃない光景である。
「最後まで生き残った野菜は、ほぼ確実にフェーズ2に上がる。一気にフェーズ3になる可能性もゼロではない」
 それこそが、アークが介入せざるを得ない理由。
 当のネギ使いはと言うと、この戦いを見ているだけで何もしないらしい。
「皆が介入したら向こうも動くかもしれないけど、彼は倒せなくてもいい。今回は野菜ゴーレムを優先して」
 恐山という所属を考えれば、野菜を革醒させるだけがネギ使いの目的とは思えない。
 その辺りも探れれば良いだろうが、今はこの野菜騒動を鎮圧する事が先決という訳だ。
「炎天下の戦いになるけど、よろしくね」
 最後にそう言って、イヴはリベリスタ達を見送るのだった。

●冷やしキュウリを食べながら
「あの、いいんですかい?」
 控える黒服の問いに、ネギ使いは「何のこと?」視線で問い返す。
「こんな状況、箱舟の連中が見逃すとは思えませんぜ」
「……あぁ。千堂さんの言ってた正義マンか。別にいいんだよ、彼らが来たって」
「へ?」
 のほほんと答えたネギ使いの言葉に、黒服の方が呆気にとられた。
「誰かに介入されても、俺の計画に大差はない。大事なのは『畑が戦場になる事』なんだから」
 答えて、塩水で冷やしたキュウリを齧る。
「そんな事より、まだ畑仕事は残ってる。今の内に、キュウリで水分補給しておきなさい?」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:諏月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年07月10日(水)23:05
 諏月(すうげつ)です。
 気づいたら7月でした。ちょっとお久しぶりです。
 6本目。畑仕事です。以下詳細。

●状況
 北海道のどこかの畑。戦いに十分な広さがあります。
 下記のEゴーレム10体全滅で成功。

●野菜のEゴーレム達
 ・ナス(ナスアッパー:物近単[ノックB])
 ・キュウリ(キュウリ水:神近単[怒り])
 ・トマト(特にBSのつく攻撃はないが無駄に速い。赤いから)
 ・アスパラガス(アスパラヘッドバッド:物近単[混乱])
 ・レタス(葉っぱで仰ぐ:神遠複[隙])
 ・トウモロコシ(ガトリングコーン:物遠全)
 ・ジャガイモ(芽っていうか触手:物遠複[毒])
 ・ニラ(ニラエッジ:物近単[出血])
 ・ダイコン(ダイコンキック:物近単[麻痺])
 ・オクラ(ネバネバ:物遠単[鈍化])
 以上10体。全てフェーズ1。
 ゴーレム化したことで、1m前後に巨大化した上に多くは手足っぽいのが生えてます。
 ジャガイモだけ触手ですが。

●フィクサード(恐山)
・『ネギ使い』
 本名不明。ジーニアス×ソードミラージュ。
 開墾から収穫まで全部一人で行う、畑のスペシャリスト。一番好きな野菜は長ネギ。
 野菜を革醒させる事には他の追随を許さないと自負している。
 何か目的はありそうですが、畑の隅で冷やしキュウリ食べながら静観してます。
 ジョブと後述のEX以外の所持スキルは不明。戦闘能力はかなり高いと推測されます。

所持アーティファクト『ネギ・ボルグ』
 柄が白で穂先が緑な、二叉の槍。見た目はでっかい長ネギ。
 恐ろしく軽く、所持者の健康保持に高い能力を持つ。
 速度補正とWP高補正あり。攻撃力は平凡。

EX『ネギの威光』
 P:高リジェネ&高チャージ&WPでのBS回復判定を毎ターン2回行う。
 また、野菜のE・ゴーレムに限り攻撃対象にならない。ネギ・ボルグ依存スキル。

EX『三千世界のネギ』
 こちらはネギ使いの独自EX。ネギ好きの境地。
 詳細は不明だが、この攻撃で死ぬことはない。不殺。だってネギだもの。健康の味方。

・配下
 黒服クリミナルスタア×5。戦力的にはアーク平均程度。
 畑のガードマン役に派遣されてます。別に野菜に興味はない。
 ネギ使いの後ろで暑さにへばってますが、彼が戦いに動けば参戦します。

 以上です。
 ではでは、よろしければご参加下さい。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)
クリミナルスタア
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
マグメイガス
シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)
ダークナイト
小崎・岬(BNE002119)
マグメイガス
ラヴィアン・リファール(BNE002787)
クロスイージス
シビリズ・ジークベルト(BNE003364)
ホーリーメイガス
海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)
覇界闘士
コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)

●水分補給は大事
 遠路はるばる、北海道までやってきたリベリスタ達。
「数多の野菜が動くとはまた珍妙な……」
 照りつける日差しに薄ら汗をかきながら、『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)が持参したスポーツドリンクを口にする。
「ねぇ。昔、野菜みたいな名前の人が戦う漫画、日本になかった?」
 巨大化した10の野菜が熾烈な戦いを繰り広げる光景に、『虚実之車輪(おっぱいてんし)』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082) がある漫画を思い浮かべる。
「あったかも。でも、野菜に手足って、漫画なら良くあるけど、実際見てみるとかなりキモイぜ。どういう趣味してんだ」
「これ、野菜たち自身はどんな目的で戦ってんだろー?」
 その横で、『スーパーマグメイガス』ラヴィアン・リファール(BNE002787) と『ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119) が首を傾げる。
「まったくこんな暑い中にご苦労様というところかしら」
 持参した冷たいお茶で喉を潤す、『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230) 。今は夏野菜の季節。こんなお仕事もたまには悪く無い。
「この不可解な状況、まさに謀略の恐山が相手と云う感じよね」
 塩分も入った茘枝なドリンクを口にしつつ、『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422) は畑を検分する。
 10種類の野菜をこの畑で栽培したのか、他所から運んできたのか。だが、肉眼で見ただけでは、そこまで判別はできなかった。
「皆、ちゃんと水分補給してるわね。北海道が他より涼しいからって、直射日光浴び続けたり、水分補給しなければぶっ倒れるわよ」
 見た目は今回最年少。しかし、日頃、三高平の高等部で教師をしている『マグミラージュ』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329) はどこか引率気分。
 自身も日光を反射する白衣を纏い、持参したドリンクを飲んでいる。まあ、白衣は普段からなのだけど。
「かーっ! 暑いとこで飲む炭酸水は格別だ!」
 コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)が持参したのは炭酸水。人によるけど、夏場の炭酸水って妙に美味しいよね。
「んじゃ、そろそろあの野菜をぶち殺……ぶち殺すでイイのかなァ。なんか違和感あるんだが……」
 気勢を上げかけ、思わず首を傾げる。野菜相手にこの表現で良いのだろうかと。
「まイイやッ、暴れようぜッ!」
 数秒考えて、気にしない事にした。
 鋼の拳を握り、鋼の歯を剥き出しに笑う。
「だなー。目的なんか、叩き潰してから憶えてたら考えてみっかー」
 岬も彼女の代名詞と言える邪悪な雰囲気のハルバード、アンタレスを構える。倒せば良いのだ倒せば。
「其れでは謎解きへと参りませうか」
「まぁ私には奴らの狙いは良く判らんが、闘争がソコにあればなんでも構わんよ」
 エナーシアがPDWの銃口を向け、シビリズが2つの鉄扇を構える。
 畑に足を踏み入れたリベリスタ達に、野菜の視線が向けられた。

●リベリスタの畑仕事
 一度は視線を向けたものの、リベリスタに構わず殴り合いを再開する野菜ゴーレム達。
「どの野菜も、あまり消耗してないのだわ。土は……普通ね?」
 エナーシアが全ての野菜の能力と状態、さらに畑の土も見透かす。それでも畑の土は特に神秘的な要素は見当たらない。考え過ぎだろうか?
「攻撃して来ないなら、都合が良いわ。こっちから行くわよ」
「さて……貴様等覚悟しろ! リベリスタ達がたっぷりと料理してやる!」
 ともあれ、敵が仕掛けて来ないならば先制攻撃のチャンスだ。
 ソラとシルフィアが放つ2条の雷光が敵陣の真ん中で弾けて、全ての野菜を貫いた。
「ボクらの力、見せつけてやろうぜー、アンタレス!」
 岬の持つアンタレスの、炎の様に揺らめく黒い刃から放たれた暗黒の瘴気が、最優先目標であるアスパラを巻き込んで幾つかの野菜を襲う。
「畑は荒らさないように!」
 海依音が与える神秘の翼で、リベリスタ達がふわりと僅かに宙に浮く。
 さらにラヴィアンが自身の魔力を高める魔法陣を展開した。
 そんな中、攻撃を受けた野菜ゴーレム達も、遂にリベリスタを敵と認識し始める。
「……ジャガァ」
 ジャガイモが他の野菜もろとも、リベリスタも狙ってその触手を伸ばす。
 シビリズとエナーシアがそれに絡め取られ毒を受けるが、コヨーテは無駄のない流れる水の如き動きで紙一重で躱してみせた。
「向こうもその気になったみたいだな!」
 直後にシビリズが放つ、敵を殲滅する為の黄昏の加護。2人の受けた毒を消し、味方全員に高い持久力と反射の力を齎す。
 畑での戦いは、野菜VSリベリスタに変わり始めていた。

「モロコォォォシ!」
 トウモロコシが自らの体から、野菜もリベリスタも、後ろのネギ使いを除いて全て巻き込み黄色い弾丸を放つ。
「……」
 レタスは無言で大きな葉っぱをパタパタ動かす。
 革醒した事でレタスの眠気を催す成分が強化されたか。この風を受けた数人の体から僅かに力が抜けていく。
「パラガスッ!」
「ダイッコォォォン!」
 そこにアスパラが頭からシビリズに突っ込んだ。
 しかし、英霊の魂を幻想の闘衣として纏った彼は、その強烈な衝撃にも正気を失う事はない。
「砕けろ!」
 お返しにと全身の膂力を活かして鉄扇を叩き付ければ、ダイコンの腕が本当に砕けた。
「いくぜ、オラァッ!」
 コヨーテが拳を構え、野菜に迫る。しかし、最初に倒すべきアスパラガスを狙う彼に、横から飛んできた水が頬を撃つ。
「キュリッ!」
 キュウリだ。当てて嬉しいのか(顔ないけど)ドヤ顔である。この上なくウザイ。
 更にコヨーテに当たった水は、何と言うかその、非常に生ぬるかった。痛み以上にその生ぬるさが怒りを掻き立てる。
「ぶち殺したらァ!」
 炎を纏ったコヨーテの拳は、キュウリへ向けられた。
「ダイッコォォォン!」
 そこに、文字通りの大根足が海依音を蹴り上げる。
 更に、ナスとトマトが後衛に迫りかけるが、これはエナーシアとラヴィアンが阻んだ。
「うーん。やっぱり数の多さは面倒ね」
 混戦状態となった状況を見て、ソラが味方を癒す福音を響かせる。
「さすがアラせん。助かります」
「自分の職業、一度見直した方がいいんじゃない?」
 裁きの閃光をぶっ放してばかりの『癒さない系』シスターな海依音の賛辞に、ソラが少し冷たい目を向ける。
 尤もジョブのイメージを裏切ると言う意味でなら、ソラもいい勝負だ。
 回復面以上に面倒なのは、混戦になり狙い通りの順に敵を倒し難い事だ。
 接近戦を仕掛ける野菜を全て抑えてはいるが、結果、互いにブロック状態となり単体攻撃の届く相手が限られる。
「叩き潰してやんぜー!」
 そんな中、最も野菜の脅威となっているのは岬。
「ニラァァァッ!」
 ニラの繰り出す手刀が岬の肩を掠めるが、気にせずアンタレスを振るい暗黒の瘴気を飛ばせば、ニラを含めた数体の野菜の体が砕けていく。彼女自身の生命力も削られるが、その威力と効果は代償と比べて余りある。
 リベリスタの猛攻の前に、遂にアスパラとニラが砕けて消える。
「苦味に反吐が出る奴だったぜ……ついでに薄っぺらいのも倒れたし、次は貴様だ、大根!
 どう料理しても(食中毒に)当たらない……まさに貴様が大根役者!」
 笑みを浮かべ高圧的な態度でダイコンを指差し、拡散する雷撃を放つシルヴィア。誰がうまいこと言えと。
「食中毒に当たらないなら、役者としては上手いんじゃない?」
 ツッコミつつ、回復と同時に攻撃をこなすソラ。
 連続で雷撃に貫かれた所を、さらにエナーシアに急所を撃ち抜かれ、ダイコンが砕け散る。
「ハッ! キュウリ程度に負けるかよ!」
 ほぼ同時に、キュウリもコヨーテの炎の拳に焼き尽くされた。

●恐山の畑仕事
 ナスとトマトの拳が、同時にシビリズを捉え、衝撃に彼の体が10m程後退るも、悠然と開いた距離を戻す。
「それだけか?」
 驚異的な防御力と体力を誇る彼にとって、野菜の攻撃は脅威足りえない。余裕の表情で、悠然と開いた距離を戻す。
「俺のターン! ブラックチェインストリーム!」
 彼の迫力に怯んだナスとトマトを、ラヴィアンが血を代償に奏でた黒鎖の葬送曲が呑み込み、ナスを葬り去る。
 かろうじて抜け出したトマトも、海依音の唱えた聖なる呪言で浄化の炎に包まれ、灰と消えた。
 倒す順番こそ想定からずれているが、順調に野菜ゴーレムを片付けていくリベリスタ達。
「くっ! 顔色が悪いくせに。粘りがあってしぶとい奴だな、オクラ」
「悪ぃ、ちっと退がるぜ」
 しかし、ここでシルフィアとコヨーテが運命を燃やして立ち上がる。
 ソラは回復を欠かさなかったが、複数攻撃を持つ野菜の撃破を後に回したツケが響いた。
「奴らが動いたわよ!」
 岬がトウモロコシを叩き斬った所で、エナーシアが声を上げる。野菜の向こうに並ぶ、ネギ使いと黒服の姿。
「ここで来るか!」
 いざとなればネギ使いの抑えに回るつもりで、シビリズが身構えた次の瞬間。
 野菜ゴーレムの足元から大量に現れる、ネギ、ネギ、ネギ――多種多様な長ネギ。
 無数の長ネギは地中より一斉に飛び出すと、全ての野菜を貫いて、しかしリベリスタには一本も当たらず虚空に消えて行く。
 更に黒服達が銃口を向けて、ボロボロになったジャガイモ、レタス、オクラにトドメを刺していく。
 ほどなく野菜は掃討された。残るは、畑の上で対峙するアークと恐山。
「貴様がネギ使いか」
「そうだよ。初めまして、正義マン達」
 青と緑、2つの瞳で見据えるシルフィアに悠然と返すネギ使い。黒服は銃を下ろし後ろに控えている。
 少なくとも、すぐに仕掛けてくる様子はない。
「何のつもりだ? 野菜共を戦わせた挙句、最後には攻撃する? 無意味にしか思えんぞ」
 きつい口調で問い質しながら、ネギ使いの心を読みにかかるシルフィア。
「まさか。勿論ちゃんと意味はあるさ。俺にとってはね」
「自分で倒すくらいじゃ、勝ち残った野菜が『ベジタブル・ザ・ベジタブル』の栄光を手にするってのはなさそうだなー?」
「ああ、そういう趣向も面白かったかもね。でも違うんだ」
 岬の言葉に、こちらは楽しそうに返す。
「じゃあ、何だ。野菜か農家に恨みでもあんのか? こんな事、食う気なんか無かったんだろ?」
 食べ物で遊ぶ奴は嫌いだと、ラヴィアンが問い詰める。
「食べ物を粗末にしやがって。いいか、残していいのはニンジンだけだ!」
「俺は野菜にも農家に恨みもない。一般人であれ、農家には敬意すら抱くね。あと、ニンジンも食べれ?」
 しかし問い詰められても怯む事なく、好き嫌いに触れながらラヴィアンに返すネギ使い。
「だったら、何でこんな恐ろしい……違うな。面白ェことしたんだ? 上でバトルするコトで、もっとうめェ野菜できるとか?」
「或いは、この土壌が何らかの神秘要素を持ちあわせていて、増殖性革醒現象で引き出す為に革醒者を誘き寄せた、とか?」
 リーディングし易い様にと、コヨーテと海依音が推測をぶつける後ろで、エナーシアが胸中でため息を吐いていた。
(……やっぱり土は革醒していないのだわ)
 これでスキャンは3度。狙いは畑の土ではないのか、そう彼女が思った時だった。
「あ、土と美味い野菜ってのは良い線行ってるね」
「え?」
 あっさりとネギ使いがそれを肯定した。
「増殖性革醒現象じゃないけど、俺が欲しいのは、戦いが終わった後の今の土だ。
 で、鉄の歯の君が言った、もっと美味い野菜が出来る。まさに俺が最終的にやりたいのは、そう言う事」
「マジかよ……」
「ふむ。嘘はついていないな」
 肯定されて驚いたコヨーテが振り向けば、思考を読んだシルフィアが頷く。
「あ、リーディングか。ならもう、この際全部喋った方が良さそうだな」

●ネギ使いの真意
「さて、何処から話したものか」
「長い話になりそうですか? 冷やしきゅうり美味しそうですし、一本頂けません?」
「ああ、構わないよ。良かったら他の人もどうだい? これは、普通のキュウリだぜ」
 海依音の言葉に2つ返事で頷いて、嬉しそうに冷やしきゅうりを配るネギ使い。
 きゅうりを齧る音が響く中、ネギ使いが口を開いた。
「まず、野菜を戦わせた理由から話そうか。一言で言うなら、アイツらを肥料にする為だ」
 野菜ゴーレムに与えた肥料は、野菜の内部で熟成して、更なる肥料になると言うものだと言う。
「つまり、この土壌は神秘の肥料を撒いた状態?」
「そう言う事。君達も多少かかったかもしれないけど、革醒者なら人体には無害だから安心してくれ。
 別にノーフェイス作る気もないから、こうして人気のない場所を選んでんだよ?」
 海依音の言葉に頷くネギ使い。
「判らないわね」
 そこにエナーシアが割り込む。
「それならこんな蠱毒みたいな真似をする必要はないでしょう?」
「蠱毒か。言われてみればそうとも見えるね。ま、そこは簡単だ。10匹倒すより1匹倒す方が楽だろ?」
 野菜ゴーレムに襲われない彼にとって、余程特殊な進化を遂げない限り、フェーズが上がった所で敵ではない。
 自分に害がないからと、平然と崩界促進のリスクを冒す辺りは、フィクサードという事だ。
「もしかして、10種類も野菜がいたのは、その為?」
「ああ、その通りだよ。種類がバラバラの方が、争わせ易い」
 気づいたソラの言葉に、これも頷くネギ使い。
「で? この畑で次は何を革醒させようってんだ?」
「そうだな。土が目的と言う理由は判ったが、その目的次第では――」
「さっきも言ったけどさ。もっと美味い野菜を作る、それだけだって。特に長ネギな」
 きつい目線を向けるラヴィアンとシビリズに、苦笑するネギ使い。
「本当にそれだけかー?」
「いや。まだ隠している事がある。そうだな?」
 岬が疑えば、シルフィアが心を読んで更に問い詰める。
「あーもう。リーディングやりにくいな。判ったよ。確かに作ろうとしているのは、長ネギだけじゃない」
 そしてネギ使いは告げる。
「恐山がさ、畑で作るんだよ? いちごに決まってるじゃないか」
 黒服達が、帰っていいですかオーラを醸し出し始めた。

「首領のお孫さんに気に入られて損はないよ」
 結局の所、そんな長いものに巻かれろ精神に因るものだった。しかもネギ使いの独断だ。
 故に、食えないいちごを作って逆に覚えを悪くしたくないと、今回は他の野菜ばかりになったらしい。
「なら、革醒した野菜を市場に流したのは何でだ!」
「うん? 資金集めに普通の野菜を売りはするけど。革醒した野菜を売りは――もしや、時間が経ってから革醒したのか。その可能性は考えてなかったな。それはいつ頃の話だい?」
 過去に流通した革醒野菜。ラヴィアンがそこを問い質せば、逆に質問が返ってくる始末。
「あ、ちょっと聞きてえんだが、トウガラシは栽培してないのか? 葉ワサビでもイイ。あるんならください」
「玉葱も育てなさいよ。長ネギも悪くないけど、やっぱり玉葱が一番! それに北海道と言えば長ネギよりも玉葱でしょ」
「や、俺、道民じゃないし。まあ革醒品でいいなら、3つとも作るよ」
 コヨーテとソラのリクエストに、何故か律儀に答えるネギ使い。
「結局革醒させるのか。革醒しないなら、今後の日本の農業を担う大物になっただろうに……」
 残念さを嘆くシルフィア。
「さて、俺の話はこれで全部だ。で、俺としては、此処で君達とやり合う必要はないんだけど、どうする?」
 話は終わりだと、出方を伺うネギ使い。
「土を持ち帰れるなら、もう野菜をゴーレム化させる必要もないしね」
 北海道の夏は短い。続きは別の場所で行うらしい。
「行き先はまぁ、秘密って事で――」
「無駄だよ。候補は栃木と愛知だな」
「読むなよ!?」
 シルフィア、リーディング継続中でした。
「成程。良く喋ると思ったら、交渉に持ち込むつもりだったってわけね」
 直球で聞いても答えまい。分析を伏せて少しずつ探りを入れていく。
 そんな駆け引きを想定していたエナーシアにしてみれば、口の軽さは意外であったが、全てはこの交渉に持ち込む為か。
「まあ、それもあるけどね。黒服達は、話聞いてくれなくてさ。喋りたくてウズウズしてたんだよ」
 いるよなー、そう言うマニアって。
「ついでに、さっき野菜ごと攻撃しなかったのも、汲んで欲しいな?」
「くだらねー理由だし、見逃してもいいんじゃねえ?」
「革醒野菜出荷すんのやめさせりゃ、世間の混乱も招かねえよな?」
「本当に野菜をゴーレム化もやめるなら、ね」
 ラヴィアンとコヨーテ、ソラは手打ちに肯定的だ。
「私としてはどちらでも構わないさ。少々戦い足りない気はするがね」
「やるならぶっ潰すー。向かって来るネギ全て闇に飲みこんでやんよー」
「なんだって最も戦いたくない2人が乗り気なんだい。やめてくれよ」
 進み出たシビリズと岬に、苦笑するネギ使い。
「ゴーレムにしない、革醒野菜出荷しない。正義マンと致しましては、この辺りで手打ちにしたいのですけど。
 貴方は土を得られる利益。私達は事前に革醒現象を止めることができる利益。これでタイでしょう?」
 海依音の告げた条件で、ネギ使いは頷いた。
 黒服に命じて畑の土を深く掘り集めると、それを持ってどこかへと去って行った。
 後日、アークに革醒した玉葱とハバネロの詰め合わせが届く事になるのだが――それはまた別の話。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
皆様、炎天下の中お疲れ様でした。

HP5000超えなタフさに野菜涙目でした。
しかも全体攻撃バンバン飛んでくるとか、野菜相手でも容赦ないですね皆様。

結構近い推理がいくつかあったし、リーディングされちゃあ仕方ない。
と言う事で、見事ネギ使いの目的も判明でございます。
いちごって果物と思われがちですが、
植物学的にはバラ科で、野菜と扱われる事もあるそうなんです。

ここで倒すと言うプレも少なかったので
今回は手打ちの形で幕を降ろさせて頂きました。

ご参加、ありがとうございました。